*********************************
この世界には魔女と呼ばれる人たちがいる
彼女たちには16歳になると一人前とみなされ、親元を離れ独り暮らしをするしきたりがある
ここ長野にもそのしきたりに従い日々の生活を送る魔女がいる…


「昨日はありがとうございました、染谷先輩」

「なに、気にするな。いつも家でビール買ってくれるお得意様じゃけぇ、いつでもサービスしちゃる」

「ははは、親父がビール好きですから…」


清澄高校からの下校時に会話する京太郎とまこ
二人で麻雀部の事務処理をし、終わったので一緒に下校していたのだ
会話の内容だが…
昨日、酒屋兼雀荘権兼喫茶店のまこの実家に京太郎はビールを買いに行き
その時にジュースを何本かサービスしてもらった礼をしていたのだ


「それにしても… 二学期になっていきなり妹尾が転入して来よって吃驚したわ…」

「あ、あははは…」

「ん? なんじゃ、京太郎。なんか知っちょるんか?」


まこのセリフに明後日の方向を向いて乾いた笑いをする京太郎
それを訝しむまこ
と、その時、二人は声を掛けられる


「京太郎君! 染谷さん!」

「この声は妹尾… へっ?」

「ああ、佳織さん」


そういいつつも両耳を手でふさぐまこ
そしてしばらくして…

声の主は話題に上がっていた妹尾佳織
彼女は二学期に突然、鶴賀高校から転校してきたのだ
見知った姿を見て2人に声を掛けてきたのだ、上から…
振り向いた先にいたのは竹箒に跨り、二人の方にゆっくり降りてくる佳織
その常識を疑う光景にまこはフリーズしてしまう


「京太郎君、今帰りですか?」

「ええ、そうですよ。そういう佳織さんは?」

「えへへ、帰り道ですが空を飛ぶ練習をしてました」


一方の京太郎は動じもせず普通に会話している
かなり慣れた感じである
その後、復活を果たしたまこ
京太郎と佳織は二人で説明する
曰く…

佳織は京太郎の再従姉弟で魔女である
16歳になった佳織は魔女のしきたりに従い親元を離れることになったのだが…
過保護な彼女の両親が心配し、実家の近所の親戚の家である京太郎の家に居候することになったこと
そのため、遠すぎて鶴賀に通うのは難しくなり、京太郎がいる清澄に転入したこと等々
突っ込みどころの多い話であった

その後、友達と遊び行くといって、まこに佳織を任せた京太郎(押し付けたともいう)
まこと佳織の二人で家路を歩くことになった


「全く、京太郎君はマイペースなんだから」

「ははは、麻雀部ではそんなそぶりは見せないがのぉ」


談笑しながら歩く2人であったが…
何かに気付いたのか佳織はいきなり藪の中に入っていく


「な、何をしちょるんじゃ!?」

「いえ、せっかく同じクラスになったのでお近づきの印をと」

「お、お近づきの印…?」


そういって更に藪の奥に入り込んでいく佳織
「この独特のアンモニア臭…」
「かなり近いですねぇ…」
など意味不明な言葉を呟きながら藪を掻き分けていく
そして何かを見つけたのか、藪の入り口で待っていたまこに声を掛ける


「まこさーーん! 今、引っこ抜くので、耳押さえといて下さーーーーーーい!」

「み、耳を押さえとけ…? 一体なんじゃ…?」


そういいつつも両耳を手でふさぐまこ
そしてしばらくして…


不気味な叫び声が甲子園のサイレンのごとく長々と響き渡る


「な、何じゃぁあああ!?!?」

「まこさーーん、お待たせしました!」    お゛お゛お゛オ゛オ゛お゛お゛お゛お゛(C.V.若本)


まこが困惑してると、手に不気味なモノを持った佳織が笑顔で藪から出てきた
一枚の葉っぱが頭についた人型をした大根
しかもヌルヌルと動いていてなかなかに気色悪い

「とったど、なんて」 お ヴ ぇ あ お お オ オオ お お(C.V.若本)

「なんじゃ… それ…」

「知りませんか? これ、マンドレイクって言ってとても珍しい植物なんですよ」 オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ(C.V.若本)

嬉々として説明を始める佳織
曰く
こんなところで見つけられるなんてすごくラッキー
引っこ抜いた時の悲鳴をまともに聞いちゃうと死ぬこともある
毒性は強いがしっかり毒抜きすれば万能薬にもなって凄く便利


「それじゃ、どうぞ!」

「へっ!?」


そう言ってまこにマンドレイクを差し出す佳織
彼女はそのキモい物体(マンドレイク)をまこにプレゼントする気満々のようだ
当然、まこは固まって冷や汗を流す
そんなもの貰っても扱いに困るし、何より嬉しくない

「言ったじゃないですか、プレゼントあげたいって。このマンドレイクがプレゼントです。私たちの友情の証です!」


佳織の純真な笑顔を見ていると、拒否するのは罪悪感がハンパない
しかしこんなモノ、それ以上に欲しくない
しばらく葛藤に悩まされたまこだったが絞り出すような声で


「い、いらん…」


というのが精いっぱいだった


この後、佳織は清澄麻雀部に所属することになったのだが…
京太郎と佳織が再従姉弟だと知ってた咲、優希、和、久が驚愕したり
京太郎の家に居候していると知った咲、優希、和、久が大騒ぎをしたり
佳織に京太郎のことに関して先を越されたと思った咲、優希、和、久が要らん企みをしたり
京太郎を巡って恋の鞘当が頻発するのだが、それは別のお話

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2016年07月23日 02:44