―― その迷宮は前回のものとはまったく違った。

京太郎「うわぁ…」

ただひたすらに広い草原。
地平線まで見えそうなその景色はいっそ圧巻と言ってもいいくらいだった。
間違いなく日本ではこんな拝めないであろう景色。
これが本当は室内だなんて到底思えないくらいだ。

智葉「ふむ…良い風だな」

その上、爽やな風が俺たちを撫でるように通り過ぎて行く。
都会ではまず感じられないそれは俺の気分を少なからず高揚させた。
勿論、これが命の危険を伴う迷宮である事は分かっているが…これだけの大自然を目の前に広げられるとやはり圧巻である。

智葉「…出来ればみんなとピクニックに来たいくらいだが…」

京太郎「まぁ…難しいですよね」

こうして周りを見る限りまったく何も見えないが、ここはこちらに敵意をむき出しにする敵がわんさか湧き出す迷宮なのだ。
景色こそ素晴らしいが、少なくともピクニック気分で来て良い場所ではない。

智葉「…仕方ない。これは君と私の秘密だな」

京太郎「はは。そうですね。そうしときましょうか」

何処か冗談めかして言ってくれる智葉さんに俺は笑いながら頷いた。
正直、二人だけの秘密にするには勿体無いくらいの光景だが、これを共有する事は出来ないのだから。
下手に人に話しても自慢話にしかならない訳だし、ここは二人の秘密にするのが一番だ。

智葉「しかし…何処に行けば良いんだろうな?」

京太郎「そうですね…流石に適当に進む訳にはいきませんし」

これだけ広い空間だとあっという間に遭難しかねない。
少なくとも何の策もなしに進めば、元きた道を戻る事すらできなくなるだろう。
第一階層は学校故にそんな苦労はなかったんだけどな…。
まぁ…その辺りは迷宮故致し方なしってところなんだろう。

京太郎「とりあえずあの大きな木の根本を目指すって言うのはどうですか?」

智葉「ふむ…それも良いかもな。木にならば矢印として来た方向を刻み込めるし」

俺の言葉に頷きながら智葉さんはスラリとドスを抜いた。
既に彼女が臨戦態勢である事を知らせるその光に俺の気持ちも引き締まる。
今回の探索も…絶対に良い成果を持ち帰ろう。
改めてそう思う俺に対して智葉さんは振り返って… ――

智葉「では、行こうか」

京太郎「はい」



敵だ!!!!


スライムLv7が現れた!!!


【パートナー】
名前  辻垣内智葉
Lv   9
種族  ???
タイプ あく/はがね
特性1 せいしんりょく(相手の攻撃で怯まない)

HP85/85
MP13/13
こうげき85
ぼうぎょ70
とくこう40
とくぼう40
すばやさ70

ひっかく 消費0 ノーマル 物理 威力40/命中100 敵一体を爪で攻撃する
にらみつける 消費0 命中100 相手一体の防御力を一段階下げる ※エラッタ
おいうち 消費1 あく 物理 威力40/命中100 敵が交代する時、交代前の相手に二倍のダメージを与える。
れんぞくぎり 消費2 むし 物理 威力40/命中100 連続で使用すると威力が倍増する(最大160まで)連続使用毎に消費MP1増加(最大3まで)

<<アイテム>>
きずぐすり 3/9   一体のHPを20回復する   売価150円
どくけし 1/9  一体のどく・もうどくを治療する  売価50円


辻垣内智葉のひっかく!!


スライムに12のダメージ!


スライムのみずでっぽう!!


辻垣内智葉に8のダメージ!!


【リザルト】
スライム8
辻垣内智葉12

辻垣内智葉の勝利です!


辻垣内智葉はレベルアップ!!

【パートナー】
名前  辻垣内智葉
Lv   10
種族  ???
タイプ あく/はがね
特性1 せいしんりょく(相手の攻撃で怯まない)

HP82/90
MP14/14
こうげき85
ぼうぎょ70
とくこう40
とくぼう40
すばやさ70

ひっかく 消費0 ノーマル 物理 威力40/命中100 敵一体を爪で攻撃する
にらみつける 消費0 命中100 相手一体の防御力を一段階下げる ※エラッタ
おいうち 消費1 あく 物理 威力40/命中100 敵が交代する時、交代前の相手に二倍のダメージを与える。
れんぞくぎり 消費2 むし 物理 威力40/命中100 連続で使用すると威力が倍増する(最大160まで)連続使用毎に消費MP1増加(最大3まで)


