「……」

沈む夕陽を見つつ一人寂しくこぶしを握り締める。

(今回がチャンス! 部長居っとし必要なかと思ってた……やっぱ寂しか)

部長も居て友人に恵まれ、仕事も順調にいけている。
故に結婚なんてまったく考えていなかった。
しかし、年をとるごとに寂しさと虚しさが押し寄せてきた。
気付けば三十路手前、これでは健夜小鍛治一直線だ。
何より両親からも心配され、周りの友人が結婚をしていく度に泣いた。

(そいけん今夜の飲み会に賭けっと)

拳を解き、余裕を持って飲み会へと足を進める。
今夜は友清が誘ってくれた飲み会と言う名の合コンがあるのだ。

(お化粧もよか、服もよかね)

飲み会の会場に少し早く着いたので、手持ちの鏡で確認していく。

(一番大事なんは、目立つこと!)

ぐっと拳をもう一度握り締め、シミュレーションを何度もしていく。
性格良ければいいと言われてるが、一番大事なのは第一印象だ。
性格や中身なんて後で見るもの、それを見られる前に離れられたら元も甲もない。

「……先輩、早かですね」
「友清! お久しぶり」
「久しぶりとです!」

そんな事をしていれば友清がやってきて互いに笑い合い抱き合う。
そして、時間通りになれば何人かやってきて飲み会が始まる。




(まずは……大人しく、そいでいて話題には乗る!)

席に着き軽く自己紹介をして飲み会が始まる。
最初はがっつかないように大人しく、恥じらいを持って接する。
少し相手の後ろに立つぐらいのおしとやかが受けるのだ。

(そいで……年齢と住所、趣味に職業ばさりげなくチェック)
「――でなんですよ」
「お詳しいんですね、趣味なんですか?」
「そうなんですよ!」

相手にふられた話題に乗りつつ、趣味を聞いていく。
こういった自分から話す人は乗ってくれるのが嬉しいのだ。
言葉も標準語にし、違和感ないように対応をしていった。

(浅ましか……ばってん、結局職業とか趣味は大事)

趣味や仕事が合わなければ結婚後の生活なんて高が知れている。
姫子は結婚がしたいのではない、幸せになりたいのだ。

「仕事は横浜ロードスターズでマネージャーをしてます。高校の時から趣味が麻雀だったんで」
(キタ! 趣味バッチシ! 仕事よか!)

チェックしていれば、趣味が姫子と合う人物が現れた。
仕事の内容もマネージャーなので姫子の仕事をしっかりと理解してくれるだろう。
今回の合格ラインに乗った。

(後は……顔は……あーん、サングラス邪魔やけん!)
「須賀ー……お前いつまでサングラスしてんだよ」
「え? ……あ、忘れてたわ」

顔が見れないことにもどかしくするも姫子からは指摘しない。
顔で決めるのかと思われたらマイナスだ。
そんな事をしていれば隣の友人と思われる人からツッコミが入り、彼は笑いながらサングラスをとった。

「あっはっはっは、恥ずかしいな」
「―――」

笑いながらサングラスを取った彼に姫子は一発で打ち抜かれた。
あどけない笑顔にその後のお酒を口にする時の真面目な表情、思わず見惚れてしまった。

(っ~~~~~!! こん人! こん人がよか)
「そういえば、姫子さんって……もしかして麻雀プロの?」
「は、はいっ……そ、そのコンビで活躍してます」

見惚れていれば、相手から声が掛かり声が上ずりながらも答えていく。




暫くすれば、他の人達も一人の子に絞ったのだろう。
全員がペアで何人かの人と話している。

「俺も見てましたよ、インターハイ。 白水さんと活躍してましたね」
(あっ……部長)

その後も話していれば、話題に部長が登場した。
昔からコンビで活躍しているので出てくるのは自然な事なのだが、そこで姫子は考え込む。

『ひめこ~っ、お前は結婚しなかよね?』
『まぁ……相手も居らんですし』

とそんな話題をこの間の飲みで言っていたような気がする。

「――姫子さん?」
「何でもなかよ、部長とは今も仲良しやね」

しかしだ、結局は友情より愛情。
部長に悪いと思いつつもこっちを優先した。
何時までも(三十路になっても)友情を貫くことは出来ないのだ。

(大丈夫、私が先に結婚して……そんあと部長の相手ば探せばよか)
「と……お開きのようですね」
「え? あっ……」
「もし良かったら……帰りは送らせてくれませんか?」
「!!」

時間もやってきて皆が席を立つ時に彼が照れながら申し出てくれた。
その言葉に飛び跳ねたいほどに喜びながらも小さく『はい』と答えた。




(そういえば……今日の星占いで『今日会う人と結ばれる』って書いてあった)

家まで送ってもらい、ベッドの上で枕をぎゅっと抱きしめて思い返す。
今日はなんと幸運な日であっただろうかと。

(しあわせー♪)

携帯を取り出し、新たに登録された『須賀 京太郎』の文字を見て別れる時を思い出す。
まさかのとんとん拍子に進む関係に頬を緩め喜んだ。
最後には遊園地にも誘ってくれた、これは完全に脈アリだろうと……。

「ただいまー……ひめこー?」
「むふふ……♪」

土曜日は遊園地。
一年経ったらハネムーン、そう考えこの胸に抱く気持ちを忘れたくないと思った。

「えへへ♪」
「……ひめこが壊いた」

更に枕をぎゅっと抱きしめ、彼と会わせてくれた友清とロマンスの神様に感謝した。

カンッ!