「――俺、麻雀部辞めるわ」

 そう金髪の少年が告げたのは高校二年生になったばかりの4月上旬。
 清澄高校麻雀部がその20XX年度最初の活動日を終えた、
 インハイ優勝前からの生え抜き2年部員だけで行った軽い打ち上げの席でのことだ。

「え?」「なっ、いきなり何言い出すんだ京太郎! ご主人様の許可なく辞めるだとぅ!?」
「理由を教えてもらってもいい、京ちゃん?」

 3人の少女が呆然と、あるいは怒りをあらわに、あるいは訝しげに問う。

「あー、大した理由じゃねーよ。実は去年からずっと運動部に誘われてたんだ。
 今日の体験会、何十人も来たけど……ものになりそうなのは女子2,3人ってとこか。
 でもそれだけいれば団体登録は十分できるし、何より雑用も分担できるだろ?」

 炭酸砂糖水をちびりとやりながら、少年は淡々と説明する。
 それを聞き、シャワーを浴びても直らない癖っ毛をもつ濃茶髪の少女は諦めたような納得したような色を目に浮かべる。
 だが当然、納得しないものもいた。

「――ふざけ」
「ふざけないでください! まるで、じぶ、自分が要らないみたいな言い方っ!!」

 突然の噴火に呆気にとられる他3人。それを見て、桃色の髪の少女はさらに怒りを募らせた。

「なんですかその顔! 私がこんなことを言うのがおかしいって言うんですか!?」
「のどちゃん、落ち着け。私も納得はしてないが今ののどちゃんはちょっと変だじぇ」
「変なものですか!」
「確かにびっくりしたけど、そんな怒らなくても」
「咲さんまで!」

 常ならぬ、可憐な唇を真一文字に結び鼻息を荒くする少女。
 二人の少女が宥めにかかるもまるで逆効果であった。
 いったい何が豊満な少女をここまで怒りに燃え上がらせたのか。

「和、怒ってくれるのは嬉しいよ。でもさ、秋に入部してきた奴らももう雑用とか完璧だし、しかももう俺より強いだろ?
 そんな中でへらへらしてるのは、さすがに無理だって」
「それは、そうでしょうけど……でも!」

 諭すように、優しく語り掛ける少年。その言い分は実際その通りであり、彼が陰口を叩かれているのも少女たちは知っていた。
 そんな環境で彼を引き止めるのは我儘がすぎるとは、少女も理解しているのだ。しかし。

「――須賀君は逃げてるだけじゃないですかっ」
「和ちゃん」「のどちゃん」

 その一言に、一斉に顔をしかめる3人。制止する2人だが、止まらない。

「釣り合わないからなんですか!? 私が好きなのは――」
「和。逃げないために辞めるんだ。俺にチャンスをくれないか?」
「……絶対、許しませんから」

「で、茶番は終わったか?」
「染谷部長。京ちゃんと和ちゃんの悲劇のカップルごっこはこの後が本番ですよ?」
「さすがに目の前でおっぱじめられたときは焦ったじぇ」
「仲がいいのはええことじゃが、いつゴシップ誌にすっぱ抜かれるか気が気じゃないわ」
「あはは、今日も清澄高校麻雀部は平和、ってことで」


カンッ