「んー、何かクリスマスっぽい番組やってねーかな」
「……クリスマス番組?」

時間は、夜遅く。
夕飯も食べ終え、お風呂も入り、眠る時間。
クリスマス・イブも過ぎ、クリスマス本番。
そんな時間に京太郎はリビングに居た。

今までなら普通に寝ている時間帯。
しかし、今日は違う、今年は違った。

「なぁなぁ、何か映画見ようぜぃ?」
「はいはい、コメディ系がいいですよね?」
「おうっ、ラブコメとか見てもなー」

先ほどまで、クリスマスっぽい番組を探していたくせにこれだ。
相変わらずの自由気ままな彼女――咏に京太郎は苦笑する。

「これとかどうです?」
「サタンクロース?」
「面白いですよ」

何の因果か、京太郎は麻雀の師匠として咏と付き合い始めた。
相手はプロの麻雀士、自分の運の良さに喜んでいたのは数ヶ月前のこと。
今は思っていた以上に子供っぽい感覚の彼女に手を焼かれっぱなしだ。

「うはは、何だこれ。面白いな!!」

それでも師匠として、凡庸な自分を見捨てず、しっかりと教えてくれる咏が京太郎は好きである。
一緒のソファーに座り、映画を見て笑う咏。
そんな彼女の横顔を見れば、それだけで楽しくなった。

「そういえば……」
「あっははは――うん?」

一緒に笑い、見ていた京太郎であったが、少しばかり気になることがあり口を開く。

「俺とクリスマスを過ごしてますけど、良かったんですか?」
「むー、なんだよ。私と一緒に過ごすのが不満か?」

聞いて見れば、咏はつまらなそうに唇を尖らせた。

「そうではなくて……ほら、小鍛治さんとかとならお酒も飲めるし」
「あー……それはやだな」

大人なのだ、付き合いなどもあるだろう。
子供の自分を相手にするよりも、お酒を一緒に飲める大人の方がいいのではと思ったのだ。
しかし、そんな答えに咏は、心底嫌そうな表情をした。

「お酒飲める面子だと、健夜さん、はやりさんに理沙さんだ」
「そうですね」
「その面子だと私が一番若いわけで……他の人の世話しなくちゃいけなくなるんだよ」

そう言って、お酒も楽しめないと拗ねて京太郎の膝に頭を乗せ甘える。
そんな咏に京太郎は目が点となるほどに驚いた。
自由気ままな咏にも気を使うことがあるのだと。

「私だって社会人だぜぃ? そのぐらいするさ」
「なるほど」
「まぁ……お酒は好きだし、飲みたいけどなぁー」
「飲まないので?」
「いやー……そのな」

折角の祝い事なので飲めばいいと言ってみれば、咏は歯切れ悪い。
何故、ここまで遠慮しているのか京太郎には不思議でたまらなかった。
いつも、家に来た時に飲んでるくせにと。

「今日は……特別な日だろ?」
「まぁ……そうですね。クリスマスですし、てか既に今日ですけど」
「そんな日まで、面倒掛けるのもなと……ふぎゃ!?」

その言葉に京太郎は立ち上がる。
勿論、膝の上に頭を乗せていた咏は、そのままソファーに落下する羽目となった。
痛くはないが、急に起き上がられたせいで驚き、咏は立ち上がった京太郎をじと目で威嚇する。

「むーっ、何だよ。急に」
「……お酒用意しますね」
「あぁー? 別にいいって、飲むと潰れるまで飲むし、何時ものように明日一日中面倒みさせることになんぜ?」

席を立ち、京太郎は台所へと歩いていく。
そんな彼を見て咏は、眉を顰め忠告する。
京太郎は、性格の良さもあり友達が多い。
既に今日になっているが、クリスマスだって何かしら友達と遊ぶだろうと思っての忠告だ。
だからこそ、自分に使うなと言っているのだが……。

「今日は咏さんと過ごすつもりでしたし……それに」
「それに?」
「……できれば面倒を見ていたいです。今日も……これからもずっと」
「……」

お酒を持ってきた京太郎は、それだけ言うと自分用のジュースを口にして映画へと集中し始める。
しかし、暗がりで照らされる京太郎の耳はサンタクロースの服のように真っ赤に染まっていた。

「くっくっく……これからもねぃ?」
「……」
「なるほど、なるほど……ならしゃーねなぁ。夜の大人の過ごし方を教えてやんぜぃ」
「っ――」

ごろんと転がり、先ほどのように膝の上に頭を乗せ咏は言う。
咏が笑えば、京太郎の顔は更に真っ赤に染まった。
そんな京太郎の頬に手を伸ばし撫でると、咏は幸せそうに目を細め微笑んだ。

カンッ!