―― 魔物のオスは身体的に人間よりも遥かに優れている。

眠らずに何日も恋人の欲求を受け止める事も可能だし、殆ど病気もしない。
肉体的にも頑丈で車に引かれても、すり傷程度で済むそうだ。
寿命も長く、かつては老人であった人々でさえもボケや認知症から解放されて毎晩、ハッスルしている。

京太郎「(…だけど、それが技術的なものに繋がるかと言えばそうじゃないんだよなぁ…)」

俺の目の前にあるのはポッキリと折れた銀色の輪っかだった。
成形の途中で失敗したそれに俺は小さくため息を吐く。
これで何個目かはもう忘れたが、今回も上手くはいかなかった。
その事実にずしりとしたものが胸にのしかかるのを感じる。

京太郎「(やっぱ難しいよなぁ…)」

俺が今、いるのはホテルの近くにある工房だ。
以前はアクセサリーショップと一体になっていた其の場所を俺は今、借りている。
無論、それは智葉に手作りの指輪という最高のプレゼントを送る為だ。
が、その工程はあまり順調とは言えない。


京太郎「(輪っかを作るだけなら簡単なんだがなぁ…)

針金よりも少し太い金属線を丸めて溶接してハイ終了。
其の程度の指輪ならば素人である俺にだって簡単に作る事が出来る。
だが、俺にとってそれは婚約指輪にも等しい大事なものなのだ。
そんな手軽に作ったものを、ポンと渡す事なんて恥ずかしくて出来ない。

京太郎「(まぁ、幸いにして、費用は殆ど掛かっていないんだけど…)」

炉の炎が魔物であるイグニスになり、そのまま結婚したという店主はとても気前の良い人だった。
恋人への指輪を作りたいという俺を快く迎え入れ、こうして工房を貸してくれているどころか、費用は材料費だけでいいと言ってくれている。
しかも、その材料費だって、失敗した分は後で炉で成形しなおせば良いから、と必要最低限の分しか受け取ってくれない。
そんな彼の迷惑になりすぎないように早く完成して智葉にプレゼントしたいんだけど…。

京太郎「(いきなりプロのようなものは作れないよなぁ…やっぱり)」

せめて智葉が外につけていって恥ずかしくない程度のものを作りたい。
そんな俺の希望は、しかし、意外とハードルの高いものだった。
それなりに見栄えが良いものを作ろうとすると、当然の事ながら必要な技術が増えていくのである。
臼沢さんにこの店を教えてもらったその日からちょこちょこ来るようにしているが、まだまだ納得の行く代物は出来ていない。

京太郎「ふぅ」

憧「こーら」ピトッ

京太郎「うぉお!?」

憧「なーにため息ついてんのよ」

京太郎「あ、憧…」

見通しの立たない作業に一つため息を吐いた瞬間、俺の頬に冷たいものが押し当てられた。
驚きながら後ろを振り返れば、そこにはペットボトルをもった憧の姿がある。
だが、俺はここにいる事を誰にも伝えていないはずだ。
それなのに一体、どうして憧がここにいるのか。
そう思う俺の前で憧がそっと俺に向かってベットボトルを差し出した。

憧「差し入れ。そろそろ休憩にしたらどう?」

京太郎「あ、ありがとう」

京太郎「…じゃなくてなんでお前、ココにいるんだよ」

憧「アンタが色々とこそこそやってるみたいだから…つけてやろうかと思って」

京太郎「ストーカーだぞ、それ」

憧「ふーんだ。レイプ犯には言われたくありません」クスッ

そう笑いながら憧は俺の隣に座った。
ごく自然なその動作に俺は何も言えなくなる。
まぁ、元々、失敗するところを見られたり、下手に期待されて失望されるのが怖いから秘密にしていただけなのだ。
こうしてそれを知られた以上、彼女のことを拒む理由はない。
実際、そろそろ俺も休憩しようと思っていた訳だし…ここは憧の差し入れをありがたくもらっておこう。

