―― 人には『オーラ』と呼ばれるものがある。

ただ、それは漫画的な強さだったり、パワーアップしたりするもんじゃない。
それはただ相手が恋人がいるかどうかを見分ける程度のモノでしかないのだから。
フリーなら灰色 恋人がいるなら蒼、既婚者なら赤。
人によってその色は微妙に違うものの、目を凝らせばそれは誰にだって確認出来る。

―― 一説によれば、それは高度に複雑化した社会を維持する為に人類が進化した証…らしいけれど。

どんな集団でも男女関係による不和には弱い。
こうして『オーラ』が確認出来るようになっても、バンドが女性関係で解散するのは日常茶飯事だった。
まぁ、そういう訳で…ぶっちゃけそれがなんの為にあるのか、ちゃんとした説明が出来る人は未だにいないらしい。
子どもの頃からそれが見えていた俺にとっては正直、あるからある…程度の認識しかなかったんだけれど。

「それは全てこの石版の所為だったんだよ!」バーン

京太郎「あぁ、うん」

京太郎「そうだね、プロテインだね」

…………久しぶりに帰って来た親父からのお土産。
それは表面に知らない文字が刻み込まれた妙な石版だった。
まぁ、それ自体は別に特に問題じゃない。
考古学者である親父が妙なものを持って帰ってくるのは別に今に始まった事じゃないからだ。

京太郎「まぁ、酒は程々にしておけよ」

「冷たいぞ、マイサン」

京太郎「…いや、だってなぁ…」

…確かに親父が持ってる石版には、『男女関係を人目で確認する事が出来る世界』と刻み込まれている。
だが、そんなものが果たして今の社会の変革の源になっているなんて到底、思う事が出来ない。
ぶっちゃけた話、誰かが悪戯で石版にそんな文字を彫り込んだって方がよっぽど信ぴょう性があるだろう。

「いやいや、これがホントマジヤバイんだって」

「まずこの石版の構成物質が分からない」

「地球上のどんな物質ともかけ離れててマジヤバイ」

「マジで宇宙から降ってきたとしか思えないって超ヤバくない?」

京太郎「うぜぇ」

とりあえず俺としてはギャル口調で話す親父の方がヤバイくらいウザイ。
幾ら酒が入っているとは言えテンションが高すぎじゃないだろうか。
或いは久しぶりに会った息子との会話に興奮しているとか…。
あぁ、うん、その辺はちょっと恥ずかしくなるから辞めよう。

京太郎「(…ただ、まぁ、親父がこういう事を言うって言うのは)」

親父は多少、おちゃらけた人間ではあるが、滅多に嘘を言わない。
ふざける事はあっても冗談すらあまり口にはしない親父の言葉はきっと本当なんだろう。
まぁ…だからと言って、宇宙から来た…なんて荒唐無稽な話を信じるつもりはないけれど。
宇宙から落ちてきた石版なんて、マジでファンタジーの世界だからなぁ。

京太郎「…で、そんなヤバイ石版をどうして持って帰って来たんだよ」

京太郎「それがマジなら国の研究所かなんかに突っ込んどくべきだろ」

「んー…そうなんだけどさ」

京太郎「けど?」

「…なんとなく直感的にそれがヤバイ気がした」

京太郎「あー…」

……親父の直感は良くあたる。
正直、オカルトと呼べるレベルの的中率を誇ってるんだ。
その的中率の高さから有名な遺跡をバンバン発掘してる親父の勘は正直、馬鹿にできない。
少なくとも、その勘にこれまで何度か助けられてきた俺には笑う事など不可能だった。

「と言う訳で、京太郎」

「これはお前にやる」

京太郎「はい?」

…いや、あの、ちょっとまってくれ。
なんでそんなヤバイシロモノを息子に預けるんですかねぇ!?
親父がヤバイって言うってよっぽどの厄ネタだろう!!
そんなもんを普通の高校生に預けようとするんじゃねぇよ!!

「まぁ、色々と言いたい事は分かる」

「だが、俺が持ってるとこの石版は否応なく目立つし…」

「何よりお前なら安心して預けられる」

…ただ、こうなった親父に何を言っても無意味だ。
おちゃらけてはいるものの、親父はかなり頑固だからなぁ。
それに…安心して預ける、なんて言われたら、ぶっちゃけ俺もその気になってしまうっていうか。
男としてこんな風に言われて悪い気はしない。

京太郎「…分かったよ」

京太郎「でも、あんまり期待しすぎるなよ」

「大丈夫だって。お前は俺の息子なんだ」

「やれば出来る奴だってのは俺が一番、良く知ってるよ」クシャクシャ

京太郎「あぁ…もう…」

…普段離れて過ごしてる癖に調子良いんだからなぁ。
……まぁ、でも、こうして言われて、ちょっと嬉しくなっちゃう俺も俺だけど。
何だかんだ言いつつ、俺は世界的に有名なオヤジの事を尊敬してるんだ。
そんな親父にこうまで言われちゃ、胸の奥がくすぐったくなる。

「ま、ともかく、その管理はお前に一任する」

「適当に隠すなり使うなり好きにしてくれ」

京太郎「使うって…」

「漬物石なんてどうだ?」

京太郎「んなもんつくらねぇよ」

「でも、最近はラーメン作ってるんだろ?」

京太郎「なんちゃってラーメンだけどな」

…学校の先輩にラーメン好きな人がいるからな。
その人に付き合って色んなラーメン食べてる間に、自分でもちょっと作りたくなったってだけだ。
まぁ、作ると言ってもそこまで本格的なもんじゃなく、自分で小麦粉を打って、機械で麺にして貰うだけだけれど。
それを市販のスープにぶちこむだけでもかなり美味しいって事に最近、気づいた。
ってそれはさておき。

「まぁ、ラーメン作るときに作るなりなんなり適当に使ってくれりゃ良いさ」

京太郎「んな扱い雑で良いのかよ」

「だって、それどれだけ砕こうとしても砕けなかったし」

「割りと色んなアプローチをしてみたけど全部、無意味だったからな」

「データを取れるならとっときたい」

京太郎「だからって漬物石はないだろ」

……まぁ、なんとなく親父の意図は分かった。
研究者である自分にはお手上げだったから、民間人の俺の発想力に期待してるって事なんだろう。
それに応えられるかどうかは分からないが…まぁ、俺だって別に忙しい訳じゃないし。
暇つぶしに色々とアプローチをしてみるのも良いかもしれない。

京太郎「ま、理由は分かったよ」

京太郎「何か変化があったら、メールか何かすれば良いか?」

「おう。よろしくな」

…さて、んじゃ、そろそろ時間もおそいし。
丁度、話も終わったから、良い子の俺としてはそろそろ休むとするか。
とりあえず…明日あたり冷水に浸してナマのカツオでぶったたいてみるのも良いかもしれない。
下手をすれば石版になってた魔物が実体化して仲間に…あれ?敵だったんだっけ?

京太郎「んしょっと…」

…にしてもマジ軽いな、コレ。
結構、デカサがあるのにらくらく持ち上げて階段も上れるわ。
その上、親父レベルが砕こうとしても砕けなかったって…夢の素材すぎる。
そりゃ親父も直感でヤバイと悟るわな。
こんな素材が一般化したらいろんな分野で革命が起こってもおかしくはないし。

京太郎「(さーって、それじゃあ…)」

…ってあれ、ベッドに置きっぱなしにしてたスマホにLINEが来てるわ。
もしかして、おっぱい美少女から愛の告白かな!!!
…………あぁ、うん、そんな上手い話はないですよね。
高久田の奴に対する相談か…。

京太郎「(あいつ、結構モテるからなぁ…)」

190を超える高い身長に、どんな球技でも抜群に活躍してみせる。
ちょっと頭はお馬鹿だが、性格は良く、男気だってあるんだ。
まぁ、喧嘩は苦手だけれど、悪い事を見過ごせないあいつに救われた奴は山程いる。
だからこそ、そんな高久田を射止めようとする女の子は数多くて、その友人である俺にも相談が来るんだけれど。

京太郎「(…結構、心にクるんです)」

言っちゃ何だが、俺はあんまりモテない。
まぁ、お調子者キャラな上に、おっぱいフェチを全面に出したスケベキャラだから当然なんだけれど。
ただ、俺と馬鹿やってるはずの高久田がこうもモテると言うのは、たまーに理不尽なものを感じる。
それであいつに対する態度を変えたりしないが、彼女達の相談を受けるのが辛くなってくるくらいに。

京太郎「(…でも、この子たちも皆、困ってる訳だからなぁ…)」

相談されている身としてはあまり無碍には出来ない。
そもそも俺自身、女の子に頼ってもらうのは嫌じゃないからな。
だから、とりあえず毎回、真剣に相談には載ってるんだけれども。

