これから連休だ、前々から計画していたことを実行しよう。

みんなに会えるのが楽しみで仕方ない。

例えみんなが『俺達』のことを忘れていても、顔だけでも見ておきたい。

まずは何所に行こうか。






そうだ、照ちゃんに会いに行こう。

長野から始発で鈍行に乗って。

東京まで行ったらどうしようか……

遠目から顔だけ見て、帰ろうかな。

でも顔見ちまったら、声掛けたくなるよな。

照ちゃんが覚えているかなんてわからないのにさ。





白糸台の校門までくる。

凄く懐かしく感じる、本当は数日も経っていないし、そもそも今の俺は通っていないのに……

校門で感慨に耽っていると、見知った顔を見つける。

あまりに嬉しくて、気付いたら、声を掛けていた。


京太郎「菫さん!」

菫「?」

菫「誰だね君は?」


やっぱり覚えていなかった、覚悟はしていたはずなのに苦しい。

やはり俺だけが知っていて、相手は覚えていないのは辛いな……

まるで俺だけが世界に取り残されたみたいだ。






せめて、照ちゃんが元気にしているかだけ知りたかった。

照ちゃんが元気でいるなら、それだけで良かった。

だから菫さんに聞いてみた、本人同士しかわからないような聞き方で。


京太郎「失礼しました、長野の清澄高校からやってきたんですけど……」

菫「?はぁ……」

京太郎「宮永家のポンコツの虎姫は元気にやってますか?」

菫「?」

京太郎「飲み物買いに行ったままどっかにいったりしませんか?」

菫「!?」

菫「君は一体……」

京太郎「ただの……麻雀部員ですよ、宮永家と縁がある……特に妹の咲の方に縁がある、ね」

菫「そうか、少し待ってくれるか?本人に聞いてくるのと他校の人間を入れるためにはちょっと手間が掛かるので。」

京太郎「それでも、照ちゃんほど手は掛からないでしょう?」

菫「ふっ、違いないな……」

菫「しかし、君がどれほど照の事を知っているのか知らんが、変な事はするなよ?」

京太郎「そんなに変な事をするように見えますか?」

菫「さてね、しかし不思議なやつだな。」

菫「まるで初めて会った気がしない。」

京太郎「……どこかで会っているのかも知れませんよ?」

京太郎「それか、苦労しているもの同士波長が合ったのかもしれません。」

菫「ふふっまぁ、そういうことにしておいておこう。」





やがて入る事を許可されたので、部室に向かう。

会いたい人に、まっすぐ、まっすぐ、足が向かっていく。

まるで帰巣本能に導かれるように……


そして部室の扉に手を掛けると、ある言葉を思い出した。

『京ちゃん、頑張って。』

『ようこそ、猛獣がひしめきあう麻雀部へ。』


京太郎「今更だな、猛獣なんて一杯見てきたのにさ……」

菫「君はなぜ……ここにまっすぐ来れたんだ?」

菫「そして何故君は"それ"を口にした……」





京太郎「多分信じられないですよ。」

戸を開き中にいる人に一瞥する。

本当に懐かしい。

でも懐かしい面々は、見知らぬ顔に怪訝な顔をする。


京太郎「やっぱり、か。」

照「あの、他校の方でしょうか?それとも学校見学でしょうか?」


これが一番応えた。

照ちゃんが他人行儀な態度で、外行きの営業スマイルで、俺に話しかけてくる。

でも、同時に元気でよかった思ってしまう俺がいた。





手っ取り早く済ませるために、一言だけ伝える。


京太郎「俺と勝負しないですか?照さん。」

照「……いきなりなんですか?」

京太郎「単純に本気で打ちたいんです、貴女と。」

淡「な!?そんなの受ける事無いよ、テルー!?」

照「理由は?」


照ちゃんの語気が強まった、敵としてみてくれたようだ。

敵、敵か、だが今はそれで構わない。


京太郎「打てば解る。」

照「卓に着こうか。」

照「ルールはどうする?」

京太郎「"いつも通り"二人打ちで。」

照「?」

照「そうだ、名前を聞いておこう。」

京太郎「須賀、須賀京太郎……」

京太郎「今はそれだけでいい。」





京太郎「そうそう、照魔鏡を使うなら、使った方が良いですよ。」

照「…………」

京太郎「俺も本気で行くんですから、照魔鏡を見せてください。」


これは賭けだ、照ちゃんが照魔鏡を使わなかったらどうしようもない。

それでも使うと信じている。

何故なら十年も付き合ってきたんだ。

だから照ちゃんを信じる。





賽が回る、牌が出てくる。

配牌を見て、照ちゃんをみる。

そして鏡が出るのを確認したら、こっちも照魔鏡を出す。


俺の真後ろには照ちゃんの照魔鏡が。

照ちゃんの真後ろには俺の照魔鏡が。

それぞれ合わせ鏡になって、お互いを何重にも映し出す。

そうする事で照ちゃんは自分のことも、俺の事も照魔鏡で見ることになると思ったからだ。

さぁ、照ちゃん俺の正体は?そして照ちゃんの正体は見えたか?






