「遠くに引っ越しするなんて嘘だよね?」

「ごめん……」

 彼女は謝罪の一言を発し、決して目を合わそうとはしなかった。

 俺の口からはどうして、何でと疑問の言葉が溢れそうになったけれど聞けなかった。

 今にも泣き出しそうな彼女の悲しい表情を見て、我儘を口にするのは酷く幼い行為に思えてしまったから。

 代わりに問うたのは未来のこと。

「いつか、……また会えるかな?」

「うん、きっとね」

 初恋の人とはその日に別れてから長いこと会えていない。

 連絡先も知らず、彼女から便りが届くことも一度としてなかったんだ。


-5年後-

 中学校へと進学し、環境も変わり、友人も増えた。

 ハンドボールに精を出し、全国を目指してスポーツに励む日々。

 二度目の夏、俺は彼女の姿をテレビの向こう側に発見した。

 様々なメディアで取りざたされるあの人は、とても遠くに行ってしまった。

 物理的な距離よりも、ずっと遠くに……

 アウトドア派な俺がインドアスポーツの象徴たる麻雀に興味を持ったのは、彼女の影響だろう。

 もっとも興味を持っただけで実際に牌へ触れたり、やってみようと思ったのは後の話だけれど。


-7年後-

 真夏の東京、俺と彼女は再会した。

「えっ……まさか、京ちゃん?」

「お久しぶりですね、照さん」

 予期せぬ再会に宮永照は固まっていた。

 彼女を目の前にして俺も成長したのだと実感する。

 かつては見上げていたのに、今では俺が見下ろしている形なのだから。

「大きくなったね。それに、格好良くなった」

 思い出の中、映像の彼方へと消えたあの人は……

「照さんは綺麗になりましたね。それに今ではチャンピオンじゃないですか?」

 触れ合える距離で照れたようにはにかみ、俺の胸はドキリと高鳴る。

「ありがとう。ところで京ちゃん、昔みたいに私のことはお姉ちゃん呼びでも良いんだよ?」

「高校生になってそれは恥ずかしいですよ」

「そう? 立ち話もなんだし、美味しい洋菓子屋さんにでも行かない? お姉さんがご馳走するよ」

「相変わらず、お菓子が好きなんですね」

 俺も彼女もきっと変わった。

 それでも変わっていない所だってたくさんある。

「うん、大好きだから」

 離れていた時間を埋めるように、この夏、多くのことを語り合う。

 そして、俺たちの関係も移ろい行く……


カンッ!




-おまけ-


淡「大変、テルが、テルがぁぁ!」アワワ

菫「照がどうしたんだ淡? また何かやらかしたのか?」

尭深「……」ズズ

淡「金髪の男と二人きりで密会してた!!」

尭深「ゴフォッ…フォッ……はぃ?」

誠子「えっ、宮永先輩がデート!?」

菫「」

淡「テルのお気に入りのケーキ屋で親しそうに話してたのを私は見たんだよ!」

誠子「淡、先輩はどんな雰囲気でした? 恋人のような?」

淡「メディアの前で見せるような作った感じじゃなくて自然体だったかな? 食べ差し合いもしてた」

尭深「相手の男性は?」

淡「金髪、背は180はあったかも? 顔はイケメンだった。年は私たちと変わらない感じ?」

誠子「これは黒かな?」

尭深「黒でしょう」

菫「」


もう一個カンッ!