[京太郎⇔和 時空@高遠原中学]
優希「そういや京太郎、お前麻雀できるのか?」
京太郎「できるっちゃできるけど強くはないぞ? 急になんだ」
幼馴染二人を残念な方向に足して割ったような少女が話しかけてくる。
おかげで仲良くなるのは早かったんで、長野に越してからも思ったより寂しくはないのはいいことか。
優希「いや、部員が寂しくてなー」
京太郎「……待て、お前麻雀できんの? あの数学の出来で?」
優希「点数計算は怪しい!」
京太郎「俺以下じゃねーか! くのくの」
優希「やめれー! それはともかく、どうだ一局? カモにしてやろう」
京太郎「いいだろう、その喧嘩のってやる」
煌「貴方が須賀京太郎くんですね。お話は優希からかねがね。高遠原中学麻雀部にようこそ!」
京太郎「は、はあ、よろしくお願いします」
なんだろう、長野は高原のせいでおもちが少ないのだろうか? 至極残念である。
いや、こんなこと言ってたのが奈良の同級生の耳に入ったら殺されるので自重しよう。
優希「花田先輩、もうまてないじぇ」
煌「仕方ありませんね、では話は卓を囲んだ後で」
優希「リーチ!」
京太郎「おい、東発3巡目リーチってなんだ? くそ安パイもろくにねえ」
どうでもいいが、安パイとは安全なおもちのことではない。捨てても大丈夫な牌のことである。え? 知ってる?
京太郎「鬼だ、お前は鬼だ優希」
優希「最初だけ最強の優希ちゃんとは私のことだじょ! さあ、早く振り込んでもらおうか」
俺はこういう時に限って染め上げられた自分の手牌から何も考えずに牌を取って……
優希「ふ、一発は免れたようだな。さあ、私に振り込んで帰りにタコスを奢るのだ」
いつの間にやら賭けになっている事実よりも、無意識に捨てた牌に描かれたおもちの数に俺は驚愕を感じていた。
おかしい。俺はいつもおもち牌しかないならば少ないおもちを切ってきたはず。なのに何故だ!? あの牌に描かれているのは9……最も大きいおもちなのに! それゆえ牌効率無視、勝てず憧に怒られる中学生活を送っていたというのに。
そっと一筒を手に取る。脳裏に浮かぶのは穏乃の姿。 そっと七筒を手に取る。脳裏に浮かぶのは玄ねえの姿。 さらに八筒を手に取る。脳裏に浮かぶのは宥姉ちゃんの姿。
最後に四筒を……脳裏に浮かんだのは、甘く蕩けるような一度だけ聞いたの憧の声。
え、なにこれ?? ええ??
不思議現象に頭を悩ませながら、それでも手は勝手に牌を切り続け……なぜか最後に勝っていたのは俺だった。
優希「京太郎め、油断を誘って私からタコスを巻き上げるなんて、ひどいじょ!!」
京太郎「いや、俺は確かに前は勝てなかったはず、なんだけど……」
煌「すばら、実にすばら! 謙遜もいいところです! どうですか須賀くん、私達と一緒に楽しみませんか!?」
部長であるという彼女に手を取られ、ああ三筒だなと思ったところで、俺は唐突に理解した。
玄ねえ、憧、分かったよ。俺に足りなかったもの……それはおもちを平等に愛する寛大な心。
穏乃……じゃない、一筒が八筒より価値がないのではない。すべてを愛した先に新たなステージはあるのだと。
『京太郎IMチャンプに覚醒したの真の事情』 カン
最終更新:2017年10月12日 23:26