憧「で、それだけ唸ってるって事は上手くいってない訳?」

京太郎「あー…まぁな」

憧「へぇ…珍しいわね、アンタってなんでもそつなくこなしそうなイメージがあるのに」

憧「あ、麻雀以外ね?」クスッ

京太郎「出来の悪い生徒で悪ぅござんしたね」

憧「ふふ。拗ねないでよ。別に責めてる訳じゃないんだし」

憧「寧ろ、あたしとしてはアンタと一緒にいる理由が増えて……まぁ…その…」モジ

京太郎「嬉しい?」

憧「だ、誰がレイパーと一緒に居て嬉しいって思うのよ!!」カァァ

憧「あ、あたしが言いたいのは…ほ、ほら、アレよアレ」

憧「ほ、他の子に手を出さないように監視できるから安心って言うか…その…」

京太郎「はは。憧はホント、独占欲強いなぁ」

憧「ど、独占欲じゃないもん!」

憧「コレ以上あんたの毒牙に掛かる犠牲者が増えない事を祈ってるだけだし!!」メソラシ

京太郎「そこまで心配かなぁ…」

憧「……少なくとも滝見さんに対しての行動見てると全然、安心できないわよ」ムッスウ

そう拗ねるように憧は言うけど、アレは不可抗力というか何というか。
既に幾度と無く説得しても尚、俺達の言葉は彼女には届かなかったのだ。
その上、林の向こうに引きこもられてしまったのだから強引に踏み込むしかなかったというか。
あそこでヘタレていたら滝見さんの事を説得なんか出来なかっただろうし、許して欲しい。

憧「まぁ、そういうところがあんたの美徳だって言うのは理解してるけどね」

憧「それでもあたしはまだ智葉さんや美穂子さんみたく完全に吹っ切れた訳じゃないし…」

京太郎「…憧」

憧「…それより京太郎が作ったものってどれ?」

憧「思いっきり笑ってあげるから見せてよ」

京太郎「いや、笑うなよ」

…本当は憧に色々と言いたい。
未だ不安を抱く彼女のそれを晴らしてあげたいと俺はそう思っている。
だが、こうやって憧が話題を変えた以上、彼女はそれを望んでは居ない。
暗い話題を断ち切った憧に踏み込んでも迷惑がられるだけだ。
ならば、今は彼女の軽口に付き合って流すのがきっと一番だろう。

京太郎「…ほら、これだよこれ」

憧「へぇ…なんだ。ちゃんとリングになってるじゃん」

京太郎「お前は俺をなんだと思ってるんだ…」

憧「ふふ。ごめんって」

憧「でも、意外とそれなりにそれなりじゃない」

憧「別に失敗って言うほどのものじゃないと思うけど」

京太郎「俺が満足してないんだよ」

京太郎「智葉にあげるものなんだから、それなりじゃダメなんだ」

憧「ふーん。でも、これなんか良いと思うんだけどなぁ」スッ

京太郎「あ…そ、それは…」

憧がヒョイと持ち上げたのは少し幅のあるピンクシルバーリングだった。
表面に葉っぱのような模様を刻まれたそれは途中からピッタリと途切れている。
その模様を刻み込む作業の途中で失敗してしまい、全てやり直しになってしまった禍根の一品。
けれど、それとは関係なしに、それは憧には見られたくないものだった。

憧「あ、ごめん。触っちゃダメな奴だった?」

京太郎「あー…いや、別に触って良いんだけどさ…」

憧「けど?」

…本当はサプライズで渡すつもりだったんだけどなぁ。
でも、見られてしまった以上、仕方ない。
変に反応もしてしまった事だし…取り繕うよりも正直に白状した方が良いよな…。

