―― 世界も俺も変化していく。

―― どれだけ単調で単純な日々を積み重ねても、変化からは無縁ではいられない。

―― 成長もすれば老いもする。

―― だからこそ、人はその一瞬一瞬と大切に、そして真剣に生きなければいけない。

…小学校の頃、俺のクラスを担当していた先生の言葉だ。
それはまだ若い彼が成長著しい子ども達に一体、何を伝えられるかを自分なりに考えたものなのだろう。
けれど、当時の俺は経験という積み重ねに裏打ちされたその言葉の大事さをまったく理解していなかった。
そんな面倒な話よりも、早く校庭に出て友達と遊びたいとそんな事を考えていたのを覚えている。

京太郎「(…でも、こうして…大人って呼ばれるような年になって…ようやく分かった)」

京太郎「(先生の言葉は…本当に…本当に正しい事だった)」

京太郎「(変わらないものなんてない)」

京太郎「(自分自身も、気持ちも、関係も…そして世界も)」

京太郎「(…子どもの頃の俺が思っているよりも変わらないものではなかったんだ)」

京太郎「(…だけど…さ)」

「んっぁぁっ♥しゅ…ごいぃっ♪」

「もっとぉ♪もっとおちんぽちょうらぁい…♥♥」

「はひぃっ♥じゃぁめぇん♪ねっとりザー汁しゃせぇっ♪♪」

京太郎「(…流石に世界がこんな風になるなんて想像なんて出来ねぇって)」

勿論、俺が歩いているのは風俗街などではない。
手にスーパーの袋をぶら下げる俺が歩くのは昼下がりの住宅地。
かつては静かだったその場所には今、明らかに嬌声としか思えないもので満ちている。
子どもの教育に悪すぎるそれは、勿論、一つの家から聞こえてくるものじゃない。
こうして並ぶ家々で睦み合う夫婦やカップル達があげているものなのだ。

京太郎「(あぁ…もう…真っ昼間から盛ってるんじゃねぇよ…)」

それが無理な事くらい俺にだって分かっていた。
既に彼女たちは『汚染』され、その価値観は旧来のものとは大きく変わっている。
こうして真っ昼間からセックスに励む彼女たちにとって、愛する人とのセックスは何者にも代えがたい最高の快楽であり、ご馳走であり、娯楽であるのだから。
人間の根本的な欲求を全て満たすその行為を止めるなんて不可能だろう。

京太郎「(分かってても…独り身には辛いんだっての…)」

まるで周囲に見せつけようとするような嬌声は、耳の奥がくすぐったくなるくらいに粘っこくて扇情的だ。
正直なところ、未だ清い身体のままの俺にとって、刺激が強すぎる。
こうして歩いているだけでジーンズの奥のムスコが膨れ上がり、先端に刺すような疼きを感じるのだから。
今すぐその部分に伸びそうになる手を堪えながら、俺は一つため息を吐いた。

京太郎「(…なんで…こうなっちまったんだろう)」

勿論、ほんの数年前まではこんな風じゃなかった。
俺が高校生の頃は、この辺りは上品な奥様が住む高級住宅街だったのだから。
それが今や風俗街も裸足で逃げ出すような淫らな雰囲気で満ちている。
明らかに子どもの教育に悪すぎる環境…だが、それはもうここだけのものではない。
この住宅街のような光景は、今、日本全国で普遍的に見られるものなのである。

京太郎「(日本は『汚染』されてしまった)」

勿論、それは決して冗談ではなく、知識人達が真顔で言うくらいに逼迫した現実だ。
学者たちが瘴気と名付けた紫色の霧によって、日本全土は完全に覆われてしまっている。
お陰で今のこの国に陽の光は殆ど届かず、街全体が薄暗い状態が続いていた。
けれど、それを気にするものは殆どいない。

京太郎「(そんな事を気にするような純粋な『人間』はもうとっくの昔にいないんだ)」

日本を『汚染』した霧の効果は、決して陽の光を妨げるだけじゃない。
未だにその構成物質の一つすらろくに解析出来ていない霧は『人間』を別の生き物に変える力があったのだ。
この世界の物理法則に真っ向から喧嘩を売るファンタジーでメルヘンな効果。
魔法と言っても過言じゃないようなそれに異世界からの侵略と言う声があがるのも当然の事だろう。

京太郎「(…実際、『人間』が変わったのも…この世界じゃ到底、生まれるはずのない種族だった)」

スライム、ゴブリン、オーク。
こんなモンスターの名前を聞いた事はないだろうか。
娯楽としてゲームが氾濫していた時代の人間にとって、それらはきっと一発でピンと来るものだろう。
だけど、それらが普通に町中を闊歩している姿が、はたして想像出来るだろうか。
俺もその手のゲームは好きだったけれど…でも、そんな事は想像もした事がない。
だけど、今、この国を支配しているのは間違いなくそういう異形の魔物たちなのだ。

