人生は後悔の連続だと言ったのは誰だっただろうか。

「はぁ、結婚したい」

「はいはい、どうせ本当はする気もないくせにそんなこと口にするんじゃないわよ。別に妥協すればあんたなら直ぐにでも相手は見つかるでしょうが」

 相方の吐く毒が地味に響く。
 それが的外れなら芯に届くことはないのだろうけれど、真実なのだから心を穿たれてしまう。

「憧ちゃんは厳しいな」

「ふん、お酒を飲む度に毎回同じことを口にされたら、誰からも優しさは消えるから」

 尤もな言葉に私は苦笑する。
 誤魔化すようにグラスを傾けてアルコールに酔いしれる。

「どこで間違えたのかな?」

「さあ、私には分からないわよ。咲は男以外の面では人生に成功しているって言っても過言じゃないし」

 ボタンを掛け違えたのは、道を踏み外したのは、因果の根はどこにあるのだろう。
 魔王。
 嶺上使い。
 幾つの異名があるのか数えるのも億劫になる。あのグランドマスターを破り、国内最強の名を、世界ランキング一位の座をも手に入れた。

「はは、私は端から見れば幸せ者かな?」

「富と名声、恵まれていないとは言えないわね」

 数多の人々を魅了する麻雀。
 その頂点に至れた才能、世界の遍く人に知れ渡った名前、高く積まれた財貨の山。しかし、本当に欲しかったものはこの手からすり抜けた。

「全部あげたら、譲ってもらえないかな」

「咲……」

 あの日、彼に誘われて清澄の麻雀部へと訪れなければ、今も京ちゃんは私の隣に居てくれたのではないだろうか。そんなもしもを考えてしまう。

 久先輩の夢は叶わない。
 和ちゃんは転校し、優希ちゃんは悲しんだだろう。
 そもそも私が彼女たちと関わり合うこともなく、そんなことがあっても知らずにすんだに違いない。
 そしてお姉ちゃんとの仲は修復されることもなく、あまつさえプロ雀士になることなどない。
 有名になることもなく、お金持ちにもならず、友人だって殆んどいなく、日々の仕事に追われる日常。
 だけど、取り柄もなくダメな私の隣には彼がいてくれる。

『咲はしょうがねえな』

 そう言ってどこか呆れた苦笑いを浮かべながらも、私を支えてくれる最愛の人と過ごす穏やかな日常。
 それはとても甘美な夢想で、欲して止まない理想。

「京ちゃん……」

 アラサーの私は後悔している。
 麻雀に関わり、あの夏のインターハイに彼を連れて行ってしまった愚かな行いを悔やんでも悔やみきれない。
 京ちゃんがあの女に遭遇してしまった切っ掛けを作った原因は私自身の選択に起因していると言えるのだから。
 そうしていなければ別の悔恨を抱くことになっていたとしても、そう思わずにはいられない。

「京ちゃん、好きだよ……」

カンッ!