――照視点――


なんなのだろう、この男は、いきなり入ってきたと思えば、いきなり勝負を吹っかけてくる。

本気を出せと言われたので、照魔鏡を出せと言われたので出してみたが……

この男は私に対して照魔鏡を出していた。

一対の照魔鏡。

聞いたことも見たこともなかった。

ましてやこの男のことも、私を映す鏡など……


鏡は真実を映し出す。

鏡は本性を映し出す。

鏡は正体を映し出す。

その鏡が告げている、『この人は私が最も大切にしていた人だ』と。

その鏡が告げている、『この人は私に最も近くに居た人だ』と。

その鏡が告げている、『この人は私が最も想っていた人だ』と。


知っているのに知らない、知らないのに知っている。

頭ではわからないのに、心が知っている。

心だけが知っているんだ、『この人は最も掛け替えの無い、愛した人だ』と。

そしたら自然に涙が出てきた。

涙が止まらない、止まらない。

心が理解してしまったのだ。

もうどうしようもないくらい泣いていた……


照「……ちゃ……ん……」

京太郎「……照ちゃん。」

菫「なんでだ、照……」

菫「なんでお前はそんなに辛そうな顔をしているんだ……」

菫「須賀!お前が照を泣かしたのか!?」


菫が私の好きな人に掴みかかっている。

違う、違うんだ、菫……その人が帰ってきて嬉しいんだ……

もう会えない人と思っていた、そんな別の私が告げている。






照「や……めて……菫……」

菫「しかし、照……」

照「京……ちゃんは……悪く、ないの……」

京太郎「!……」

京太郎「よかった……」

照「菫、ゴメン、京ちゃんと二人きりにして……」

菫「…………わかった、ただし何かあったら直ぐに呼んでくれ。」

照「うん……。」


菫がみんなを引き連れ部室から出て行く。

今は京ちゃんと二人きりだ。


京太郎「照ちゃん……久しぶり……かな?」

照「なんで、なんで私と会えたの?」


止まらない涙は止めないで。

弾む心はそのままで愛した彼の言葉を待つ。





「だってさ、約束したから……」

「約束を果たしてもらわないと。」

「……咲との仲直りのこと?」

「それもあるけど、今は枕が欲しいかな。」

「そっか、またしてあげるって言ったもんね……」


そうして私たちは膝枕をするという約束を果たしながら。

涙を零しあっていた。

【合わせ鏡の照魔鏡】

京太郎(白糸台)・照「「もういっこカン!」」





俺は今、岩手に来ている、俺は照ちゃんに勇気をもらった。

だからもうちょっと頑張れる……頑張れる気がした。

そして宮守女子高校に着く、俺が居たときとはやっぱり違うんだな。

ともかく校門を潜って麻雀部に顔を出す。


???「ダレ?」

京太郎「エイスリン先輩?」

エイスリン「?」

京太郎「あ、あの俺、ちょっとここに用事があって。」

エイスリン「オキャクサン?」

京太郎「まぁ、そんなところです。」


本当はお客さんと言うのも憚られる、元々俺はここにいたので客と言うより家人に近いのだが……


塞「あれ?誰?」

エイスリン「オキャクサン!」

塞「そうなの?」





俺を支えてくれた人が居た。


京太郎「須賀京太郎です。」

塞「初めまして、臼沢塞です。」

京太郎「……こちらこそ。」


照ちゃんでわかっていたはずなのにな。

やっぱり辛いな……


塞「あの、どこか具合が悪いんですか?」

京太郎「……いえ、大丈夫ですから。」


シロ「ん……」

塞「あ、シロ。」

京太郎「こんにちは。」






俺が迷った時に道を教えてくれた人が居た。

多分この人も覚えていないだろう、何よりそういうことが煩わしいと思うような人だ。


シロ「ちょっと失礼……」


この人はいきなりこっちにやってきて、こともあろうか俺の背中に登り始めた。


塞「ちょ!?ちょっと!?シロ!?」

シロ「凄くフィットする……」

京太郎「……そうですか。」


体のダル気はどうやっても変わらないようだ。

まったくこの人と来たら……

半ば呆れ気味だったが嬉しかった。

心のどこかに、体の記憶に、少しでも俺のことが残っていたのかと思うと。






胡桃「こんにち……わっ!?」

トシ「おやおや珍しい人が来たもんだねぇ。」

豊音「えー?どうしてシロが男の人に乗っているのー?」


俺と手を繋いでくれる人が居た。


京太郎「その、成り行きで?」

シロ「私の体が彼の体を必要しているの。」

胡桃「!?」

豊音「か、過激だよー!」

京太郎「ちょ!?シロさん!?誤解を招くような言い方はやめて!」

トシ「ちょっと見ない内にとんだことになっていたみたいだねぇ。」

塞「この人は熊倉先生の知り合いなんですか?」

トシ「知り合いと言えば知り合いかねぇ?」