京太郎「(…ぶっちゃけ、押し倒して一発ヤれば良いって言いたい)」

あいつは何だかんだでしっかりした奴だ。
逆レとは言え、ヤった相手の事を無碍にはしないだろう。
その心に愛がなくとも、相手の事を愛そうと努力するはずだ。
それを考えれば、『ガンガン行こうぜ!』がベストな気がするんだけれど…。
でも、相手はわざわざ親友の俺に告白してくるようなシャイガールだ。
押し倒せ、なんて指示に従えるはずがない。

京太郎「ふぅ……」ゴトン

京太郎「って…ん?」

……あぁ、そうだ、この石版の事忘れてた。
俺にとっては未知の素材で出来た石版よりも旧友の恋愛事情の方が大事だからな。
にしても…うーん、石版…ねぇ。
……さっきは親父にあぁ言ったけど…コレがもし本当に、人の『オーラ』を見る力に繋がっているなら… ――

京太郎「(…例えば、女の子を積極的にさせる事だって出来るかもしれない)」

そうなったらあの鈍感王、高久田と言えど、気づくだろう。
自分が今までどれだけの美少女達から好意を寄せられていたのかを。
そうすれば俺もお役御免。
こうして女の子の相談に四苦八苦し、嫉妬する事もなくなるはずだ。

京太郎「(…ま、とりあえずアプローチだけしてみるか)」

ダメで元々だからな。
…でも、確かこの石版、どれだけ傷つけようとしても壊れないんだったっけ?
うーん…じゃあ、流石に彫刻刀とかじゃ無理だよなぁ…。
…………仕方ない、とりあえずマジックで代用しよう。

京太郎「(女の子が男に対して積極的になりますように…っと)」

…………よし。
黒鉛っぽくてちょっとわかりにくいけどちゃんと書けたぞ。
後は……まぁ、とりあえず女の子の相談に戻るか。
折角、LINEで連絡貰ってるのに無視するのも可哀想な話だしな。
これでも一応、俺はフェミニストだし…ってえ?

―― パァァ

京太郎「(なんか石版が光って…!?)」

こ、これもしかしてヤバイ奴か!?
もしかして俺やっちゃった!?
百均で売ってるようなマジックじゃなくてちゃんと筆で書けって事なのか!?
いや、でも、流石にこの時間から墨をするのは面倒だって!!
そもそも明日、学校で習字があるから持って帰って来て… ――

京太郎「…あれ?」

…………収まった、のか?
ふぅ…驚かせやがって。
…寿命が五年は縮まったぞ、多分。
光るなら光るって言ってから光って欲しいもんだ。

京太郎「(…にしても)」

…特に目立った変化はない…よな?
うん、肌さわりとか重さとかはそのまんまだし…。
…強いて言えば…まぁ、そのなんだ。
俺がマジックで書いた文字がそのまま彫り込まれてるって事なんだけど。

京太郎「(…ま、まさかな)」

……確かにそうかもしれないと俺は思ったよ?
でも、まさか…百均のマジックでこんな不思議現象起きるなんて思ってなかったし…。
つーか…こうして文字が勝手に彫り込まれて訂正すら出来なくなってるって事は…。
本物?これ…マジで本物なの?
世界のルールとか思い通りにできちゃう系マジックアイテムなの?


京太郎「(…とりあえずこれはヤバイ)」

京太郎「(どう考えてもヤバ過ぎる)」

…とりあえず親父に報告しよう。
そうすればきっと確かな助言をくれるはずだ。
おちゃらけてる事は多いが、学者だけあって親父の知識量はかなりのものだし。
きっと的確な指示を俺にくれるはず…。

京太郎「(あ…れ…?)」クラァ

…なんだ、この眠気は…。
ダメだ…今すぐ親父に言わなきゃいけないのに…。
明日の朝には…親父はまた海外に出て行って…いなくなるってのに…。
なんで、こんないきなり眠気が…あぁ…クソ…。
ダメ…だ…身体がもう…堕ち…… ――


チュンチュン

京太郎「うーん…うーん…」

京太郎「はやりさん…もう許して…」

京太郎「もう…出ない…ですから…」

京太郎「ぜ、前立腺は…ら…めぇ……」ハッ

…………朝か。
チクショウ…折角、はやりんとセックス出来る夢を見れてたって言うのに…!!
…まぁ、セックスって言うか、ほとんど奴隷みたいな扱いでしたけどね。
首輪つけられながら騎乗位で延々と犯され続けてたし。
ただ、その度におっぱいバルンバルンって揺れてたから、ご褒美でしかないんだよなぁ。
…流石に前立腺責めはやめて欲しかったけどさ、うん。

京太郎「(…ってそうじゃねぇ!?)」

ってもう朝じゃねぇか!!
今の時間…ってああああああっ!やっぱり!!
親父もう完全に出ちゃってるよ、コレ!!
くっそ…!なんで昨日の俺はあそこで眠っちゃったんだよ!!
親父に直接アドバイス貰おうと思ったら、また数ヶ月は後になるってのに…!!


京太郎「…とりあえず起きるか」

部活にはもうちょっと時間があるけど…でも、あんまりノンビリしてられないしな。
もう来週からはインハイが始まるんだから、俺もしっかりしないといけないし。
まぁ…しっかりつってもほとんどマネージャーみたいなもんなんだけどさ。
一応、部員として指導はしてもらってるとは言え、それ以上に雑用やってる事の方が多い気が…。

京太郎「(…ってアレ?)」クン

…なんだ、このいい匂い。
もしかして誰か料理してる?
…いや、でも、親父はもうとっくに出てるし…。
母さんはそんな親父にベッタリだから一緒に出て行ったはずなんだけど…。


京太郎「(一体、誰が俺の家のキッチンに…)」ガチャ

明華「ふんふふんふんふーん♪」

京太郎「」バタン

……ん?んんんんん!?
見間違えかな…?
なんか俺の家のキッチンに明華さんが立ってたんだけど。
い、いや、でも、そんなはずないよな。
彼女はこの家の住人じゃなくって、学校の寮で暮らしてる訳だし。
こんな朝早くに…しかも、俺の家に出没するはずがない。

京太郎「(…つまり、さっきのは俺の見間違え以外にあり得ない)」

京太郎「(ははは、俺ってばおっばかさんだなー)」

京太郎「(朝はちゃんと乳酸菌取らないと…)」ガチャ

明華「あ、京太郎君」ニコ

…………最近の幻覚は凄いな。
まさか視覚だけじゃなくて聴覚にまで訴えてくるとは。
この海のリハクの目にも以下略ってレベルじゃない。
まるで本当に明華さんが目の前にいるみたいだ。

明華「おはようございます」

明華「今日はちょっと早いんですね」

明華「もしかして悪い夢でも見ましたか?」ジィ

いやぁ、強いて言えば目の前のそれが悪い夢ですかね。
心配そうに見てくれているのは嬉しいんだけど…でも、所詮は幻覚な訳で。
ここまでハッキリと幻覚が見えるようになった自分の精神状態がちょっと怖い。
昨日、石版が光ったのも俺の錯覚なんじゃなかったのかってそう思うくらいだ。

明華「…ちょっと顔色が悪いですね」

明華「後でちょっとお薬を出しましょうか」

明華「とりあえず座って下さい」

明華「今、ミルクでも出しますから」

京太郎「あ、うん」

……で、なんでその幻覚は勝手知ったる感じで我が家のリビングを動き回っているんだろう。
しかも、やたらと上機嫌な感じで冷蔵庫を開けちゃってるし…。
戸棚から普段、俺が使ってるコップだって一発で見分けてる。
…俺が創りだしたとは言え、俺の事バッチリ把握しすぎて若干、怖いくらいだ。


明華「はい。どうぞ」コトン

京太郎「あ、ありがとうな」

明華「いえいえ」

明華「あ、もうちょっとでハニートーストが出来るので待っていてくださいね」

明華「出来上がったら二人で朝ごはんにしましょう」ニコ

いやぁ…やっぱり明華さんは、幻覚でも可愛いなぁ。
まさか朝からハニートーストまで作ってくれるなんて。
これは今日一日、とっても調子が良くなりそうだぞぅ。
……これが幻覚でなければ、な。

京太郎「(と、とりあえず落ち着こう…)」

丁度、目の前に良く冷えた牛乳があるんだ。
これを喉に流し込んで、少しは頭を冷やそう。
……うん、美味しい。
やっぱり牛乳は雪印に限るな。
他のミルクじゃあ、こうもコクのある甘さは出せないぜ…。

京太郎「(…ってあれ?幻覚が出したミルクが飲めるって事は…)」

…………もしかして、アレは明華さん本人?
い、いや、ま、待て、待ってくれ。
お、俺は知ってるぞ。
こういう時は全部、自分でやってるのを全部、幻覚がやってると勘違いしてるんだって。
だ、だから、これは俺が準備した牛乳だったんだろう。
さっき慣れた様子で、冷蔵庫を開けていたのも、俺のコップを迷わずに選んでいたのもその所為で ――

京太郎「(目を覚ませ…!)」

京太郎「(早く目を覚ませ、俺ええええええ!!)」ガンガン

このまま幻覚と一緒にいると気がおかしくなってしまう…!
いや、と言うか、幻覚を見るくらい、おかしくなっているんだけれども!!
でも、これ以上、おかしくなると俺の精神状態がヤバイ!マッハでヤバイ!!
本気で幻覚と現実との境界線が曖昧になっちゃいそうで怖い!!!