京太郎「…それお前にプレゼントする予定だったデザインの奴だから」

憧「…え?」

京太郎「だから、それ憧の分だったんだよ」

憧「な、なんで…?智葉さんだけじゃなかったの?」

京太郎「んな訳ないだろ。ちゃんと全員分作ってるよ」

京太郎「つーか、そうじゃなきゃ不公平過ぎるだろ」

ハーレムを意地する上で大事なのは全員を平等に扱う事だ。
少なくともプレゼントや贈り物と言う意味で特別扱いはしちゃいけない。
日頃、憧たちは俺のワガママに付き合って、ハーレムを許容してくれているけれど、決して何も感じない訳じゃないんだから。
彼女たちが無意味に傷ついたり、いがみ合ったりするような原因を極力作らないのがハーレムの主となった俺の使命だ。


京太郎「…まぁ、それを差し引いても、俺は憧に指輪を渡したかったんだけどさ」

憧「そ、それって…」ドキドキ

京太郎「指輪を付ければちょっとは素直になるかなって…」

憧「意地っ張りで悪かったですねええ?」ノビー

京太郎「いひゃひゃひゃひゃ」

憧「…まったく」パッ

京太郎「…ま、本当の理由はさ」

京太郎「憧の事を縛り付けておきたかったとかそういうのなんだけど」

憧「ふきゅっ」カァァ

今まで魔物が夫を蔑ろにしたり、恋人を振ったなんていう事実は確認されてはいない。
基本的に一度、心を預けた相手に彼女達は心から尽くし、愛してくれている。
だが、こうしてハーレムを憧たちに強要している俺にはその自信がなかった。
何時か憧は俺の事に幻滅し、去っていくかもしれない。
それを防ぐ為にも指輪という形あるもので彼女の事を繋ぎ止めたくて仕方がなかった。

憧「…ほ、ホント、自分勝手なんだから」

憧「その上、傲慢で自己中でエゴイストで…」

京太郎「それ全部、同じ意味じゃね?」

憧「う、うっさい!と、とにかく!とにかくよ!!」スッ

京太郎「え?」

真っ赤になった顔で拗ねるように言いながら憧は俺に向かって左手を差し出した。
指を微かに広げた彼女の手はとても整っている。
まさに女の子と言った綺麗な指先は、今、小さく震えていた。
一体、それはどうしてなのか。
いきなり差し出された左手の意図も分からない俺の前で憧は目を逸らしながらゆっくりと口を開いた。

憧「…し、しなさいよ」

京太郎「え?」

憧「だ、だから…あんたがそうやってあたしの事を縛り付けたいなら…そ、そうしなさいって言ってるの」

京太郎「…いや、でも、アレ、失敗作だし…」

憧「そ、それでも良いから!い、いや、良くない!良くないけど…!」

憧「で、でも…アンタのそういう欲求ほっといたらSMプレイとかされそうだし…」

憧「べ、 別にそれそのものは嫌じゃないけど…あ、あたしの所為で智葉さん達が犠牲になるのも心苦しいし!」

憧「それに…あたしだって…三番目のあたしだって一個くらいはあんたの一番欲しいもん…」

京太郎「…憧」

…多分、最後にポツリと呟いたそれが憧の本心なんだろうな。
正直、最初に憧と会っていれば憧が俺の『一番目』だったと思う。
彼女はそれくらいに魅力的な女の子なんだから。
だけど、憧はきっと『三番目』である事を寂しく思っているのだろう。

憧「あたしの一番は全部あんたなのに、京太郎はそうじゃないなんて不公平過ぎるでしょ!」

憧「だ、だから…つけてよ。指輪」

憧「京太郎の好きなところで…良いからさ」

京太郎「…分かった」

そんな憧の訴えに俺が頷かない理由はなかった。
正直、失敗作の指輪をつけてもらうのは恥ずかしいが、本人がそれで良いとそう言っているのである。
彼女の寂しさが少しはマシになるのであれば、俺の恥ずかしさなんて安い代償だ。
それに別に後で改めて別の完成した指輪を渡しても良い訳だし…今はとりあえずこれを憧の指につけてあげよう。

