<<辻垣内智葉コミュLv1>>

京太郎「(ホテルの料理は思いの外、美味しかった)」

京太郎「(正直、中はあんまり華々しい感じではなかったし、あんまり期待してなかったんだけどな)」

京太郎「(明日から探索開始だって言うのについついお代わりまでしちゃったぜ)」

京太郎「(こうして部屋の中も全体的にシックな色使いで落ち着くイメージに仕上げてある)」

京太郎「(流石に実家のような安心感!!って訳にはいかないけど、華やか過ぎて眠れないって事はなさそうだ)」

京太郎「(まだ一日目も終わってないけれど…結構、このホテルの事を気に入ったかもしれない)」

京太郎「(…少なくとも帰って来たいと…そう思えるだけの魅力はある)」

京太郎「(…ただ…俺に出来るだろうか?)」

京太郎「(…こうして東京に来て…色んな人に会って…それでもまだ…どうしても思ってしまう)」

京太郎「(俺のような何の力もないような子どもに…はたして咲の事を助け出せるのかって)」

京太郎「(勿論…俺がやらなきゃ誰も咲の事を助けられないなんて事は分かってる)」

京太郎「(でも…俺は…)」

―― コンコン

京太郎「あっと…」

京太郎「(…誰だろう?こんな時間に…)」

京太郎「(まだ宵の口とは言え…そろそろ明日に備えて寝なきゃいけないんだけど…)」

京太郎「(…まぁいいか。なんか色々考え事しててすぐ眠れるって訳じゃないし)」ヨイショッ

京太郎「はーい。今あけまーす」ガチャ

智葉「…やぁ」

京太郎「あれ?辻垣内さん、どうかしたんですか?」

智葉「いや…何、明日からの予定をもう少し話しておこうと思って」

京太郎「予定…ですか?」

その辺りの事はさっき食事中に大体、決めたと思うんだけど…。
まぁ、こうしてわざわざ俺の部屋に来たって事はまだ何かしら不足があったんだろう。
それにまぁ相手がいるであろう辻垣内さんが部屋に来たところで怖がる必要もない。
とりあえず入り口に立っていて貰うのもなんだし、中へ入ってもらうとするか。

京太郎「とりあえず中へどうぞ」

智葉「あ、あぁ…お、お邪魔します…」イソイソ

京太郎「…??」

…あれ?もしかして辻垣内さん緊張してる?
でも、緊張するような要素って何かあるか?
確かに俺は男であるが、今の時代、女性の方が遥かに身体的に優れているんだ。
昔のように男がレイプ…なんて言うのはほぼあり得ない。
寧ろ、女性から襲われる男性の数の方が圧倒的に多いのが現状である。

智葉「それで明日なんだが…」

京太郎「えぇ」

そう言って辻垣内さんが漏らすのは夕食の時に決めた内容と大きな差はなかった。
ほぼ確認と言っても良いそれに俺の疑問はさらに大きくなっていく。
直接の面識こそないが、映像や記録で見る彼女はとてもしっかり者だ。
ちょっとむっつりな面こそあるが、この程度、わざわざ確認しなくても覚えているだろう。

智葉「良かった。これで安心だな」

京太郎「えぇ。そうですね」

智葉「…そうだ。安心だ。安心…なんだ」

京太郎「……」

その言葉は微かに震えていた。
何処か自分に言い聞かせるようなそれは辻垣内さんが女の子だからだろう。
男顔負けなくらい格好良いと言っても、ついこの間まで彼女はこういった戦いとは無縁の少女だったのだ。
それがいきなり死ぬ事もあり得る迷宮探索に付き合えと言われれば、そりゃあ怖くもなるだろう。

京太郎「…すみません」

智葉「え?」

京太郎「俺の所為で…こんな事に巻き込んでしまって」

辻垣内さんだって本来ならばそういうのとは無縁で生きていたかったはずだ。
だが、彼女は明日、俺に付き合って、死と隣合わせの迷宮へ足を踏み入れる事になる。
それを恐れる彼女に…しかし、俺は謝罪する事しか出来ない。
…情けない事に…俺の力では辻垣内さんを護ってやるだなんて口が裂けても言えないんだ。

智葉「…須賀。君は一つ勘違いをしている」

京太郎「勘違い…ですか?」

智葉「あぁ。私は望んでこの作戦に志願したんだ」

智葉「…あそこには未だ私の仲間とライバルが囚われている」

智葉「彼女達を助け出すには私しかいない。そう思った」

京太郎「…そんな事…」

智葉「では、君は美穂子や塞が戦闘に向いている性格だと思うか?」

京太郎「それは…」

…言えるはずがない。
勿論、辻垣内さんだって決して荒事向きとは言えない事くらい分かっている。
けれど、あの二人は彼女に輪をかけて、そういう事からは無縁な生き方をしてきた少女なのだ。
出来れば死ぬかもしれない無謀な冒険からは無関係で居て欲しい。
でも、その気持ちは辻垣内さんへ向けるもんと同じで… ――