京太郎「!?」

トシ「ただ、最近歳を取ったせいか物忘れが酷くて……」

京太郎「…………」


相変わらずよく分からない人だ。






トシ「ただあんたたちが打てば思い出すかも……」

塞「それじゃあ私が入りますね。」

シロ「ダルいけど仕方ない……」

豊音「私も打つよー!」


この人たちと打つのはいつ振りだろうか。

一緒に卓を囲んだのはいつ振りだろうか。

そんな事を思い出すより先に今を楽しんでおきたいと思ってしまった。


シロ「よろしく……」

塞「よろしくね。」

豊音「よろしくだよー!」

京太郎「よろしくお願いします。」


いつものように打ち、いつものように本気で能力を使って当たりあい。

まるであの日が戻ってきたようだった。






「「「「ありがとうございました。」」」」


トシ「どうだい?何かわかったかい?」

塞「なにか前に打ったことあるような気が……」

シロ「ダルい……」

豊音「京太郎君と打ってると楽しいよー」

胡桃「それで熊倉先生、この人は誰なんですか?」

トシ「ああ、こいつはね、私の放蕩息子みたいなものさ。」

トシ「あとついでに放浪癖もあるねぇ。」

トシ「そんな勘当同然な息子は今まで忘れてしまっていたわ。」

京太郎「ひっでぇ……」


絶対この人は最初からわかっていた。

その上でとぼけて打たせたのだ。

本当に食えない人だ……






豊音「でも、京太郎君と打つのは楽しかったよー。」


そう言って豊音さんは椅子から立ち上がろうとしてふらついた。

気付いたら手を伸ばしていて、豊音さんの手を掴んでいた。

初めて豊音さんと会ったあのときのように。


京太郎「危ない危ない。」

豊音「あ、ありがとー」

豊音「やっぱり京太郎君はいつも私を助けてくれるんだー。」

京太郎「俺の事を思い出したんですか……?」

豊音「だって初めての友達だもん……」

シロ「おんぶ……」モゾモゾ

塞「また!?」

シロ「だって京太郎は『いつでも背中を貸す』って言ってたし。」

京太郎「!?」

京太郎「シロさん……いつから思い出してたんですか?」

シロ「さて、いつからでしょう……」


この人もなんだかんだで食えない人だった……






エイスリン「…………」カキカキ 

エイスリン「キョータロー!コレ!」バッ

そういえばさっきからエイスリン先輩が何か描いてたな。


京太郎「これ……って。」

エイスリン「ミンナ、イッショ!」


俺を含めて宮守のみんなが道を歩いている絵を見せてくれた。

あの時描いてくれた絵と瓜二つだ。

京太郎「そうですね、みんなで帰りましょう。」

胡桃「??」

トシさんがみんなを引き連れて道を行く。

道に怖いものがあるなら胡桃先輩が隠して。

道が無いならエイスリン先輩がそこに道を描いて。

道がわからないならシロさんが道を決めて。

道に穴があるなら塞さんが塞いで。

そうやって道が続いたなら豊音さんに手を引いてもらう。


豊音さんは俺が豊音さんを救ったと思っているみたいだが……


「京太郎君と手を繋げると、ちょーうれしいよー!」


やっぱり、救われたのは、実は俺の方だったみたいだ。


【もう一度、描いて紡いだ道】


京太郎(宮守)・豊音「「もういっこカン(だよー)!」」






やって参りました、茨城に。

正直姉さんが一番怖い。

何が怖いかって今までの多くは対局の中で記憶の断片を取り出してきたけど(数名は怪しいけど)、相手が姉さんだと洒落にならない。

下手な事をするとレジェンドされちゃう……

しかしあの人はかわいそうだったな、健夜さんに跳満直撃なんてしなければ……

うだうだ考えても仕方ないな、なるようになるだろ。

とりあえず駅の改札口から出て、家までの道を歩いていく。

家までの道程はなにも変わってない、と言うか何も無い……

……何も無いのは慣れてるけどさ。

しかし辺りがそろそろ暗くなってきた。

やはり岩手から茨城の鈍行は無茶だったか……

学生の身に金銭関係は結構厳しい。

それでも節約する俺ってやっぱり主夫向きなのだろうか。

そんなバカな事を考えていたら、道端で蹲っている人が居る。

酔っ払いか?と思いつつ声を掛けた、が……






京太郎「あの、大丈夫ですか?」

健夜「あ~大丈夫です~」


やっぱり酔っ払いだった、しかも身内である。

これは酷いかなりの出来上がり具合だ。


京太郎「帰れますか?送っていきますか?」

健夜「え~おくってくれるんですか~?」

京太郎「はい。」






そう言って俺は健夜さんを背負って家まで『帰る』事にした。

とぼとぼと家までの道を歩き、うんうん唸ってる仕方ないこの人はやっぱり放っておけないオーラがある。

この先、この人に良いお相手が出来るんだろうか?

