あれは真夏の暑い日やった。うちは竜華になんも言わんと出かけたんや。
コンビニでアイスが買いたくてたまらなかったんや。竜華に言うたらまたうだうだ言って行くのが遅れてまうからな。

ところが日差しが思うたより強うてなあ。ちょっとふらってしてもうて、通行人にぶつかってしもうたんよ。
これは怒鳴られるんかな、でもうち病弱やし許してほしいなあ、とか思いながら見上げたら、なにがあったと思う?

心配顔で慌てながら、冷えピタと団扇で看病してくれる金髪の男子高校生がおったんや。
いやこれ嘘違うで。どれだけ普段苦労性なんかしらんけど、さらにビニール袋の中からガリガリ君取り出して「食べれますか?」やで。

うちの心はズキューンと撃ち抜かれて倒れそうやった。既に木陰のベンチで膝枕されてたんやけどな。
あ、これボケやから笑うとこやで。

あれは竜華にも負けん世話焼きやな。膝枕は筋肉質で硬かったんやけど、なんか頼りがいがあるというか竜華のもちもち膝枕とはまた別の安心感があってな。
竜華、なんでそこで対抗心燃やすん? いいから聞いてな。

そんなこんなで、うちはコンビニに行けなかったのにもかかわらず恋とお土産のアイスだけ抱えて戻ってきたんよ。
最大の失敗はあれやな、名前と連絡先を聞けずに立ち去られてしもうたことや。
竜華が泣きながらうちを抱きしめて大騒ぎしたせいで聞きそびれたんやから反省してほしいわ。

もう二度と会うことはできんのやろなあ。うちの初恋はこうして終わって……え、なんで捜索掲示板建てとるん?
やめえや、法的にまずいやろそれ。プライバシーの侵害やで。

うちはこの初恋の思い出を抱えてこの命を終え……いや冗談やからそんな顔せんとってな。
でもぶっちゃけ無理やろ? こんなだだっ広い東京コンクリートの中、1人の男子高校生を探すとか。

特徴ゆうてもなあ、金髪で背が高くて、意外と筋肉質で……そうやな、ちょうどあそこで制服の女子5人に囲まれてるあの人みたいな……あれ?
あー、肉眼で見つけてしもうたわ。でもあれどう見ても中の誰かと恋人関係やろ? ほら手とかつないどるやん。

やっぱり初恋は実らんもんやな。え、ちょ、セーラ突撃せんときいや、聞いてえな。

あ、そ、その、先日はどうも。うち園城寺怜ゆうて……え、知ってる?
準決勝で見た? い、いややわ。恥ずかしいとこ見せて……格好良かった? そ、そんなこと、うち……。
え、連絡していいん? キレイな人と話せるなんて得しかないとか、そんなおだてても何も出んよ?
じゃ、じゃあその、よろしく頼んます。嬉しいわ。

なに竜華むくれとるん? 怜が盗られた? いや、うち元から竜華のものとちゃうし。
あ、泣かんといてな。うちが悪かったから、な、竜華。

……あ、また竜華のせいで行ってしもうたやん! うちの恋が実りそうやったのに。
さっきと言ってることが違う? 「乙女心と秋の空」ゆうてな。
今は夏? 知っとるわ。ボケとちゃうから、突っ込まんでいいんやって。

ああ、次はいつ会えるんやろ。あ、また名前聞いてない! どないしよ。


『病弱少女の初恋』、カン。続かない