京×憧(28) <ゲス注意>


都内高級住宅街 某所



がちゃっ

憧「あっ、お帰りなさい」

男「帰ったぞ。メシ」

憧「出来てますよ。あなた」

憧(今帰ってきた男が私の旦那。年の差は15歳)

憧(局アナの女子会主催の合コンで何の因果か私は見初められた)

憧(生まれて初めて札束で女を往復ビンタする男に出会った)

憧(若気の至り、といえばそれまでかも知れない)

男「どうだ?もう結婚してから三ヶ月だろう?」

男「子供はできたか?」

憧「ごめんなさい...」

男「ちっ...まぁ、しょうがないな」

男「俺も君が不妊だって事知らなかったんだし」

憧(世界一周クルーズ、高級外車でドライブ)

憧(少女漫画以上の豪華な体験に私は正気を失い)

憧(私を支えてくれた恋人を裏切り、この人の妻になった)

男「おっ、今日はハンバーグか」

憧「ごめん...こげちゃった」

男「あ?ふざけんなよ。こんなゴミ俺に食わせて良いわけ?」

憧「ご、ごめんなさ...」

男「俺言ったよね?」

男「金とメシは常に厳しく、完璧に扱えってさ」

男「はーっ、どーしてこううまくいかないのかねぇ」

男「おら、脱げよ」

憧「えっ...?」

憧「やだ...止めて、止めてよ!!」

男「うぉら!」

どがっ

憧「やだやだやだいやああああああああああ!!!」

男「暴れるんじゃ、ねぇッ!」

憧「ひっぐ、うっく...」

男「いいか?俺を裏切るんじゃねえぞ」

男「裏切ったら...分かってるな?」

憧(私は、この男からもう逃げられない)

憧(私が結婚した男は、悪魔だった...)







<一週間後>


憧(命の危機を感じた私は、奈良の実家に戻った)

望「憧...ゆっくり休みな」

望「ごめんね...なにもできなくて」

憧「ううん...いいのよ。もう」

憧「背伸びしすぎて、分不相応な高望みをしちゃっただけ」

憧「少し休んだら、また東京に戻るから」

望「でも!」

憧「大丈夫...大丈夫だから」

望「そんな...」

ピンポーン

望(まずい。今日は彼が来るんだ)

望(どうしよう...こんな憧を見せられない)

??「望さん?いるんですよね」

望「えっ、ああごめん。今開けるから」

望(一か八か、賭けるしかない)

京太郎「望さん。本当に、今ここに憧がいるんですね」

望「うん...憧は、いるよ」

京太郎「そうですか」

望「京太郎君...」

京太郎「後は任せて下さい」



<京太郎>

憧「京太郎...久しぶりだね」

京太郎「ああ、ずっと会ってなかったからな」

京太郎(憧、こんなにやつれちまって...)

京太郎「戻ってたんだな。奈良に」

憧「うん。仕事に疲れて休暇もらって帰ってきただけ」

憧「運が良かったわね。アタシ、明日には東京に戻るから」

京太郎「そうだな」

京太郎(あの日、一方的に告げられた理不尽な別れ)

京太郎(なにも覚悟が出来ず、なにも出来なかったあの日)

