咲を煽るだけ煽って、私は須賀くんの元に急ぐ
これで先が凶行に出れば須賀くんの中に残っている咲への罪悪感も未練も消える
そうなれば後は私だけが須賀くんを独占

考えるだけで笑みがこぼれるわ
そうね、この際だし『須賀くん』なんて他人行儀だし京太郎くんって呼ぼうかしら
完全に彼女になったみたいでいいわね
ウキウキ気分で部室を後にして私は須賀くんとの待ち合わせ場所の公園に向かう
そこには須賀くんが犬のように待っていて、私はいたずらっぽく『京太郎くん』って呼んで

…………なんで?
なんでそこにあなたがいるの? 京太郎くんと抱き合ってるの?

真っ白になった思考の最中にその女は京太郎くんにキスをして離れて私の方へ

まこ「なんじゃ久見とったんか、どうしたんじゃ荷物なんか落として?」
あなたがそれを言うの!? あなたが!

久「まこ、あなた!」
まこ「わしに怒るのは筋違いじゃ、京太郎はずっと悩んどった、それを甘く見たおんしが悪い」
なに、言ってるのよ、全部私の計算通りに……

まこ「京太郎が泣きながら相談に来ての、他の誰にも話せなかったんじゃろ
   それで慰めとったらいつの間にか、な、わしも好きになっとった
   ミイラ取りがミイラじゃな」

久「あなた、裏切ったの!?」

まこ「裏切ったのはそもそもお前さんじゃろ?
   咲から奪ったりせんかったらわしは恋心を持っても封じとったわ
   じゃが仲間や京太郎を不幸にする女が相手なら別、そういうことじゃ」

久「まこっ!」
思わず手をあげ、バシンッという音と眼鏡が転がる音がする
そして私の手にはフレームの角に当たってできた傷

まこ「今の痛みは受けておく、そのぐらいの筋はあるじゃろ
   わしはこれから咲に全部話して、あいつが望むなら返すでも共有するでもするつもりじゃ
   じゃが、苦しめるおんしにだけは渡さん」

久「私は、私は須賀くんが好きで……」
まこ「だったら真正面から戦うべきだったんじゃ、邪道を使うから痛い目を見る」

呆れたような目線だけを残し、まこは割れた眼鏡を拾ってその場を立ち去る

どうして? どうしてこうなったの? 全部私の思い通りだったのに
悪い待ちで勝つのが私の生き方なのに、どうして……

いつしか雨が私の手を濡らしていた、いや違う、これは私の涙

久「須賀くん、須賀くん、来て、私を抱きしめて、好きって言って……」
行き場のない気持ちは願望のままに言葉になる

忘れていた
王子様の隣に最後にいるのはお姫様
悪い継母はいつも殺されるのが物語の常だと

カン