憧「…ん」ドキドキ

京太郎「えーっと」

憧「…な、何?」

京太郎「こういう時ってさ。病める時も健やかなる時も…とか言った方が良いのかな…?」

憧「ば、バカ。普通につけてくれればいいのよ」カァ

京太郎「じゃあ…」スス

憧「ま、待って」

京太郎「え?」

憧「…汝、須賀京太郎」

京太郎「はい」

憧「健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも…」

憧「新子憧を愛し、新子憧を敬い、新子憧を慰め、新子憧を助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」

京太郎「誓います」

憧「ふきゅっ♪」

京太郎「…いや、そこで鳴くなよ」

憧「し、仕方ないでしょ…だ、だって今の…」

京太郎「…ん?」

憧「~~~!ば、バカ!アンタが格好いいなんてそんな事ないんだから!」

憧「そ、それより誓ったのなら早く指輪つけてよ」

憧「は、恥ずかしいじゃない…」カァァ

京太郎「はいはい。分かりましたよ、お姫様」スッ

憧「……ん♥」

左手の薬指に通った指輪。
それを見て憧は幸せそうに微笑む。
それは勿論、素人が作ったものだけあって歪だ。
憧の綺麗な指にハマっているのを見ると改めてそう思う。
だけど、その指輪を心から嬉しそうに見る憧を見ていると…なんだかこっちもすげぇ幸せになってくるというか。
…本当に憧が恋人で…俺は幸せ者だなってそう改めて実感する。

憧「…そういえばさ」

京太郎「ん?」

憧「これ石入ってないみたいなんだけど…」

京太郎「あぁ、石は完成してから入れようと思ってたから」

憧「じゃあ、今、入れてくれる?」

京太郎「あ、じゃあ、一旦、外して」

憧「…やだ」

京太郎「…いや、やだって」

憧「折角、京太郎がくれたのに…余韻も程々に外されるとかやだ…」ギュッ

京太郎「分かった分かったから…そんな風に必死になって隠すなって」

憧「本当に取らない?」

京太郎「取らないよ。まったく…どんだけ気に入ったんだよ」

憧「き、気に入ってなんかないわよ!こ、こんな作りかけの指輪なんて…全然、これ、これっぽっちも…」ニマニマ

京太郎「顔にやけてんぞ」

憧「はぅっ」カァァ

…まぁ、そういう憧を見て俺もにやけてるんですけどね?
しかたないじゃん…まさか憧がこんなに喜んでくれるなんて思ってもみなかったんだから。
正直なところ、ここが他人様の工房とかじゃなかったら押し倒してた。
自室とかだったら絶対に押し倒してエロエロしてたくらい今の憧可愛いんだよ。

京太郎「じゃあ、仕方ないからそのまま入れるか」

憧「な、なんかそれエッチ…」モジモジ

京太郎「このムッツリエロフめ」

憧「え、エロフなんかじゃないわよ!!」

憧「っていうかオープンスケベのあんたに言われたくない!」カァァ

京太郎「はいはい。憧は清純派だもんな」

憧「そ、それはそれでいやらしい気がするんだけど…」

京太郎「やっぱムッツリじゃねぇか」

憧「ち、ちーがーいーまーすー!」

憧「例えそうだったとしてもアンタに影響されてエロくなっただけだし!」

憧「本来のあたしはもっとピュアだもん!」

京太郎「まぁ、憧はもともと潔癖気味だったしなぁ…」

憧「…言っとくけど、今も潔癖だからね?」

憧「あたし、アンタ以外の男の人とか絶対無理だもん」

憧「京太郎が特別になっただけなんだから勘違いしないでよね…!」

京太郎「…お前はそれをここで言って、どうしろって言うんだよ…」

憧「え?」

あー!もう!ホント可愛いなあ!!
可愛いなぁ、コイツ!!
そんだけ可愛い事言って俺にどうしろって言うの!?どうさせたいの!?
ホント、マジで押し倒して喘がせまくるぞこのやろう…!!