憧「で?今更人妻に何のようかしら?」

京太郎「ああ。今日はそのことで話があってきた」

京太郎「なんで、あの日...俺を捨てたんだ?」

憧「アンタよりあの人を好きになったからよ」

京太郎「俺と一緒にいた日々は、苦痛だったか?」

憧「ええ。イヤでイヤで堪らなかったわ」

憧「私がいながら、他の女に粉かけては惚れさせて」

憧「おかげで何度も酷い目に遭ったんだから」

京太郎「それは、その通りだな」

憧「初めは宥さんと玄さんに二股かけて」

京太郎「次は千里山の清水谷さんと園城寺さん」

憧「全く、竜華さんに刺されそうになったんだからね?」

京太郎「悪かったな、若気の至りだ。許せ」

憧「何回目よ、それ?」

京太郎「さぁな?でもな、その言葉を言ったのは」

京太郎「お前に迷惑をかけたときだけだ」

京太郎「玄や宥の時も、竜華さんや怜の時もそれは言わなかった」

憧「そうね。アンタはいつだってそうだった」

京太郎「ああ、厄介事に首突っ込んでは逮捕されかけ」

京太郎「その度にお前に助けられた大学生活が楽しかったよ」

憧「実際、この前まで傷害事件で一年間実刑判決食らってたしね」

憧「自業自得よ...」

憧「私のお見合い台無しにして...私を、助けようとして...」

京太郎「...俺も、お前に振り向いて欲しかった」

京太郎「だけど、お前に俺の気持ちを素直に伝えられなかった」

京太郎「金もない、将来性もないジゴロに愛想を尽かすのは当然だ」

京太郎「実際、今は墜ちるところまで墜ちちまったからな」

京太郎「お前は間違ってなかった。俺がずっと間違ってた」

京太郎「バカな男だが、この通りだ、許してくれ」

憧「なんでよ...なんで、今になってそんなこと言っちゃうのよ...?」

憧「バカみたいじゃない。親友と顔見知りと男取り合って」

憧「散々傷つけ合って、遠回りしたその結果が」

憧「両思いだなんて...どこまで人を馬鹿にすれば気が済むのよ....」

京太郎「憧」

京太郎「俺のこと、今でも好きか?」

憧「すき...」

憧「好きよ...何度も言わせないでよ!バカ」

京太郎「足りないな、もっとだ」

京太郎「もっと、その先の言葉が欲しいんだよ。俺は」

憧「大好き、ずっとずっと振り向いて欲しかった!アンタが大好きなの!!」

憧「だけど、だけど」

憧「アンタは私の気持ちを知りながら受け入れてくれなかった!!」

憧「分かる?!愛のない結婚生活のとてつもない辛さが!!!」

憧「アンタが救ってくれなかったから私は好きでもない男と結婚した」

憧「不幸なアタシを見て、アンタが不幸になればいいって本気で思った!」

京太郎「ああ、十分俺も不幸になったよ」

京太郎「俺の女が、誰とも分からない男の子供を産むっていうんだからな」

憧「ずっと待ってた!!」

憧「皆の時みたいに、颯爽と私を救ってくれるアンタを!ずっとよ!」

憧「五年もの間、アタシはアンタをずっとずっとずっと待ってたんだからぁ!」

京太郎「悪かった...ずっとお前のこと、好きだったんだ」

京太郎「今でもその気持ちは変わってない。そしてこれからもだ」

憧「ううう...辛いよぉ、助けてぇ...きょおたろぉ...」

憧「毎日殴られて犯されて仕事辞めさせられて...もう、心が、心が....」

京太郎「.....」

憧「待ってよ!京太郎!どこ行くのよ?!」

京太郎「今からお前を奪いに行くんだよ。東京にな」

憧「ダメ!ダメ!そんなことしたら京太郎が殺されちゃう!!」

憧「あの人は裏業界の顔役なのよ?!」

京太郎「よく言うよな。過去と不幸はつきあいの長い友人だって」

京太郎「出会いと別れを繰り返すのが人の世の常だとするなら」

京太郎「女を奪い合って殺し合うのも男の常なんだよ」

京太郎「俺はもう、そういう世界の住人なんだ」

京太郎「安心しろ。お前が泣くことはこれから先、もうない」

憧(冷たい瞳の中に燃える熱情が、京太郎を衝動的な何かに駆り立てていた)

憧(だけど、それ以外は私がずっと大好きだった京太郎と何一つ変わってない)

憧(その時の京太郎の笑顔は、とても印象的だった)

京太郎「ゆっくり休め、憧」

京太郎「五年前のケリをつけてくる」

憧「待ってよ!待って...京太郎ーーーーー!」

憧(遠回りして、やっと想いを伝えられた。なのに...なのに)

京太郎「じゃあな、憧」

京太郎「運が良ければ、俺と結婚してくれ」

京太郎「安物だけど、デザインのいい指輪はちゃんと用意してある」

憧(こんな別れかたはイヤ、イヤなのに...)

京太郎「お前は、生きろ」

憧(そんなこと言われたら...引き下がるしかないじゃない!)

憧「うううっ....うあああああああああああ~~~~~」

京太郎「強く、生きろ」

憧(そう言い残して、京太郎は私の家から出て行った)

憧(これからどうなるのかは私にも分からない)

憧(過去は取り戻せないし、やり直しも効かない)

憧(それでも確かに、私と京太郎は)

憧(これから先、ずっと...)

 カン