明華「ちょ…何をやっているんですか!?」パッ

京太郎「う…」

…出来れば、幻覚の手を振り払ってしまいたい。
幻覚風情が邪魔をするなといってやりたかった。
だが、幾ら幻覚であっても、相手は明華さんなのだ。
日頃から俺と親しくしてくれて、俺を仲間に引きあわせてくれた彼女には大恩がある。
幾ら幻覚とは言え、そんな彼女に乱暴をしたくない。

明華「…もしかして何か辛い事でもあったんですか?」

明華「私で良ければ相談に乗りますよ」

明華「だから、そんな風に自分を痛めつけたりしないでください」

明華「私が…側にいますから」ギュ

京太郎「お、おうふ…」

ってそう躊躇ってる間に明華さんが俺の事を抱きしめて…。
や、やべぇ…明華さんのフランスおっぱいがムニムニって背中に張り付いてきている…。
前々から形と良い大きさと良い非の打ち所のないおっぱいだと思ってたけど…。
実際、こうしてそれを感じると…もう本当にマーヴェラスとしか言いようがない。
ありがとうと言うそんな言葉さえ口から出てしまいそうだ…。

明華「…落ち着きましたか?」

京太郎「…はい」

…まぁ、一部は全然、落ち着いてない訳だけれど。
その辺はほら、あんまり気にしてもしかたがないと言うか。
とりあえずまだ半勃ちレベルだからセーフだと俺としては主張したい。
ぶっちゃけあのまま抱きつかれっぱなしだったらやばかったけどな!!

明華「それで…どうしていきなりこんな事を…?」

京太郎「…そ、それはその…」

明華「…大丈夫ですよ。私は誰にも言いませんから」

…そりゃ幻覚だから…ってアレ?
…………そう言えば、なんで俺、さっき明華さんのおっぱいを背中に感じていたんだ?
そもそも俺は明華さんと知り合ったばっかりで…まだ手すら繋いだ記憶がないってのに。
それを飛び越しておっぱいの感触を再現するだなんて、幾ら妄想たくましい男子高校生でも出来るはずがないだろう。
だ、だったら、これは…もしかして…!!

京太郎「…明華さん?」

明華「はい」

京太郎「ほ、本物の明華さんなんですか?」

明華「え、私、偽物だったんですか?」

あ、この天然さは明華さんだわ。
このちょっとズレちゃってる感じは、本物の明華さんにしか出せない。
幾ら俺が彼女と親しくしているとは言え、こうまで見事に再現出来ないだろう。
…つーか、それはそれで新しい疑問が山程出てくるんですけれど!!

京太郎「いや、明華さんは本物だと思いますが…」

京太郎「で、でも、どうしてここに!?」

明華「なんでって…それはほら」

明華「乙女の秘密です」ニコ

乙女の秘密かー。
…うん、乙女の秘密ならしょうがないな。
…………って俺も言いたいけどさ!
でも、それで済ませるにはあまりにもちょっと問題が多すぎるっていうか…。

明華「…あ、もしかして不法侵入じゃないかって疑ってますね?」

京太郎「…いや、今の流れで疑わない人はいないと思いますが」

明華「大丈夫ですよ、ほら」スッ

…あ、アレは…俺の家の鍵?
ってどうしてそんなものを明華さんが持ってるんだ?
確かに俺はそれなりに彼女と仲良くしてるけど…でも、合鍵を渡すほど親密な訳じゃないし。
勿論、いずれはそうなれたら良いな、とは思っていたけれど…。

明華「ちゃんとこうして鍵がありますから不法侵入じゃありません」

京太郎「…じゃあ、それはどうして入手したんですか?」

明華「乙女の秘密です」ニッコリ

…一体、どうやって手に入れたんだ。
ホント、すっげえええ気になるけど…でも、このまま突っ込んでも明華さんは教えてはくれないだろうし。
とりあえず乙女の秘密って事で納得しておくのが一番なのかもしれない。

明華「お義父様とお義母様にはちゃんと京太郎君の事を任せたと直々に太鼓判ももらっていますから安心してくださいね」

京太郎「……一体、いつの間に…」

明華「今日の朝です」ニコ

…いや、今日の朝って。
親父達は朝一発目の飛行機に乗る予定だったから、かなり早くに出てたはずなんだけど。
そんな親父達と鉢合わせ出来るレベルって…一体、何時から明華さんは起きてたんだ…。
正直、謎が謎を呼ぶ展開すぎると言うか…若干、ついていけない感があるけれども…。

京太郎「…で、目的は一体…」

明華「今日からまた京太郎君が一人になると聞きまして」

明華「防犯と食事の為に通い妻になろうかな、と」テレ

可愛い。
もう文句なしに可愛い。
正直、明華さんの通い妻とか土下座してでも迎え入れたいレベル。
…ただ、さっきから違和感が拭えないんだよなぁ。
勿論、目の前の彼女が本物である事を疑っている訳じゃないんだけれど… ――

京太郎「(…明華さん、ここまでぶっ飛んでたか?)」

確かに天然入ってたし、俺の知る常識とはズレている人ではあった。
でも、ここまで強引と言うか、滅茶苦茶な事をやらかすタイプではなかったのである。
そんな彼女が朝からこうして通い妻になってくれている光景は…正直、現実とは思えない。
まだ夢でも見ているのではないかとそう思う自分が俺の中で大きかった。

明華「それよりほら、さっきハニートーストも出来上がりましたから朝ごはんにしましょう」

明華「一日の計は朝にあり…ですよ」

京太郎「…ですね」

まぁ、でも…ここでゴタゴタやってて時間を潰すのも勿体無い。
まだまだ時間はあるとは言え、こうしている今もハニートーストが冷めている訳で。
明華さんのお手製ともなれば、出来るだけ一番、美味しい時間に食べたい。
だからこそ、俺はその疑問を丸投げして、彼女と一緒に食卓について ――



