どういった業界でも問題児とされる客というものはいるものだ。
単にごねてお金を払わない、とかはこの業界では問題にすらならない。
水商売の世界で問題児とされるのはまた別の方向。

ネリー「何が不満なの!? これだけ払うから今日一日独占させろって言ってるだけなのに!」

こういう、金に物を言わせてルール破りを要求してくるタイプである。
ホストというものはただ一人の太客を確保すればいいというものではない。
当然、馴染みの客が来たら顔出しをしなければならない。それは信用の維持に必須だ。

ネリー「分かったよ、じゃあこの1.5倍、ううん、2倍払う! それでいいでしょ!?」

しかも、こういうタイプは信用や信頼が金で補えると信じて疑わない。
しかも無茶を通すだけの金が潤沢にあるから追い出す訳にもいかない、まさに問題児である。

結局、店長の交渉術により最初の提示額の3倍で、個室への案内となった。
おそらく、今日来た俺の客に対しては『体調がどうの~』とかで休みだということにされるのだろう
後でちゃんと内容を確認してフォローを入れ無ければならない。

ネリー「ふふーん♪」

一方で独占を許された彼女は非常にご機嫌である。
救いといえば、彼女は普段は海外によく出ていて店に来ることはまれだということだ。
その代わり毎回のようにわがままを言い、平気で数千万から億単位の金を落とす。

京太郎「ネリー、こういうのはやめてくれっていつも言ってるだろ」

ネリー「京は何が嫌なの? あ、分かった、お店には内緒ね」

勝手に得心したようにポンポンと帯のついた札束を積む。
こんなものどこにも隠せないだろ、頭が痛い。

ネリー「ね、ね、口移しで飲ませて。京とできるならいくらでもいいよ」

ダメだ、全く理解していない。流石の俺もキレそうだ。

京太郎「……分かったよ、しっかり味わえ」

シャンパンを口に含み、そのまま唇を合わせて液体ごと舌を入れて……

ネリー「ん、んんっ!? んんんっ、んはっ、~~~んんっ! はあ、はあ、はあっ」

体を震わせて、体から力が抜けて俺にもたれ掛かってくる。

京太郎「もう二度とするな、じゃないと嫌いになるぞ」

ネリー「は、はひ。もうしにゃい、だっから捨てないれぇ。お金全部らします」

根本的にわかってない。
お金で人は買えないのだと説明したところで、ホストの言に何の説得力があるのか?
そして俺は自分の流儀ではないやり方で彼女に言うことをきかせてしまった。
ああ、自己嫌悪だ……こういうやり口で人を支配したりするのは嫌いだ。
俺は皆にお姫様みたいに気分良く夢を見てほしいのに、どうしてこうなった。

最終的に問題児はさらに上乗せして支払いを終え、顔を赤くしながら胸の前で小さく手を振って帰った
表面上は和やかに見送ったが、正直俺の思いは忸怩たるものがあった。


『ホストKYO』 超絶問題児、ネリー編  カン