智葉「君と一緒に迷宮内部へ入れるのはここにいる私達くらいのものだ」

智葉「その中で最も荒事に適した私が君のパートナーに志願するのも当然の事だろう」

京太郎「…でも、辻垣内さんだって…普通の女の子じゃないですか」

智葉「……君は優しいな」

智葉「でも…私はもう普通じゃないんだ」

智葉「どう否定しても…私の身体は既に魔物に変わっている」

智葉「表面に出ていないだけで…私も本質は外で淫蕩に耽る彼女らと変わらないんだ」

その言葉は微かに自嘲の響きを伴っていた。
こうして冷静に話せているものの、やっぱり霧の影響は受けているのだろう。
もしかしたらさっき変にむっつりな反応をしていたのも、元の彼女ではなかったのかもしれない。

智葉「…だから、君は気にしなくても良い」

智葉「安心して私に前を任せればそれで良いんだ」

智葉「私が必ず君を護ってやる」

けれど、それを押し隠しながら、彼女は俺を安心させるような言葉をくれる。
自分だってきっと不安で…怖くて仕方ないのに。
俺の事を安心させようと…強がる笑みを俺に向けてくれるんだ。
そんな彼女に俺は… ―― 

京太郎「…じゃあ、どうしてさっき震えていたんですか?」

智葉「そ…れは…」

京太郎「辻垣内さんだって…怖くないはずないんです」

京太郎「死ぬのが怖くないって言えるほど…貴女は絶望も諦観もしていない」

京太郎「ただ…そうやって自分を騙してるだけだ」

智葉「っ…!」

俺の言葉に息を飲む辺り、自覚はあったのだろう。
でも、辻垣内さんはそれから目を背けてきた。
いた…目を背けなきゃいけないと自分を追い詰めてきたのだろう。

智葉「…じゃあ、どうしろと言うんだ…」グッ

智葉「この場でベストな選択は私なんだ!」

智葉「私が…やらなきゃいけないんだ!」

京太郎「…それは俺も同じです」

智葉「…あ」

…だけど、そんな風に自分の追い詰める必要はない。
確かに…俺は彼女に護ってもらわなきゃいけない立場の人間だ。
正直なところ、辻垣内さんに偉そうに説教するような立派な奴じゃない。
…それでも…俺は… ――

京太郎「…俺達はパートナーじゃないですか」

京太郎「そんな風に自分一人で何もかもしょいこまないでください」

京太郎「大丈夫ですよ。俺だってまったく何も出来ないって訳じゃないんですから」

京太郎「辻垣内さんの重荷くらい背負ってみせます」

そう。
俺達は決して一方的に護られるだけの関係じゃない。
あくまでも題目でしか無いかもしれないが…パートナーなのだ。

京太郎「だから…俺を護るなんて意気込まないで良いんですよ」

京太郎「勿論、護ってもらうところは護ってもらわなきゃダメですけど」

京太郎「でも、俺だって男なんです」

京太郎「少しくらい格好つけさせてくれても良いんじゃないですか?」

智葉「…須賀」

京太郎「…ダメっすかね?」

智葉「…そこで弱気になるのは確かにダメかもな」クスッ

京太郎「う…」

い、いや、だってさ、相手は殆ど初対面に近い相手な訳で。
正直なところ、こんだけ格好つけて引かれないかって思ってしまう。
ましてや…相手は俺よりも遥かに強く、また格好良い女性なのっだから尚更。

智葉「…だが、確かに君の言う通りだ」

智葉「私達はパートナーであり…迷宮攻略にはお互いに必要不可欠だったな」

智葉「私一人が護ってやらなきゃ…なんて意気込んで良いようなものじゃなかったか」フッ

京太郎「…辻垣内さん」

智葉「…須賀」スクッ

京太郎「は、はい!」ビクッ

智葉「明日はロビーに七時集合だ」

京太郎「…え?確か予定は九時じゃ…?」

智葉「そのつもりだったが…予定を前倒しにする事にした」

智葉「明日は迷宮に慣れる事を目的とする」

智葉「出来るだけ早くあの環境に慣れ、本格的な攻略に移れるように」

京太郎「は、はい!」

智葉「…格好つけてくれるんだろう?期待してるぞ」クスッ

京太郎「ま、任せて下さい!」

智葉「…では、また明日。早めに休めよ」

京太郎「わ、分かりました」

バタン

京太郎「…ふぅ」

…とりあえず立ち直ってくれたのかな?
最後の教官めいたやり取りに思わず背筋を伸ばしてしまったけれど。
まぁ、少しでも彼女が不安に思うような種を取り除けたのは良かった。
その分、何か凄い期待を寄せられてしまったみたいだけど…こればっかりは仕方ない。
少なくとも俺を護らなきゃと自分を追い込み、一人だけ強がられるよりはマシだ。

京太郎「(でも…改めて考えると責任重大だよな…)」

俺が背負っているのはこの国の未来だけじゃない。
咲を始めとする迷宮に未だ囚われている人、そして何より辻垣内さんの命も背負っているんだから。
正直、ついこの間までただの高校生だった俺には荷が重いけれど…でも、やるしかない。

京太郎「(そのためにも今は寝なきゃな)」

そう思いながら俺はベッドの中へと入った。
ふかふかとした柔らかなベッドは俺の身体を優しく受け止め、俺を眠りへと誘いこんでくれる。
まるでベッドがそのまま抜け落ちて、眠りの中へと堕ちるような感覚。
それに俺は抗う事も出来ず、意識を手放して…… ――


―― 次の日、寝坊しかかって早速、辻垣内さんに呆れられてしまうのだった。


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