こうなったらとことん監視してやる!


「ちょっと、ここいい?」

「別にいいけど、なんでこっちに?」

「いーから!」


 部活でもその手は緩めない。
 一緒の卓に入れば、すぐ近くで観察できる。
 授業中と違って、顔を見ててもおかしくないもんね!


「へっ!? なんでそれを切るのさ!」

「えっ? どういう「それロンです」んなぁー!?」

「バカなのバカでしょバカなんでしょ!? どー見たって危ない牌じゃん!」

「い、いや……これ捨てれば聴牌だったし……」

「あー! しかもこっちを捨てた方が待ちも広くなってたのに、わざわざこっちを切ったの!? 信じらんない!」

「すまない……俺が初心者で本当にすまない……」

「あーもう見てらんない! ほらそこの私の代わりに入って! 須賀の指導するから!」

「いや、別にそこまでしてくれなくても」

「ダメ! 私がすっきりしないの! ほらちゃっちゃとやる! てってー的に行くからね!」

「悪いな大星、手間かけさせて」

「そこは悪いじゃなくてありがとうでしょー?」

「それもそうだな。ありがとう大星」

「うむ、もっと感謝したまえ!」


 ……あれ? どうしてこうなったんだろ? ま、いっか。


「また大星は練習をさぼって……!」

「菫、誰かに教える時って、教えてる本人が一番勉強になるからあれはあれでいいと思う」

「……本音は?」

「可愛い後輩同士が仲良くなるのはいいことでしょ?」

「……貴様、照の偽物だな!? 本物だったらもっとポンコツな理由のはずだ!」

「解せぬ」

「須賀、ちょっと買い出しを頼まれてくれるか?」

「いいですよ菫さん」


 来た! あれからここ数日待っていたチャンスが到来だ!
 部費を預けられての買い出しなんて、悪事の温床に他ならない!
 さわやかな笑顔を浮かべておいて、裏ではこっそり着服してたりしてるのが相場ってもんでしょ!


「はいはーい! 私も須賀についていきまーす! 同じ一年だし、二人の方が何かと便利でしょ!」

「……すまん須賀、買い出し以外にも子守を頼むことになりそうだ」

「いえいえ問題ないですよ。じゃあ淡行くか」


 あれれー? なんだか私が厄介者扱いされてる気がするぞーう?
 まあ細かいことは気にしない。高校100年生たるもの前進制圧のみ、淡ちゃんに逃走はないのだー!


「やった! ほらほら早くいくよ須賀! 買い出しは待ってくれないんだから!」

「ちょ、こら! 急に引っ張るな! じゃ、じゃあ行ってきますね菫さん!」

「……ああ、本当に頑張れよ。戻ってくるのも、遅くていいからな」




「おいしそうだなー……食べたいなー……」


 くっ、孔明の罠か! まさか買い出し先の近くに喫茶店があるなんて!
 なにあれ! あのパフェとってもおいしそうじゃん!
 うー……でも我慢しないと……結構高いし……


「何をうなってんだお前は」

「あわっ!?」


 背後からのアンブッシュに急性NRSを起こした私は情けない声を出してしまった。
 見るとそこには買い出しを終えた須賀の姿があった。


「べ、べっつにー? 私は何もしてないよー? あのパフェ食べたいなーなんて思ってないよー?」

「……oh」


 よし! 完全にごまかせたね!
 須賀の弱みを見つけるどころか、逆にこちらの隙を見せそうになったけど、そのカバーくらい私だってできるもんね。

「そうだ淡、予定より早く買い出しが終わったし、そこの喫茶店で少しさぼらないか?」

「……へ?」

「そうだなー、余ったお金もちょうどパフェ二人分はあるし、ちょろまかそうぜー?」


 むむむ。これは誰がどー見てもおーりょーだね。
 ようやくその尻尾を見せたか! しかも私を共犯にしようだなんて卑劣だね!
 ここは毅然と言い返してやらなくちゃだね。そんな誘惑には絶対に負けない!


「もー! しょーがないなー須賀はー! そこまで言うんだったら付き合ってあげてもいいよ?」

「よーし決まり! さっさと入ろうぜ」

「やったー!」


 やっぱりパフェには勝てなかったよ……。
 で、でもでも! いつかは他の悪事の証拠を絶対見つけてやるんだから!
 こうなったらこの場で尋問して『じょーほーしゅーしゅー』しよう!


「あ、京太郎! スミレも帰ってくるの遅くていいって言ってたし、どうせだからもうちょっと話してから帰ろーよ!」

「よく聞いてんなーお前。淡が良いってんなら付き合うぜ」

「じゃあさじゃあさ、普段って何して遊んでるの?」

「んー……最近は料理とか作るのにはまってるかな……」

「うわ女子力高いじゃん! 私とか料理しようって発想にすらならないよ」

「最近はそういう女子も多いらしいしな。それでも意外と楽しいもんだぞ? 淡は何してんだ?」

「私はねー……」


 ――30分後




「……じゃあ今度の日曜は駅前で集合ってことで」

「うん! 京太郎、集合に遅れたら承知しないかんね!」

「お前の方が心配だっての。うっかりすんなよー?」

「遅れたりしないもん!」


 いやーまさかこんなに京太郎との会話が弾むなんて思わなかった!
 映画の趣味もあってたし、次の日曜日が楽しみだね。
 うーん、一応京太郎も男だし、少しはおしゃれとかしていった方がいいのかな?
 帰ったらクローゼットの中身を確認しなくちゃ!


「……あれ? 何か忘れてるような?」

「どうした淡。置いてくぞー」

「あっ! 待ってよ京太郎!」

「なんか悩んでたみたいだったけど、なんだったんだ?」

「んー……忘れちゃったし、どうでもいいことだったのかも。まーそのうち思い出すって!」

「だったらいいけど……俺でよければ相談くらいは付き合うぞ?」

「ありがとね京太郎!」


 ……結局、日曜に着ていく服を選び終わるまで、本来の目的を思い出せなかった。
 またも京太郎の策略にはまってしまうなんてふがいない。
 次のお出かけには京太郎の正体を暴いてやる!


「絶対に京太郎には懐柔されないからね!」




 カンッ




おまけ


「はぁ、俺の今月の小遣いがかなりヤベェ……さすがにパフェで部費に手を付けるわけにもいかないしなぁ……」

「京ちゃん京ちゃん」

「どうしたんですか照さん」

「これで淡と京ちゃんのパフェ代に足りる?」

「え゛!? なんでそれを知って……いやいや、それよりそんなの受け取れませんよ!?」

「大丈夫、これは淡も含めた私達の面倒を見てくれている京ちゃんに対する報酬みたいなものだから」

「淡とのあれは俺が好きでやってるだけですし、皆さんの雑用も一年生である俺がやって当然のことです。照さんが気にすることじゃないですよ」

「むう……京ちゃんはお姉ちゃんの言うことが聞けないの? 年下なんだから、お姉ちゃんに少しは甘えなさい」

「……そう言われたら断りにくいじゃないですか。分かりました、それじゃあありがたく受け取ります」

「うんよろしい」

「それで……どうしてその話を?」

「……普通に淡がパフェ食べたことを私に自慢してきたよ? 次映画に行く約束もしたとかっていうのも勝手に喋ってたし」

「本当にバカかあいつは! なんでバラしてんだあのバカ!」

「あれでもいい子だから仲良くしてあげてね?」

「……うっす」


もういっこカンッ