<<EVENT>>


―― 周囲に何もない草原の中、その人はぼうっと空を見上げていた。

白糸台の制服に身を包んだその人を俺は知っている。
ロングストレートの黒髪に日本人形のような整った顔立ち。
時代が時代ならば撫子と呼ばれそうなその顔には、今、強い憂いが浮かんでいた。

京太郎「…弘世さん…弘世菫さんですよね」

菫「…」ビクッ

俺の言葉に弘世さんはその身体を跳ねさせた。
まるでお化け屋敷で脅かされたようなその反応に、俺は小さな罪悪感を感じる。
けれど、折角、この広い迷宮内で会えたんだ。
俺達に対する敵意もないみたいだし、今なら説得が出来るかもしれない。

京太郎「安心して下さい。俺達は別に弘世さんを攻めに来た訳でも、問題を押し付けに来た訳でもないんです」

京太郎「ただ、少し貴女と話がしたくて…」

菫「…いや」

京太郎「…弘世さん?」

菫「いやだいやだいやだいやだいやだ!」

菫「話なんて嫌だ…!もう何も聞きたくない…!」

京太郎「…弘世さん」

そう言って弘世さんは自分の耳を抑えて頭を振るう。
まるで子どもに戻ったようなそれは…いっそ痛々しいほどだった。
俺は弘世さんの事をモニター越しでしか知らないが、それでも彼女が多くの問題を押し付けられるくらいにしっかりものである事くらいは分かる。
そんな彼女の悲痛な訴えに、胸を傷ませないはずがなかった。


「弘世ェ…!」

菫「ヒッ…!」

京太郎「っ!」

しかし、そんな彼女の周りにいつの間にか人の輪が出来ている。
弘世さんを囲む彼らは様々だ。
見覚えのある人、ない人、男、女、子ども大人老人…。
だが、彼らは一様に怒りを…そして失望を露わにしていた。

「どうして連覇を逃したんだ、弘世!」

「弘世が出来るって言ったんだろう!!

「弘世がちゃんと大星の事を教育しておかないからだ!」

「弘世なら出来ると思って部長を任せたのに…」

「弘世でなければきっと三連覇できていたわ」

「弘世の所為よ」

「そうよ。そう弘世の所為」

「弘世がもっと頑張っていれば」

「弘世がもっとしっかりしていれば」

「弘世が弘世が弘世が弘世が弘世が弘世は」

菫「い…いや…いやあああああああ!」

京太郎「弘世さん!!」

自分をなじる声に耐え切れなくなったのだろう。
彼女はその場から立ち上がり、駆け出そうとした。
でも…ここで弘世さんを逃したら次また何時会えるか分からないんだ。
ここで彼女と逸れる訳にはいかない。
そう思って伸ばした手は弘世さんの前で何かに弾かてしまう。

菫「いやだ…いやだいやだいやだいやだいやだ…!」

京太郎「弘世さん…!」

くそ…一体なんだって言うんだ…!
折角、後ちょっとで弘世さんの手を掴めたっていうのに…!
いや…そんな事を考えている場合じゃない。
今は彼女のことを追いかけないと…!

「ダメだ」

京太郎「っ!」

智葉「下がれ!京太郎!」

そのまま足を踏み出した俺の前に何かが飛び出してくる。
大地を四肢で踏みしめる巨大な体躯。
躍動感あふれる力強い筋肉の塊はまるで壁のように俺に立ちふさがった。
一体、それが何なのか。
それを判断しようと一歩下がった俺の目に入ったのは逞しいサラブレットの姿。


――  その顔の部分に女性の身体が生えていなければ、だが。


京太郎「…弘世…さん?」

しかもそれはさっき俺の前から逃げ出した弘世菫さんと同じ顔をしている。
勿論、着ているのは白糸台の制服ではなく、どこかの民族衣装めいたものだけれど。
しかし、その程度で彼女の整った顔立ちが消える訳ではない。
俺の前に立ちふさがり、そして今、悠々と俺を見下ろしているのは間違いなく弘世さんだ。

