俺の彼女は甘えん坊だ。

部屋の中、何をするでもなくのんびりしてると、急に腕を取ってきた。
口で「ぎゅ~っ!」なんて言いながら、その通りぎゅ~っ!と抱き付いてくる。
しばらくそのままにしておいたら、「ぎゅぎゅ~っ!」と言ってもっと締め付けてきた。
腕に豊満な脂肪の塊が押し付けられて、色々とたまらない。

それでもなんでもない風を装っていると、痺れを切らした彼女が顔を覗き込んできた。
思いっきり構って光線を目から出している。
目から光線を出せるのは漫画やアニメの登場人物だけだと思ってたけど、俺の彼女も出せるらしい。

構いたくなるけど、ここまで来たらそのまま構うのもなんだか負けた気がするので、
ちょっと意地悪をしたくなって無視してみた。

すると彼女は頬を膨らませる。可愛い。

「なんか言って欲しいっす」

「なんか」

「そうじゃなくって~……もっとこう、ドキドキするとか。 幸せだな~とか」

「幸せで、ドキドキもするけどムラムラもするかな」

「……エッチ」

素直な感想を告げると、彼女がぽかぽか叩いてきた。
全然痛くないし、むしろ可愛い。

「……付き合いたての頃みたいにもっとリアクション欲しいっす」

「マンネリ?」

「あの頃は京さんも手を繋ぐだけで真っ赤になってたし、腕を組んだら前かがみになってたっす」

俺の記憶が正しければ、少なくとも真っ赤になってたのは俺だけじゃなかった筈だ。
スキンシップが大好きな癖に、スキンシップに慣れてなくて。
それでも頑張って手を握ったり腕を組んで来たりする彼女が、なんだかとても愛おしかった。
勿論、今も彼女は真っ赤になってる。
とても愛おしかったじゃなく、愛おしいに訂正しないといけない。

コロンッ

なんて事を考えていると、胡坐をかいている俺の脚の上に頭をのせてきた。
なんというか、色々とまずい。態勢的に。
さっき言ったように幸せでドキドキして、ムラムラもするというのは事実だ。

「あ」

「ん?」

「赤くなったっす」

俺の足の上で俺を見上げる彼女は、嬉しそうにそう言った。
言われてみると、確かに頬が熱い気がする。
なんだか恥ずかしくて顔を反らすと、足元からくすりと笑う声が聞こえた。

「可愛い」

「嬉しくない」

「私は嬉しいっすよ?」

その声は本当に嬉しそうで、反らした顔を元に戻して彼女を見る。
やっぱり、声の通り、彼女は嬉しそうに……幸せそうに微笑んでいる。

「京さんが私の事を好きっていうのはわかってる。
 私が凄く京さんを想ってるっていうのも、伝わってると思う。
 でも……たまーに。 本当にたまーに不安になるっす」

俺の頬に手を伸ばし、撫でながら、彼女は言う。

「こうやって触れている時は、お互いにお互いを理解しあえる。
 私が声をかければ、京さんは私を見つけてくれる。
 でも、それもできなくなったらどうしよう。
 触れても、声をかけても、京さんが私を感じる事が出来なくなったらどうしようって」

「…………」

「だからこうして触れ合えて、目と目を合わせてられる時間が好き。
 赤くなって、私を感じてくれてるってわかる京さんを見るのが好き。
 京さんは私を見て、感じて、反応してくれてるって……そう実感できるから」

「俺がモモを感じられなくなるなんて、ありえないよ」

「そうっすか?」

「毎日モモの事を考えて、モモを見て、モモと話して……もうモモがいないと1日過ごせないレベルだし。
 っていうか、もしもモモが目の前から消えたら、気が狂うかもしれない。
 それくらい、モモの事が好きだから」

もしもそんな事になったら世界中を探してでも彼女を見つけようとするだろう。
彼女はさっき俺が彼女の事を好きだってわかってると言ったが、多分、俺がどれだけ愛してるかはわかってくれてない。
それを言うと、彼女はやっぱり嬉しそうに笑う。

「久しぶりに聞けたっす。京さんの口から、好きって」

「……そうだっけ?」

「そうっすよ。 告白の時と、付き合いたての頃と、あとはその……初めての時とか」

「あー……」

「それくらいしか言ってくれなかったから。 結構、寂しかったんすよ?
 私は毎日毎日まーいにち言ってるのに」

「ごめん、キスとかだけで伝わってると思ったから」

言われてみると、確かに口にして言った記憶がここ最近は少ない。
口にしなくても行動で――それこそスキンシップで十分伝わっていると思ったから。
でも、それが彼女を不安にさせていたらしく、素直に謝る。

「これからはもっと言って欲しいっす」

「努力するよ」

「1日最低でも好きを10回」

「はい」

「愛してるもっすよ?」

「はいはい」

ノルマがちょっと厳しいような気もするけど、聞いておこう。
思ってる事をそのまま口にすればいいだけだ、苦にはならない。
彼女の要求を聞くと、彼女はとても満足したようにニッコリと笑い。

「好きっすよ、京さん」

「俺も」

「……じゃなくって?」

「……俺も好きだよ、モモ」

「えへへ」

俺の返答に満足いった様子の彼女は、そのまま体を起こした。

「好きっす……ん」

少し体を伸ばして、俺の頭……髪の毛へと唇を重ねる。

「好きだよ」

彼女の肩を掴んで、俺も彼女の髪の毛へ。

「好きっす……」

「うん……」

額。

「好き……」

「知ってる」

瞼。

「…………」

「モモ?」

頬。

「やっぱり……んっ」

「どうかした?」

首。

「言うだけじゃ……足りないっす」

「うん?」

胸。

「キスも10回」

「…………」

「駄目っすか?」

「10回で足りる?」

「いじわ……んっ!」

唇には俺からした。

やっぱり俺の彼女は甘えん坊で、寂しがりやで、スキンシップが大好きで……とても可愛い。


カンッ!