京太郎「(…おかしい)」

京太郎「(いや、と言うか…さっきからおかしいところがまったくないと言っても良いくらいだ)」

京太郎「(首輪は一応、ファッションとして認められてはいるけれど…)」

京太郎「(でも、そこから伸びた鎖を女の子が握ってるとなれば、そりゃもう明らかに異常事態な訳で)」

京太郎「(そんなカップルが俺の視界にはもう何人もいる訳で)」

京太郎「(でも、そんなカップルに対しツッコミが入るどころか羨ましそうに見てる女性が沢山いる訳で)」

明華「…良いですね、ああいうの」

明華「何時か…私もあんな風に人前で繋げるような人が欲しいです」ニコ

京太郎「(…それは勿論、明華さんも例外じゃない訳で)」

京太郎「(と言うか、俺は今、彼女と腕を組んでいる状態な訳で)」

京太郎「(その素敵なフランスっぱいが俺の胸にグイグイ来てる訳で)」

京太郎「(…これもうアカン奴ですわ)」

京太郎「(徹頭徹尾、おかしいところしかないですやん…)」

明華「京太郎君はどうですか?」

明華「あぁいうの憧れたりとかしません?」

京太郎「え、えっと…その…」

京太郎「(…ぶっちゃけ、人前で羞恥プレイはノーサンキューです)」

京太郎「(二人っきりならともかく、人に見られるなら俺は勿論、相手にもさせたくない)」

京太郎「(…でも、明華さんはそれに憧れてるんだよなぁ)」

京太郎「(正直、理解できないけど…でも…)」

京太郎「(こうして俺を見上げる彼女には共感に対する期待が浮かんでいて…)」

ネリー「おにーちゃーんっ」ダイブッ

京太郎「うぉ!?」ビックリ

ネリー「朝から会えるなんて奇遇だね、お兄ちゃん」ニコリ

京太郎「ね、ネリー…」

京太郎「(…って、待て待て)」

京太郎「(なんで、ネリーの好感度がこんなに高いんだ?)」

京太郎「(確かに同じ一年生としてそれなりに仲良くはしていたし…)」

京太郎「(冗談で兄妹みたいなやりとりをする事はあったぞ)」

京太郎「(でも、ここまでガチな感じじゃなかったって言うか…)」

京太郎「(あくまでも軽口の一種って感じだったんだけれど…)」

京太郎「(…でも、今のネリーからはそんなのがまったく感じられない)」

京太郎「(マジで俺の事をお兄ちゃんだとそう思っているみたいに…)」

京太郎「(真っ直ぐな好意を向けてくれている)」

京太郎「(…これ、本当にネリーなのか?)」

京太郎「(あのちょっと小憎たらしいゼニゲバネリーがこんな風になるだなんて…信じられない)」

京太郎「(ちょっと漂白され過ぎじゃないですかねぇ…)」

明華「…ネリー。京太郎君が困っていますよ」

ネリー「…あ、明華、いたの?」

明華「最初からいましたよ」

明華「えぇ。京太郎君の家からずっと」

ネリー「…へー。そうなんだ」

ネリー「何?勝手にお兄ちゃんの家にあがりこんじゃった訳?」

ネリー「通報した方が良い?」

明華「大丈夫ですよ。ちゃんと許可は貰いましたから」

明華「…にしても」

ネリー「…何?」

明華「…いえ、普段、京太郎君の事をお兄ちゃんお兄ちゃんと言っているのに…」

明華「家にあがった事もない貴女がちょっと滑稽で」クス

ネリー「…朝から男の家にあがりこむようなはしたない人には言われたくないなー」

明華「あら、日頃、お金にばっかり執着してる貴女が言っても説得力ないですよ?」ニコ

京太郎「(あ、アイエエエエエ)」

京太郎「(修羅場!?修羅場、ナンデ!?)」

京太郎「(ま、ままままま待ってくれ)」

京太郎「(二人はもっと仲が良かったはずだろ!!)」

京太郎「(まぁ、確かにお互いにライバル視してるところはあったけど…)」

京太郎「(でも、ここまで敵意をぶつけあうような事なんて今まで一度もなかったのに…)」

京太郎「(も、もしかして…昨日、何かあった?)」

京太郎「(俺の知らないところで大喧嘩でもしちゃったのか…!?)」

京太郎「お、落ち着いてくれよ、二人とも」

ネリー「…お兄ちゃんがそう言うのなら」ムス

明華「…このような形で注目を浴びては変な噂になってしまいますし」ギュ

ネリー「…そう言ってお兄ちゃんの腕を離さないのはどうして?」

ネリー「変な噂になるのはダメなんじゃないの?」

明華「これは別に変な『噂』ではないですから」

ネリー「…へぇぇ」

ネリー「…じゃあ、私も別に良いよね」ギュ

京太郎「ね、ネリー…!?」

明華「…邪魔ですよ、ネリー」

明華「両手が塞がっては京太郎くんが歩きづらいではないですか」

ネリー「だったら、そっちが離せば?」

明華「…こっちの方が先約ですよ?」

ネリー「それだけ十分、堪能したでしょ?」

ネリー「次は私の番だと思わない?」

明華「まったく思いませんね」

ネリー「…ホント、明華って我が強いよね」

ネリー「そんなんじゃお兄ちゃんもうんざりすると思うな」

明華「守銭奴よりはマシだと思いますよ」

京太郎「(あばばばばばばばばば)」

ネリー「…ね、お兄ちゃんは私の方が良いでしょ?」

明華「ネリーだと身長が低すぎます」

明華「私くらいがベストな差だと思いませんか?」

京太郎「い、いや、えっとその…」

京太郎「(な、なんだ、コレは!)」

京太郎「(なんで俺はいきなり美少女二人から二択を迫られてるんだよ!!)」

京太郎「(昨日までは普通だったのに…)」

京太郎「(なんでいきなりこんな俺の事取り合うみたいな事を…)」

京太郎「(こんなに積極的な二人なんて今まで見た事が…)」

京太郎「(…ってアレ…積極的?)」

京太郎「(まさか…いや、でも…そんな…)」

京太郎「(確かにそう考えれば辻褄は合うけれど…でも…!!)」

ネリー「…ねぇ、お兄ちゃん」

明華「…京太郎君…」

京太郎「(って考え事に耽ってる余裕はない…!)」

京太郎「(でも…俺にどっちかなんて選べるのか?)」

京太郎「(そりゃ…俺としては、おっぱい大きい明華さんの方が好みではあるけれど…)」

京太郎「(でも、ネリーだって俺にとっては大事な友人なんだ)」

京太郎「(その上…今まで見たこともないくらい真っ直ぐに甘えてくれているコイツを…無碍にはしたくない)」

京太郎「(大体…こんな状況はじめてで…一体、どうすりゃ良いのかまったくわかんないし…)」

???「待てィ」

京太郎「こ、この声は…!!」




      ∫
  ヘ⌒ヽフ∫
. (,,・ω・) <<私デス
  (つ=||||____
  ('⌒)\_/
京太郎「メグさん!?」




      ∫
  ヘ⌒ヽフ∫
. (,,・ω・) <<どうヤラお困リのようデスね
  (つ=||||____
  ('⌒)\_/
京太郎「あ…いや、その…」

京太郎「(…正直、ここでメグさんに話しかけてもらえたのはありがたい)」

京太郎「(お陰で考える時間が増えたんだから)」

京太郎「(でも、それを表に出すのは真剣な二人にとっては失礼な話だし…)」

京太郎「(困っているとは言えない…よな)」


      ∫
  ヘ⌒ヽフ∫
. (,,・ω・) <<……大丈夫です。京太郎の気持ちは分かっていますから
  (つ=||||____
  ('⌒)\_/
京太郎「…え?」


      ∫
  ヘ⌒ヽフ∫
. (,,・ω・) <<ココは一ツ私に任せてくだサイ
  (つ=||||____
  ('⌒)\_/

メガン「…サテ」ズルルル ゴクゴク

メガン「…ぷはぁ」マンゾクゲ

メガン「やはりラーメンハ汁まで飲みキッテようやく完食デスね」

明華「……どういうつもりですか?」

ネリー「…言っとくけど、ここはお金貰っても譲らないから」ギュ

メガン「そんな趣のナイ話をしたリしませんヨ」

メガン「私がするノハ昔話デス」

明華「…昔話?」

メガン「エェ。二人とも大岡裁キという話はご存知デスカ?」

ネリー「…知らない。何それ?」

明華「私も聞いたことありませんね…」

メガン「日本デハメジャーな話なんデスケドネ」

メガン「京太郎ハ知ってイルでしょう?」

京太郎「えぇ。まぁ」

ネリー「…で、それが何か?」

メガン「マァマァ、焦らナイデ」

メガン「ソノ話なんデスけどね」

メガン「早い話、一人の男の子ヲ二人の女性が取リ合ウと言うものなんデスが」

京太郎「(…大体合ってるようですっげええ違いますよ、メグさん…!)」

京太郎「(いや、空気読んで黙ってますけど!黙ってますけどね!!)」

メガン「ソノ話の結末は、先に男の子を離した方が男の子ヲ手に入れると言うものデシテ」

明華「…一体、何故?」