菫「アレは罰だ。私が甘んじて受けなければいけないものだ」

京太郎「罰って…」

菫「多くの人の期待を裏切ったんだ。当然の報いだ」

京太郎「っ!あんな酷い事が報いな訳ないだろ!!」

アレじゃあ…殆どイジメじゃないか。
あんな風に寄ってたかって一人だけに責任を押し付けて、それが報いであるはずがない。

京太郎「俺は知ってる!弘世さんを始め、白糸台の人は本気で…真剣に戦った事を!」

京太郎「それを賞賛こそすれ、あんな風に責めるなんて絶対に間違っている!!」

菫「…そうか」

菫「君は優しいんだな」

俺の言葉に異形の弘世さんは微笑んだ。
何処か安心したような…けれど、それ以上に泣きそうな笑み。
俺の言葉が辛くてしかたがないと言うようなそれに俺の胸は困惑を覚える。
一体、彼女は何なのか、そして俺の前で何が起こっているのか。
その答えを何とか探そうとする俺の前で弘世さんは弓を番えた。


菫「…だからこそ、ここから先に行かせる訳にはいかない」

京太郎「っ…!なんで…なんでだよ…!」

菫「それでは…私が救われてしまうからだ」

京太郎「・・救われるって…」

…それじゃダメなのかよ。
こんな風に…数年間も延々に詰られれ続けて。
救われるよりも…そっちの方がいいって言うのか?
このままずっとここでずっと責任ばかり背負わされて…苦しむのが…良いって言うのかよ…!

智葉「…京太郎、コレ以上の問答は無意味だ」

京太郎「…智葉さん」

智葉「戦おう。私達がこの先に行くにはそれしかない」

京太郎「…分かった」

この弘世さんが何なのか俺には分からない。
だけど・・相手の覚悟が硬い事くらい察しがついているんだ。
智葉さんの言う通り、彼女を追いかけるには目の前の弘世さんを倒すしかない。
だったら…… ――

京太郎「…智葉さん、お願いします」

智葉「あぁ。私に全て任せろ」

智葉「…お前の道は…私が切り開いてやる」

菫「…やってみろ!」



ケンタウロスの ひろせすみれが しょうぶをしかけてきた!!!


L●○○○○○

ひろせすみれ自身で戦いの場に踊りでた!!!


ひろせすみれのいかく発動!!


辻垣内智葉のこうげきりょくが一段階下がった!!


【パートナー】
名前  辻垣内智葉
Lv   12
種族  ???
タイプ あく/はがね
特性1 せいしんりょく(相手の攻撃で怯まない)

HP86/100
MP16/16
こうげき85
ぼうぎょ70
とくこう40
とくぼう40
すばやさ70

ひっかく 消費0 ノーマル 物理 威力40/命中100 敵一体を爪で攻撃する
にらみつける 消費0 命中100 相手一体の防御力を一段階下げる 
メタルクロー 消費2 はがね 物理 威力50/命中95 攻撃が当たった時50%の確率で自分のこうげきを一段階あげる
れんぞくぎり 消費2 むし 物理 威力40/命中100 連続で使用すると威力が倍増する(最大160まで)連続使用毎に消費MP1増加(最大3まで)


辻垣内智葉のメタルクロー………


菫「遅い…!」
ひろせすみれのにどげり!!!


智葉「っ!!!!!」


効果は抜群だ!!!!


辻垣内智葉に78のダメージ!


智葉「が…はっ!!!」

菫「もう一発…!!!」


効果は抜群だ!!!!


辻垣内智葉に77のダメージ!!!!


京太郎「…え?」


辻垣内智葉は倒れた



―― …一瞬だった。

智葉さんがドスを振るった瞬間、それよりも早く弘世さんが踏み込んだ。
そのまま跳ねた足がドスを砕き、智葉さんを跳ね飛ばす。
それだけでも致命傷。
だが、その智葉さんへとさらに踏み込み、二度目の蹴り。

京太郎「…さ…智葉さん…?」

二度の蹴りを受け、大地へと落ちた智葉さんは受け身も取れていなかった。
ズルズルと草原を滑る身体はぴくりとも動いていない。
どう見てもすぐさま治療が必要なくらいの重傷だ。

京太郎「智葉さん…!」

そんな彼女に俺が何を出来るのかは分からない。
でも、パートナーがそれだけの重傷を負って、棒立ちなんてしていられない。
きずぐすりでも何でも使って、とにかく智葉さんと治療しないと…!

