『てるぅ』

『照ちゃん』

『照』

『宮永先輩』

『照さん』

 彼は私の呼び方が成長と伴にころころ変わった。

「今は照か……」

 宮永先輩なんて他人行儀に呼ばれたときはショックだった。
 あんまりのことに彼に嫌われたのかと勘違いし、涙目になってしまったのはちょっと恥ずかしい思い出だ。

「私は一貫して京ちゃんなのにね」

 やっぱり恥ずかしかったのだろうか。
 想像は出来なくはないけれど、年頃の男の子気持ちはよく分からなかった。

「うーん、私が呼び方を変えるときはあるのかな?」

「私に聞かないでよお姉ちゃん、嫌味なの?」

 もしかしたら、京ちゃんにお義姉さんなんて呼ばれた未来もあったのかもしれない。

「最悪だ」

「ちょっと、何で私を睨みながらそう言うの? 妊婦だから情緒不安定なの?」

 恋人になっても変わらない。
 結婚してからも同じまま。

「子供が生まれたら京ちゃんは私をお母さんって呼ぶのかな?」

「夫婦の間で話しあって決めなよ!」

 彼はやっぱり呼び方をまた変えるのだろう。二人きりのときはともかくとしても、普段はお母さん、いつしかお婆ちゃんと変化するに違いない。
 だけど、私は変えたくない。
 ずっと、ずっと、最期まで私は京ちゃんを京ちゃんと呼び続ける。


カンッ!

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最終更新:2017年10月12日 23:18