放課後 誰もいない姫松の部室 


 赤坂「んっ、ふぐぅっ...ううぁっ」

 京太郎「か、監督?」

 赤坂「ウチのことを監督って呼んでくれる子、京太郎君だけやねん...」

 京太郎(今俺は、誰もいない部室で代行、いや赤坂監督に相談されていた)

 京太郎(旧知の仲の善野監督の代わりに部の監督代行しているけど)

 京太郎(末原先輩のことと皆を気にかけてくれ、と頼まれた代行は...)

 京太郎(どう見たって、人と正面から向き合うのが下手くそな人が)

 京太郎(一生懸命、不慣れながらも末原先輩を手助けしていた)

 赤坂「私かて、末原ちゃんが思っているような悪党やないもん...」

 赤坂「皆のこと思って、思って...ちゃんと、接してるはずなのに...」

 赤坂「皆が、皆が...冷たい目で見てくるんよ...もうどうしていいか...」

 京太郎(長野に比べて、大阪は思ったことをはっきりと言う人が多い)

 京太郎(へらへらして真意を見せない代行はこの上なくウザいのだろう)

 京太郎(でも、高校生の俺にすがるくらい追い詰められていたなんて...)

 赤坂「末原ちゃん、やればできる子なんや...」

 赤坂「変に足踏みする性分を直せば、もっと良いところが生きるはずなんよ」

 赤坂「でも、末原ちゃん。秋の大会に出ないって」

 赤坂「一年の上重ちゃん出してくれって...」

 赤坂「なんでやぁ...ウチは末原ちゃんに強くなって...強くなって」

 赤坂「ウチのことがそんなに憎いんかぁ...皆?」

 京太郎「そんなことない!」

 京太郎「そんなことあるわけ、ないじゃないですか」

 京太郎「確かに皆、今は監督のこと嫌っているかもしれません」

 京太郎「だけど、善野先生が戻ってくる前に、きっと...きっと」

 京太郎「監督がやってきたことが報われるときが来るはずです!」

 京太郎「そのときまで、俺が手伝いますから!」 

 京太郎「監督のこと、少しでも皆が分かれるようにしますから!」

 赤坂「京太郎君...ううっ、うああああ~っ!!」


  こうして、京太郎は少しでも郁乃が皆とわかり合えるように

 必死になって、麻雀に取り組み始めた。

  一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月と経っていく内に京太郎は経験者と遜色ないほどに

 麻雀が打てるようになった。

  郁乃も、ぎこちないながらも、あの嘘っぽい笑顔よりずっと柔らかい笑顔で

 笑うようになった。そんな郁乃を部員達もすこしずつ受け入れていった。






 そして、インターハイ準決勝終了後...


 京太郎「赤坂先生、お疲れ様でした」

 赤坂「ありがとな、京太郎君...」

 赤坂「京太郎君が手伝ってくれたおかげで、ここまでやってこれた...」

 京太郎「俺なんかが先生のお役に立てて、光栄です」

 赤坂「褒めてもなんにも出てこないで?」

 京太郎「そうですか?」

 赤坂「相手、悪かったなぁ」

 赤坂「まさか臨海があそこまで強いとは想定外やった...」

 赤坂「あと、後...たった100点で...」

 京太郎「あれは、運が悪かったとしか言い様がないですよ...」

 京太郎「末原先輩は、きっと...」

 赤坂「きっと、そうやね。二位抜けなんて満足しなかったはず...」

 赤坂「でも、末原ちゃん今まで一番幸せそうな顔してたなぁ...」

 赤坂「善野さんに大一番見てもらって、きっと報われ...っ」

 京太郎「先生?」

 赤坂「違う!きっと、きっとみんな決勝戦まで行きたかった筈で...」

 赤坂「ほんとは、本当は...私が...」

 赤坂「私が、皆の夢を終わらせてしまったんや!!」

 赤坂「善野さんやったら、きっとこんな形で終わることなんかなかった!」

 赤坂「くぅう!悔しいッ、何も、何も出来ないまま...夢が終わっ...」

 赤坂「で、でも...もう来年は安心や」

 京太郎「監督」

 赤坂「善野さんも、来年には悪いところが直って監督に戻る」

 赤坂「そうなれば、そうなれば百人力や」

 赤坂「京太郎君も、そう思うやろ?!な、な?」



 京太郎「郁乃さん」



 京太郎「まだ、夢は終わってませんよ」



 京太郎「監督の一番近くにいた俺は、まだ全国に行ってません」

 京太郎「二年生の俺は地区予選三回戦で負けちゃいました」

 京太郎「それに姫松には男子麻雀部はないから団体戦は無理だけど」

 京太郎「個人戦なら、まだチャンスは残っている」


 赤坂「それって...?」




 京太郎「夢の続きは、俺が継ぎます」

 京太郎「先生が見た夢に、俺も続かせて下さい」




 京太郎「だから、俺と一緒に戦って下さい。監督」




 京太郎「俺は郁乃さんのことが好きです...」




 郁乃「あっ、ありがとな...ありがと、なぁ...」




  こうして、姫松高校麻雀部が見た夏の夢は醒めた。

  全国優勝は出来なかったものの、敗れた者達は次の勝利という

 未来へと向かって、一歩ずつ、そう一歩ずつ歩き、駆け出す。








  走り出せ 君とならばどこまでも行くよ

  消せない光 夢を夢を 夢を見せて

  その涙無駄にしないで

 (ひとり泣かないで)扉を叩け!


  明日への扉 開きかけてるよ

  明日への道ともに走るよ だから One more chance!)


  カン