菫「…待て」

―― …そう思う俺の前に弓を構えた弘世さんが立ちふさがった。


菫「…治療するのは構わない。だが…その前に約束して欲しい」

京太郎「何…を…?」

菫「二度とこの場所に踏み込まないという事を…だ」

菫「もし…それが出来ないのであれば…」スッ

京太郎「っ!」

菫「このまま…彼女の頭を蹴り砕く」

そう言いながら弘世さんは智葉さんの頭を乗せる。
あの頑丈な智葉さんを一撃で戦闘不能に追い込んだ強靭な脚力だ。
あの足が少し動けば、本当に彼女の頭を蹴り砕いてしまうだろう。

菫「君のパートナーが大事なら…脅しと思わない事だ」

菫「私はやると言ったらやる。その為の存在だからな」

…魔物は基本的には人を傷つける事を好まない。
男は自身の餌になるし、女はいずれ同族になるのだから。
その通説が正しいか正しくないかは…俺には分からない。
それに例えそれが正しくても、目の前の彼女が果たしてどれだけ魔物と言えるのだろうか。

菫「…さぁ、どうする?」

けれど…それを考えている余裕すら彼女はくれないらしい。
俺を試すように言いながら、その足にグッと力を込めた。
まるで今にも大きく跳躍しそうなそれは…蹴りを放つ為の前触れだろう。

京太郎「…俺は………」

そんな約束なんて出来ないし…したくない。
でも…ここで約束しなければ、智葉さんの命が危ないんだ。
そんな状況で…グズグズと悩んでられない。
今まで俺を何度も助けてくれた智葉さんの為にも…ここは…――

京太郎「約束す…」

「ま…て…」

京太郎「っ!?」


私は…一体…どうなった…?

あの時踏み込んで…それで…。

あぁ…そう…か。

私は…負けてしまったのか…。

無様…だな。

あれだけ…大見得を切って…一瞬で倒される…なんて…。

あぁ…それよりも状況は…彼は一体…どうなって…。

目も開かな…い…。

身体も…動けない…。

私…は…。

菫「…治療するのは構わない。だが…その前に約束して欲しい」

京太郎「何…を…?」

菫「二度とこの場所に踏み込まないという事を…だ」

菫「もし…それが出来ないのであれば…このまま…彼女の頭を蹴り砕く」

何を…言って…。

私を…人質に…する…気…か?

ダメ…だ…京太郎…。

私の事は良いから…。

口も動か…ない…。

私…これ…どうし…たら………・・。


菫「君のパートナーが大事なら…脅しと思わない事だ」

菫「私はやると言ったらやる。その為の存在だからな」

だめ…だ…そんな事…言ったら…。

彼は…優しいから…きっと…頷く…。

私を護る為に…約束…してしまう…。

私…なんて…情け…な…い。

私が護らなきゃいけない…のに…。

私が彼の盾にならなければ…いけないのに…。

身体動かなくて…人質に…され…て…。

嫌…だ…。

そんなの…嫌…だ。

…力が…欲しい。

京太郎を…護れる…力が。

彼の側に要られる力が…。

今…この場を乗り越えられる力が…欲しい……!!!



菫「…さぁ、どうする?」


分かってる…。

方法は…ある。

本当は…ずっと…頭の中に…あった。

絶対に…選んではいけない…唯一の…方法。

選んでしまったら…きっと彼に嫌われてしまう…そんな…力。

でも…私は……!

私よりも…彼の方が…大事…だ…!

嫌われるのが…なんだって言うんだ…!

今、この場で…ただ彼の足かせになるだけなら…。

死んだ方が…マシ…だ…!!!

