インターハイ団体戦、私は宣言通り大星さんを叩き潰して清澄高校を優勝へと導いた。
 お姉ちゃんとの仲も絶縁状態から回復し、全てが上手く回っているように感じていた。
 明日から始まる個人戦でも良い成績が残せる気がする。今日は団体戦と個人戦の間にある中休みで清澄の皆は自由行動になっていた。
 和ちゃんはご両親の下へ、優希ちゃんは東京のタコス屋を巡りに、染谷先輩と部長は全国のインターハイ出場校の皆と顔繋ぎに動いているみたい。
 私は神保町で本巡りでもしようかなって考えていた。一人じゃ迷子になるから京ちゃんを誘ってね。

「ふふ、これってデートだよね」

 ルンルンな気分で彼の宿泊しているホテルへと訪れたのだけれど、既にそこに彼の姿はなかった。
 約束をしていたわけじゃないけれど、昨日聞いたときには特に予定はないって言っていたはずなのに、何処へ出掛けたのだろうか。

「京ちゃん……何で電話に出てくれないの?」

 音声案内は電源が切れているか出られない状態だと告げてくる。私はホテルで借りた電話を返却し、気持ちを切り替えた。

「ふん、いいもん、東京に一人で来れたこともあるんだし、本屋がぐらい自分で行けるんだから…………京ちゃんのバカぁ……」

 東京の街中は余りの人の多さに酔ってしまいそうだった。ゴミゴミとしていて、空気も美味しくない。やっぱり、私は故郷の方が好きだと再認識した。
 目的地には中々辿り着けず、帰り道にも不安を覚え始める中、人垣根の向こう側に彼の姿が見えた。
 私は助かったと心底感じながら、満面の笑みを浮かべていたと思う。

「えっ? 何で、お姉ちゃんと一緒にいるの?」

 京ちゃんとお姉ちゃんは二人で連れ添って歩いていた。

「どうして、手なんて繋いでいるの?」

 私には見せたこともない表情を二人して浮かべていた。まるで、それは、端から見れば恋人のような仲睦まじく寄り添いあっている。

「嘘だよね?」

 信じたくない。
 胸が苦しくて、去来する悲しみに押し潰されてしまいそうだった。それでも私は藁にもすがるつもりで、勘違い、誤解なのだと証明するために、二人の後をついて回った。

「あは、あはははは」

 お洒落なオープンカフェでパフェを食べさせっこしていた。頬についた食べ滓を指で拭いパクリと舐めた。一繋ぎのストローでジュースを飲んだ。
 二人の影が重なって一つになる。
 厭らしい音まで聞こえてきそうなとても濃厚なフレンチキス。上気した雌の顔をあいつは晒していた。
 夕暮れ時になっても二人は別れることなく歩いていく。辺りが暗くなり始めネオンの光が灯り始めた。
 周囲を見渡せばカラフルな街灯とホテルの看板が立ち並び、結局、あの女と京ちゃんは煌びやかな宿へと入っていった。

「京ちゃんはずっと私と一緒にいたのに……」

 いつから二人はそんな関係だったのだろうか。

「許さない、絶対に許すもんか」

 ああ、そうだね。
 そうだったんだよ、私に姉なんていなかったんだ。ふふ、あははははハッハッハッハッハ……

「明日はインターハイの個人戦だね。潰すよ徹底的に、刻んであげるよ心に絶望をね。もう牌なんて握れなくさせてあげる。ふふ、ああ、愉しみだよ♪」

 涅槃の海で少女は哄笑する。
 道行く人の顔は怯え、圧倒的なおぞましい威圧に震えた。全ての雀士を絶望へと誘う魔王の産声はこの日、この時、あがったのだ--

カンッ!