高校を卒業して、私はプロになった。
こう言ったら他のなりたかった人には失礼なんだろうけど、麻雀を仕事にしようって気はあんまりなかった。
だって私にとって麻雀は大体道具だったから。

楽しくなかったわけじゃないけど、私にとって優先は友達と一緒にいることやお姉ちゃんと仲直りすることだった。
だから、手段ではあっても生業にしようとは思ってなかったんだよね。

でも、1位指名されたとき彼があんまり「すごいすごい」言うもんで、じゃあちょっといいとこ見せちゃおうかな、ってなった。
うん、そういう軽い気持ちだったのが駄目だったんだろうね、私は結構現実とのギャップに苦しんだ。

麻雀で競技するのはともかく、思ったよりもマスコミへの露出やインタビューなんかが多かった。
基本人見知りの私は、そういうのにうまく立ち回れなかった。お姉ちゃんみたいに仮面をつけるとか無理だった。
だから、愛想がないとか、「麻雀マシーン」とかあだ名をつけられちゃったのだ。

正直何度もやめようと思った。こんなこと何の意味あるのかって思った。
それでも何とか続けられたのは、プロの中にも高校でできたお友達がいたから。
それを支えに頑張った。だって今更高卒で他の仕事探すとか難しいし、面接とかほら、苦手だし。

だから、プロになって5年目に再会をして私は驚いたのだ。
彼は、大学を卒業して新米アナウンサーになってた。それも麻雀業界の、だ。
意外過ぎて彼にどうしてその仕事に就いたのか聞いたら、その答えが……

京太郎「だってさ、アナウンサーならプロと一緒に仕事できるだろ。咲と実況解説とか夢だったんだよな」

馬鹿だよね、一緒にいたいだけならいつでもマネージャーとかで雇ってあげたのに、コネも使わずに実力で受かっちゃうなんて
そう言ったら、彼は「支えるだけじゃなくて並びたいんだ」だってさ。
男の子の意地にこだわるとこなんか変わってないなって思ったら、ぽろぽろ泣いちゃったよ。

そしたら困りながらも抱き締めてくれた。ああ、私がプロになったのはこの瞬間のためだったのかもしれない、なんて考えちゃった

でもね、ちょっとだけ不満があるんだ。
彼の指導を騙って無駄に密着しようとする先輩アナウンサーとか、じゃれつくように構われに行く淡ちゃんとかがいることに。
ちょっと久しぶりに麻雀でお話ししなきゃいけない人がいっぱいいるんだよね、うん。
その中にはお姉ちゃんも混ざっている。

証明しなくてはいけない。彼の隣に立つのは私だけでいいのだということを。

その日から、宮永咲プロの「麻雀マシーン」というあだ名の前に「殲滅の」とか「殺戮の」とか物騒な形容詞が付くことになった


カン