8月某日、学校から家に帰ったら裸エプロン姿の少女がいた。
何を言ってるか分からないと思うが、俺も何が起こったのかわからない。
ただ一つ言えることは、黒髪のおもちもちの少女のエプロン姿は中々来るものがあるということだ。

俺があまりにも現実味のない光景に鞄を床に落とすと、彼女はくるっと振り返って言った。

玄「あ、お帰りなさい京太郎くん。ご飯にする?お風呂にする?それとも私にするかな?」

何故か『言い切ってやったぜ』みたいなどや顔をする残念美少女がいた。
正直すごく最後のにしたいが、我慢した俺は偉いのではなかろうか。

京太郎「あの、なぜあなたがここに?」

玄「夏休みの間京太郎くんのお世話をするためだよっ。
  お義父さんとお義母さんは旅行で8月は帰ってこないから、私が毎日家事をするのです
  心配いらないよ、これは予行練習だから、この松実玄にお任せあれっ」

ふんすと裸エプロン姿で胸を張る姿に俺は波乱の幕開けを感じた。
そして、彼女との約10日間にわたる共同生活が始まってしまった。


『ひと夏の押しかけ妻』松実玄編  カン


玄「おうちの味は難しいね。京太郎くんの好きなお味噌汁の味、教えてほしいな」


玄「京太郎くん、暑いなかお疲れさま。汗拭いてあげるね」


玄「ふふ、少しずつ京太郎くんの好み分かってきたよ。もっと覚えるからね」


玄「京太郎くんのタコスって美味しいんだね。ちょっとあの子が羨ましいな」


玄「お背中流しますのだっ」


玄「男の人の背中って、大きくてたくましいんだ……」


玄「ちょっと恥ずかしいから、電気消して欲しいな」


玄「泣いてるのは、嬉しいからだよ」


玄「今日で最後なんだね。でも、私の心はずっと京太郎くんだけのものだよ」


玄「また来年、来るから――っ!」


玄「……もう、京太郎くんったら約束破って。冬休みに会いに来るなんて不意打ちだよ」


玄「今日からははずっと、夏休みだけじゃなく一年中一緒にいようね
  京太郎くんのお世話はこの須賀玄に、お任せあれっ」


カン