恒子さんの言葉を思い出して、あんまり深くは考えないようにした。


健夜「う~ん良い背中だ~」

京太郎「吐かないでくださいよー」

健夜「大丈夫だよ~吐かないよ~」

そんな取り止めの無い会話をしながら、背中の温かさを懐かしむ……






――健夜視点――


こーこちゃんに付き合って相当呑んでしまった。

しかもいつの間にか誰かにおんぶされている。

この子はいつの間にかこんなに大きくなってしまって……

はて、この子とはなんだっけ?

まあいいや~何か懐かしい気がするもの。

もうちょっとだけ、このタクシーの乗り心地を楽しんでおこう。

酔いが醒めたら誰だか確かめれば良いし。





京太郎「大丈夫ですか?そろそろ家に着きますよー?」

健夜「あーごめんね、大分お酒が抜けてきたみたいです。」

京太郎「そうですか、お酒は程々にしてくださいね。」

京太郎「……家に着きましたよ。」

健夜「んー?なにしてるの?」

京太郎「え、なにしてるのって……」

健夜「上がっていかないの?」


京太郎「……まだ相当酔ってますね。」

健夜「……お酒はもう抜けたよ。」

京太郎「……健夜さん。」

健夜「……京太郎君、姉さんって呼んでくれないんだー」


自然と名前を呼んでいた。

さもそう呼ぶのが当たり前のように。


「さあ上がって。」

「これから私の自慢の『弟』を両親に紹介しなくちゃいけないんだからさ……」

「……お邪魔します。」

「違うでしょ?こういうときは――」

「ああ、そうでしたね。」


『ただいま、姉さん。』

『おかえり、京太郎君。』


【ただいま・おかえり】

京太郎(小鍛治)・健夜「「最後のいっこカン」」






七つまで神のうち。

それは七歳までは体が弱く、亡くなってしまっても『神様に気に入られて連れて行かれてしまったのだ』と納得させる為に出てきた言葉。

だがここでは違う。

ここでは次代の姫様が9歳前後の時、それまで次代の姫様と深い縁を付けた七歳前後の子供に神をとり憑かせ、殺すのだ。

そうすることで、九面を降ろす際の繋ぎのような役割が出来、次代の姫様の九面降ろしを成功しやすくなるのである。

今回の次代の姫様は小蒔様、そして贄は神社近くに捨てられ、小蒔様と一緒に育てられた金髪少年だ。

無垢な笑顔を振りまく二人には申し訳ないがこれも代々伝わるしきたり故、安らかに人柱になっていただくしかない。

【とある神社の手記】






これで連休最後の場所になるが、俺は今鹿児島にある神社を探して右往左往している。

ここに関しては記憶がないから土地勘も何も無い。

ただ地図と目印さえあればいいので、目的地までそれほど苦労はしなかった。


でかい鳥居が見えて来て、それを潜って行く。

途中、人とすれ違った。

ここの巫女さんだろうか?