京太郎「…智葉さん」

智葉「大丈夫だ。問題ない」

京太郎「だけど…」

さっきのスライムは第一階層とは比べ物にならない強さだった。
勿論、智葉さんがあまり得意とは言えない相手だったと言う事もあるのだろう。
が、あの濁流のような水の一撃を受け、流石の智葉さんも消耗してしまっている。
COMPを見る限り、まだきずぐすりを使うような傷ではないようだが…心配だ。

智葉「何、今までが楽すぎた…という事なのだろう」

智葉「別に慢心していたつもりはないが…今ので目が覚めた」

智葉「ここは第一階層よりも遥かに強敵揃いであり…あまりのんびりしている暇はないと」」

京太郎「智葉さん…」

智葉「これだけ広々としている空間でゆっくりと休憩などしていては襲ってくれといっていうようなものだ」

智葉「…君の気持ちは嬉しい。だが、今は、先を急ごう」

京太郎「…分かりました」



敵だ!


スライムLv7が現れた!!


【パートナー】
名前  辻垣内智葉
Lv   10
種族  ???
タイプ あく/はがね
特性1 せいしんりょく(相手の攻撃で怯まない)

HP82/90
MP14/14
こうげき85
ぼうぎょ70
とくこう40
とくぼう40
すばやさ70

ひっかく 消費0 ノーマル 物理 威力40/命中100 敵一体を爪で攻撃する
にらみつける 消費0 命中100 相手一体の防御力を一段階下げる ※エラッタ
おいうち 消費1 あく 物理 威力40/命中100 敵が交代する時、交代前の相手に二倍のダメージを与える。
れんぞくぎり 消費2 むし 物理 威力40/命中100 連続で使用すると威力が倍増する(最大160まで)連続使用毎に消費MP1増加(最大3まで)

<<アイテム>>
きずぐすり 3/9   一体のHPを20回復する   売価150円
どくけし 1/9  一体のどく・もうどくを治療する  売価50円


辻垣内智葉のひっかく!!


スライムに13のダメージ!


スライムのみずでっぽう!!


辻垣内智葉に8のダメージ!!


【リザルト】
スライム8
辻垣内智葉13

辻垣内智葉の勝利です!


辻垣内智葉はレベルアップ!!


【パートナー】
名前  辻垣内智葉
Lv   11
種族  ???
タイプ あく/はがね
特性1 せいしんりょく(相手の攻撃で怯まない)

HP79/95
MP15/15
こうげき85
ぼうぎょ70
とくこう40
とくぼう40
すばやさ70

ひっかく 消費0 ノーマル 物理 威力40/命中100 敵一体を爪で攻撃する
にらみつける 消費0 命中100 相手一体の防御力を一段階下げる ※エラッタ
おいうち 消費1 あく 物理 威力40/命中100 敵が交代する時、交代前の相手に二倍のダメージを与える。
れんぞくぎり 消費2 むし 物理 威力40/命中100 連続で使用すると威力が倍増する(最大160まで)連続使用毎に消費MP1増加(最大3まで)


辻垣内智葉は新しくメタルクローを覚えたい…!
※メタルクロー 消費2 はがね 物理 威力50/命中95 攻撃が当たった時50%の確率で自分のこうげきを一段階あげる

しかし、技が一杯だ

代わりに技を忘れますか?


1…2…ポカン

辻垣内智葉はおいうちをわすれ、新しくメタルクローを覚えた!



敵だ!!


バブルスライムLv9が現れた!!


【パートナー】
名前  辻垣内智葉
Lv   11
種族  ???
タイプ あく/はがね
特性1 せいしんりょく(相手の攻撃で怯まない)

HP79/95
MP15/15
こうげき85
ぼうぎょ70
とくこう40
とくぼう40
すばやさ70

ひっかく 消費0 ノーマル 物理 威力40/命中100 敵一体を爪で攻撃する
にらみつける 消費0 命中100 相手一体の防御力を一段階下げる 
メタルクロー 消費2 はがね 物理 威力50/命中95 攻撃が当たった時50%の確率で自分のこうげきを一段階あげる
れんぞくぎり 消費2 むし 物理 威力40/命中100 連続で使用すると威力が倍増する(最大160まで)連続使用毎に消費MP1増加(最大3まで)


辻垣内智葉のひっかく!!


バブルスライムに12のダメージ!


バブルスライムのバブルこうせん!!


辻垣内智葉に9のダメージ!


【リザルト】
バブルスライム9
辻垣内智葉12

辻垣内智葉の勝利です!


辻垣内智葉はレベルアップ!!