メガン「そうヤッテ両側から自分の方ヘ引きずり込マレテは、男の子ガ苦しい」

メガン「そう判断シ、断腸の思いで手放した女性に、男の子ハ懐イタのデス」

メガン「…マァ、これは昔話デスガ、今回にも適用出来ルと思いマセンか?」

ネリー「…っ」パッ

明華「っ!」パッ

メガン「フフ。物分りの良い友人デ助かりマス」

京太郎「(…凄い)」

京太郎「(まさかアレほど頑固だった二人が俺の事をこうも簡単に手放すなんて)」

京太郎「(任せてくれとそう言っただけはある…)」

メガン「…サテ、京太郎」

京太郎「あ、はい」

メガン「無事にこの場を収めた私ニ何か言ウ事ハアリマセンか?」

京太郎「あ、えっと、ありがとうございます、メグさん」

メガン「…それダケデスカ?」ワクワク

京太郎「…今度、また家で自家製麺、ご馳走しますよ」

メガン「ほぅ、ソウですかそうデスカ」パァ

メガン「イヤァ、京太郎がそう言ってくれてイルのに断るのも失礼デスシネ」

メガン「是非トモご馳走にナリに行かナケレバ」

京太郎「まったく、調子が良いんですから」

京太郎「つーか、ラーメンくらい何時でもごちそうしますよ」

京太郎「俺も嫌いじゃないですしね」

メガン「ソレはイケマセン」

メガン「京太郎は男の子ナンデスヨ」

メガン「ホイホイ女を家ニ招き入レタラ大変な事になってシマイマス」

京太郎「んな大げさな」

京太郎「俺だって男なんですから、そうそうそんな事態にはならないですって」

メガン「…ソウなら良いんですケドネ」チラッ

明華「……」メソラシ

メガン「…マァ、何はともあれ、こうして四人揃った訳デスシ」

メガン「一緒に仲良く部活ニ行きマショウカ」ギュ

京太郎「ちょ、メグさん!?」

ネリー「……メガン?」

明華「……メガンさん?」

メガン「言っておきますが、私ガしたのは大岡裁キの話ダケデスカラ」

メガン「京太郎ヲ手放したのは二人デスヨ?」

ネリー「へー…そういう事するんだー…」

明華「……本当にアメリカ人は油断ならないですね」ゴゴゴ

京太郎「(あばばばばばばば)」








~部室~

京太郎「(どうしてこうなった…!)」

京太郎「(いや、ホント、どうしてこうなった!!)」

京太郎「(昨日までは普通だったのに、なんでこんなにギクシャクしてるんだよ!!)」

京太郎「(正直、ネリーたちに出会ってから学校まで、胃が痛くて仕方がないくらいだったわ!!)」

京太郎「(いや、そもそも、なんでネリーもメグさんもあそこにいるんだよ!!)」

京太郎「(俺の家から学校よりも、二人の住んでる寮から学校の方が遥かに近いはずなのに…)」

京太郎「(それをまるで偶然のように話しかけてくる事自体がまずおかしいだろ!!)」

京太郎「(まぁ、途中でそれに気づいても怖くて指摘出来なかったけどさ!)」

京太郎「(二人は修羅場で済んだが、三人揃うと今にも火が回りそうな火薬庫化しちゃうし!)」

京太郎「(俺の一言で完全に爆発するかと思えば、迂闊に口を開く事も出来ない…!)」

京太郎「(正直、ここまで生きた心地がしなかったわ…)」

京太郎「(まぁ、でも、こうして部室まで来れた訳だし…)」

京太郎「(後はそれぞれ練習やら何やらする必要がある訳だから…)」

京太郎「(このギスギス感とも解放されるはずだ)」

京太郎「(…つーか解放して欲しい、マジで)」

京太郎「(このままだったら俺の胃が死ぬ…!!)」ガチャ

智葉「…おはよう」ハァ

ハオ「おはようございます」ジト

京太郎「おはようございます」

京太郎「(…あぁ、どうしてだろう)」

京太郎「(何時もなら胸にクる二人の視線が今は若干、心地良い)」

京太郎「(いや、まぁ…俺は決してマゾに目覚めた訳じゃないんだけど)」

京太郎「(でも、二人の態度は変わってないんだって思うと…)」

京太郎「(それだけでもう何か救われた気分だ…)」

智葉「…さて、それじゃ全員揃った訳だし、インハイに向けて練習していこうか」

ネリー「あ、私、お兄ちゃんの指導するから」

ハオ「…ネリー」

明華「…ネリーには任せておけませんね」

明華「そういうのは彼を麻雀部に連れてきた私の仕事です」

メガン「一ラーメンの恩ヲ忘レタつもりはありませんカラ」

メガン「ココは私が彼の指導ヲするべきデショウ」

京太郎「い、いや、そのお気持ちだけで十分です…」

ネリー「ダメだよ、お兄ちゃん」

明華「そうですよ。そんな風に遠慮なんてしないで」

メガン「気軽に頼ってクレテ良いンデスヨ」

智葉「…いい加減にしないか!」

京太郎「っ」ビクッ

智葉「三人とも分かっているのか?」

智葉「今はインハイ目前の大事な時期なんだ」

智葉「そんな貴重な時間をレギュラーでもない部員の世話に取られてどうする」

明華「…それは」

智葉「…ネリー。お前が日本にやってきたのは京太郎といる為か?」

ネリー「…違う…けど」

智葉「明華。国を離れてもついてきてくれた母親の献身は、京太郎を指導する為にあるのか?」

明華「…いいえ」

智葉「メグもメグだ。お前は龍門渕にリベンジを誓ったんじゃないのか」

智葉「それが敗退したからモチベーションが下がったと言っても…あまりにもたるみ過ぎている!」

智葉「色ボケも大概にしないか!!」

「「「……」」」シュン

京太郎「あ、あの…辻垣内さん、それくらいに…」

智葉「…お前もお前だ」ギロ

京太郎「ひぃ」ビク

智葉「そうやって三人を甘やかすから調子に乗るんだ」

智葉「結果、こうして三人が自分の練習にも身が入らなくなっているのが分かっているのか?」

智葉「それではマネージャーとしてインハイに連れて行く事なんて出来ないぞ」

ネリー「そ、そんなのダメっ!」

明華「そ、そうですよ!折角、彼は自分の大事な時期を蹴ってでも手伝ってくれているのに…」

ハオ「…その結果がこれでは彼が不要と言う意見が出てくるのも致し方無いでしょう」

ハオ「ちなみに…私も彼女と同じ意見です」

ハオ「彼が来てから部内の雰囲気も気持ちも一気に緩んでしまっています」

メガン「で、デスガ、それハ京太郎に悪意がある訳デハ…」

ハオ「例え悪意がなくても、結果がこれでは排除するしかなくなります」

ハオ「一応、私達は強豪臨海女子のレギュラーで…また部員全ては真剣に麻雀をしているのですから」

ハオ「その頂点に立つべき私達がこんな有様では自然と不満は彼に向かうでしょう」

智葉「…それが嫌ならちゃんと練習に励むんだな」

智葉「失った信用は行動でしか取り戻す事が出来ないんだから」

ネリー「…………はい」

智葉「…じゃあ、京太郎はこっちに来い」

京太郎「え?」

智葉「監督が個別で話があるそうだ」

京太郎「そ、それって…」

智葉「内容までは私も知らない」

智葉「だが、覚悟はしておいた方が良いかもしれんぞ」

京太郎「……はい」

京太郎「(…………ヤバイ)」

京太郎「(何がヤバイって辻垣内さんがここまで言うってのがヤバイ)」

京太郎「(基本的に厳しい風に見られがちだけど…彼女はそれだけじゃないんだから)」

京太郎「(忙しい合間をぬって学童に通う子ども達の麻雀を見たりととても優しい人なんだ)」

京太郎「(そんな彼女がこうまでハッキリ言うって事は…)」

京太郎「(俺は割りと…いや、かなり瀬戸際に立ってるって事なんだろう)」

京太郎「(正直…退部勧告くらいはあり得るよなぁ…)」ハァ

京太郎「…あ、監督」

アレクサンドラ「あ、須賀君。もう来てたんだ」

京太郎「はい。それで…お話があるという事ですが…」

アレクサンドラ「あー…うん。この辺りじゃ何だから、とりあえず二人きりで話せるところに行こうか」

京太郎「はい…」シュン

アレクサンドラ「~っ」ゾクゥ

アレクサンドラ「(あー…ホント、この子良い顔するわね)」

アレクサンドラ「(正直、年下過ぎて恋愛相手としてはダメだけど…)」

アレクサンドラ「(でも、一夜の過ちを犯しちゃう相手としては最高…)」

アレクサンドラ「(この可愛い顔が最初は戸惑っているのに…)」

アレクサンドラ「(どんどんと快楽に染まっていく光景で何回自分を慰めた事か…)」

アレクサンドラ「(ホント、この年頃にしては…ううん、この年頃だからこその色気がムンムン出て…)」

アレクサンドラ「(そりゃ恋のこの字も知らないような小娘達が狂っちゃうのも当然よねぇ…)」

アレクサンドラ「(まぁ…私も大人としてそういう子達の背中を押したい訳だけれど…)」

アレクサンドラ「はい。適当に座って」