頑張って本殿までの道程を登っていったら声を掛けられた。

ナイスなおもちをお持ちの方でした。






「あの、参拝の方ですか?」

京太郎「ええ、ある意味墓参りですが。」

「?ここは神社なのですが……」

京太郎「ここに7歳くらいで亡くなった金髪の男の子はいませんでしたか?」

「!!……あの、一体どちら様でしょうか?」

京太郎「須賀です、須賀京太郎です、その反応を見る限り、何か心当たりがあるんですね?」

「……よく似てらっしゃいますね。」

京太郎「そうでしょうね。」

「……どうぞこちらへ。」


本殿の道程とは少しはずれて、普通の家らしき道程へと向かう。






京太郎「あの、何所へ向かうんでしょうか?」

「姫様のところです……」

京太郎「姫様?」

「姫様とは代々本家からの巫女を受け継いでいる神代小蒔のことです。」

京太郎「はぁ……それと、えーっと貴女は?」

「これは私としたことが……」

霞「申し遅れましたが、私、石戸霞と申します。」

京太郎「これはご丁寧に……」

霞「多分、姫様に会えば須賀さんの目的に沿うはずです。」


それだけ話してあとは口を噤んだ。

どうせ着けばわかるのだから。


家に着いたと思ったら石戸さんが家に入っていった。






霞「姫様お客様です。」

小蒔「はぇ?」

霞「お 客 様 で す」

小蒔「はいぃ!」


なんかやり取りがあったと思ったら誰かが家から出てきた。

これまたナイスなおもちをお持ちで……






小蒔「この殿方がお客様ですか?」

霞「はい、ただ姫様というよりは……」

小蒔「寝れば良いのでしょうか?」

霞「はい、お願いしますね。」


神代さんが深呼吸をして目を閉じると、別人になったような気配がした。

神代さんが喋り出す、先ほどとは明らかに違う声で。





小蒔(?)「やあ、よくきたね。」

京太郎「お前か、やっと会えたぜ。」

小蒔(?)「何しに来たの?」

京太郎「なんていうか……そうだな、強いて言うなら墓参りとお礼だな。」

京太郎「お前には引っ張り上げてもらったしな。」

小蒔(?)「気にしないで、僕は君だから、だから引っ張り上げたんだ。」

京太郎「あと、なんで『俺達』と一緒にならなかったか聞いていいか?」

小蒔(京太郎)「まだこの人は安定しないからね……」

小蒔(京太郎)「だからまだ僕が付いててあげなきゃいけないんだ。」

京太郎「……いつ頃まで?」

小蒔(京太郎)「そうだね……君の寿命が尽きる前ってことは無いけど。」

小蒔(京太郎)「この人がお母さんになって、次代の巫女が育ったらかな?」

京太郎「元に戻るのは当分先だなー。」

小蒔(京太郎)「そうだね、早くお婿さん見つけないとね。」

小蒔(京太郎)「あ、でも、もしこの人に手を出したら承知しないからね?」

京太郎「うへ~剣呑、剣呑。」

京太郎「それより、お前は幸せだったか?」

小蒔(京太郎)「存在しない僕にそれを聞く?」

京太郎「それでも聞いておきたい。」

小蒔(京太郎)「……少なくともこの人の傍に居たいと思ってるよ、それだけ。」

京太郎「そっか、それならいいんだ。」

京太郎「最後にお前の墓参りに行くよ。」

「僕にお墓はないよ。」

京太郎「それでも行きたいんだ、お前は俺だからさ。」

「……好きにすると良いんじゃないかな?」

京太郎「好きにさせてもらうさ。」

小蒔「う~ん……」

小蒔「あ~おはようございます~……」

京太郎「神代さん、わざわざ、ありがとうございました。」

小蒔「いえ、私も久しぶりに会えましたので……」

小蒔「と、言いましても、顔や名前も声も、わからないのですが……」

京太郎「きっとまた、会えますよ、その男の子に。」

霞「それでは須賀さん、参りましょうか。」

京太郎「ええ。」


そう言って俺は石戸さんに連れられて本殿に向かい、お参りして帰った。


【重ならぬことを選んだ最後の一人】

京太郎(永水)・小蒔「「リンシャンツモ、スーカンツ、和了です。」」





私は彼に会うために実家に戻ってきた。

東京まで来てくれて、私の記憶を思い出させてくれた彼の為に。


彼が通う高校と彼が住む家の間で彼を待つ。

そして彼が歩いてくるのを見て、声を掛けようとした。

でも彼の隣を歩く人影を見て躊躇ってしまう。


ねぇ、なんで彼と楽しそうに話しているの?

ねぇ、彼と一緒に笑い合えるの?

ねぇ、なんで彼の隣を歩いているの?


わかるよ、だって私たち姉妹だもんね……


貴女の顔を見れば彼に抱いている気持ちが。

皮肉だね、好きな物、好きなこと、好きな本――

そして好きな人まで同じだなんて……

ねえ、こんなときでも、

お姉ちゃんだから、我慢しないとダメなの?

お姉ちゃんだから、譲らないといけないの?


結局、彼とは会わずにすっきりしない気持ちを持ち帰る。

そうして東京に戻ってきた私は記者会見を受けるのだが、気の置けない友人には心配を掛けてしまった。

前に彼が来てくれたときに、私が泣いたら、私の為に彼に突っかかったやさしい友人。


そんな友人に励まされた。


「諦め切れるならそれでいいんじゃないか?」

「でも、諦めきれないなら妹を押しのけても、彼を振り向かせればいい。」

「お前は少し抜けているところが、私から見ても良い女だ。」

「お前が本気になれば、相手が誰だろうと振り向かせられるさ。」


諦めきれるわけがない……

答えなんて最初から決まっていた……


ゴメンね、貴女とはまだ仲直りは出来そうにない。


だって私は譲る気なんてない。

そして貴女にも譲らせたくない。


彼は自力で振り向かせる。

彼を想う気持ちなら私の方がある。

彼と一緒に居た時間なら私の方が多い。

貴女には負けないよ。


だからこれは、私からの宣戦布告。


「私に妹はいません。」


前は貴女を遠ざける為だったけど、今回のは宣戦布告。


だって今から私たちは……

【恋敵宣言】



どうやら恋敵は咲だけじゃない様だ。

以前、彼に会いに行った時、気付いたのだが。

妹の他に猛アタックしている女子がいた。

彼はそのアプローチに気付いてないようだが、気付くのも時間の問題かもしれない。

私は記者会見で「妹に宣戦布告」したあと、部室に戻った。


照「練習しよう。」

菫「照、お前にしては殊勝だな。」

照「別に、ただ負けられない相手が出来たの。」

菫「ふん、別に構わんさ。」

菫「淡、誠子、卓に入れ。」

誠子「わかりました。」

淡「ルールはー?」

菫「照、いつも通りでいいだろう?」

照「構わない、ただ箱下ありにして。」

菫「……わかった、始めるぞ。」




照「ツモ、1飜30符、300・500」

菫(いきなり来たか。)

誠子(宮永先輩の連荘……いかに止めるか、それが勝負所。)

淡(全然手が進まないんだけどー!)



