県大会、決勝。

京太郎「負けちまったなあ……」

昨日の出来事の筈なのに、随分と遠い日の様に思える。

京太郎「はぁ……」

たられば、を言い出したらきりがないが、それでも。

京太郎「勝てた試合だった、よな」

普段を犯さないような痛恨の失態。それがずるずると後を引き、ほんの僅かな差で敗れた。
周りは皆、気にするな。お前のおかげでここまで来れた、と言ってくれた。

だったら。

京太郎「……もっと先まで見せたかった」

自責の念がじくじくと内腑を蝕む。
鬱屈とした不快感が段々と溢れだしそうになった時。

「京太郎?いるんでしょ?入るよー」

部屋の外から聞きなれた幼馴染の声が聞こえた

京太郎「ああ、大丈夫だよ。塞ちゃん」

塞「取り敢えず、お疲れ様」

京太郎「あー、うん。ありがとう」

塞「惜しかったね、もう少しだった」

京太郎「……そうでもないよ」

塞「そっか。京太郎がそう言うなら、そうなんだろうね」

塞ちゃんはいつもこうだ。
普段は皆より外で見守ってくれていて。
いざってときに一番近くに来てくれる。

京太郎「ずるいよなあ」

さっきまでの憂鬱が晴れていくような気がした。

塞「何が?」

京太郎「何でもない。それより、用事があるんでしょ?」

塞「あ、そうそう。あのね、ちょっと聞きたいんだけど」

京太郎「うん?」

塞「高校ってどこ行くか決めた?」

京太郎「あー……」

塞「宮守来てくれれば、シロも胡桃も喜ぶんだけどさ。勿論、私も」

京太郎「……実は、東京の学校からスカウトされてさ」

塞「東京?」

京太郎「白糸台って言ったかな?監督が、わざわざ見に来てくれて」

塞「……行くの?」

京太郎「悩んでる」

京太郎「やっぱり、塞ちゃん達と同じとこ行きたい気持ちもあるから」

塞「そっか」

そう呟くと、塞ちゃんは目を閉じた。

塞「うーん……」

京太郎「塞ちゃん?」

塞「多分ね、多分なんだけど」

塞「行った方がいいと思う」

塞「宮守ってハンド部無いしさ、せっかくスカウトしてくれたんだから」

京太郎「うん」

塞「って、シロと胡桃なら言うと思うんだ」

京太郎「胡桃姉ちゃんはともかく、シロは言うかな……?」

塞「ああ見えて意外としっかりしてるんだよ。京太郎相手だから、甘えてるんだと思うけど」

京太郎「そういうもんなの?」

塞「うん、きっとそう」

京太郎「塞ちゃんは?」

塞「え?」

京太郎「塞ちゃんはどう思ってるの?」

塞「私は……」