京太郎「…なんでもない。それよりほら、指出して」

憧「ん…」

京太郎「…出来るだけ動くなよ?結構、精密な作業だし」

憧「分かってる。…あ、でも…」

京太郎「ん?」

憧「…こ、こうして手に顔を近づけられるとなんだか…その…」カァ

京太郎「…」チュッ

憧「ひゃぅ♪」ビクッ

京太郎「…これで満足ですか、お姫様?」

憧「だ、誰も手のひらにキスして欲しいなんて言ってないわよ!」

憧「で、でも…あ、ありがと」ポソ

京太郎「どういたしまして」クスッ

ま、こうしてキス一つで大人しくなってくれるなら楽なもんだ。
それに要求そのものも可愛らしいもんだしな。
それよりも今は石入れに集中…っと。
別に高価でも珍しいって訳でもないが…憧が目の前にいる訳だしな。
あんまり格好悪いトコロは見せられない。

憧「…そういえばそれ一体、何の石なの?」

憧「あんまり見た事ないけど…」

京太郎「ん?これか?アレだ、ハートのウロコだよ」

憧「え?でも、あれってウロコじゃないの?」

京太郎「いや、改めて調べてもらったところ、アレ、ウロコ状の鉱物らしい」

京太郎「一体、何で出来ているのかまったく謎だけど、何かのウロコって訳じゃないそうだ」

憧「へぇ…別に魚じゃないのにポロポロ敵が落とすもんね」

それなのにどうしてドロップするかは相変わらず謎だが、まぁ、迷宮の中では常識は通用しないからな。
どうしてそうなったか、よりはそういうもんだと受け入れてしまったほうが色々と楽である。
それにまぁ、そのハートのウロコのお陰で色々と白水さん達から援護も受けている訳だし。
それが何なのかを詳しく調べるのは学者さんたちに任せるべきだろう。
俺にとって大事なのはあくまでも… ――

京太郎「で、白水さんたちが言ってたじゃん」

京太郎「これを集めたカップルは強い絆で結ばれるって」

憧「だから指輪に?」

京太郎「まぁ、金欠だったっていうのも無関係じゃないんだけどさ」

憧「うわぁ…全部、台無しじゃない…」

京太郎「はは。悪い悪い」

京太郎「でも、下手にガラス球とかはめるよりもこっちの方が良いかと思ってさ」

京太郎「ガラス球はなんか偽物の愛っぽいけど…これはちゃんとした本物だし」

憧「…また上手いこと言っちゃって…それで誤魔化したつもり?」

京太郎「でも、お優しい憧さんは騙されてくれるだろ?」

憧「ま、まぁ…別に…まったく嫌って訳じゃなかったし…」

京太郎「ホント、憧はやさしいなぁ」

憧「ぼ、棒読みは良いから早く入れてよね」

京太郎「はいはいっと…」カチャ

京太郎「…ふぅ、これでよし」

後で戦闘中に外れないように改めてカットとか色々面倒な作業はあるけど、とりあえずこれで当面は大丈夫だろう。
恐らく日常生活で普通に過ごしている分にはそう簡単に外れたりはしないはずだ。
まぁ、例え外れたにしてもハートのウロコは他にも沢山あるし。
ハート状になってないウロコの一部を削って作ったものだから予備は沢山あるから、一個や二個くらいなくしても大丈夫だ。

憧「あ、ありが…」

―― パァァ

憧「え?」

京太郎「っ!憧…!!」

それに憧がお礼を言おうとした瞬間、指輪にハメたウロコからまばゆい光が迸った。
真っ白なそれはあっという間に工房の中を包み込み、視界を白で覆い尽くしていく。
それが一体、何なのかは分からないが…ともかく予想だにしなかった出来事が目の前で起こっているんだ。
この光が何なのか、そしてどうして光っているのか分からないが…とにかく憧を護らなきゃ。
そう思って俺が手を伸ばした瞬間… ――

