熱を感じる。
熱く、熱く、燃えるような熱を。


黒糖が好きだ。
甘くて、食感がいい。品のある味で、どこか優しい。

「お前ほんと、黒糖好きな」

京太郎がそう言って笑う。はるばる長野からやって来た彼とは、不思議と気が合った。
一緒にいて、安らいだ。

「……ん」

「お、くれんの? サンキュー」

一つ黒糖を差し出す。彼が手を伸ばし受けとる。
微かに触れあう指先。何となく、熱を感じて、私はすぐに手を引っ込めた。

「んんーうまい! なんつうか、癖になるな、これは」

そんな私にお構いなしで、彼は美味しそうに黒糖を頬張る。
なんとなく、見つめる。黒糖に夢中な彼の横顔は、子供らしくもあり、どこか大人びても見えて。

──熱を感じる。私は目を反らした。

「ごちそうさま。ありがとな」

「……別に。どういたしまして」

そっけなく返す。熱が、取れない。
胸が高鳴る。体が燃える。

「なんか、顔赤いんじゃないか?」

そう京太郎が言うと、ふいに、額に温もりを感じた。
手を当てられている。すこしゴツゴツとした、優しくて大きな手が、暖かく額を撫でている。

熱を感じる。
燃えるように強く。
身体中が焼けてなくなりそうな程に。

「や、やめて」

「あ、悪い! つい」

彼が慌てる。手が離れる。
すこしの寂しさが、むしろ熱を高める。

「大丈夫だから……。心配してくれて、ありがとう」

「お、おう……悪かった」

「こっちの台詞。……キツい言い方でごめんなさい」

熱をなだめながら謝ると、彼は、ホッとしたように笑った。
その顔に──また、熱が、高まる。

「京太郎」

「うん? どうした、どっか具合悪いか?」

「……京太郎」

私は、京太郎の名前を繰り返す。
それだけで、身体中のありとあらゆる場所が熱くなる。
心地よい、それでいて怖い感覚。
快楽に耽るように、私はその名を呼び続ける。

「京太郎……京太郎」

「? はいはい京太郎だよ」

「……京太郎」

「やっぱどっか具合悪いんじゃないのか……?」

名前を呼ぶ度、嬉しくなる。
名前を呼ぶ度、心が跳ねる。
そしてそれらに貴方が、返事してくれる度に。
熱で焼けそうで、幸せで。
どうにかなってしまいそうで。


熱を感じる。
熱く、熱く、骨すら残さないような熱を。


「京太郎」


これがきっと、恋なのだろう──