~八月下旬~

久「あ゛~」

まこ「なんじゃ久、妙な声出しよって」

久「だってぇ。インハイ優勝して、取材やらパーティやらで気付いたら夏休み終わってたのよ!?」

和「長野ですから仕方ないのでは?」

優希「ヴぇー。のどちゃんは淡白すぎだじぇ」

咲「あはは。優希ちゃんなら和ちゃんが嬉しそうなの分かってるよね?」

京太郎「うーっす。部長、買出しと取材対応終わりましたよ」

久「……」

京太郎「部長?」

久「よし、決めた! 週末を合宿ってことにして金土日とみんなで遊びましょ!」

咲「そんな無茶な」

久「インハイ優勝したんだもの。ちょっとくらいの我儘は通してみせるわよ。それに」

和「それに?」

久「須賀君にも色々雑用してもらっちゃってるし、私達くらいは労ってあげてもいいじゃない?」

優希「まあ、彼女のいない京太郎には私達美少女からのお礼はちょうどいいご褒美だじょ」

京太郎「ん? 俺彼女いるぞ?」

「「「「「えっ」」」」」

 一瞬前までの気の抜けた、おちゃらけたような空気が途端に固まった。
 五人の少女が少年の顔をまじまじと見る。
 部屋の外から聞こえる蝉の音が、時間が止まったわけではないことを教えていた。

久「ま、またまた。須賀君も面白い冗談が言えるじゃない」

まこ「久……ちぃと失礼すぎる言いようじゃの。しかし京太郎がなぁ。居てもそりゃあ不思議はないが」

咲「えっ。……えっ!? き、聞いてないよ京ちゃん!?」

和「まあまあ落ち着きましょう咲さん?」

優希「  」

 信じず半笑いで流そうとする者。さもありなんと納得する者。固まる者。
 慌てふためき問い詰めようと立ち上がる際に足をぶつけて涙目になる者。
 そして素知らぬ振りで慌てる少女を宥める者。
 まさに五者五様の振る舞い。いや、実際は受け入れる者と受け入れられない者の五者二様と言うべきか。

京太郎「部長さすがに酷いっすよその反応!」

(ありえません。だって彼は、私にいつも熱い視線を向けてたじゃないですか)

京太郎「咲もほら、落ち着けって。擦り剥いてるじゃないか。救急箱用意しとくから洗って来い」

(麻雀も落ち着いて転校しなくてもよくなりました。咲さんとも仲良くなれて。そろそろ動こう、そう思っていたのに)

京太郎「染谷先輩は優希をお願いしてもいいっすか? なんか気絶してる感じなんで」

(ひとまず、確認しましょう。そうすればまだ、まだなんとかなるかもしれません)

和「それで須賀君。いったいどんな人なんですか? 私達の知ってる方だったりします?」

京太郎「お? ああインハイ会場で会ったのがきっかけでさ。そうだ、携帯に写真入ってるから。――これこれ」

和「これは――――」


カンッ

優希「こいつは鶴賀の幽霊女!?」

久「えっ。え、彼女レズビアンじゃないの?」

「失礼なのはツモ和了がり方だけにしてほしいっすね」

咲「あれ、東横さん。なんでここに」

桃子「どーもっす。きょーくんの彼女やってます、東横桃子っすよ!」

和「……鶴賀の部長さんとお付き合いしてらしたのでは?」

桃子「ゆみ先輩とはユージョーっすよ?」

久「友情? それにしてはスキンシップ過剰だってゆみが言ってたけど」

まこ「おんしと風越のも似たようなもんじゃろ」

咲「えっと。つまり、人恋しくて暴走しただけで性的関係はなかった、ってことでいいのかな」

桃子「そういうことっすね、お恥ずかしながら。距離感を上手く測れなくてゆみ先輩にはご迷惑おかけしたっす」

優希「ぐぬぬぬぬ! こんの犬ゥッ! 結局おっぱいか!? のどちゃんほどじゃないがおっきいじょ……」

桃子「あ、やっぱりきょーくんはおっぱい好きなんすね。見てはくれるっすけどなかなか触ってくれないからそれが目下の悩みっすねぇ」

京太郎「うっ、勘弁してくれよモモ。和から睨まれるうちに、さすがの俺も学習したんだ」

和「  」

桃子「恋人と、“赤の他人”じゃ別っすよきょーくん」チラッ ニヤリ

和「orz」

桃子「えへへ。来年からはこっちに通うんで、ずっと一緒っすよきょーくん♪」


蛇足カンッ

和「――真屋さん、ですか?」

優希「げぇっ! 副将トリプルおっぱいの一人!?」

久「え、あー、須賀君の好きそうなタイプよね。よくがっつかないで仲良くなれたわね(震え声)」

まこ「しっかし、アイドル目指しとるんじゃなかったかの? その辺大丈夫なんか京太郎」

由暉子「問題ありませんよ。ご心配ありがとうございます」ペッコリン ドタプン

咲「あれ? 確か……有珠山のま、真鍋さん……だっけ?」

由暉子「有珠山高校一年生、真屋由暉子です」

京太郎「由暉子、スタッフの方々と一緒に帰ったんじゃ?」

由暉子「無理を言って残りました。……京太郎君と一緒にいたかったので」

咲「えっ」

由暉子「それに……京太郎君の性癖を考えると、牽制しておくべきだと思ったんです」チラッ

和「っ!」ギリッ

和「あ、アイドルが男性とお付き合いしているというのは良くないのでは?
  京太郎くんがトラブルに巻き込まれでもしたらどう責任を取るつもりですか真屋さん」

由暉子「誤解があるようですが。私が目指すのは瑞原はやり先輩の後釜、牌のお姉さん枠です。なにより」

由暉子「京太郎君と二者択一なら京太郎君を選ぶ覚悟がありますから」

京太郎「由暉子……!」ダキッ

優希「負けたじぇ……。私はタコスを選んでしまう……」

由暉子「はい。ですので原村さん。ありがとうございました。あなたに注目したおかげで京太郎君と出逢えましたので」

和「こ」

「「「「「こ?」」」」」

和「こんなオカルトありえませ~~~~~~んッッ!!」


蛇足2カンッ

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最終更新:2017年10月13日 00:08