憧「…きゅんっ♪」ムニュ

京太郎「あれ?」

まるで用は済んだとばかりに光が去り、ついさっきと変わらない工房が再び現れる。
念のため、周りを見てみたが、何かが壊れていたり、焦げていたりはしていない。
どうやら何かを破壊するような力を持った光ではなかったようだ。
目の前の憧もまったくさっきと変わっていないし…とりあえず一安心である。

京太郎「…ふぅ、何事もなくて良かったな、安心したぜ…」モミモミ

憧「た、確かにあたしも安心した…けど…ぉっ♪」

憧「い、何時まで人の胸にっ♪さ、触ってるのよぉっ♥」

京太郎「おっと、悪い」

なんだかんだ言って憧のおもちもこの一ヶ月で随分、大きくなってきてるしなぁ。
俺が日頃揉んでいる所為か、一回りくらいは育っていた。
まだまだ俺が満足出来るサイズではないが…それでも最近のもみ心地は中々である。
ノーブラだったこともあって、ついついおもちマイスターとしての本能が暴走してしまったようだ。

京太郎「つーか…憧、本当に大丈夫なのか?」

京太郎「何か身体に異変とか…」

憧「あ、あんたに胸揉まれた所為でちょっと身体が疼いてるのと…」

憧「後は…なんだかさっきから力が湧いてくるくらいかしら?」

京太郎「…力?」

憧「えぇ。胸の奥から…ね」

憧「完全に魔物になった時にも似てるようで…それよりもずっとずっと大きな力…」

京太郎「…もしかして進化か?」

だけど、既に憧は完全に魔物になっている。
そこからさらにもう一段階、進化するなんて事、本当にあるんだろうか?
…いや、考えても無駄か。
そもそも魔物に関してはまだ分かっていない事の方が少ないんだから。
それよりも今は手元にCOMPがある訳だし…まずはそっちの方を確認してみよう。
もしかしたら、なんか情報があるかもしれない。



System
新子憧はしんまのいのりを習得し、進化した

新子憧はいばらのやを覚えたい…
Lいばらのや 消費20 くさ/エスパー 特殊 威力120/命中90 新子憧の必殺技。茨で出来た矢を放ち、敵を拘束する。相手は最大HPの1/16のダメージを3ターン受ける。その間、交代出来ない。※この技はくさであると同時にエスパーであると判定される(早い話、フライングプレスみたいなの)


しかし、技がいっぱいだ


どれを忘れますか?


1…2…ポカン


新子憧はエアスラッシュを忘れた


そして…


新しくいばらのやを覚えた


名前 新子憧
Lv37 
種族 メガエルフ
タイプ くさ/エスパー
特性1 かちき(ステータス低下を受けた時、とくこうが二段階あがる)
特性2 たいまのちから(とくこう依存による攻撃を受けた時、最終ダメージを半減する)
特性3 しんまのいのり(エスパー/フェアリータイプのわざの威力を1.3倍にし、あく/ゴーストの威力を半減させる)

装備:オッカの実(効果抜群のほのお技を受けた時、一度だけ威力を半減する)

HP 212/212
MP 74/74 

こうげき55
ぼうぎょ60
とくこう130
とくぼう110
すばやさ110

技1 エナジーボール 消費5 くさ  特殊 威力90/命中100 自然から集めた命の力を発射する 1相手のとくぼうを下げる事がある(10%)
技2 サイケこうせん 消費2 エスパー 特殊 威力65/命中100 不思議な光を発射して攻撃する 相手を混乱させる事がある(10%)
技3 いばらのや 消費20 くさ/エスパー 特殊 威力120/命中90 新子憧の必殺技。いばらで出来た矢を放つ。最大HPの1/16の継続ダメージ。交代不可(3ターン)
技4 あまごい 消費3 みず 5ターンの間、天候を雨にする


京太郎「(…なにこれ強い)」

正直なところ、ここまで強くなっているとは思わなかった。
特性一つ見たって強力なのに、ステータスも大幅に上昇している。
さっきのままでも十分強かったのが、今はさらに輪を掛けて強くなっているのだから。
これはもう下手な相性の悪さくらいは気合で突破出来るんじゃないかな…?

