あなたは決して私を許しはしないのかもしれない。
振り向いては貰えなくとも、手放す気はありません。
私以外の人に微笑み、愛想を振り撒くあなたをもう見たくはないんです。
「京太郎さん、恨んでますか?」
私の言葉で彼の心が激しく揺れる。
熱を帯びた鋭い瞳に射抜かれれば、心臓が高鳴ってしまうことを止められない。
私に反応する、どんな微細なものでもとても嬉しく思ってしまう。
「俺が此処にいる理由をお前は知ってるよな、小蒔?」
「はい。私が望み、京太郎さんが承諾したからです」
私はこの世に産声をあげたときから特別でした。
霧島にて神を祀る一族、その本家。
神を降ろす者。
生まれた瞬間から決められたレールの上を歩き続ける宿命に不満はなかったんです。
将来の夢を見ることは許されず、自由に友人を作ることも出来ず、趣味の麻雀も修行と言う側面が存在したからこそ認められた。
それでもそのことに疑問を挟むことなく生きていられました。
「どんな手段を使っても私はあなたが欲しかった」
人生で最初で最後の我儘。
他の全てを犠牲にしても手に入れたかった。
あなたに出会って私は知ってしまったのだから。
「お前はこんなことをする子じゃなかったはずだ!」
もう知らない頃の私には戻れません。
それが京太郎さんに望まれていようと、失望させてしまったとしても無理なんです。
「私はこうして京太郎さんが手に入り幸せですよ」
彼の友人を脅迫の材料に使いました。
彼の両親には子供をお金で売るように仕向けました。
「愛してます」
「俺は……」
力なく項垂れた彼は私を拒まない。
今日も交わりましょう。
ここは私とあなたのための神境。
私を愛してくれるまでずっと二人きり、俗世の全てを忘れて戯れましょう。
邪魔するものは誰もいません。
誰もいないんですから。
カンッ!
最終更新:2016年07月23日 02:45