遠距離恋愛は続かない。
何度も友達の口から聞いた言葉であり、ネットやTV番組などでもそう言われている。
しかし、そのことに関して彼女――鶴田姫子は『否』と自身を持って答えられた。

答えられた本人の姫子は、現在遠距離恋愛中。
夏の大会の時に知り合った、一つ下の男の子と付き合っていた。
長野の清澄所属で応援に来た男の子。
くすんだ金髪で身長が高くも威圧感などなく、むしろ笑った顔が無邪気で可愛らしい。
そんな彼だ。

友達に言えば、『長続きはしない』『頑張れ』などの声が返ってくる。
姫子は、そんな友達の言葉を聞くたびに首を傾げた。
だって――


             部活が終わりました


「むふふっ♪」

部活が終わり、寮に帰ってくるとL○NEを開く。
開けば、そこには彼からの返信があり笑みがこぼれた。
姫子は上着を脱いでネクタイを外し、Yシャツを着たまま自分のベッドにダイブする。
そして、大きなクッションをぎゅっと抱きしめ枕にすると、もう一度返信された言葉を読む。

それだけで心がポカポカと暖かくなり、ぎゅっと心臓が締め付けられるように切なくなる。
何と返信しようかと悩むのも凄く楽しい、返信ボタンを押す時はいつもドキドキだ。


             部活が終わりました

今日も、お疲れ様ー(≧∀≦*)


数分ほど考えて、返信ボタンを押せば胸が高鳴る。
返信は来るだろうか? 遅くなるだろうか?
姫子は、一喜一憂しながらクッションに顔を埋めた。
遅くなれば項垂れて、返信が帰って来たら足をバタつかせ喜ぶ。
連絡を取り合うだけで、毎日これなのだ。
冷める要素がまったくない、それゆえに姫子は笑顔で良い切れる。

遠距離恋愛は続く、彼/京太郎が大好きだと――。

「遠距離恋愛って続かないって話をよく聞くけどな。実際、俺の友達で――」

何度言われた言葉だろうか。
親友である誠に彼女が出来たことを話したときだ。
最初の言葉が、これであった。

そんなことを言う親友にむっとするも、すぐにニヤニヤと笑われ『まぁ、お前の場合は違うだろうがな。応援してっぜ』
と言われて毒気を抜かれたことは今でも直ぐに思い出せた。

「あー……くそっ、どきどきすんな」

京太郎は家に帰って来てベッドに座り込み、画面を見つめる。
部活が終わったことの報告を彼女の姫子にしようとすると胸が高鳴りドキドキと鼓動した。
何度も行なった連絡、それでも毎回と言って良いほど緊張した。

言葉を打ち込んでは消して考えて、また打ち込む。
そんな動作を頭を抱え悶えながらも行なっていく。
結局は、簡素になってしまった言葉を送り落ち込み枕に顔を埋める結果となる。

「おっ」

しかし、そんな落ち込み具合も数分後には解消された。
携帯から聞こえる返信音に顔をバっと上げて確認する。
確認し終えれば、顔が真っ赤に染まり別の意味で悶えた。

(返信どうすっかなー。 愛を囁く……いやいやいや)

嬉しくなるも暫くすれば、なんと返信しようかと悩みに悩む。
こういう事態に慣れていない自分が恨めしくも思う。
今度、元部長辺りに相談しようかなと思いつつベッドに寝転び画面に文字を打ち込んでいく。
毎日毎日が、悩みと嬉しさと幸せと切なさの入り混じった生活だ。
それゆえに、京太郎は『遠距離恋愛って大変じゃないか』と聞かれた時、自信を持って微笑み言い切れた。

こんな感情/切なさをくれる彼女/姫子を愛しく思うと――。


「こんな感じです!」
「見たいな感じなんですけど……」

翌日、二人の元部長は二人から惚け話を聞いて思った。

『付き合って半年経ってこれって、ピュア過ぎじゃね?』と。

カンッ!

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最終更新:2017年10月12日 23:20