京ちゃん、と妹の真似をして呼んでみた。
すると彼は、目を丸くして、それからおかしそうに笑った。

「どうしたんですか、いきなり」

いきなり、というわけでもない。
それに、これは実験みたいなものだ。

「実験、ですか」

そう。どういう風に呼べば、一番しっくりくるのか、知りたかった。
しかし中々どうして、京ちゃん呼びはしっくりきた。流石は私の妹。
鼻歌を口ずさむように、繰り返しそらんじてみる。

「そんなに呼ばれると、恥ずかしくなってくるんですが……」

照れ臭そうに、彼は頬を掻く。その仕草がちょっと可愛らしい。
だが、慣れて貰わなくては困る。

「どうしてですか……って、ああ、そうか」

訊ねようとして、その途中で彼は気付く。遅いくらいだ。
もう一度、京ちゃんと呼んでみる。やはり慣れないのか、彼は困ったように俯いた。
嗜虐心に火が点いた私は、さらにその愛称を口にしようとし、

「そろそろ止めて下さい、宮永せんぱ――……照」

できなかった。頭が沸騰するほど熱くなり、固まってしまう。
こんなにも動揺するのは、久しぶりだった。
……これは、私も早く慣れなければいけない。

明日、私たちは名字で呼び合うには、不便な関係になるのだから。

カンッ