「おかえり京ちゃん」「おかえりなさい須賀君」「遅いぞ京太郎! タコスはまだか!」
「おう、お疲れ京太郎」「はいはい、ご苦労様須賀君」

「ただいまです。……あ゛~、やっと帰ってきた実感が」

「ふぅん? なかなか嬉しいこと言ってくれるじゃn」
                            trrr... trrr「あ、すみません先輩。電話出てきます」ガチャッ

「もう、慌ただしいなぁ京ちゃん」
「先輩をほったらかして……ちらっと見えた相手はキヌエさんってなってたけど」
「キヌエ……愛宕絹恵さんでしょうか? 姫松高校副将の」
「あー! のどちゃんと準決でトリプルおっぱいウォールを作ってたあいつか? あれは臨海が可哀想だったじぇ」
「竹井先輩の計らいで須賀君が全国武者修行をできているのはいいことなんですけど……」
「京太郎は人当たりがええからの。男慣れしとらん娘にはちと刺激が強かったんじゃろ」


~???~

「ええ、はい。その節はほんとにご迷惑を……。あ、そうですか? ははっ、そう言っていただけるとありがたいです。
 今度ですか? えーっと……あ、はい、その日なら大丈夫です。でもそっちから長野までだと交通費が結構かかるんじゃ――」

 ベッドに寝転がり、手帳をめくりながら楽しそうに電話している彼。
 忍び込んだ私に気付いても居ない。……電話の向こうのカノジョにかまけて。私というものがありながら。
 注意していても拳を握りしめる腕の力は骨を軋ませることを止めようとしない。ミシリという音でも出ていないか心配になる。
 いいや。今ならば多少の物音では彼はこちらを見向きもしないのではないだろうか。
 そう思ったら、胸が締め付けられて息が詰まった。苦しい。掻きむしっても気休めにすらならないほどに、苦しい。
 恋は甘やかと歌う人もいるけれど。この想いが恋だというなら甘やかさとは程遠い。
 焼け付くようにひりつき、凍えるように痛み、突かれるように痺れる。
 ああ、この苦しさはどうすれば収まるのか。いっそ一思いに……。駄目だ。私だけが満足するようなことでは。
 おもむろに身に着けた布を放り出す私。衣擦れの音が立っているだろうにやはり気付かない彼。
 いや、私の想いが視線に乗っていたのだろう。彼がついに、こちらに目を向けた。その表情が驚愕に歪む。
 そんな表情ですら今の私には愛しくて心地よくてたまらない。もっと、もっとあなたを見せてほしい。そう願う。

「え!? あ、いや、ごめんちょっとな。悪いけどまた後で――うぐっ!」

「須賀君  須賀 きょーたろ 京君 京ちん 須賀京太郎
  京太郎君 京太郎 京ちゃん キョータロー きょーちゃん

        大好きですよ  好き  好きです  あなたが欲しい あなた以外いらない
      愛してます     好きだよ  あなたに夢中よ  好きなの  愛してるわ


     愛し合う二人の睦み合いを  お邪魔虫にも聞かせてあげましょう?      」


 いつ電話が切れたのか、誰も知らない。


カンッ