竹井久、彼女は雑誌社に勤める記者の一人である。
曰く「事実を脚色した記事に踊らされるのって見てて楽しいわよね」
彼女のどうしようもない性格の一片を表した文言であるといえよう。
そんな彼女はとある一軒のホストバーに入ろうとしていた。潜入取材である。

少し悩むようにパネルを眺め、初恋の相手の面影を残す相手を無意識に選んでいた。

久「この子にしてちょうだい」

スタッフ「申し訳ありませんが、ただいま他のお客様に指名されておりまして」

久「そう、じゃあ誰でもいいわ」

どうせただの取材、ほんの少しだけ残念に思う言葉をそのいいわけで誤魔化した。
そして彼女は店内に入り、すぐさま衝撃に足を止める。

久「え? 美穂子?」

高校時代からの親友と言っていい存在が、恥じらうようにポッキーの端を咥えている姿を見てしまった。

久「え? え? え?」

彼女の困惑の元はそれだけではない。指名しようとしていた男性が、親友の肩に手を回している。
明らかに酒の入った親友は、むしろ嬉しそうにそれを受け入れていた。
聞こえるはずのないポッキーが折れる音と、残念そうな美穂子の顔が久の心に刺さった。

久「……そこの席にして頂戴」

自然と低い声が出た。親友の横顔を見れて、それでいて自分は見つからない場所へと位置どる。

久(なんでこんなところにいるのよ、美穂子)

自分の知る親友はこんなところに通う女ではなかった。きっと騙されているのだ、あの男に――
何としてもあの男に近づき情報を得なければならない。今日は観察、後日必ず――そう久は決意した。

そしてその日から1ヶ月後

久「ねえ、私のプレゼント受け取ってくれる? 京くん」
美穂子「お願い、何でもあげるから一緒にいてください、京さん」

京太郎「あ、あの、俺は店以外でそういうことはちょっと……」

久「いいじゃない、私の愛情よ。あの頃構ってあげられなかったお詫びも兼ねて、ね」
美穂子「あの時と同じように彼を独占するつもり? 私の方がいろいろできるから、ね」

親友と一緒に、元後輩に完全に入れ込んで引くに引けない状況になっていた。
一歩でも引けば親友が彼を取っていく、そう信じて疑わない二人は1人のホストに競って己の持つものを捧げている真っ最中。

争われる一人の男性は思っていた。

京太郎(なんで部長も福路さんも貢ごうとするの!? そんな高いもの知り合いから受け取れるわけないだろ!?)


『ホストKYO』 争う親友たち編  カン