京太郎「(つっても…ゲームに出てくるような化け物の姿じゃないけどさ)」

寧ろ、彼女たちはとても美しい容姿をしていた。
豚面で肥満体型として描かれ、悪役である事が多いオークでさえ豚耳にちょっとぽっちゃりした美少女という有り様である。
スライムも粘液体という事もあって向こう側が透けているものの、世が世ならアイドルになってもおかしくない容姿をしていた。
勿論、この2種族だけが特別なのではなく、ミノタウロスだの、ジョロウグモだのと言った他の化け物たちもその特徴を残しながらも美少女化している。

京太郎「(逆に男は殆ど変わりがない)」

こうして若干、前屈みになって歩いている俺も別に角が生えていたり、翼が生えている訳じゃない。
若干、肉体的に強くなったり、性欲が強くなったりしたものの、あの日から変わらず、何処にでもいるような平凡な男のままだ。
それを安心する一方で…逆に恐ろしくもある。
なにせ、俺は女性を殆ど例外なく化け物に変えてしまうようなとんでもない霧の中で生活しているのだ。
こうして呼吸している間にも何処が変化していくかも分からないのだから、恐ろしくて当然だろう。

京太郎「(…まぁ、それにも慣れてきたけどさ)」

あの運命の日から既に数年が経過している。
俺ももう20歳になり、大手を振って大人の仲間入りと言っても良い年頃だ。
最初の頃は怖くてパニックになりそうだったが、拍子抜けするほど何もないし。
周囲の環境も変わってはいるものの、こうして嬌声が聞こえてくるくらいで大混乱が起きている訳じゃないんだ。
寧ろ、犯罪率は皆無と良いほどに下がり、流通やインフラもしっかりと維持されている。

京太郎「(……でも)」

チラリと俺が見上げた家にはまったく人の気配がなかった。
この薄暗い霧の中で電気の一つもついておらず、怖いほど静まり返っている。
それどころか扉の前には蜘蛛の巣が張られたままで、相変わらず誰も帰ってきていない事が分かった。

京太郎「…咲」

小さく呟くその声はすぐさま周りの嬌声に飲まれてしまう。
周りには人もおらず、その呟きを聞き取れた人は誰もいないはずだ。
しかし…それでも…それを放った俺自身の耳にはどうしても届いてしまう。
この変わってしまった世界の中、一人消えてしまった少女の名前が。
あの日…全てが変わった中で…怖くて拒絶してしまった彼女の事が。
…どうしても胸の中に浮かび上がってしまうんだ。

京太郎「…くそ…」

小さく吐き捨てた言葉が果たして誰に向けたものなのか、俺には分からない。
ただ…今の自分が相変わらずあの日から進めていない事だけは良く分かった。
こうしてふざけた世界で生きていく事に慣れても、大人と呼べるような年になっても。
俺はあの日はきっと…永遠にあの日の事を忘れられないんだろう。



…………


……



京太郎「…ただいま」

短く告げた俺の声に答えるものは誰もいなかった。
両親は未だ独り身である俺に気を遣って、セックスする時は完全に音を遮断している。
きっと今頃は寝室で夫婦仲良く楽しんでいる事だろう。
正直、息子としては色々と複雑だが、それも仕事の一つなのだから仕方がない。

―― この国の生活インフラは数年前のものとはその性質を大きく変化させた。

かつて石油や放射線物質、その他、再生可能エネルギーで賄われていた国内の電気。
数えきれないほどの洗浄作業や濾過を経て生まれる飲料水。
その他、日本の文明的生活を支えてきた様々なものが全て、異形に変わった事で得た力 ―― 所謂、『魔法』で作る事が出来るのだから。

京太郎「(…ほんっと考えれば考えるほどチートだよな)」

無から有を生み出すような無茶苦茶で強引な手段。
一昔前に語れば気狂い扱いされてもおかしくはないほどのそれは今の日本では現実になっている。
まさに『魔法』と呼ぶしかないその能力がなければ、世界から孤立した今の日本がこんな平和に、そしてそれ以上に淫らに過ごす事は出来なかっただろう。

京太郎「(と言っても、本当に何もないところから生み出される訳じゃないらしいんだけど)」

俺も人間ではなくなったとは言え、そういった『魔法』が使える訳じゃない。
それらが使えるのはあくまでも異形となった女性だけのようだ。
だからこそ、聞きかじりの知識でしかないのだが…どうやら『魔法』の行使には体力気力とはまた違う力が必要らしい。
便宜上、『魔力』と呼ばれているその力を補給するのは、現在、男の精液のみ。
…まぁ、つまるところセックスしなければ、『魔法』は使えないのである。

京太郎「(だからこそ、そのインフラの維持に必要な魔力には結構な値がつく)」

勿論、既に『人間』を辞めてしまった俺達にとって食事は決して必要不可欠なものではない。
延々とセックスだけしていれば生命維持に十分なだけの『魔力』は得られるのだから。
だが、人が生きていく上で必要なかったとしても、娯楽というのはどうしてもなくてはならないものなのである。
何より…『人間』を辞めても、それまで築き上げてきた文化や文明、習慣まではどうしても捨てきれないのだろう。
こうして社会の有り様が大きく様変わりしても、貨幣が持つ価値は大きく変わっていなかった。

