――あら、綺麗な目ね――

 いつ以来だろう、この瞳を褒められたのは。
 あの子とは結局あれ以降逢うことはできなかった。
 いつか記憶の海に沈んで、思い出すこともなくなってしまうのだろうか。
 そう思うと、胸が震える。恐怖、悔恨、不甲斐なさ。自分という存在が呪わしくさえ感じられる。


  「うあ゛あ゛あ゛」  「ご苦労様、須賀君。それじゃ、また……そうねえ、3週間後?」
  「はあ!? ちょっ、勘弁してくださいよ部長! パソコンに雀卓に……この炎天下の中っ」
  「そうね、ご苦労様だわほんと。でもほら、女子が集まってる場所にお猿さんな男子高校生は入れられないでしょ?」
  「そりゃ、そうですけど……。でもお茶くらいは出してくれても罰は当たらないと思うんですけど」
  「やーねー、それなら駅までダッシュした方が早いと思うわよ?」 「鬼! 悪魔! 部長!!」


 ふと時計を見て初日の昼食の席を中座した上埜さんを追って玄関まで来た私の耳に、そんな騒がしいやりとりが届いた。
 上埜さんが私の前ではしない、相手をいたぶるような声音をしているのが気になって顔を覗かせた私が目にしたのは――――

男子「って、3週間後って東京出発日じゃないっすか! それまで顔を合わせないつもりですか部長!?」

久「須賀君はその間に全国出場校の資料まとめをお願いしてあるじゃない。部室に顔を出す暇なんて無いと思うわよ?」


 瞬間、私の心が固まった。驚きと、嬉しさと……戸惑いによって。
 上埜さんにイジメられている男性は、あの子とどこか似ていた、いや面影があると言うべきか。
 私の瞳を否定しなかった、受け入れてくれた男の子。やっと、やっと逢えたのだという喜び。
 そしてなぜ心優しい彼が上埜さんに客観的に見て酷い扱いを受けているのかという疑問。
 無意識に両目を見開いていた私を、彼が見た。一秒にも満たない視線の交錯。彼は私を覚えてくれているだろうか。
 期待に胸が高鳴る。
 しかし彼はすぐに視線を外し、そんな彼の様子に気付いた上埜さんがこちらを振り向く。

久「あら、福路さん。どうかした?」

 つまらなそうな無表情を一転ニヒルな笑みに変えた上埜さんを見て、私は“理解”してしまった。
 こいつのせいだ。
 彼が私を忘れてしまったのはこいつのせいなのだ。
 止まらない。
 胸の奥底から湧き出る黒い感情が奔流となって面に出そうになる。
 いけない。
 まだ、いけない。

美穂子「……いえ、なんでもないです上埜さん」

久「そ? 須賀君、さっさと帰りなさいな。十分休憩はできたでしょう?」

須賀君「……ッ、はい。失礼します」

 強張った表情で引き攣ったように口元を動かし、背を向ける彼。

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  ゝ! _」┘ー‐┘  ̄ ̄   ̄ ̄ ̄`   ̄ ̄` `ニー┘L
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  | | ヽ!              ′          

                ガシャンッ


カンッ