京太郎「…はい」ストン

アレクサンドラ「…で、時間も勿体無いから本題に入るけれども」

アレクサンドラ「まず最近の部の雰囲気がちょっと悪くなっているのには気づいてる?」

京太郎「…はい。ついさっき辻垣内さんにも言われました」

アレクサンドラ「そうなの…やっぱりあの子ってば優秀ね」

アレクサンドラ「まぁ、分かっているなら話は悪いわ」

アレクサンドラ「その原因…と言ったらちょっと可哀想だけれど」

アレクサンドラ「それは君にあるって事は聞いたかしら?」

京太郎「…はい」

アレクサンドラ「そっか」

アレクサンドラ「じゃあ…私も顧問としてそれを見過ごす訳にはいかないって事も…」

アレクサンドラ「勿論、分かってくれるわよね?」

京太郎「~っ…」グッ

京太郎「…………はい」

京太郎「…あ、あの」

アレクサンドラ「ん?」

京太郎「俺…やっぱり退部しなきゃいけないんでしょうか…?」

アレクサンドラ「え?」

京太郎「え?」

アレクサンドラ「………ぷっ」

アレクサンドラ「あぁ、なるほど…そ、そういう事…」クスクス

京太郎「え…?え…っ?」

アレクサンドラ「あはは。考えすぎよ」

アレクサンドラ「流石にこれだけで退部させるつもりはないわ」

アレクサンドラ「そもそも君がまったく悪くない訳だしね」

アレクサンドラ「悪いのは君に入れ込んで練習も手に付かないレギュラー達の方」

アレクサンドラ「見つけたのが私だから心も痛むけど…」

アレクサンドラ「退部させるとしたらあの子達の方ね」

京太郎「そ、そんな…!」

京太郎「お、お願いします!」ペコ

アレクサンドラ「え?」

京太郎「明華さん達を辞めさせないで下さい!」

京太郎「皆…皆、本当は麻雀が大好きなんです!」

京太郎「今はちょっと…その、おかしくなっているだけで…!」

京太郎「きっとすぐに元に戻るはずですから…!」

京太郎「だから…お願いします!」

京太郎「俺が…代わりに何でもしますから!」

京太郎「退部でも何でもしますから…皆は辞めさせないで下さい」

アレクサンドラ「~~」キュン

アレクサンドラ「(あー…この子ダメだわ)」

アレクサンドラ「(自分が何を言ってるのか分かってるのかしら…)」

アレクサンドラ「(一応、私はこれでも理性が強い方だから大丈夫だったけど…)」

アレクサンドラ「(トチ狂った監督だったら…今のでレイプされても仕方がないってのに)」

アレクサンドラ「(ホント、危なっかしいわねぇ…)」

アレクサンドラ「(ま、何はともあれ)」

アレクサンドラ「……その気持ちに偽りはない?」

京太郎「勿論です!」

アレクサンドラ「…そう。じゃあ、一つお願いがあるんだけれど」

京太郎「お願い…ですか?」

アレクサンドラ「えぇ。まぁ、そんなに難しい事じゃないわ」

アレクサンドラ「ただ、インハイが終わるまでだれとも恋仲になったりシないで欲しいってだけ」

京太郎「…え?」

アレクサンドラ「幾ら君が鈍くても気づいてるんでしょ?」

アレクサンドラ「うちのレギュラー三人は君に明確な好意を寄せている」

アレクサンドラ「それこそ練習が手につかないくらいにね」

京太郎「それは…」

アレクサンドラ「で、それだけ自分を見失ってるところに…」

アレクサンドラ「君がもし誰かと付き合ったりしたら…どうなっちゃうかしら?」

京太郎「……今まで以上に練習に手がつかなくなります」

アレクサンドラ「それだったらまだマシな方ね」

アレクサンドラ「私が見る限り、三人ともかなり入れ込んでいるみたいだから」

アレクサンドラ「下手をすればインハイ中に血の雨が降る事だって考えられるわ」

京太郎「幾ら何でもそんな事…」

アレクサンドラ「…ま、少なくとも私はそこまで計算してる」

アレクサンドラ「ただ、計算してると言っても、それによって発生する問題を解決出来る訳じゃないわ」

アレクサンドラ「君が誰を選んでも、間違いなく角が立ってしまうし」

アレクサンドラ「選ばれなかった子達のモチベーションに大きなダメージを与えてしまう」

アレクサンドラ「それは…絶対に避けられない事よ」

京太郎「……」

アレクサンドラ「だから、私に出来るのはその影響を最小限に食い止める事」

アレクサンドラ「インハイの最中に君が誰かを選んで…」

アレクサンドラ「彼女たちの成績が堕ちるのを防ぐ事しかしてあげられないの」

アレクサンドラ「例え、それが問題を先延ばしにするだけだって分かっていてもね」

京太郎「……監督」

アレクサンドラ「…ま、あくまでもこれはお願いだから強制じゃないわ」

アレクサンドラ「…でも、出来れば心に留めておいて欲しい」

アレクサンドラ「高校の三年間と言うのはプロを目指す少女たちにとってとても大事な時期だから」

アレクサンドラ「それを一年でも台無しにされてしまうのは言葉では語れないほど大きな損失」

アレクサンドラ「君が彼女たちの事を想っているのであれば…インハイの最中だけはやめてあげて」

京太郎「…分かりました」

アレクサンドラ「…ありがとうね」

アレクサンドラ「話は以上…それと」

アレクサンドラ「嫌な話をしちゃってごめんね」

京太郎「…いいえ」

京太郎「失礼……します」










京太郎「(監督の話は決して最悪なものじゃなかった)」

京太郎「(少なくとも俺が思ってたよりは遥かにマシなものだったし…)」

京太郎「(そういう意味では良かった…とそう思うべきなんだろう)」

京太郎「(だけど…それは決して監督の話が軽い訳じゃなくて…)」

京太郎「(寧ろ、俺の肩に彼女たちの人生が載ってるっていうとても重いものだった)」

京太郎「(…今までは困惑でほとんど自覚してなかったけれど…)」

京太郎「(でも…言われてみれば…その通りなんだ)」

京太郎「(俺の存在そのものが…今、彼女たちにとって害になってしまっている)」

京太郎「(けれど…ここで俺が下手に距離を取ろうとすると…彼女達は余計に心を乱すだろうし…)」

京太郎「(…本当にどうすれば良いんだ…)」ガチャ

智葉「…あ」

京太郎「…あれ?」

京太郎「(…なんで辻垣内さんが、俺達が会話してた部屋の前にいるんだ?)」

京太郎「(さっきまで彼女は部長として部員を纏めてたはずなのに…)」

智葉「…話は終わったか?」

京太郎「え、えぇ」

智葉「…そうか。じゃあ、こっちに来てくれ」

智葉「ジュースの一つでも奢ってやるから」

京太郎「え?」

智葉「…そこまで驚かなくても良いんじゃないか?」

京太郎「あ、いや…その…すみません」

京太郎「ただ…意外でして」

智葉「…そんなにか?」

京太郎「はい。だって、辻垣内さん、俺の事嫌いですよね?」

智葉「…なるほど。私はそんな風に思われていたのか」

京太郎「…え?違うんですか?」

智葉「…まぁ、違うというか…その、なんだ」

智葉「ともかく…来い」

智葉「あまり部室の近くで話したくはないからな」スタスタ

京太郎「あ、はい」スタスタ

京太郎「(…しかし、本当に今日はどうしたんだろう)」

京太郎「(何時もそれなりに仲良くしていると思ってた子達からアプローチを喰らって…)」

京太郎「(それだけでもビックリなのに、俺の事嫌ってると思ってた辻垣内さんに誘われるだなんて…)」

京太郎「(もう色々ありすぎて頭のなかがクラクラしそうだ…)」

智葉「…………それで、だ」

智葉「私が君を嫌っているという話だが」

京太郎「あ、その…」

智葉「…まぁ、好きとは言えないな」

京太郎「ぐふ」グサァ

智葉「考えても見て欲しいんだが…レギュラーとして活躍していた仲間が突然、マネージャー兼部員として連れてきたと思ったら…」

智葉「それがアレよアレよと言うまに部内の王子様扱いになって…こうまで関係が滅茶苦茶になっているんだ」

智葉「当然、好意的になど見れるはずがないだろう」

京太郎「ですよねー…」

智葉「…まぁ、とは言え、嫌っていた…とまではいかないな」

智葉「精々が苦手だったと言う程度だ」

智葉「ただ…それも多少は認識が変わってきたが」

京太郎「……変わった?」

智葉「…悪いとは思ったが、さっきの会話、盗み聞きさせて貰った」

京太郎「え?」

智葉「これでも一応、部長だからな」

智葉「部員の事は把握しておかなければいけないし…」

智葉「それに君は色々と重要なポジションにいるんだ」

智葉「その処遇がどうなるのかを気にするのは致し方無い事だと理解して欲しい」

京太郎「(あばばばばば)」

智葉「…それにもし君が悪い男であるならば」