京太郎「(…まぁ、そうじゃなきゃ俺みたいな独り身が生きていけないってのもあるんだろうな)」

流石に昔のような大混乱はなくなったものの、社会が持っていた機能は未だ麻痺しているままだ。
学校機能などはその筆頭で、俺は大学どころか高校も無事に卒業出来ちゃいない。
こうして生活必需品を買い出しに行く以外は部屋に引きこもっているだけのNEETだ。
それでも何とか生きて行けているのは両親からのお零れに預かっているからなのだろう。

京太郎「…はぁ」

元々、おおらかだった上に『人間』を辞めた両親がその辺りの事を気にするはずがない。
こうして日がな一日何もしなくても、何も言わずに俺を養ってくれている。
それを有り難いと思う一方、情けなくて仕方がないのもまた事実だ。
一体、何時まで両親の脛を齧って生きているつもりなのか。
そんな自問がどうしても胸のうちに生まれてしまう。

京太郎「(…やっぱ…誰か恋人を見つけるのが一番なんだろうなぁ)」

とりあえず、恋人が出来れば、今のようにただ養ってもらうだけの状態からは脱出出来る。
恋人に精を供給するだけではあるが、一応、俺も仕事が出来るのだ。
けれど…旧来の価値観を捨てきれない俺はそういうのはやっぱり好きあってこそだと思うし…何より… ―― 

京太郎「(…咲の事…だよな)」

胸の中にどうしても引っかかり続ける幼馴染の名前。
未だ行方知れずな咲の事を忘れて俺一人だけ恋人を作るなんて出来ない。
俺がそうやって幸せになって良いのは…咲の無事を確かめてから。
どうしてもそんな気持ちが俺の中から消える事はなかった。

京太郎「(まぁ…とりあえず出来る事からやるか)」

大きな問題をそうやって棚上げしながら、俺はそっと両手の買い物袋を降ろす。
そのまま靴を脱ぎ、スリッパへと履き替えてからリビングへ。
とりあえず荷物を運び入れる為のルートを確保しよう。
そう思って開いた扉の向こうには何時も通りの我が家の光景が… ――

「こんにちは。須賀京太郎君」

京太郎「…え?」

慣れ親しんだ我が家のリビングには今、見慣れない三人の男が立っていた。
どれも判を押したようにピッチリとした黒服を着て、サングラスを掛けている。
まるで三つ子か何かのようにそっくりなその風体は、到底、カタギの人間には見えない。
正直、今すぐ踵を返して110番に通報したいくらいだ。
…まぁ、警察機能もろくに働いていない今の日本で通報しても意味はないだろうけれど。

京太郎「え、えっと…何方様でしょう…?」

「申し遅れました。私、こういうものです」スッ

京太郎「…内閣調査室…?」

「まぁ、日本のCIAみたいなものだと思っていただければ幸いです」

京太郎「は、はぁ…………………ってえ????」

CIA???
それってつまりジェームズ・ボンドとかみたいにスパイしたりするところって事?
つか、そもそも政府の人間が一体、我が家に何の用なんだ?
自慢じゃないが、俺の家はカピバラを飼ってるくらいしか特徴がないんだぞ。
少なくとも内閣調査室みたいなエリートさんが来るところじゃない。

「今日は貴方に借金返済の催促に参りました」

京太郎「…はい?」

その上、借金?
ちょっと待って、どういう事だ?
俺は確かに見た目はちゃらんぽらんだけど、そういうのはしっかり教育されてる。
人に金を貸して貰った事なんて一度もない。
ましてや、内閣調査室に所属するような人がわざわざ借金返済の催促に来るってどういう事なんだ?

京太郎「…何かの間違いじゃないですか?俺は人にお金を借りた覚えなんてありません」

「こちらを見て下さい」スッ

京太郎「え?」

そう言って黒服の人から手渡されたのは一枚の紙切れだった。
しかし、そこにはまず間違いなく俺と政府の間でお金のやり取りがあった事が記してある。
その下に書いてあるサインも、捺印も間違いなく俺のもの。
…けれど、俺は勿論、そんなものにサインした記憶はない。
そもそも例えサインしたって、それが現実に履行されているはずがないんだ。

京太郎「…い、一千兆円…?」

そう。
その紙切れで俺に貸与すると書かれているのは一千兆円という馬鹿げた金額だった。
小国ならば百年は国家予算が安心して組めるほどのそれは一個人が借りられるような額じゃない。
大体、借金借金とテレビで良く騒がれている日本の国庫に一千兆円なんて金額が残っている訳ないじゃないか。
今時、子どもだってこんな紙切れを信用しないだろう。