照「ツモ、2飜30符、500・1000」

菫(やはり止まらんか。)

菫(しかし何か違和感があるな……)





照「ツモ、3飜30符、1000・2000」

菫(なんだこの違和感……)

淡(誰かテルを止めてよー!?)


照「ツモ、4飜30符、3900オール」

菫(ついに親番に入ったか。)

菫(しかも打点が一気にあがった。)


照「ツモ、5飜、4000オールの一本付け。」

照「ツモ、6飜、6000オールの二本付け。」

照「ツモ、7飜、6000オールの三本付け。」


菫・誠子・淡「「「!?」」」

菫(打点が上がってないだと!?)

菫(!そうか……今までの違和感は……!)

淡「テルーの連荘って打点上がりじゃなかったの!?」

照「今まではそうだった。」

照「大会のルールでは最高で48000に行ったらそれで終わり。」

照「ツモ、8飜、8000オールの四本付け。」

照「ツモ、9飜、8000オールの五本付け。」

照「ツモ、10飜、8000オールの六本付け。」


照「でも、それじゃ勝てない。」


照「ツモ、11飜、12000オールの七本付け。」

照「ツモ、12飜、12000オールの八本付け。」





菫「勝てない、というのは、照、お前の妹の事か。」

照「そう。」

菫「だから飜数に切り替えたのか、今まで飜数の申告なんてしなかったから違和感があった。」

照「ツモ、13飜、16000オールの九本付け。」

菫「勝ちたいのは姉としてか?打ち手としてか?それとも……」

照「ツモ、14飜、16000オールの十本付け。」

照「姉でもなく打ち手としてでもない……」

照「ただ……女として勝ちたい。」

照「だからこれは私の我が侭。」

照「だから、みんなは無理して付き合わなくてもいい。」

菫「誰が付き合わないと言った?」

照「……え?」

誠子「付き合いますよー宮永先輩の恋話とかそんな面白そゲフンゲフン……先輩の良い話を聞きたいですし。」

淡「知らなかったテルー?女の子の大半は、恋愛話が好きなんだよ?」

尭深「身近で起きてる恋愛は特に好物です……」

菫「この部はその御多分に漏れず、そういう話が好きらしいな。」

照「……わかった。」

照「ツモ、大三元、字一色、W役満は不採用で16000オールの十一本付け。」

菫「しかし何所まで行くんだ、これ?」

照「行ける所まで。」

【恋敵を倒す為の練習】




―2週目・数年前―


ずっと誰かを待っていた。

ずっと私を引く手を待っていた。

居もしない友達が来ると思っていた。

何故だろう、会ったこともない人に会いたいなんて。

何故だろう、こんな何も無いところに人なんて来る筈無いのに、それでも期待してしまうなんて。

部屋の戸が叩かれる、瞬間、何かを思い出しそうになりながら興奮を覚える。

きっと初めて友達が来たんだ、と。


「どうぞー」

明るい声で応答する、こんなこと家の人たちからすれば、普段の私からは想像できないだろう。


ただ、想像していた友達は思ったより年上だった。


トシ「おや、こんなところ閉じこもって……」

豊音「私はずっと友達を待っているんだよー。」

トシ「友達ねぇ……」

トシ「あんた名前は?」

豊音「姉帯豊音って言うんだよー……」

トシ「そうかい、私は熊倉トシ。」

トシ「それで、豊音、あんたここから出たくないかい?」

豊音「…………」

トシ「友達に会いたくないかい?」

豊音「!……」


少し体が動いたと思う、『友達』……それほど私にとっては大切な『何か』なのだろう。


豊音「よろしく、おねがいします。」

トシ「こちらこそよろしくね。」


熊倉さんが手を伸ばしてきた。

握手なのだろうか、私はその手を掴んだが、何かが違った。


豊音「違う……」

トシ「どうしたんだい?」

豊音「何て言うか……もっと大きくてゴツゴツしてたんだよー……」

トシ「……その手の持ち主に会えると良いねぇ。」

豊音「……うん!」



――2週目・一週間前・宮守女子麻雀部――


こっちの生活に慣れ、仲間も出来た。

友人と呼べる間柄の人も出来たが、未だに『友達』とは会えてない。


いつも通り部室に向かい、扉の前に立った時にいつもとは違う感じに戸惑う。

どうやら誰かが来ているようだ、しかもここの生徒ではない人が。


扉の向こうに気を取られていると、不意に後から声を掛けられた。


トシ「豊音どうしたんだい?」

豊音「あ、熊倉先生、中に誰かいるみたいで……」

胡桃「別に誰か居てもおかしくないでしょ?」

豊音「でもでもー男の人の声だったよー?」