【パートナー】
名前  辻垣内智葉
Lv   12
種族  ???
タイプ あく/はがね
特性1 せいしんりょく(相手の攻撃で怯まない)

HP75/100
MP16/16
こうげき85
ぼうぎょ70
とくこう40
とくぼう40
すばやさ70

ひっかく 消費0 ノーマル 物理 威力40/命中100 敵一体を爪で攻撃する
にらみつける 消費0 命中100 相手一体の防御力を一段階下げる 
メタルクロー 消費2 はがね 物理 威力50/命中95 攻撃が当たった時50%の確率で自分のこうげきを一段階あげる
れんぞくぎり 消費2 むし 物理 威力40/命中100 連続で使用すると威力が倍増する(最大160まで)連続使用毎に消費MP1増加(最大3まで)


<<イベント>>

―― それは周りの景色から浮きすぎるくらい浮いていた。

広い平原の中にポツンと建っている建物。
白塗りの壁に囲まれたその建物には『職員室』と書いてある。
…周りを見ても相変わらず地平線か草原から生えた木しか見えないがどうやらここは学校ならしい。

京太郎「…青空教室って奴ですかね?」

智葉「…分からん」

流石の智葉さんも困惑しているのだろう。
首を振りながら俺に答えたその声には疑問の色が強く浮かんでいた。
まぁ、清々しい草原の中に職員室が建っている理由なんて多分、これを作った本人にしか分からないだろう。

京太郎「…とりあえず…どうします?」

智葉「…罠の可能性もあるが…流石にここまであからさまなのはないだろうし…」

智葉「この前のように何かのヒントになるかもしれない。…入ってみるか?」

京太郎「…そう…ですね」

明らかに怪しく過ぎるが、窓から中を覗く限り普通の職員室だ。
中から人の気配は感じないが、この建物に何の意味もないとは思えない。
智葉さんの言う通り、後で説得に使える材料が手に入るかもしれないと思えば…ここはやっぱり入るしかないだろう。

ガララ

京太郎「失礼しまーs…」

「おい弘世」

京太郎「…え?」

扉を開いた瞬間、俺の前に初老の男性がいきなり現れる。
若干、出てきつつ腹をカーキ色のシャツで隠す彼は恐らく教師なのだろう。
その手に持った出欠簿で疲れたように肩を叩く姿は異様なほどに様になっているんだから。

「大星は本当にどうなっているんだ?」

「あいつまた勝手に授業を抜けだしたそうじゃないか」

京太郎「いや…あの…」

「お前の方からもちゃんと言っとけよ」

「今みたいに思うがままに振る舞ってたら卒業出来ねぇってな」

京太郎「アッハイ…」

…勿論、俺に言われてる訳じゃないって言うのは分かってるんだけどさ。
目の前でこんな風に言われるとやっぱりどうしても反応してしまうというか。
そのまま俺に背を向けた彼が一瞬で消えたのもあって、結局、人違いだと言う事は出来なかった。

「あぁ、弘世さん」

京太郎「うぇぇ!?」

「貴女、宮永さんとチームメイトなのよね?」

「なら、今度、宮永さんに言っておいてあげてくれないかしら?」

「家庭科室を使ってお菓子を作るのは良いけれど、せめて許可を取って欲しいって」

京太郎「え…いや…その…」

「じゃあ、お願いね」スッ

京太郎「え…えー…っと」

…また消えた。
えぇっと…これはつまり…アレか。
恐らく弘世さんって人にアレコレ問題を押し付けてる大人の姿って事か。
…うん、まぁ、先生ってのは忙しくて色々と大変なのは分かるけどさ。
でも、これはちょっと弘世さんが可哀想じゃないだろうか…?

「おーい、弘世、今年はどうなんだ?いけそうなのか?」

「連覇期待してるぞ、弘世」

「今年も勿論やってくれるよな?」

「弘世」

「弘世」

「弘世」

「弘世弘世弘世弘世弘世弘世弘世弘世」

京太郎「…」


ピシャッ


智葉「……」

京太郎「……」

智葉「…とりあえず相手の正体は分かったな」

京太郎「…えぇ、間違いなく…これは白糸台の弘世選手ですね…」

大星。宮永。弘世。
これまで出てきた名前の生徒が所属しているのは全国広しと言っても白糸台しかないだろう。
その上、あの職員室で呼びかけられていたのは全て『弘世』という女生徒という事を加味すれば…弘世菫選手しか考えられない。