京太郎「…こういうのって詐欺罪になるんじゃないですか?」

「安心して下さい。我が国の司法機能は現在、停止しております」

京太郎「それってまったく安心出来ないんですけど…」

「それに貴方にとっては分からないかもしれませんが、これは我が国の公式文書です」

「つまり貴方がどう言い訳しようにも、これは我が国と貴方との間で正式に結ばれた契約となるのです」

京太郎「でも…どう見たって、一千兆円って…そんなのおかしいじゃないですか…!」

「では、裁判を起こしますか?最もその裁判を行うのも判決を下すのも現政府ですが」

京太郎「え…?」

「司法機能が停止している以上、政府が代行するのも致し方ないでしょう」

京太郎「さ、三権分立とかは…」

「今は非常事態ですので」

京太郎「っ…!そんなの独裁政治も良いところじゃないですか…!!」

「そう言われても致し方ない事ではありますが、事実は変わりません」

「須賀京太郎さん、貴方はこの国に普通では返しきれない借金があるのですよ」

「勿論、自己破産など認められません。例え逃げても必ず見つけ出します」

京太郎「そんな……」

無論、俺だってまだこの人が本当に国の人間だと思っている訳じゃない。
寧ろ、自称内閣調査室のこの人が詐欺師だと、そうあって欲しいと思ってる。
…けれど、『魔力』が簡単に通貨へと替えられる今、人を詐欺に掛けるメリットなんて殆どない。
ましてや…こんな大掛かりな紙まで用意して、まだ相手もいないような高校生を騙そうとする詐欺師なんてまずいないだろう。

京太郎「…俺にどうしろって言うんですか」

「……当然の事ですが、我々も須賀京太郎さんにこの借金を返しきれるとは思っていません」

「故にこちらに書いてある付帯条件を満たす形で返済を行っていただこうと考えています」

京太郎「付帯条件?」

「えぇ。もし、債務者が返済が出来ない場合、東京に生まれたダンジョンの探索成果を持って不足分を補填すると」

京太郎「っ!」

ダンジョンとはこの国に瘴気が溢れたのと同時期に各地で生まれた迷宮だ。
強大な魔物が生み出す桁外れの魔力が作ると言われているそれは一般人の立ち入りは禁止されている。
内部には強大な怪物が闊歩し、侵入者を文字通りの意味で叩き出すからとも、迷宮の内部は時間の流れすら滅茶苦茶で危険だからとも言われている。
どちらにせよ、俺のような一般人が気軽に足を踏み入れると痛い目を見るだけじゃ済まない場所だ。

―― けれど…俺が息を飲んだのはその危険性を知っているからじゃない。

「貴方の幼馴染もここにいるんでしょう?」

京太郎「…良くご存知で」

東京にあるダンジョンはこの国で一番最初に出現した迷宮だ。
インターハイの会場を覆うように生まれたその中には未だ多くの雀士が囚われている。
それは俺の幼馴染である宮永咲も例外じゃない。
あの日から消息を断った彼女は未だその場所にいるはずである。

「貴方が幼馴染の宮永さんをとても気にしている事は既に調査済みです」

「でも、貴方は今まで自身の足で迷宮へと踏み込もうとはしなかった」

「それは…」

京太郎「止めて下さい」

京太郎「…分かってるんです。俺だって理由くらい」

…結局のところ、俺は臆病者なのだ。
あの時、自分から逃げておいて…もし咲に嫌われていたらどうしようって。
そう思うと…中に咲がいるのが分かっていても、中々、迷宮に入る決心がつかなかった。
そうこうしている間に迷宮は魔法によって封鎖されて…俺も長野に帰らなきゃいけなくなって…。
それから俺はずっと親のすねを齧ってNEETを続けていたんだから。
何時か入れるようにとネットで情報こそ集めていたけれど…それは言い訳にはならないだろう。

「無論、こちらも最大限に貴方の事をバックアップさせて頂きます」

「東京での生活資金、装備なども支給しますし…内部の探索に必要な協力者も既に準備しております」

京太郎「…協力者?」

「えぇ。貴方もご存知でしょう?内部には怪物が闊歩しているという話を」

「あれは噂ではなく事実なのです」

京太郎「…じゃあ…もしかして…」

「はい。貴方のパートナーは魔物となった女性です」

「貴方にとっては辛い事かもしれませんが」

京太郎「……」

その言葉の響きには微かに同情するようなものが混じっていた。
それは…もしかしたら、あの日、俺と咲の間に起きた事を知っているからなのかもしれない。
正直、黒歴史と言っても良いような事を知られているのは恥ずかしいけれど…しかし、今は恥ずかしがっている場合でも、未だ見ぬパートナーを怖がっている場合でもない。

京太郎「(少なくとも…迷宮を攻略するには必ず彼女達の力が必要になる)」

今やこの世界は男よりもはるかに女性のほうが身体的に優れている世界だ。
溢れだした瘴気は男よりも女性のほうが馴染みやすいのか、怪物になった女性の力に男は足元にも及ばない。
その上、『魔法』が使えるのも女性だけともなれば、怪物の闊歩する迷宮探索に力を借りない道理はないだろう。
それよりもこの場で考えるべきなのは… ――