憧「えっと…つまり…これはアレ?」

憧「あ、愛の力で強くなっちゃった…的な?」カァ

京太郎「い、いや、自分で言って照れるなよ」

憧「だ、だって…は、恥ずかしいし…」マッカ

憧「それに…指輪出来た瞬間、進化とか…そ、それくらいしか考えられないじゃん…」メソラシ

京太郎「ま、まぁ…そうかもしれないけど…」

あ、改めてそう言われると色々と恥ずかしいよな。
愛の力でパワーアップ…とか正直、漫画の中だけの出来事だと思っていたけれど。
でも、実際に目の前で起こると…なんだか反応に困るというか。
いや、決して嫌な気持ちじゃないんだけど…その、なんていうか…ムズムズする。

憧「でも、これであたし、本当に京太郎のモノになっちゃったんだ…」

憧「本当に噂通り京太郎と強い絆で結ばれて…身も心も完全に京太郎に捕まえられちゃったんだ…」ウットリ

あー…そういう事言っちゃいますか。
ただでさえムズムズしてどうしたら良いのか分からない俺の前でウットリしながらそういう事行っちゃいますかぁ。
…いや、もう無理だって。
ただでさえ、さっきから憧がヒシヒシと人の欲情刺激してきてたのにさ。
この上、心から幸せそうにそんな事言われたら我慢なんて出来ないって。
ヤる。
もう絶対ヤる。
憧がなんと言おうと…進化したその身体を味わい尽くしてやる…!!

京太郎「憧…」スッ

憧「…ふぇ?」

京太郎「したい」

憧「えっ!ちょ…ば、バカ!な、何発情してんの!?」

京太郎「いや、だって、そんな風に言われたら無理だって」

京太郎「ただでさえ今まで可愛い事言われて我慢してたってのにさー」

憧「べ、別にアンタの事を興奮させる為に言ってた訳じゃないし…!」

京太郎「でも、正直、辛抱堪らんです」ギュッ

憧「ぅ…」

京太郎「…ダメか?」

憧「…ば、バカ…ぁ♥」メソラシ

うん、バカでごめんな。
でも、憧だって悪いんだぞ。
俺だって本気で憧が拒めば諦めるけどさ。
こうして抱きしめて耳元で囁やけば、あっという間に陥落するんだし。
自分から俺に腕回してスリスリしながらバカって言われたら、そりゃあやっちゃうって。
オシに弱い憧の事グイグイ押しちゃうってば。

憧「で、でも…ここじゃダメだから…」モジモジ

京太郎「…そうだな。じゃあ…」ダキッ

憧「ひゃうっ♪」

お姫様抱っこで抱き上げた憧の身体は相変わらず軽かった。
日頃、俺の精液以外にろくに摂取していないから当然とはいえ…進化しても体重は変わらないらしい。
まぁ、それはさておき… 

―― 憧「…あれ?」

京太郎「どうかした?」

憧「…ねぇ、京太郎」

京太郎「ん?」

憧「あたしの記憶が正しければ、こっちはホテルとは逆方向なんだけど…」

京太郎「悪い、ホテルまで我慢出来ない」

憧「ふぇぇ!?」カァァ

俺も最初はホテルまで頑張ろうとは思ったんだけどさ。
だけど、抱き上げた憧の身体は体重こそ変わらないけれど、何時もより柔らかくてすげぇ良い匂いがしたんだよなぁ。
まるでその身体全部が媚薬で出来てるようなそれに俺の理性がぷっつんした。
もう既にズボンの中でムスコが臨戦態勢を整え、今にも憧の方へとキバを剥きそうになっている。