トシ「ああ、それは多分、私の関係者だよ。」

トシ「それよりとっとと入っておくれ、あとがつっかえてるんだから。」

豊音「あ、ごめんなさい、今すぐあけます。」


部室の扉を開けると金髪の青年がシロに抱き付かれていた。


胡桃「こんにち……わっ!?」

トシ「おやおや珍しい人が来たもんだねぇ。」

豊音「えー?どうしてシロが男の人に乗っているのー?」


何故か見覚えがあるいつもの光景。


京太郎「その、成り行きで?」

シロ「私の体が彼の体を必要しているの。」

胡桃「!?」

豊音「か、過激だよー!」


彼女も彼のことについて身に覚えがあるのだろうか。


京太郎「ちょ!?シロさん!?誤解を招くような言い方はやめて!」

トシ「ちょっと見ない内にとんだことになっていたみたいだねぇ――」


私の視線は彼に釘付けになっていた。


トシ「ただあんたたちが打てば思い出すかも……」

塞「それじゃあ私が入りますね。」

シロ「ダルいけど仕方ない……」

豊音「私も打つよー!」




私は何かを思い出すために彼と打つことを決める。


シロ「よろしく……」

塞「よろしくね。」

豊音「よろしくだよー!」

京太郎「よろしくお願いします。」


きっと彼と打てば何かがわかるだろう、そう確信して、本気で打ちに行く。

途中、私は六曜の友引を使う。

彼はそれを見て、微笑んでいた気がした。



「「「「ありがとうございました。」」」」


トシ「どうだい?何かわかったかい?」

塞「なにか前に打ったことあるような気が……」

シロ「ダルい……」

豊音「京太郎君と打ってると楽しいよー」


本当に彼と打っていると楽しかった、友達と打っているみたいな、そんな感覚。


胡桃「それで熊倉先生、この人は誰なんですか?」

トシ「ああ、こいつはね、私の放蕩息子みたいな――」


彼との対局を反芻する。


豊音「でも、京太郎君と打つのは楽しかったよー。」



そう言って私は立ち上がろうとしたものの、どこかふら付いていたようだ。

気付いたら彼に手を掴れていた、あの時と同じように。


ああ、やっぱりこの人は……


京太郎「危ない危ない。」

豊音「あ、ありがとー」


この人は間違いなく……


豊音「やっぱり京太郎君はいつも私を助けてくれるんだー。」

京太郎「俺の事を思い出したんですか……?」


私の……初めての……『友達』


豊音「だって初めての友達だもん……」




――2週目・現在・宮守女子麻雀部――


彼が帰ってから一週間、私の心はずっともやもやしていた。

彼たちの死闘を見て、彼との別れの時に感じた、友達への感情。


初めての友達と別れたから……

それは何か違う気がした。

他のみんなとは違う、友達への感情。


わからない、わからない……

どうしてこんなに胸がもやもやするのか。

わからない、わからないから誰かに聞く事にした。




豊音「ねー塞ー?」

塞「なに、豊音?」

豊音「京太郎君が帰ってからなんだけどー……」

豊音「京太郎君が居ないとちょー寂しくて……」

豊音「胸がぎゅーってなるんだよー……」

塞「!?それって……」

豊音「?塞はなったことあるのー?」

塞「いや、私はなったことは無いけど……」

塞「普通はわかるものじゃないのかな?」

豊音「……?そうなの?」

シロ「あー、多分豊音はとてもダルい病気に罹っている……」

豊音「え!?私病気なの!?ちょーショックだよー!」ガビーン

塞「……あーなるほどね。」

豊音「どうにかならないかなー?」ウルウル

シロ「この病気は京太郎がいないと治らない……かも。」

豊音「京太郎君が居ないとダメなのー?」

シロ「かく言う私もその病気に罹っている……」

塞「!?」

シロ「私の場合も京太郎(の背中)が薬なんだけどね。」

豊音「京太郎君をお薬にしちゃうのー!?」

塞「お一人様一つの薬とか高級品の薬だね、京太郎君は。」

シロ「じゃあ先に京太郎をもらっちゃおうかな。」

豊音「だ、ダメだよー!」

シロ「どうして?」ニヤニヤ

豊音「ど、どうしてって……その……」オロオロ

豊音「と、とにかくダメなんだよー!」

【拗らせると死に至る病】





健夜「長野って案外遠いな……」

と一人ゴチた私は、今、長野の清澄高校の前にいます。

なぜ、わざわざ茨城から長野まで出張ってきたのかというと、一つは仕事、もう一つは弟の様子を見るため。

そんなわけで今、弟の高校に居るんだけど。

私まだ高校生で通る……よね?

それとも姉として行った方がいいのかな?