「…どうでしょう、貴方にとって今回の話は悪いものではないはずです」

「少なくとも…国の全面的バックアップを受けて迷宮を探索出来る」

「こんな機会なんてまずあり得ません」

「ですが、貴方は幸運にもその機会に恵まれた」

「だから…」

京太郎「…それに答える前に…一つ良いですか?」

…正直なところ、俺の胸の内はもう決まっている。
彼の言う通り、ここまでの機会に恵まれるチャンスなんて滅多にないだろう。
例えこれが国なんてまったく関係のない詐欺だとしても…ダンジョンに足を踏み入れなきゃいけない理由が出来ただけでも有り難い。
ただ…これだけはどうしてもはっきりさせておかなきゃいけないだろう。

「えぇ。どうぞ」

京太郎「…どうして、俺なんですか?」

京太郎「俺は…ごく普通の男です」

京太郎「凄い力がある訳でも、何か特技を持ってる訳でもない」

京太郎「俺よりも適任者は山ほどいるはずでしょう?」

「……簡単です。それは…貴方が宮永咲さんの幼馴染だからですよ」

京太郎「それってどういう…」

「あの迷宮は霧の源を覆うように形成されています」

「この霧が一体なんなのか…本当に人体に悪影響がないのか」

「それを調べる為に我々は幾度となく調査隊を送り込みました」

「けれど、それは一度も成果らしい成果をあげる事が出来ていません」

京太郎「それは…怪物の所為ですか?」

「いいえ、我々の仲間にも強力な魔物がいますから」

「怪物そのものはそれほど脅威ではありません」

「…問題は…宮永咲さんが貴方の事を求めているからですよ」

京太郎「…え?」

咲が…俺の事を?

「これまでの調査によって東京迷宮は他のダンジョンとは違い、一人の魔力によって形成されたものではない事が分かりました」

「恐らく内部に取り込まれた少女たちが同じように魔力を放出し、ダンジョンを形成しているのでしょう」

「ですが…それでも最初にダンジョンを形成した…所謂、核となった少女は存在します」

京太郎「まさかそれが…」

「はい。宮永咲さんです」

「…そしてその宮永咲さんが貴方以外を拒んでいるのですよ」

「京ちゃん以外の人がそれ以上近寄らないで、京ちゃん以外は帰って、と」

京太郎「……」

その言葉に俺はなんと反応して良いのか分からなかった。
それが一体、どういう事を意味するのか…分からないほど俺は鈍感じゃない。
けれど…だからこそ、俺は反応に困っていた。
数年前…咲を拒絶してしまったあの日から俺は未だ答えが出せていないままなのだから。

「複数の少女によって形成された迷宮内部は複雑な上に強固です」

「我々は何度も調査隊を送り込みましたが、宮永咲さんの強力な魔力に阻まれ、第一層の制覇すらままなりません」

「普通に生きてきた貴方にこのような重荷を背負わせる事は申し訳なく思いますが…しかし、他に方法はないのです」

「どうか…彼女の為にも…東京迷宮を制覇してください」スッ

京太郎「……分かりました」

けれども…ここで断る理由など俺の中にはなかった。
俺にとって咲が幼馴染なのか、或いは一人の女の子なのかはまだ分からない。
でも、俺にとって咲がどれほど大事な存在なのかはこの数年で思い知っている。
その上、相手もまた俺の事を呼んでくれているのならば、躊躇などいていられない。
迷いはあるし、答えはまだ出ていないけれど… ――

京太郎「俺が…必ず咲の事を連れ戻します」



とりあえずいま来た人の為の産業

○なんか唐突に周りがエロい美人だけになった

○国に借金背負わされて咲ちゃん助けに迷宮行けって言われた

○これから最初のパートナーを安価する

とりあえずポケモンに肖って選択肢を3つだそうと思います
下1 下3 下5にかかれたヒロインのデータを出します
尚、ポケモンとは違い、ここで選ばれなくても出番はあります ご安心下さい
ただ、まだヒロインのデータなんざ欠片も出来てないので少しお時間頂く事になります

それじゃあ最初のパートナーにしたいヒロインのお名前をどうぞ

(安価で辻垣内智葉に決定)




京太郎「あー…」

数年ぶりに到着した東京の風景は昔と殆ど変わっていなかった
…と言うか長野と殆ど変わらないと言うべきか
正直なところ、あちこちから聞こえてくる嬌声のお陰でセンチメンタルな気持ちにもなれない
これがかつての日本の首都だと思うとなんだか物悲しい気持ちになるくらいだ

京太郎「(まぁ、それよりも探し人を優先しなきゃ…なんだけど)」キョロキョロ

かつてのインターハイ会場にも近いこの場所にはあまりも人気がなかった
嬌声は聞こえるので何処かに人がいるのは分かるものの、まったく見えない
流石の魔物も人にそういった痴態を見られるのが恥ずかしいのか、或いは実は魔法で見えなくなっているだけなのか
どちらにせよ、まったく知らない相手と待ち合わせしてる俺には有り難い

