『--京太郎、タコス食べたいから一緒に行こうじぇ!』

『--京ちゃん、今日は新刊の発売日なんだよ。多分、大丈夫だと思うけど迷子になると困るからついてきて』

『--京太郎、執事服着てバイトせんか? メイド服は男衆には受けるんじゃが、女衆にはあんまり受けてないようでな、テコ入れしたいんじゃが』

『--須賀くん、これ買い出しよろしくね♪』

 清澄麻雀部に所属する唯一の男性。
 部長に先輩、以前から彼の友人である咲さんはともかくとして、親友である優希の心まで拐っていった。
 悪い人ではないことを知っています。むしろ、良い人であることを理解しています。

「私は須賀くんのことが……」

 奥歯を噛み締めずにはいられない。
 彼に向かう矢印に射ぬかれてしまえば良かったのに、どうしてなんですか。何故--

「好きじゃありません」

「そっか、ごめん時間取らせちまって……」

 --私を好きだなんて言うのですか。
 そんなに悲しそうな顔で、泣き出しそうになりながら堪えて、やめて下さい。

「須賀くん」

 ああ、呼び止められただけで嬉しそうな顔をするなんて本当に--

「一つ、契約をしませんか?」

「契約?」

 困惑し、訝しむ顔も--

「ええ、私の提示する条件を呑むならご褒美をあげますよ」

 ゾクゾクします。
 その端整な顔を歪ませ、懇願させ、服従させたくなる。告白なんかされなければ我慢できたのに、もう堪らないじゃないですか。

「ふふ、私の犬になりませんか?」

「犬?」

 優希が好きな人だったから我慢して、我慢して、ずっと押さえ込んでいたのに、悪いのはあなたなんですよ。

「ええ、ペットです。愛玩動物、たっぷりと可愛がってあげますから、どうでしょうか?」

「……俺は」

 ああ、迷っていますね。
 人としての矜持、男としての信念、天秤に乗る私への好意、不安と少しばかりの期待に揺れている。

「さあ、どうぞ選んでください」

「っ!」

 彼に向けて素足を差し出す。
 私の足に目を惹かれ、彼の迷いが色濃くなる。

「分かりませんか? まあ、初めてでしょうから教えてあげますね。綺麗に舐めあげなさい!」

 迷いながらも、須賀くんが私の前に膝まづき足に触れた。ゆっくりと顔を近づけていきます。
 ああ、以前から思っていたんですよ須賀くんは最高の犬になれる逸材なのではないかとね。

「どうしたんですか? 嫌なんですか? ふふ、本当は違うでしょう? 私の足を舐められるんですから嬉しいんじゃありませんか?」

「和、俺は……」

「舐めて綺麗にしなさい、大丈夫、私はペットは大切にしますから怖がらなくて良いんですよ」

 躊躇していた彼がゆっくりと顔を接近させ、真っ赤な舌を伸ばしてペロリと舐めた。
 最高です。
 興奮します。
 湿った生暖かいねっとりとしたものが足の甲を前後する。足先へと伸び、爪を、指の間をペロペロと這いずっている。

「良い子ですね。須賀くん」

 毎日お風呂に入り綺麗にしていても、足は直ぐに汚れてしまう。靴下に靴、足の裏は人体でも汗腺が多い場所ですから、そこを覆っていると言うことは蒸れやすく臭いも籠りやすい。
 あは、私の臭い足を須賀くんが舐めている。
 美味しそうに、味わうように、どこか薄暗い興奮を感じながら舌を動かしている。

「ふふ、綺麗になりましたね。こちらも舐めたいですか?」

 そう言って見せびらかすようにもう一方の足を示す。
 須賀くんの喉がごくりと動いた。

「どうしたいんでしょうか? 口に出して言ってください」

 誉めることは大切です。
 しかし、それだけではよろしくなく、躾には鞭も必要なんですよね。
 命じられたからすると言う逃げ道を断ち、自らの意思で行ったのだと認識させる。それに喜びを感じていることを認めさせる。
 今日はそこまで進めば十分ですね。

「ぅぅっ……」

 さあ、プライドを捨てて下さい。

「和、したいですぅ」

「何をしたいんでしょうか?」

「和のを舐めたいですぅ……」

「はっきりと具体的に言ってくれないと分かりませんね」

「くっ……俺は、和の足を、舌で舐めたいんです、舐めさせて下さいッ!」

「ふふ、よく言えましたね。存分に堪能してください」

 足を前へと伸ばせば、須賀くんが丁寧に靴を脱がせ、甲斐甲斐しく靴下を剥ぎ、呼吸を荒気ながら、そして丹念に舌を動かし出す。
 あなたは最高ですよ、須賀くん。
 きっとあなたならいつか父を、母の忠実な犬である父をも超えられるに違いありません。

「はぁ、はぁ」

「そんなに鼻息を荒くして興奮しているんですか?」

「してるよ、和ぁ」

「ふふ、頑張りましたね。今日はもう時間も遅いですし帰りましょうか」

「あ、ああぁ」

「そうだ、ご褒美を忘れていましたね」

 ご褒美と言う言葉に彼は驚いた顔をしていました。ある意味、私の足をペロペロ出来た時点で彼にとっては十分な褒賞になっていたのかもしれません。

「さあ、帰りますよ、京太郎くん」

「の、和!?」

 単に名前を呼ばれただけなのに実に嬉しそうですね。パタパタと動く尻尾や耳が見えてしまいそうです。

「ふふ、一応確認させて貰いますけど、私の犬になりますか、京太郎くん?」

「ああ、なるよ」

 さあ、これから少しずつ躾ていきませんとね。言葉遣いも気遣いもまだまだですから。


カンッ!