『須賀くんが欲しい』

そう思い始めたのはいつからだったか

咲が須賀くんと背中合わせで本を読んでいたときか
和にネトマを教わりながら背中の感触にデレデレしていたときか
優希がじゃれついた拍子に転んで押し倒した形になった時か
まこに執事服が似合ってるから家の雀荘で働かないかと誘われていたときか

たぶん、全部
人が欲しがっているのを見ると、どうしても自分が一番に手に入れないと気が済まなくなる悪い性分

それでもインターハイが終わるまでは我慢できた
団体戦で優勝するのが夢だったから

でも、いざ夢を達成してみたら胸にぽかんと穴が開いた
本当に欲しかったのはこれだったのか分からなくなった

仲間の皆が嬉しそうに泣く姿を見ながら、私はぼうっと突っ立っていた

空虚な胸に再び火が灯ったのは、照れくさそうに顔を赤くした須賀くんと咲が手をつないでいるのを見た瞬間

『欲しい、須賀くんが欲しい』

咲から奪いたいという感情よりも前にそれが来た
気が付けば舌なめずりをしながら算段をたてていた

咲は照れ屋だからきっかけがない限り自分からは動けない
だから私は須賀くんが焦れるのを待てばいい

待てば待つほど胸の中の炎が大きくなる

『須賀くんならこんなどうしようもない私を救ってくれるんじゃないか』

炎が大きくなりすぎてそんな王子様にすがるような思いまで抱いてしまった

もうすぐ二人が付き合って二月、未だに咲は前に進めていないようだ

『ならば、いいんじゃないだろうか?』

私より須賀くんが欲しいならとっくに男女の関係になっているはず
それならより欲しい人間が求めて何が悪いのか?

気が付けば私は煽情的な格好を選んで夜に須賀くんの前に立っていた


久「ねえ須賀くん、一夜だけ私に思い出をくれない?」

その一夜で、須賀くんから離れられなくなるという未来を知らずに


カン