智葉「友人として、そして仲間として」

智葉「殴ってでもあいつらの目を覚まさなければ…とそんな理由もあった」

京太郎「………って事は…」

智葉「あぁ、君が監督を前にどんな言葉を口にしたかもしっかり届いている」

智葉「…あいつらの為に何でもするとは…中々、言えたものじゃないな」ニコ

智葉「ましてや、その所為で迷惑を掛けられている身の上なのだから尚の事」

京太郎「か、からかわないでくださいよ…」

智葉「いや、別にからかっている訳じゃない」

智葉「私は本気で君の事を評価しているんだ」

智葉「見た目は軽いが…何とも一本芯の通った奴じゃないかとな」

京太郎「…ま、まぁ、評価してもらえるのはありがたいですけど…」カァ

智葉「ふふ。そう赤くなるな」

智葉「折角、格好良かったのが台無しじゃないか」

京太郎「誰の所為だと思ってるんですか…」

智葉「…まぁ、だからだ」

京太郎「え?」

智葉「今まで勝手な思い込みで君の事を避けていた分」

智葉「そしてあいつらの為にそこまで言ってくれた分」

智葉「それに部長として、友人として報いなければ、とそう思ったんだ」

京太郎「…だから、ジュースを奢ると?」

智葉「…不満か?」

京太郎「いいえ。滅相もないです」

京太郎「奢ってもらえるだけありがたいっすよ」

智葉「…よろしい」

智葉「ま、私としても何もそれだけで済ませようと本気で想っている訳じゃない」

智葉「これでも君が苦しい立場である事くらいは理解しているんだ」

智葉「辛い時は愚痴を吐く場所にもなるし、相談くらいには乗ってやる」

京太郎「…辻垣内さん」

智葉「…だから、その、なんだ」

智葉「……辛いとは思うが、一緒に、頑張っていこうな」

京太郎「……はい。ありがとうございます」











京太郎「(…正直な話)」

京太郎「(辻垣内さんの話は涙が出そうなほど有り難かった)」

京太郎「(こんな滅茶苦茶な世界でも、俺の事を評価してくれる人がいるんだって)」

京太郎「(味方になってくれる人がいるんだって…そう思えたから)」

京太郎「(まぁ、ようやく好感度が+に傾いてきたばかりで)」

京太郎「(あんまり頼り過ぎると困られちゃうだろうけどさ)」

京太郎「(…それに何より)」

京太郎「(究極的にこれは俺の問題なんだ)」

京太郎「(辻垣内さんは手助けをしてくれても…俺の代わりにはなってくれない)」

京太郎「(あくまでも応えを出すのは俺じゃなきゃいけないんだ)」

京太郎「(…それを思うと正直、ため息が出そうになるよな)」

京太郎「(しかも…その原因が俺にあるかもしれないとなれば…)」

京太郎「(ため息一つにも二重の意味が出そうになる)」フゥ

京太郎「(…まぁ、でも、今日は辻垣内さんのお陰で、一人でゆっくり帰れる訳だし)」

京太郎「(その平穏を噛み締めながら家へと戻ろう)」

巴「…あの」

京太郎「え?」

巴「大丈夫ですか?なんだか顔色が悪いですけど…」

京太郎「(…………これは一体、どういう事なんだろうか)」

京太郎「(どうして俺の目の前に巫女服を来た女の子がいるんだ?)」

京太郎「(もしかして…今、流行りのコスプレイヤー?)」

京太郎「(見た目普通そうな…と言うか、地味そうな顔立ちなのに…)」

京太郎「(ただ…不思議と似合ってる感じがするのはやはり彼女がベテランさんだからだろうか)」

巴「あ、あのー…」

京太郎「…あ、すみません」

京太郎「ちょっと悩み事があっただけですから大丈夫です」

巴「悩み事…ですか?」

京太郎「はい。まぁ…大した事ないと言えば、ないんですけどね」

巴「…その不躾ですが…」

巴「私でよろしければ相談相手になりましょうか?」

京太郎「え?」

巴「あ、い、何時もはこんな事しないんですよ?」

巴「ただ…貴方はどうやらかなり思い悩んでいるみたいですから」

巴「見たところ、これまでずっとため息を漏らしていますたし…」

巴「…その、なんというか、このまま見送ってしまうと死んでしまいそうで」

京太郎「…そこまでやばかったですか?」

巴「軽く死相が浮かんでいました」

京太郎「(あー…まぁ、確かに死にたい気分ではあったし…)」

京太郎「(このまま一人で部屋に戻ったら色々と思い悩んで潰れていたかもしれない…)」

京太郎「(こういうのを相談するのにうってつけな高久田とは全然、連絡がとれないしなぁ…)」

巴「まぁ、教会のシスターさんみたいにはいかないかもしれないですけれど…」

巴「でも、これでも一応、巫女ですから、少しはお力になれると思います」

京太郎「…巫女?」

巴「はい。…あ、こ、コレはコスプレとかじゃないんですよ?」

巴「ほ、本当に…本物の巫女です」

京太郎「(…あー、つまりは…)」

京太郎「あ、俺の幸せを祈らなくても結構です」ササ

巴「あ、怪しげな新興宗教と一緒にしないでください!」

巴「こっちはガチガチの神道です!!」

京太郎「…と言って、神道(新興宗教)とかじゃ…」

巴「…いい加減、怒りますよ?」

京太郎「すみません」

巴「…まったく、もう」

巴「……まぁ、確かに私、今、かなり怪しいですよね」

巴「通りすがりに男に話しかけるとか完全に不審者ですし…」ズーン

京太郎「(…あ、これ冷静になって自分の失態に気づいたパターンだな…)」

巴「…すみませんでした」ペコリ

京太郎「あ、いえ、気にしないでください」

京太郎「こっちも色々と無礼な事を言ってますし」

京太郎「それに…その、嬉しくない訳じゃありませんでしたから」

巴「え?」

京太郎「だって、ちょっぴり地味ですけど可愛い子に逆ナンされた訳ですし」

京太郎「男としちゃ当然、浮かれちゃいますって」

巴「…ち、違いますよ!」

巴「別に私、そんな不埒な気持ちで話しかけた訳じゃ…」

京太郎「はは。分かってますって」

京太郎「幸せを祈ろうとしてくれたんですよね」

巴「そ、それも違うって言ってるじゃないですかぁっ」

京太郎「…ん?」

巴「逆ナンって男性から女性にする事ではないんですか?」

京太郎「…え、いや、違いますよ」

京太郎「普通、男が女の子をナンパするものでしょ?」

巴「ど、どれだけ肉食系男子なんですか」

巴「…そんな風に女性にがっついてる男性とか見たことないですよ」

京太郎「いや、でも…」

巴「…分かりました。証拠を見せましょう」スッ

京太郎「…スマホ?」

巴「…今、巫女には似合わないとか思いました?」

京太郎「いや、最新機種でちょっとびっくりしました」

巴「…実は最近、買い換えたばっかりなんです」テレ

京太郎「(チョロい)」

巴「ほら」スッ

京太郎「えーっと…ネットのサイトですか」

京太郎「(えーっと…なになに…)」

京太郎「(逆ナンパとは男性が初対面の女性に対して、親交を深める目的で声を掛ける事柄である)」

京太郎「……………えぇぇぇぇ…」

巴「勿論、私はサイトを弄っていません」

巴「そんな暇なかったですし、そんな事をする必要もないですから」

巴「つまりは…私の方が正しいと言う事です」フンス

京太郎「………マジですか」

巴「…まだ認められませんか?」

京太郎「いや、認めますけど…認めますけど…でも…」

京太郎「(…やべぇ。ショックがでかすぎる)」

京太郎「(まさか…こんなところにまで影響が出てるなんて)」

京太郎「(これ…もう誤魔化せるレベルじゃねぇぞ)」

京太郎「(完全に世界そのものが作り変えられてるじゃないか…)」フラァ

巴「あ…っ」ガシ

巴「だ、大丈夫ですか?」

京太郎「…大丈夫です。ちょっと立ちくらみがしただけですから」

巴「でも…顔色、さっきより悪いですよ」

巴「…そんなにショックだったんですか?」

京太郎「まぁ…その、はい…」シュン

巴「え、えっと、誰にでも間違いはありますよ」

巴「それに…その…私のところにも、ちょっと…いや、かなり天然入っている人がいて」

巴「その人ももしかしたら同じ間違いをするかなって…」

京太郎「(て、天然扱いされてる…!?)」

京太郎「(…まぁ、当然ッチャ当然だよな)」

京太郎「(この人達は前の世界なんてまったく知らないんだし…)」

京太郎「(以前の常識に囚われてる俺が不思議ちゃんとしか思えないんだろう)」

巴「と、ともかく、元気を出してください」

巴「世の中、一回の間違いで全部が台無しになったりしませんから!」

京太郎「(……台無しになったんだよな)」

京太郎「(俺が…あの石版にあんな事書いてしまった所為で)」