京太郎「…正直、ちょっと可哀想になりました…」

智葉「…この延々と続く草原はきっとこの現状からの逃避したいという願望の表れだったのかもしれないな…」

京太郎「…そうですね」

まるで人工物が見当たらない大自然のまっただ中。
そこには人間社会で過ごす上での煩わしさなんてまったくない。
どこまでも続く草原と爽やかな風があるだけ。
…恐らく寄せられる期待に疲れきった彼女にとって、これは癒やしだったのだろう。


智葉「…正直、今回は私も同情する」

智葉「だが…」

京太郎「…えぇ。分かっています」

京太郎「だからって…手心を加えていい訳じゃない」

…もしかしたら第一階層に到達したばかりの俺ならばためらっていたのかもしれない。
だが、俺は既に新子さんの夢を壊し…そして智葉さんの未来を背負っているんだ。
俺に迷宮攻略を躊躇っていられるほどの余裕も時間もない。
弘世さんには心から同情するが…さりとてそれはもう覚悟を固めた俺が躊躇うを覚える理由にはならないのだ。

京太郎「…行きましょう」

智葉「あぁ」



宝箱を見つけた!


中身は…?


System
いいきずぐすりを手に入れた!
※これも売却によって次回から購入可能になるアイテムです



智葉「…ふぅ」

京太郎「智葉さん…」

智葉「大丈夫だ。まだいける」

智葉さんはそういうものの傷がその身体には傷が増えてきている。
第一階層よりもさらに一回り強くなった敵に流石の智葉さんも無傷とはいかない。
まだ余裕はあるみたいではあるけれど…今の彼女は若干、痛々しく思える。

京太郎「(…どうする?今ならばきずぐすりも無駄にはならないだろうけど…)」

京太郎「智葉さん、腕出して下さい」

智葉「まだ大丈夫だと言っているだろう?」

京太郎「…俺が大丈夫じゃないんです」

智葉「…京太郎」

京太郎「女の子が目の前で傷ついているのに何もしないなんて嫌ですよ」

京太郎「お願いします…俺の為に治療させて下さい」

智葉「…それは貴重な薬なんだぞ」

京太郎「分かってます」

智葉「私は並みの魔物よりも頑丈だ」

京太郎「分かってます」

智葉「……このくらいホテルに戻れば治る」

京太郎「ダメです」

智葉「…………君は本当に大馬鹿だ」スッ

京太郎「…ありがとうございます、智葉さん」

智葉「…お礼なんて言わなくていい…まったく…」

智葉「本当に…知らないからな…」ポソッ


ボーナス
辻垣内智葉のHPが95になりました
好感度が40になりました



敵だ!!!


バブルスライムLv7(みず/どく)が現れた!!!!


【パートナー】
名前  辻垣内智葉
Lv   12
種族  ???
タイプ あく/はがね
特性1 せいしんりょく(相手の攻撃で怯まない)

HP95/100
MP16/16
こうげき85
ぼうぎょ70
とくこう40
とくぼう40
すばやさ70

ひっかく 消費0 ノーマル 物理 威力40/命中100 敵一体を爪で攻撃する
にらみつける 消費0 命中100 相手一体の防御力を一段階下げる 
メタルクロー 消費2 はがね 物理 威力50/命中95 攻撃が当たった時50%の確率で自分のこうげきを一段階あげる
れんぞくぎり 消費2 むし 物理 威力40/命中100 連続で使用すると威力が倍増する(最大160まで)連続使用毎に消費MP1増加(最大3まで)

<<アイテム>>
きずぐすり 2/9   一体のHPを20回復する   売価150円
いいきずぐすり 1/6 一体のHPを50回復する  売価350円
どくけし 1/9  一体のどく・もうどくを治療する  売価50円


辻垣内智葉のメタルクロー!(命中95)命中直下


こうかは今ひとつのようだ…


バブルスライムに7のダメージ


バブルスライムのバブルこうせん!


辻垣内智葉に9のダメージ


【リザルト】
バブルスライム9
辻垣内智葉7

辻垣内智葉は敗北した…


―― 慢心がなかったと、そういうつもりはない。

第二階層へ来て既に何度か戦闘を経験している。
その中で相手は強敵であるものの、決して負けるような相手ではないと評価していた。
何時も通りに動けば、何時も通りに戦えば。
何の問題もない…そんな相手。

―― だからこそ、辻垣内智葉の心には今、隙があった。

それは自身の腕に巻かれた包帯だ。
先ほどの休憩の後、共犯者の手によって巻かれた不格好な布。
少しは練習したのか以前よりは綺麗に巻かれたそれが彼女の心を惹きつけている。
なんの変哲もない…ただの市販品の包帯だと言うのに。
戦闘の最中にあっても、彼女の視線はそちらへと引き寄せられてしまう。

