―カフェ

純代「……」

京太郎「あのー、純代さん?」

純代「なに?」

京太郎「デート、楽しんでますか?」

純代「うん、楽しい」

京太郎「よかった、俺も楽しいです」

純代「……」

京太郎「それにしても、今日はいい天気ですねー」

純代「うん、いい天気」

京太郎「デートの日に天気が良くって本当によかったです」

純代「そうだね、気持ちいい」

京太郎「このあと、どっか行きたいところとかありますか?」

京太郎「カラオケとか、遊園地とか」

純代「うーん……」

京太郎「公園でのんびりするとか、いっそ遠出してみるとか」

純代「遠出ってなんかいいね」

京太郎「お! じゃあ遠出してみますか?」

純代「電車?」

京太郎「そうですね」

純代「それもいいかも。 のんびりしてて」

京太郎「俺"世界の車窓から"とかTVで結構見ますよ」

純代「渋い……」

純代「……でも、お金も時間もかかるから、それは夏休み入ってからとかにしよ」

京太郎「そうですね。 今日はどうしましょ」

純代「うち来る?」

京太郎「いいんですか?」

純代「うん」

京太郎「じゃあ、おじゃましちゃいますね」

純代「行こう」

京太郎「はーい」

………………
………

純代「はいどうぞ。 麦茶で悪いけど……」

京太郎「いやいや、俺麦茶好きですよ。 いただきます」

純代「どうぞ」

京太郎「いやー、喉乾いてたんで余計おいしいですね!」

純代「そうだね」

純代「……うちに誘ったはいいけど、なにしようか?」

京太郎「そうですねぇ。 まったり話でもしてましょうか?」

純代「う、うん。 私はそれでもいいけど、京太郎くんはいいの?」

京太郎「はえ?」

純代「退屈じゃない?」

京太郎「とんでもない! 純代さんと話してると落ち着きますし、癒されます」

純代「い、いや! 癒しだなんてそんなことは……」

京太郎「でも実際に俺はそう思いますよ」

純代「もう……、恥ずかしいから」

京太郎「あはは、すみません」

京太郎「あ、そうだ。 せっかくお話するなら麻雀やりながらなんてどうですか? 麻雀部らしく」

純代「そうしよっか」

京太郎「お手柔らかにお願いしますね」

純代「う、うん」

…………
……

京太郎「ぬあー、やっぱり強いですね。 さすがです」

純代「そ、そんなことない」

京太郎「俺が弱いだけ?」

純代「……否定はしないけど」

京太郎「えぇ~!? そんな~」

純代「ふふ」

京太郎「ははは、でも本当にお強いですよ?」

純代「まだまだだよ、団体戦でもチームに迷惑かけちゃったから……」

純代「もっと強くならないと」

京太郎「純代さんでも厳しいってホント化物揃いだなぁ」

純代「京太郎くんも来年は団体戦出られるかな?」

京太郎「うーん、清澄は風越と違って、もともと麻雀部員は少ないですからね」

京太郎「それでも女子は活躍したから女子部員は集まるかもしれないですけど、男子はどうでしょう」

純代(……女子部員か)

京太郎「まぁなんとかして人数集めようとは思ってるんですけど」

京太郎「っていってもその前に俺も強くならないと後輩に示しがつかないですよねー」

純代「大丈夫、京太郎くんはカッコイイし、優しいから、きっと後輩もついてきてくれるよ」

京太郎「え、えぇ~? そんなことないですよ」

純代「ううん、そんなことある」

純代(本当に、そうだよ……)

京太郎「……純代さん?」

京太郎「そんなこといったら純代さんだって、かわいいですし、優しいですよ?」

純代「……そんなことないよ」

京太郎「自分じゃわかんないもんですからね」



純代(あぁ、本当に京太郎くんは優しい……、でも、だからこそ……)

