「へぇー、清澄って男子の部員もいたんだ! ねぇねぇ、麻雀強いの?」

「あー、麻雀は弱い……けど自慢じゃないが体力はあるぜ!」

「そうなんだ? ふふーん、実は私も、体力にはすっごい自信ある!」

初めは、そんな会話だっただろうか。
気が付けば意気投合して話し合い、些細な理由で我を張り合い、気が付けば勝負の世界。

そんな若気の至りというか、友情の儀式のような流れで、少年と少女は共に競い、汗を流す。
山の木々や川のせせらぎに包まれた二人の間を行き交うのは、手に収めるには少し大きな一つのボール。
少年がかつて自身を捧げていた、ハンドボールというスポーツで使われるそのボールを、二人はただ投げ合っていた。

「すごいじゃん京太郎! こんなに身体動かしたの久し振りだよ!」

手にしたボールを少女が投げる

「それは俺もだぜ高鴨!」

少し勢いのあるボールを跳躍して受け止め、そのまま投げ返す少年

清澄と阿知賀で企画された強化合宿。その合間の、麻雀とは離れた一幕。
二人の晴れやかな表情を見れば、誰もがこの青春の光景に心洗われる事だろう……


――――

「あの二人、青春してるわねぇ……」

「この緊急時に何言ってるんですか赤土先生!?」

遠目に見える生徒二人の繰り広げる光景を輝かしい青春の1ページ風に語る赤土晴絵。
そんな教員へ殆ど怒声とも言える声でツッコむ原村和。

とは言え、別段晴絵の表現は間違っていない、ほぼ事実を伝えているだろう。


ボールが轟音と共に目にも止まらぬ速さで行き交い

少女がボールをキャッチした途端にその足元の大地が爆ぜ砕け

少年が中空でボールを取った瞬間、炸裂音と共に大気が歪み

投げ合う二人の周囲が、戦争映画さながらの惨状である事を付け加えれば。


「しゃ~~~~~~~あっ!!!」

「うらあぁぁぁぁぁっ!!!」

瞬きの間に幾十幾百と、1つの筈のボールは無数の弾丸の様に、二人の間を激しく飛び交う。

かつてスポーツにのめり込んでいた少年と、山を駆け続け支配するにまで至った少女。
二人が繰り広げる原村和の常識を逸脱したハソドボール(断じてハンドボールではないとした和命名)は、和の存在に気付き気が緩んだ京太郎の隙を逃さず、穏乃が禁断の必殺技である「タカカモダイナマイト」を敢行。
浮ついて油断した京太郎共々周囲まで木っ端微塵に吹っ飛ばし、彼がボールを落とした事でようやく決着となったのだった。

カンッ