「…君」

京太郎「え?」

「もしかして君が須賀京太郎君か?」

そんな俺の背中から話しかける声がする。
俺の名前を知るそれに振り返れば、そこには黒髪ロングの美少女がいた。
少々、目つきは鋭いが、その立ち姿は洗練された美しいもので、育ちの良さを感じさせる。
もし、街中を歩いていたら何度もナンパされるだろう。

―― その手に持った白塗りのドスさえなければ


京太郎「貴女は…辻垣内智葉さんですか?」

智葉「あぁ。良かった。少し遅いから心配してたんだ」

京太郎「す、すみません。その…俺、こっちは初めてで…」

智葉「あぁ、いや、別に責めている訳じゃないから安心してくれ」

智葉「ただ…ここはその…君にとって色々と危険だろう?」

京太郎「う…」

何処か言いづらそうに危険と言うのは俺が童貞だと言う事を彼女も知っているからなのだろう。
俺には良く分からないが、セックスで魔力を得る魔物にとって、童貞と言うのは最高のご馳走であるらしい。
場合によっては合意なしで襲われ、強引にモノにされる事もあると聞く。
俺は今までそんな事はなかったが、無理矢理、『夫』にさせられた元童貞たちの体験談を聞くにとてもうらやま…いや、恐ろしいと思う。

智葉「まぁ、なにはともあれ合流出来てよかった」

智葉「改めて自己紹介をしようか」

智葉「私は辻垣内智葉だ」スッ

京太郎「お、俺は須賀京太郎です。これからよろしくおねがいします」スッ

智葉「あぁ、よろしく」

…なんつーか、アレだな
こうやって色々と初対面の相手にも仕切る姿を見ると綺麗よりも先に格好良いって言葉が出てくる人だよなぁ
所謂、エロい事にもあまり興味はなさそうだし…この人ならば上手いことやっていけそうだ

京太郎「あ、それで俺は殆ど何も聞かずにここに来たんですが…」

智葉「そうだな。まぁ、現地でどう暮らせば良いかは私が大体、知っている」

智葉「道案内がてら色々と回っていこうか」

京太郎「お願いします」

そう言ってクルリと振り返る彼女の仕草もまた美しいものだった。
伸ばされた髪がふわりと浮き上がる様はいっそ漫画のワンシーンにも思えるくらいである。
ちょっと怖いし、並の男よりも格好良い人だけど、これだけ綺麗なんだからもう相手もいるんだろうなぁ。

智葉「どうした?」

京太郎「あ、すみません。何でもないです」

それはちょっと残念だけど、俺としては貞操の危機がなさそうで安心だ。
正直、パートナーに魔物がつくと聞いていきなり襲われるのも覚悟していたくらいだし。
ちょっと拍子抜けだけど、咲を救出するまでそういう事はなしにしておきたいしな。
ま…それはさておき、折角、道案内してくれているんだ
しっかりと道を覚えて、迷惑を掛けないようにしよう


ピロロンピロロン

美穂子「いらっしゃいませってあら?」

智葉「こんにちは、美穂子」

美穂子「智葉さん、こんにちは。今日は買い物ですか?」

智葉「いや、今日は彼の道案内だ」

美穂子「彼?」チラッ

京太郎「え、えっと…」

美穂子「あら…貴方は…須賀さん」

京太郎「お、覚えててくれたんですか!?」

まさか一回や二回会っただけの俺の事を覚えててくれるなんて…!
正直、忘れられてもおかしくはないと思ってた。
俺みたいなのもちゃんと覚えててくれるなんて流石長野No1は格が違った。

美穂子「勿論、忘れるはずありません」

美穂子「清澄のマネージャーさんですよね?」

京太郎「…部員です」

美穂子「えっ」

京太郎「・…その、部員だったんです、俺」

美穂子「わわわわっ!ご、ごごごごごごめんなさい!」ペコペコ

京太郎「い、いや、大丈夫です」

まぁ、部長辺りなら俺の事をマネージャーって言っててもおかしくはないし。
それに俺が福路さんと会ったのは全部雑用中だったからなぁ。
正直なところあの姿を見られて部員だと思えって言うのは中々に酷だと思う。

智葉「知り合いなのか?」

京太郎「えぇ。長野にいた頃、少し面識が」

智葉「なるほど。美穂子も確か長野出身だったか」

美穂子「もう長いこと帰ってませんけどね」

智葉「起きたのはこの前だがな」

京太郎「…起きた?」

美穂子「えぇ。私達はついこの前、東京迷宮から救出されたばかりなのよ」

智葉「だから、この数年の変化は聞きかじりでしか知らないんだ」

京太郎「…なるほど」

そう言えば東京迷宮の内部は時間もネジ曲がっているって話だったっけ。
内部で囚われていた彼女達からすれば、いきなりこんな世界に放り出されたも同然だろう。
…今は平然としているけれど、きっと色々な困惑や混乱があったはずだ。

