<どこぞの京太郎⇔和 時空>

私にとって京太郎は、とても仲のいい友達。
一緒に麻雀教室にも行って、山にも付き合ってくれて、話もあって、とても楽しい。

阿知賀は女子校だから進路は別になっちゃったけど、いやな顔一つ見せずに山に行ってくれるから、ちょくちょく会ってた。
だから、憧から『あんま京太郎誘うの控えなさい』って言われたときは意味が分かんなかった。

麻雀に集中してる憧に気を使って遊びに誘うの控えてたから拗ねたのかと思って、『じゃあ、今度三人で』って言っても反応は良くない。
なんなんだろうなー、なんて首をかしげてると、それからしばらくして憧と京太郎が付き合ってるって噂が聞こえてきた。

ああ、それで私をけん制したんだ、なんて納得して何の相談もなかったことにちょっと寂しかった。
寂しさを吹き飛ばそうと憧を久しぶりに部屋に呼んでケーキを買って盛大にお祝いしたら憧は『そんなんじゃない』なんて照れて。

素直にならない彼女をもって京太郎も大変だな、なーんて思いながらしばらくして、京太郎が奈良から出ていくって聞いた。

その瞬間、私の心に去来したのは思いがけもしない言葉。
『じゃあ、憧とは別れちゃうのかな』なんて、期待のこもった感情。

自分で自分が信じられなかった。親友二人が別れるのを期待するなんて、そんなの。

憧と京太郎がぎこちなっていく日々を見てドキドキする自分に落ち込んで、日は過ぎる。

京太郎が長野に引っ越して、憧の泣きそうな顔を見て、私はようやく自分の真っ黒な初恋に気が付いた。
それで憧に連絡する頻度はぐっと減った。だってこんな親友、失格だから。

中学三年の夏、久しぶりに見た麻雀の実況で京太郎がインターミドルで優勝してるのを見てしまった。
前に会った時より顔が引き締まって、格好良くなってて、うわー、なんて思いながら走り出して、ふと気づく。

『憧は、知ってるのか?』
考えたら、すっかりご無沙汰になってた番号をプッシュしてて。会いに行きたいなんて本心を吐露して。
憧が阿知賀じゃ無理だっていうのに反発して、昔の麻雀教室に行って。

そこで、玄さんに会った。誰より京太郎を可愛がってた玄さんなら賛成してくれると思って。
考え通り、玄さんはすぐ乗り気。途中から無理なんて言ってたはずの憧まで加わって。

これで私はやっと憧と京太郎を再会させられる。そしたら私の中途半端に終わった初恋も、ついに動き出す。
二人が再燃しないことを心のどこかで祈ってる私は、きっとずるい子だ。


『京太郎⇔和シリーズ、阿知賀麻雀部復活・穏乃の事情』、カン

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最終更新:2017年10月12日 23:22