純代「……」

純代「ねぇ、京太郎くん」

京太郎「ん、なんですか?」




純代「もし、好きな人ができたら私なんかとはさっさと別れてもいいからね……?」


京太郎「え……?」




京太郎「ど、どうしてそんなこというんですか……?」


京太郎「俺なんかしちゃいましたか? 純代さんの機嫌を損ねるようなことを……」

純代「ち、違うよ。 そんなことはない」

京太郎「じゃあ……、なんでですか?」



純代「その……、わ、私って、デブで…、ブスだし…。 京太郎くんも、私と一緒に歩いてたら嫌だろうし……」

純代「さ、さっきも…言ったけどっ! 京、太郎くんは…!本当にかっこいいから……ッ!!」

純代(あ……、ダメ、涙が、言葉が上手く出ない……)

純代(幻滅されちゃう……!)

純代「……わ、私なんかよりもっ! 可愛い人とも……! な、仲良くなれる、だろうし!!」

純代「だ、だからっ! 京太郎くんにはっ、無理してほしく…ないから……!」

京太郎「お、俺は、無理だなんて……」

純代「私と…、一緒に歩いてて……!! 馬鹿に、されてたこともあった!!」

純代「『あんなブスといるなんて、あの男頭おかしいんじゃないか』って……ッ!」

純代「わ、私と一緒にいたら……! 京太郎くんの、め、迷惑になる!!」

京太郎「……」



純代「だからっ! 京太郎くんには、幸せになってほしいから……っ」

純代(情けない。 こんなにボロボロ涙を流して)


純代「他に好きな人がいるなら、できたなら……! 京太郎くんの邪魔になりたくないからっ!」

純代(あぁ、私、今京太郎くんを困らせてる)





純代(こんな私なんて)


純代「私のこ、こと、なんか……、忘れて……いいから……」

京太郎「純代さん……」







京太郎「……忘れませんよ」


――ぎゅっ


純代「え……?」


純代(だ、抱きつかれっ……!)






京太郎「心配しなくても俺は純代さんしか見えてませんよ?」

純代「で、でも……!」

京太郎「そりゃあ、綺麗だったり可愛い人は世の中いっぱいいますよ」

純代「……」

京太郎「でも、純代さん以上はいませんからね」

純代「……そんなことない」

京太郎「自分じゃわからないものですよ。 少なくとも……、俺はそう思ってます」

京太郎「それに、他の人がどう言おうと関係ないです」

京太郎「……俺は、俺だけは純代さんの本当の可愛さも綺麗さも知っているから」

京太郎「そんな悪口しか言えないような奴らなんかより、純代さんはよっぽど素敵な人です」

京太郎「だから、自分をそんなに卑下しないでください」

京太郎「自分では気付いてないだけで、十分魅力的な人なんですよ?」

純代「違うよ……」

純代「私は見た目も中身も醜いから」

純代「だから、こうやって京太郎くんを困らせてる」

純代「私、汚いんだ……」

京太郎「うーん……、困らせてる……か」

京太郎「でも、俺はそれでも嬉しいですけどね?」

純代「え?」

京太郎「だって、それだけ俺のことを考えてくれたりしてくれてるってことじゃないですか」

京太郎「そもそも困ってもいませんし」

純代「……」

京太郎「それに、人間ですから、色々と悩みやら不安やらあります」

京太郎「包み隠さず言ってくれてよかったです。 俺も純代さんを支えられますから」

京太郎「嬉しいですよ。 本当に」





純代(あぁ……、私が空回りしてたんだ……)

純代「きょ、京太郎くん……」

純代「私、京太郎くんの、彼女でいいの……?」

京太郎「もちろんですよ?」

京太郎「だって、別れたいだとか、そんなこと思ったこともないですし!」

純代「ほ、本当に…、本当に……嬉しいっ!!」

純代「う…、うわあああん!!!」

………………
………


純代「いっぱい泣いちゃった……。 勝手に空回りして……、ごめんね」

京太郎「あはは、いいんですよ。 こういうのも恋人っぽくていいじゃないですか」

純代「ふふ」

京太郎「今度からは、悩みがあったらどんどん相談してくださいね?」

京太郎「それも彼氏の役目ですから!」

純代「うん……。 京太郎くんもね?」

京太郎「はい! その時はお願いしますね」

京太郎「それじゃ、そろそろおいとましますね」

純代「うん、気をつけて……」

京太郎「はい! それじゃあ、メールしますねー!」

純代「う、うん!」


純代(敵わないなぁ……)