美穂子「…あの須賀君…久さんや皆は…」

京太郎「…すみません。皆…まだきっとあの中に…」

美穂子「そう…やっぱり…そうなのね…」

そっと両目を伏せる彼女も恐らくその辺りは聞いているんだろう。
だが、それでも嘘だと思いたくて、俺に再び尋ねてしまった。
まるで蜃気楼と分かっていながらも伸ばした手が空を切ったようなその表情に俺の胸も痛む。

京太郎「大丈夫ですよ。きっと皆も無事です」

京太郎「福路さんや辻垣内さんがその何よりの証拠じゃないですか」

智葉「あぁ。それに私達はこれからその迷宮に挑むんだ」

智葉「必ず成果を持ち帰ってくる。安心してくれ」

美穂子「…えぇ。二人ともありがとう」

俺達の言葉に福路さんは綻ぶように笑った。
元々、何処か儚げな人だけど、そうやって笑うとドキリとするほど可愛らしい。
こっちが護るよりも先にドンドン進んでしまいそうな辻垣内さんも勿論、素敵だけど、護ってあげたくなるその可憐さは正直、反則だと思う。

美穂子「さて、それじゃあ…私も全力でサポートしなきゃいけないわね」グッ

美穂子「とりあえず…さっきのお礼にこれをどうぞ」スッ

京太郎「これは…」

美穂子「スプレー式の傷薬ね。智葉さんが傷ついた時に須賀くんが使ってあげて」

京太郎「え…でも…」

智葉「恐らくそれを使うのは戦闘中になるだろう。私も君に任せたい」

京太郎「…分かりました」


System
きずぐすりを一個手に入れた

美穂子「さて、それじゃあ本格的な説明に入るわね」

美穂子「既に聞いていると思うけど須賀くん達は迷宮探索の成果によって報奨金が出ます」

美穂子「報奨金の精算は迷宮探索の報告書をあげてすぐ」

美穂子「金額も結構なものだから、生活に困るって事はないはずよ」

美穂子「ただ…」

京太郎「ただ?」

美穂子「迷宮内部には色々と不思議なものが置いてあるの」

美穂子「迷宮を作っている子の想いがこもったものだと言われているけれど詳細は定かじゃないわ」

美穂子「そういうのを持ち帰ってくれれば、こっちでも分析し、それを複製する事が出来るの」

美穂子「でも、それには莫大な魔力が必要で…その、つまるところ、こちらで補助するにしても限度があるみたいで…」

京太郎「…つまり迷宮内部で拾った装備を複製しようと思ったらお金が必要だと」

美穂子「そうなるわね。ごめんなさい…」

京太郎「い、いえ、福路さんは何も悪く無いですから気にしないでください」


美穂子「ありがとう…須賀君は優しいのね」クスッ

京太郎「い、いや、そんな俺なんて…」テレテレ

智葉「それで…装備はどうなんだ?あれから増えたのか?」

美穂子「あ、そうね。今、ここで売れる商品はこんなところよ」



ラインナップ
きずぐすり   300円
どくけし     100円



京太郎「…え?これだけ?」

美穂子「迷宮探索に使えるようなものはまだこれだけしかなくって…」

美穂子「で、でも、他の商品も随意、開発中よ!」

美穂子「須賀君が迷宮内部からデータを沢山持ち帰ってくれれば他の商品も増えていくと思うわ」

京太郎「わ、分かりました」

…とにかく俺が頑張らなきゃどうしようもないって事だな。
なんだか聞いてた話から予想してたのとは大分違うけど、その辺は仕方ない。
それにまあ、俺の目的は最初から迷宮を踏破し、咲を救出する事なのだから。
いずれは商品の種類も増えていく事だろう。

智葉「さて…だいたいの説明は終わりかな?」

美穂子「えぇ。そうなるわね」

京太郎「色々とご丁寧にありがとうございます」ペコッ

美穂子「いえいえ、私も須賀君には期待しているから」

美穂子「私に協力出来る事があったら何でも言ってね?」

京太郎「はい。その時はよろしくおねがいします」

智葉「それじゃ行こうか。美穂子、また」

美穂子「えぇ。智葉さん、また」




System
福路美穂子とのコミュを行えるようになりました
福路美穂子の好感度が5になりました   →  <<期待してるわね>>


以後、拠点パートにて彼女を選ぶと簡単な会話が出来ます
会話によって相手の好感度を高めれば迷宮探索に連れて行く事も可能です
つまりただの店員じゃなく仲間枠
エロもある(予定)なので頑張りましょう

塞「いらっしゃいませ…って智葉か。おかえり」

智葉「あぁ。ただいま」

塞「あれ?そっちの子は??」

京太郎「初めまして。須賀京太郎です」ペコッ

塞「あ、君が噂のチャレンジャー?」

京太郎「ちゃ、チャレンジャーって…」

塞「あァ、ごめん。あの迷宮深部に入れる唯一の子だって聞いてさ」

塞「私は臼沢塞。このホテルの…まぁ、従業員みたいなものかな?」

ものらしい。
従業員との違いは分からないが、恐らくさっきの福路さんのように手伝いをしてる人なのだろう。
こうして辻垣内さんと仲の良いところを見るともしかしたら同時期に救出された人なのかもしれない。