まあ、いいや、いざとなったら有名人の顔パスを……ダメだ、これは最終手段だ。

えっちらおっちらとまごついていると声を掛けられる。


「どうしましたか?」


何か髪に特徴的な角がある女の子だった。


健夜「え、えーっとちょっと清澄の麻雀部に用があって……」

「はぁ、麻雀部なら案内できますよ?」

健夜「ならお願いできるかしら?」

「はい、ところで貴女のお名前と御用は?」

健夜「小鍛治健夜です、弟の様子を見に来ました。」

「ウチの部に男の人は一人だけ……」

健夜「あら、京太郎君のお友達?」

「あ、はい、宮永咲です。」


これは私のというか小鍛治家の将来の為にも篩いに掛けなきゃいけないでしょうね。

決して京太郎君がいないと私の私生活レベルが下がるとかじゃなく。

姉として、姉として弟の将来を心配しておくだけ。



部室に行ったら姉が居た。

なんだこれ、俺の姉は茨城に居るはずだぞ!?


健夜「あ、京太郎君、私来ちゃったー。」


何抜かしてんだこの姉!?


久「まさかこの間の与太話が本当だとは思わなかったわ……」

京太郎「俺も何でこうなってるのかわかんないです。」

健夜「久しぶりに打とうよ。」

京太郎「ああ、はい、それはいいんですけど……健夜さんなんで長野に居るんですか?」

健夜「仕事のついでに弟を見に来ただけだよ。」

京太郎「今日くらいは健夜さんの本気を出させます。」

健夜「……楽しみにしてるよ。」

健夜「それであと二人はどうするの?」

京太郎「どうしましょう……」

健夜「……そうね、そこの二人はどうかしら?」

咲「へ?私ですか?」

健夜「ええ、貴女にはここまで案内してもらったし、それにただならぬ物を感じるから。」

和「あの私が選ばれた理由は?」

健夜「あなたインターミドルのチャンプでしょ?なら少しは楽しゲフンゲフン……強そうだからよ。」

和「よくご存知で。」

健夜「あと、胸が気に食わない。」ボソッ

京太郎「!?」咲「!」和「?」

健夜「さぁ、始めようか、清澄の実力はどの程度の物なのか、そして京太郎君はどこまで成長したのか見せてもらうよ……」

和「……須賀君のご家族を失望させるわけには行きませんね。」フワッ

咲「私、本気で行きますね。」ゴッ

京太郎(真)「俺の全てを使って貴女にあたります。」ゴンッ

健夜「そう、それは楽しみ。」ゴゴゴゴゴ


まこ「指名されんでよかった……」

久「奇遇ね、私もよ……」

優希「魔窟もいいとこだじょ……」





健夜「京太郎君、いつもと違う打ち方だね……」タンッ

京太郎(真)「白糸台で培った物と姉さんに教えて貰った物を混ぜて打ってますから。」タンッ

健夜「……そう。」タンッ

京太郎(真)「姉さんから教えてもらった十年が、俺の中に息づいていますから……」

京太郎(真)「簡単に消える物じゃないんです……」

健夜「……うん。」


あの人は孤独だった。

事、麻雀においてはあの人は今も孤独なのだろう。

強すぎる才気、絶対的な天運、他の追随を許さないほどの技術と勝負勘。

そのどれを取っても一流だ。

だから故に孤独を味わった。

だから故に人は遠ざかった。


小さい頃は背負ってもらった背中。

そして追えない背中をずっと見てきたが、今なら少しは追い付けるはずだ。

俺はあの人に孤独から救ってもらった。

だからこそ、あの人を孤独から救いたい。

あの人の隣に立てるようになりたい。

そしていつかは俺が支えられるようになりたい。

今は小さなその背中を……。


京太郎(真)「ロン、8000。」

健夜「はい。」スッ

健夜「京太郎君、本当に強くなったね……」

健夜「私もやっと本気で行けるんだ……」

京太郎「!……」


嬉しかった。

健夜さんが本気を出せる相手にまで俺が成長出来たということに。

同時に悔しくもあった。

あれだけ近くに居たのに、今まで孤独で居させたことを。

でも、これからは本気で相手をしてくれるんだ。

俺と、俺達と本気で打ってくれるんだ。





健夜「ツモ、8000オール。」

健夜「これで終わりだね……」


「「「「ありがとうございました」」」」


しかし、やっぱり姉という壁はとても高かった。

こちら側は誰一人手を抜いてないにも関わらず、追いつけなかった。


健夜「ありがとうね、京太郎君。」

京太郎「三人がかりでも勝てなかったです。」

健夜「それでも言わせて……こんなに成長してくれてありがとう。」

京太郎「!……姉さん、俺……」

京太郎「俺、もっと強くなります……」

京太郎「もっと強くなって、姉さんの背中を支えられるようになりますから!」

健夜「……うん、待ってるよ。」

健夜「それじゃ、今度、家に顔に出しに来てね。」

京太郎「ええ。」


そう言って去っていく姉さんの背中を……

いつの間にか小さくなった、その背中を見ながら……

いつかあの人の背中を支えられるようになりたいと改めて誓う。


【姉の小さな背中】