だから…だから…京太郎…。


京太郎「…約束す…」

「ま…て…」


智葉「…ま…だ勝負は…ついてな…い」

京太郎「智葉さん!」

菫「…驚いたな。だが、無理はしない方が良い」

菫「手応えは十分過ぎるほどあった。短時間で意識を取り戻しただけでも賞賛に値する」

菫「少なくとも今から戦闘を再開するなんて無理だろう」

菫「だから、大人しくその場で休んでいた方が良い」

智葉「大丈夫…だ。もう…十分…休ませて…貰った」

智葉「…それ…に…」ズズズ

菫「…なっ!」

智葉「何時迄も足蹴にされるのは…趣味じゃないんだ…!!!」



―― 智葉さんのところに霧が集まっていく。


この迷宮内にも満ちていたであろう薄紫の霧。
それが今、渦巻くようにして智葉さんの元に吸い込まれていっている。
それがいったい、どういう原理なのかは俺には分からない。
でも…でも、それは… ――

京太郎「智葉さん…!」

智葉「心配するな、京太郎」

智葉「私は…まだやれる…!」

霧の向こうから智葉さんの声がする。
だが…それは本当ならばやっちゃいけない事なんだ。
だって…これは…この霧は人を魔物に変える力があるんだから。
それをこんなに集めてしまったら…もう智葉さんは戻れない。
もう…完全に魔物になって…人間に戻れなくなってしまうだろう。

京太郎「良いんです!そんな事しなくても…!」

京太郎「俺が…俺が頭を下げればそれで済むんですから!」

京太郎「だから…やめてください!智葉さん!!!」

彼女が魔物化を快く思っていない事くらい…俺にだって分かってる。
でも、智葉さんはそれを推して、今、自身を完全な魔物に変えようとしていた。
そんなの…そんなの…見過ごせる訳がない。
今からでも良いから…まだきっと間に合うはずだから。
そんな事はやめて…何時もの智葉さんに戻って欲しい。

智葉「…それが…ダメなんだ」

京太郎「…え?」

智葉「一体、誰が惚れた男に無駄な頭を下げさせたいと思うんだ?」

智葉「惚れた男が…気持ちを曲げて約束しようとするところを見たいと思うんだ?」

智葉「私は…嫌だ」

智葉「そんなところ見るくらいなら…私は…」

智葉「人間を…やめた方がマシだ…!!!!」


―― ゴウッ


……霧が晴れた。
その向こうから現れたのは俺のよく知る智葉さんとは違った。
その耳は新子さんのように長くつきだし、瞳の色も変わっている。
何より特徴的なのはその身につけた不気味な鎧だ。
各所に目玉を模したモチーフが浮かび上がる闇色のそれは無論、さっきまで彼女が身につけていたものとは違う。

京太郎「あ…あぁ…」

俺はそれがいったい、何を意味しているのかは分からない。
だが、その姿の智葉さんがもう人間ではない事だけは良く分かった。
さっきまでの彼女と同じ顔なのに…その存在感がまるで違う。
離れているだけで肌がチリつくように感じるのだから。
俺の事を好きだと…惚れていると…そう言ってくれた彼女は…今、完全に魔物に堕ちたのだ。

菫「……それが貴女の選択か」

智葉「そうだ。彼の為ならば…かつては憎み、疎んだ力にも頼ろう」

智葉「それが…京太郎の為ならば…私は喜んで自分を差し出してみせる…!」

菫「…立派なものだ」

智葉さんを見据える弘世さんの瞳には羨望の色が浮かんでいた。
それが果たしてどういう意味なのか、俺には分からない。
ただ、確かな事は… ――

菫「…その覚悟に免じて、ここは退こう」

菫「だが…ここから先は私の本丸も同然だ」

菫「踏み込んでくるのならば…容赦はしない」フッ

敵意を失った弘世さんはそのまま消えた。
まるで最初からその場にいなかったかのように。
やはり新子さんの時のようにあの身体は魔力で出来た偽物なのだろう。
本物はきっとさっき逃げていた人間のままの弘世さんの方…… ――