塞「このホテルの事なら全部知ってるから何でも聞いてね」

京太郎「何でも?」

塞「そう。何でも」

…しかし、何でもと言われるとちょっと意地悪したくなるのってなんでだろうな。
塞さんがちょっと嗜虐心を擽るタイプの可愛らしさをしてると言うか。
こうワイシャツにベストを着ている所為で浮き出ているその腰つきがエロい所為と言うか…。

京太郎「じゃあ、辻垣内さんがお風呂で何処から洗うかを…」

智葉「ちょ、ま、待て!須賀!?」

塞「智葉は普段、晒を巻いて胸を締め付けてるから胸元が蒸れて仕方ないらしいんだよね」

塞「だから、最初に洗うのは何時も胸から」

京太郎「ほうほう。中々にマニアックですね…」

智葉「塞も何を答えてるんだ!?」カァ

塞「そりゃまァ…何でも聞いてって言っちゃったし?」

智葉「だからって宿泊客のプライバシーをそう簡単に漏らして良い訳ないだろう…!!」

塞「…って言うか、私、流石にそこまで知らないよ?」

智葉「…え?」

塞「だから、冗談のつもりだったんだけど…智葉、もしかして本当に…」

智葉「…ぁ…ぅ」マッカ

塞「…なんか、ごめんね?」

京太郎「俺もその…ごめんなさい…」

智葉「べ、別に良い…」

智葉「そもそも…私と須賀はこれからパートナーになるんだ」

智葉「多少、そういう事を知られたくらいで…別に…別に…」プルプル

塞「…後で須賀君が何処から洗うか教えてあげるから元気出して」

智葉「そ、そんなの聞きたくない!!」プシュウゥ

まぁ、そりゃあな。
好きでも何でもない男のそんな情報を貰ったところで戸惑うだけだろう。
…にしても、格好良いように見えて辻垣内さんって意外とこういうのに免疫がないのか。
なんだかこうやって赤くなっているのは可愛らしい感じだな。

塞「あ。あはは…まぁ、とりあえず智葉の事は置いておいて…」

塞「この施設の説明をするね」

京太郎「お、お願いします」

塞「ここは所謂、ホテル。須賀くんたちが探索から帰ってきた時に泊まる場所ね」

塞「基本、何時でも食堂も大浴場もいつでも解放されてるから夜中にヘトヘトになって帰ってきても大丈夫」

塞「いつでも暖かいご飯とベッドが待ってるよ」

京太郎「有り難いです」

塞「そしてここからがこのホテルの凄いところなんだけど…」

塞「なんとこのホテル、一晩泊まるだけで体力がほぼ全回復します」

塞「筋肉痛も疲れもまったくなし。一日でまた24時間戦えるようになるよ」

京太郎「凄いですけど…流石に24時間は戦いたくないですね…」

塞「あは。まァあくまで例えだけどね」

塞「ただ、体力は回復しても魔力までは回復しないから、そこだけは注意してね」

京太郎「ちゅ、注意って…」

それは俺が注意してどうこうなるようなものなのだろうか。
そもそも辻垣内さんは俺以外に相手はいるだろうし。
例え道中で魔力が切れたところで俺から補充する事はまずないだろう。

智葉「す、須賀が気にする必要はない」

智葉「私は一人で何とか出来るからな」

塞「…あんまり無茶はしないでよ?」

智葉「分かってる。心配するな」

京太郎「…?」

一体、どういう事なんだろうか?
まるで辻垣内さんのその言葉が無茶だと言っているような気がするんだけど…。
俺の知らない秘密が辻垣内さんにあるのだろうか…?

塞「まァいいや。とりあえず今日は疲れたでしょ?」

塞「部屋に荷物を運んで今日はゆっくり休んでね」スッ

京太郎「…ありがとうございます」

とは言え、その辺踏み込むだけの親しさが俺と辻垣内さんにはまだない。
俺達はパートナーであるとは言え、まだ今日出会ったばかりの関係なのだから。
俺よりも遥かに親しいであろう臼沢さんが止めない以上、それは深刻なものではないだろうし。
何時か辻垣内さんから話してくれる事を祈ろう。

塞「あ、荷物を預るよ」

京太郎「いや…でも…」

塞「いいからいいから。これも私の仕事の内だし」

俺のトランクケースを奪い取られてしまう。
下手をすれば数年単位の仕事になるだろうから結構な荷物を詰めてきたんだけどな。
まるで紙袋か何かのように持ち上げている。
外見こそまったくインターハイの時から変化はないけど、やっぱり臼沢さんも魔物って事なんだろう。
そう思うと…ちょっとだけ怖いけれど…でも… ――

塞「あ、ちなみに部屋は智葉の隣だけど防音はしっかりしてるから安心してね」

智葉「な、何を安心するんだ…!」カァ

塞「…いや、別に深い意味はなかったんだけど」

智葉「はう…」カァ

塞「…智葉のむっつり」

智葉「うぅぅああああ…」フルフル

ここなら上手くやっていけそうだとそう思った。