京太郎「智葉さん!」

智葉「っ!」

だからこそだろう。
自身の目の前に広がった泡の道に智葉は反応しきれなかった。
何時もの彼女ならばあり得ないミス。
けれど、それに脳が自嘲を覚えるよりも先に彼女の身体は腕を、そしてそこに巻かれた包帯を庇った。

智葉「きゃああっ!」

瞬間、身体の表面で泡が弾ける。
魔力によって極限まで強化されたそれは一つ一つが爆弾のようなものだ。
そのまっただ中にある智葉の身体は揺れ、痛みに悶える。
だが、それでもその腕を護り続け、そして… ――

智葉「こ…の…!」

反撃。
怒りのままに振るわれた銀閃は緑色の粘液を切り裂いた。
周囲に悪臭を放っていたそれは彼女の一撃に悲鳴をあげる暇もなく消滅する。
なんとか手に入れた勝利。
けれど、智葉はそれを喜ぶ気にはなれなかった。

京太郎「智葉さん…!」

智葉「…あ」

そんな自分に駆け寄ってくれるパートナーに智葉は目を伏せた。
先ほどの自分はあまりにも愚かで…そして情けないものだったのだから。
もしかしたら…失望されたかもしれない。
そう思う彼女の頬に京太郎は手を伸ばして… ――

京太郎「酷い…大丈夫ですか?」

智葉「…京太郎」

京太郎「髪もこんなに…ごめんなさい、俺の指示が悪かった所為で…」

―― 違う。

智葉はそう言いたかった。
さっきの一撃を貰ったのは間違いなく自分のミスである。
ちゃんと戦闘に集中していればこんな風に直撃を貰う事はなかった。
少なくとも京太郎の指示を責めるつもりは智葉にはまったくない。
けれども…。

―― トクン

智葉「…ぁ」

今の智葉は心地よさを感じていた。
自分のために心から傷つき、心配してくれている彼の姿に。
少しでも自分の傷を癒そうと動く彼の優しい手に。
身体が弛緩し、心が制御出来なくなっていた。

智葉「(こんな…私…)」

勿論、長い間、自身の背中を預けた彼にときめいた事がないとは言わない。
智葉とて未だ年頃の少女なのだ。
迷宮探索の為にドンドン仲良くなっていく同じ年頃の少年の事を意識しないはずがない。
ましてや…相手はまだ誰の手もついていないようなまっさらの状態なのである。
魔物としての本能もまた彼を求めている頃を智葉は自覚していた。

智葉「(だから…我慢しようとしてる…のに…)」

京太郎が魔物に対してトラウマめいた思いを抱いているのは知っている。
だから、彼女は必死に自身の気持ちをコントロールしようとしてきた。
彼とどれだけ仲良くなっても好きになってはいけない。
あくまでも自分は彼のパートナーで在り続けなければいけないんだと…そう言い聞かせて。

智葉「(でも…でも…私…)」

だが、何時迄もそうやって気持ちを抑え続けるには智葉は恋も愛も知らなさすぎた。
本能と結びつき湧き上がるその衝動は日々、彼女の理性を削っている。
幾ら彼女が魔物の中でも理知的と言われる種族の特徴を引いていても、止められないくらいに。
視線を乗り越え、思いを交わし、彼に触れられる度に心が傾いていってしまう。


京太郎「…智葉さん?」

智葉「…ぁ…」

京太郎「大丈夫ですか…?やっぱり…さっきのところに戻って」

智葉「だ、大丈夫だ」

京太郎「でも…」

智葉「…大丈夫。私は…大丈夫だ」

それはもう言い聞かせるようなものになっていた。
智葉自身、分かっている。
自分がもう口で言えるほど大丈夫な状態ではない事くらい。
最早、恋と言う猛毒は着実に智葉の中に根を張り、彼女の身体を染めている。
さっきのような醜態はこれから先、増えていくかもしれない。
そんな自分は最早、彼のパートナーとして相応しくはないと智葉も自覚している。

智葉「(でも…無理なんだ…)」

智葉「(一緒にいたのは…ほんの一週間とちょっとしかないのに…私は…私は…もう…)」

心も身体も彼を求めてやまない。
離れるべきだと分かっていても、心がそれを拒絶し続けている。
いや、それどころか彼の隣を誰にも譲りたくないと、そんな気持ちさえ覚え始めていた。
彼とこのまま一緒にいる上で決して好ましくはない独占欲。
それをひた隠しにしながら智葉は… ――


智葉「それよりも早く行こう。弘世が私達を待っている」