純代(本当に素敵な人。 私にはもったいないくらい)

純代(私も、京太郎くんに釣り合うくらいに……なりたいな……)





………………………

………………

………



―それから、少しばかりの時間が経ち



………

………………

………………………





池田「あのさー、純代ー!」

純代「なに?」

池田「純代……、綺麗になったよな!」

吉留「ちょ、ちょっと華菜ちゃん! その言い方は酷いよー!」

池田「おぉっと、失敬失敬……。 ごめんな、純代ー」

純代「ううん、大丈夫、気にしてないよ」

純代「それより、私、本当に綺麗になれた?」

池田「いや、ほんとほんと。 華菜ちゃん嘘つかないし」

吉留「うん。 本当に綺麗だなって思う」

吉留「スタイルもいいし、それに明るくなったよね!」

純代「そ、そうかな。 ……頑張った甲斐があった」

池田「おー、このこのぉ、妬けるねぇ」

純代「え? え? な、なに?」

池田「とぼけちゃって~。 そんなに綺麗になったら彼氏も大喜びなんじゃないの?」

吉留「あはは、羨ましいよ~」

純代「うーん……、あんまり変わらないかな?」

池田「なんとぉ!? 彼氏は感情のないロボットか!?」

吉留「か、華菜ちゃん……」



純代「ふふ、だって……」




今も昔もずっと、『綺麗だ』って言ってくれるから……






………………
………


池田「もうノロケはお腹いっぱいだー」

吉留「あはは、でも、純代ちゃんの話を聞いてると彼氏が欲しくなるね」

吉留「……、純代ちゃん、本当に綺麗になった」

池田「うん、男ができるとあんな変わるもんだなぁ」


池田「はふぅ……、私達にも素敵な彼氏できるかね」

吉留「ほしいねぇ」




久保「……私も欲しい」




終わり




おまけ
清澄サイドの様子


染谷「まさか、あいつが彼女とはのぅ……。 こりゃ大穴じゃったわ」

竹井「そうね。 ホントまさかだったわ」

宮永「うー、京ちゃんったら、私になにも相談無しに彼女作っちゃうんだから」

原村「馴れ初めが知りたいですね」

片岡「まったく、犬は見境がなくて困るじぇ」

宮永「なんかある日を堺に原村さんにデレデレしなくなったもんね」

原村「デ、デレデレって!」

片岡「あぁ、咲ちゃんもやっぱり気付いてたのか」

宮永「それにしても京ちゃん全然好きな人ができたとか、付き合ったとか教えてくれないんだから」

染谷「そら咲は異性じゃき、言いにくかろー」

竹井「そうね。 いくら幼馴染でも……ね」

宮永「ぶー、京ちゃんのばか」

原村「須賀くんが深堀さんとお付き合いを始めた、そのことも驚きでしたけど……」

片岡「そうだじぇ! 一番驚いたのが!」

染谷「まさかあの」

竹井「深堀さんが」

宮永「すっごい美人になってたんだよね……」

原村「変わるものですね」

片岡「のどちゃん並のおっぱい持ちでスタイル抜群、こりゃ敵わんじぇ……」

原村「ゆ、ゆーき! ……もうっ!」

宮永「うぅ、京ちゃんと付き合えて、スタイル抜群なんて深堀さんが羨ましいよ~」

竹井「はぁ~、そうよねぇ……」

染谷「はぁ~、そうじゃのぅ……」

原村「はぁ~、そうですね……」

片岡「はぁ~、まったく京太郎め……」

竹井「……ん?」

染谷「……お?」

宮永「え、なんでみんな……?」

原村「……まさか、みなさん」

片岡「まじか」


京太郎「おーっす!遅れまし……って何この殺伐とした空気」


終わり