智葉「…京太郎」

京太郎「…っ!」ビクッ

瞬間、聞こえてきた声に俺は身体を跳ねさせてしまう。
…分かってる。
智葉さんがどうして魔物にならなきゃいけなかったのかくらい…俺にだって理解出来ているんだ。
だけど…どうしても…身体に染み込んだ苦手意識は消えない。
特に…今みたいに完全に意識していないタイミングだと…尚更。

智葉「…ぁ」

京太郎「あ…」

けれど…それでもやっぱり智葉さんが傷ついてると…胸も痛む。
なにせ、智葉さんは何も悪くないどころか俺の事を必死に護ろうとしてくれたのだから。
出来れば感謝を伝えなければ行けない恩人のその表情に…俺も何か言うべきなのだろう。
だが、未だ苦手意識がへばりついた俺の身体は硬直し、伝えるべきkと場を内側に貯めこんでしまった。

智葉「…すまない」

智葉「怖いだろう。気持ち悪い…だろう」

智葉「…嫌われるのも当然だって…分かっているんだ」

智葉「だけど…頼む」

智葉「せめて…入り口まで送らせてくれ」

智葉「その後は好きにしてくれて構わないから」

京太郎「…え?」

智葉「私だって…分かってる」

智葉「今の私では…京太郎の側にはいられない事くらい」

智葉「…拠点へ戻ったらパートナーを変えたほうが良い」

智葉「…どのみち…私では…彼女と相性が悪過ぎるからな…」

何処か自嘲気味の言葉を漏らす彼女に、俺はなんと言えば良いのか。
そもそも俺の気持ち自体がまったく決まっていない。
智葉さんへの感謝の気持ちもあるし、離れたくないとも思っている。
でも、同時に…今の彼女を怖いと思う気持ちもやはりなくならないのだ。

智葉「…行こう、京太郎」

京太郎「…はい」

…結局、俺が漏らしたのは彼女への肯定の言葉のみ。
けれど、それは今までのものとは違い、まったく前向きなものではなかった。
俺達の別れへと向かうそのやり取りに…胸の奥がざわつくのを感じる。
これで本当に終わりなのか。
智葉さんとこれでお別れなのか。
そんな疑問に俺は… ――

―― ポツポツ

京太郎「…あ」

智葉「雨だ!走れ…!」

京太郎「くっ…!」

くそ・・・考えを纏める時間すらくれないのかよ…!
つか、迷宮の中だって言うのに…天気が変わるなんて…!
あぁ、もう非常識なのは今に始まった事じゃないけどさ!!


智葉「あそこだ!」

京太郎「っ!!」

智葉さんが指さしたのはさっき俺達が休憩した小さな小屋だった。
あそこならばこの土砂降りの中でも十分、雨宿りが出来るだろう。
そう思って飛び込んだ俺達を迎えたのは… ――

京太郎「…え?」

その小屋の中は打ち捨てられた物置のような場所だったはずだ。
けれど、今の俺には目の前に広がっているのは日を灯す大きな暖炉とクイーンズサイズのベッド。
そしてテーブルの上に並ぶサンドイッチなどの軽食とシャンパンだ。
…と言うかそもそもこの広さからしてあの小さな小屋に収まるはずがない。

京太郎「…あ…れ?」

方角を間違えた…?いや、でも途中でちゃんと目印は確認したし。
間違いなくここは俺たちが休憩した小屋であるはずなんだけど…。

智葉「…意外とお節介な性格をしてるんだな」

京太郎「え?」

智葉「なんでもない。それより早く入ったほうが良い」

智葉「そこにいると風邪を引いてしまうぞ」

京太郎「は、はい…」

…まぁ、迷っててもしかたがないよな。
例え、これが罠だとしても、これみよがしに並べてあるシャンパンやベッドにさえ手を付けなければ大丈夫だろう。
正直、なんでこんな内装に変わっているのか気になるけれど、今はそれよりも濡れた服を乾かしたい。