京太郎「そこの公園はダメか?」

憧「こ、公園って…そ、そんなの変態じゃない…!!」

京太郎「だよなぁ…」

憧は既に魔物になり、二回目の真価を遂げたとは言え、基本的に潔癖症だ。
ソフトSMくらいなら喜んで受け入れるが、あまりアブノーマルなプレイはしたがらない。
そんな憧が野外でのセックスを受け入れてくれる訳がないしなぁ…。
仕方がない、もうちょっと先にあるラブホまで頑張るか。

憧「…で、でも…」モジモジ

京太郎「ん?」

憧「と、トイレなら良い…」ギュッ

京太郎「え?」

憧「だ、だから!アンタが本気で我慢出来ないならトイレなら良いって言ってるの!!」カァァァ

…マジで?
マジでトイレでセックスして良いの?
憧の事グチョグチョにして良いの?
アヘアヘのトロトロにしてアクメさせまくらせて良いの!?


京太郎「ひゃっほぅ!!」ダダッ

憧「ちょっ!ば、ばかっ♥いきなり走りださないでよぉっ♪」

京太郎「悪い…!でも、憧がエロ可愛すぎて!!」

憧「え、エロくない!あ、あたしは全然、エロくないもん!」

憧「アンタがやばそうだと思って譲歩してあげただけなんだからね!」

憧「あ、あたしは全然、そういうのしたくないんだから!!」

そうは言いながらもさっきから憧の太ももを支える辺りがなんかねっとりとしてるんですがね?
流石にお漏らしって事はないだろうし…これは憧の愛液なのだろう。
メガエルフっていうのはどういうものなのかわからないが、今の憧が魔物として一つ上の段階にあるのは確かだし。
お姫様抱っこされただけで愛液垂れ流しになるようなエロエロな生き物になったとしてもおかしくはない。

京太郎「(だったら…俺が何時もよりハッスルしないと…!!!)」

憧「う、うわぁ…」

そう思って踏み込んだ公衆便所はそりゃもう凄い有り様だった。
以前に比べれば利用者が減った所為か、中は比較的すっきりとしている。
だが、その中に染み付いた匂いはオスとメスの交わりを彷彿とさせるものだった。
今まで何組ものカップルがここでセックスしたのだろう。
何も聞かずともはっきりと分かるほど濃厚で淫らな匂いに俺の興奮がさらに強くなった。

憧「す、凄い…据えたオスとメスの匂い…♪」ゴクッ

京太郎「憧、男子トイレで良いよな?」

憧「ふきゅっ♪」

それはきっと憧も同じなのだろう。
ゴクリと生唾を飲み込む音が俺のところまではっきりと届いた。
それと同時に憧が俺の首へと回した腕に力を込めたのはきっと怖いからじゃない。
きっと…いや、間違いなく憧もこの匂いに興奮している。
そう思うと俺は俺はもう入り口でまごまごとしてられなかった。

憧「や…ぁ♪も、もぉっ♥ど、どれだけしたいのよ…へ、変態…っ♪」

京太郎「超したい。今すぐ押し倒したいくらいしたい」

憧「ふぁ…っ♪ば、馬鹿…ぁ♥」

しかし、憧はそう言いながらも俺に対して一切、抵抗する様子を見せなかった。
寧ろ、余計に興奮したと言うように甘い吐息を漏らし、俺へとより密着してくる。
俺の腕の中で微かに震えるその身体からも欲情がはっきりと伝わってきていた。
きっと妄想逞しい憧は俺の言葉に押し倒されるシーンを想像してしまったのだろう。
その希望は出来れば叶えてあげたい…と言うか、俺も叶えたいけれど、ここは男子トイレだ。
流石にこんな場所で憧を押し倒すのは色々と無理があるだろう。
だから、ここは代わりに… ――