キュッキュッと牌を磨く音が響く。
二年前とは人数が変わり部室を交換しなくてはならなくなっても卓は二年前の物と変わらない。

「っと、これくらいで大丈夫か。お前とも長い付き合いだったよなぁ」

中学の頃こそハンドボール部で県大会決勝までいったが、高校入学の時にはもう自分の中で完全燃焼。
何か面白いことでもないかな~と思いながら旧校舎を探索しているとカラカラ…という音が聞こえてきたので気になり向かってみた先こそ高校三年間の青春を共に過ごすこととなる麻雀との出会いだった。

「インハイ個人ベスト16、団体戦でも全国に出る事ができた…こうして上手くなれたのも咲やお前達のおかげだな」

入ってインターハイまではまだ自分は初心者という事もあり雑用などの裏仕事などにまわっていたが団体戦優勝、個人でも咲が四位、和が十三位と好成績で終わりひと段落ついたと思ったら地獄の特訓が始まった。もちろん何度も打ったのはこの卓だ。
休憩なんて物は殆ど無くひたすらに打ちまくる毎日、特に部長…久先輩と和は初心者の俺に雑用などを多くさせていた事に負い目を感じたのか下校時刻ギリギリまで毎日練習に付き合って教えてくれた。
まこ先輩は実力がそこそこついてきた時にバイトとして雇ってくれて色々な人と打たせる機会をくれた事が本当にありがたい、roofーtopの常連さん達はみんな俺の師匠だ。
咲と優希は…練習の時は何度も飛ばしてくるし教えについてもよくわからない事が多かったがそれでも必死で俺に教えてくれようとしてくれた、インターハイ出れた時も準決勝で負けた時も一番喜んで泣いてくれたしな。

「みんなに支えられて、こうしてここまで来れたんだ。本当に感謝しかないよ」

二年生になり、女子は新しく五人ほど来てくれたが男子はギリギリまで来なくて無理だろうななんて思ったら、仮入部期間の最後の日に来てくれた二人の後輩。
この時は来てくれるなんて思ってなかったから無茶苦茶嬉しかった。
この年のインターハイでは俺は決勝で、二人は二次、三次で負けてしまったけれど女子と別れてから三人で泣いた思い出は忘れる事は無いだろう。

「三年では念願のインターハイ、しかも個人団体どっちも出れるなんて夢にも思わなかったよ」

三年生になり和が部長、俺が副部長になった麻雀部では新しく後輩が男子二人、女子はなんと十四人も入ってくれた。
新しい後輩の内の一人が決勝の俺の姿を見て入ってくれたなんて言ってくれてスッゲェ照れ臭くなったりなんてこともあったっけ。
五人集まった事で団体戦に出れるようになった俺たちはギリギリの勝負をしながらもなんとか勝ち上がり、決勝で俺が嶺上開花の上がりを決めたところで優勝する事ができた。あの時はテレビに映ってることなんて忘れて大泣きしちまったよ。
控え室に戻ってみると前日に優勝していた女子も、ここまで泥臭くどんな時でも諦めずに戦ってきた仲間達もみんな泣いていてもう枯れていたはずの涙がどんどん溢れてきた。
なんだか咲の目線がいつもと違ってた感じがしたのは気のせいかな?
インターハイでは団体戦こそ一回戦で福本高校に僅差で負けてしまったけれど後悔なんてなかった。
個人では今まで出る事ができなかった分自分の全部を出し切って挑み、あの福本のエースに直撃を食らわせる事だってできた。まあその後にその倍の点数を払わされたけどな。

「お前と一緒に上手くなっていった三年間は、苦しくて辛いものだったけど決して嫌なものじゃなかったよな」

初めて牌を持った時も、初めて上がった時も、女子達に連続十回飛ばされた時も、合宿で暑い中必死で旅館まで運んだ時も

「諦めそうにもなったし、何度も挫折した」

インターハイが終わってみんなが打ってくれているのにいっこうに勝てるようにならない時も、結局は才能と運なんだって諦めかけてふてくされて部活に行かなくなって和と部長に泣かれて自分が負けて悔しかったことに気づいた時も、

「自分が麻雀好きなんだってわかって、もがきながらも上手くなろうとしたんだ」

なんど飛ばされたって必死で乗り越えてやろうと挑んだ時も、まこ先輩がどんな風にオカルト持ちと戦えばいいか教えてくれた時も、

「もう諦めないって、負けないって必死になったんだ」

少なかったけど確かにみんなに勝てるようになっていった時も、初めて二連勝できた時も、優希が悔しそうにしながらも喜んで俺にタコスくれた時も、

「乗り越えられない壁なんて無いんだって、努力はきっと報われるんだって、お前と一緒に戦ったんだ」

卒業した久先輩やまこ先輩が大会前に俺たちの練習相手になってくれた時も、和と優希が後輩や遊びに来ていた先輩とチーム高遠原として俺たち男子に勝負を挑んできたときも…
そして、今日の卒業前の最後の勝負で、トップの咲から直撃をとりまくって俺がトップになれた時も

「俺に、俺たちに最高の三年間をありがとうございました!」

そう言って頭を下げた京太郎は、誰もいなくなった部室から出る。

カラカラ…

「っ!」

部室をでて、扉を閉めると同時になる音がなった。