京太郎「(面白半分でやった行為が…ここまで影響を与えてしまっている)」

京太郎「(…全部、俺の所為だ)」

京太郎「(だから…俺が何とかしなきゃいけない)」

京太郎「(俺が…世界を元に戻さなきゃ…)」グッ

京太郎「…ありがとうございます」

巴「も、もう大丈夫なんですか?」

巴「立ちくらみがした時はムリしないほうが良いですよ」

巴「何かしらの初期症状である可能性もありますし…」

京太郎「いいえ。大丈夫です」

京太郎「それより…俺はちょっとやる事が出来たので…」

京太郎「失礼させていただきます」ダッ

巴「あ…っ」










京太郎「ふぅ…ふぅ…」

京太郎「(…やっぱ学校からずっと家まで走って帰ってくるのは辛いな…)」

京太郎「(でも、俺は一刻もはやく皆を元に戻さなきゃいけないんだ)」

京太郎「(ソレしか責任を取る方法がない以上…多少、辛いからってヘタレちゃいられない…!)」

京太郎「(息を整えてる暇なんかないんだから…とっとと家の鍵開けて…)」ガチャ

雅枝「あ、京太郎、おかえり」

京太郎「…………え?」

京太郎「(な、なんで雅枝さんが俺の家に!?)」

京太郎「(しかも、スーツ姿の上にピンクのエプロンまで着て…)」

京太郎「(元々、黒スーツで大人の色気がムンムンになってる雅枝さんが…)」

京太郎「(エプロンを着こむ事によって人妻オーラを強くしてる…!)」

京太郎「(な、なんだ、この破壊力は…!)」

京太郎「(こんなの二次元でさえ滅多に見れるもんじゃないぞ…)」ゴクッ

雅枝「もぉ…あんまりジロジロ見られると恥ずかしいわぁ」

雅枝「一応、まだスタイルは崩れてへんつもりやけど…どーぅ?」チラッ

京太郎「雅枝さんは何時でもお美しいです」キリリ

雅枝「~っ♪」キュゥン

雅枝「あ、あはは…まったく…京太郎君はほんとに世辞が上手いなぁ」

京太郎「いや、世辞じゃないですって」

京太郎「雅枝さん、俺が会った時から全然、変わりませんし」

京太郎「俺にとっては何時でも憧れのお姉さんですよ!」

雅枝「…あこがれのお姉さん…ねぇ」

京太郎「あ、嫌でした?」

雅枝「んーん…嫌って言うか…」

雅枝「美しいとまで言われて…それ止まりなんはちょっとなぁって」チラッ

京太郎「え?」

雅枝「…言っとくけど、女にとって美しいは特別な事ばなんやで?」

雅枝「そんなん軽々しく言われて…あこがれのお姉さんはちょっと失礼やと思わへん?」

京太郎「じゃ、じゃあ、えっと…」

雅枝「……」ジィィ

京太郎「…………お母さん、娘さん達をボクに下さい!」キリリ

雅枝「んー、両方とも引き受けてくれるんやったらええよーって言ってあげたいんやけどねぇ」

雅枝「…私が望んでたのとちょっと違うからげーんてん」ニコ

京太郎「えー…じゃあ、何が正解だったんですか?」

雅枝「私と結婚してください…やったら満点やったね」クス

京太郎「い、いや、流石にそれは…」

雅枝「…アカンの?」ジ

京太郎「う」

雅枝「…やっぱちょっと古すぎるん?」

雅枝「私じゃ…もう高校生には相手されへんかなぁ…?」

京太郎「そ、そんな事ないっす!」

京太郎「雅枝さんは今でも現役バリバリっすよ!」

雅枝「ふふ…♪」

雅枝「…そう?まだまだイける?」

京太郎「全然、余裕でイけますって!」

京太郎「つーか、今がもう絶頂期って言うか!」

京太郎「色気ムンムンでヤバイっす!」

雅枝「京太郎君も興奮する?」

京太郎「ま、まぁ…その…そういう事も無きにしもあらずと言うか…」メソラシ

雅枝「……ヘタレ?」クス

京太郎「し、仕方ないじゃないですか」

京太郎「幾ら俺でもそれはハードル高いですって」

雅枝「ふふ…まぁ、それは分かっとるけどね」

雅枝「女としてはやっぱりストレートに言われてみたいなんや」

雅枝「男とは違って、女はやっぱり色々と鈍いもんやからねぇ」

雅枝「…まぁ、そういうヘタレなところもあの人っぽくてええけどね?」ポソ

京太郎「え?」

雅枝「んーん。何でもないっ」

雅枝「あ、それより…京太郎君、先に手ぇ洗っておいで」

雅枝「もう夕飯前やし、小腹空いとるやろ?」

雅枝「お菓子作っておいたから夕飯前にちょっと摘も?」

京太郎「マジっすか、やった!」

京太郎「雅枝さんのお菓子、マジ上手いから大好きっす!」

雅枝「ふふ。もう…そんなにはしゃいじゃって」

雅枝「京太郎君は『昔』っから変わっとらんなぁ」

京太郎「いや、これでも一応、背は伸びましたし…大人にはなりましたよ!」

雅枝「まーまだ結婚出来る年齢やないし、社会的にはまだまだ子どもやけどね」クス

京太郎「うぐ」

雅枝「ま、一年後をお楽しみにーって事やね」

雅枝「私も色々と今の間に準備しとくし」

京太郎「一年後…?」

雅枝「ほら、京太郎君、結婚出来る年になるやろ?」

京太郎「…え?男は18からなんじゃ…」

雅枝「18は女の子の方やで?」

京太郎「…あ、そ、そうですね」

京太郎「い、いやぁ…すっかり逆で覚えてましたよ」

雅枝「んふ。京太郎君はうっかりさんなんやから」

雅枝「ホント、私がついとらんとダメやね」

京太郎「あ、あはは…以後気をつけます」

京太郎「(…やっべ。石版の事、すっかり忘れてた)」

京太郎「(つーか、まさか家に雅枝さんがいるなんて欠片も思ってなかったし)」

京太郎「(そっちに意識が引っ張られてた訳なんだけど…)」

京太郎「と、ともかく、手を洗ってきますね!」

雅枝「はーい。しっかり洗わへんとあかんよ」

雅枝「ちゃんと後でチェックするからね」

京太郎「わ、分かってますって」

京太郎「(…とりあえず落ち着こう)」

京太郎「(えーっと…えーっと…まず俺がするべき事は…)」

京太郎「(石版をどうにかして元の世界に戻す事)」

京太郎「(…でも、それは雅枝さんがいるところじゃダメだ)」

京太郎「(別に雅枝さんの事を疑ってる訳じゃないけれど…)」

京太郎「(あの石版の事を知られたら…どうなるか分からないんだから)」

京太郎「(だから、とりあえず今は雅枝さんの方に集中して…)」

京太郎「(彼女が帰ってから石版の方に取り掛かろう)」

京太郎「ただいまー」

雅枝「おかえりー」

雅枝「ご飯にする?お風呂にする?」

雅枝「それとも…」チラッ

京太郎「お菓子でお願いします」

雅枝「はーい。それじゃ、先に京太郎君の手をチェックせえへんかったらあかんね」

京太郎「子どもじゃないんですからちゃんと綺麗にしてますって」ハイ

雅枝「んー…」ジィィィィ

雅枝「…………」パクッ

京太郎「ひあっ」ビクッ

雅枝「ん~♪」チュルチュル

京太郎「ふ…おぉぉ…っ」ブル

雅枝「…………ん。ちゃんと京太郎君の味やね?」

雅枝「おっけー。お菓子食べてえーよ」

京太郎「………いやいやいやいや」

雅枝「ん?」

京太郎「…いや、その、俺の指をいきなりしゃぶったのはともかくですね」

京太郎「俺の味って何なんですか?」

雅枝「んー…おいしくて幸せな味?」

京太郎「…美味しいんですか」

雅枝「ん。とっても」ニコ

京太郎「(…美味しいのかー)」

京太郎「(正直、さっきハンドソープで洗ったばっかりだからハンドソープの匂いくらいしかしないと思うんだけどな)」

京太郎「(…………まぁ、雅枝さんがそう言うのであれば、そうだと納得しておこう)」

京太郎「(下手に突っ込んだら藪蛇どころじゃ済まなさそうだし)」

京太郎「じゃ、じゃあ、俺はお菓子貰いますね」

雅枝「あ、ちょっと待って」

雅枝「こっちも一段落したから一緒に食べよ」

京太郎「あぁ、それじゃ俺、お茶とか準備します」

雅枝「ん。お願いね」

雅枝「…にしても」

京太郎「はい?」

雅枝「…こうやって一緒に準備しとると『昔』の事を思い出すわ」クス

京太郎「(…昔…か)」

京太郎「(それは多分、俺の事じゃないんだろうな)」

京太郎「(雅枝さんの目は今、すごく遠いところに向けられているんだから)」

京太郎「(多分、雅枝さんは旦那さんがいた頃を思い出しているんだろう)」

京太郎「(俺が生まれた年に癌になって死んだらしいから…)」

京太郎「(俺はその人の人となりをよく知らないけれども…)」

京太郎「(でも、雅枝さんは大恋愛の末にその人と結婚して…)」

京太郎「(そして未だに強く想っている事くらい知っているんだ)」

京太郎「(こんなに綺麗で魅力的な雅枝さんが未だに再婚する気配がないのも…)」

京太郎「(未だに死んだ旦那さんの事を愛しているからなんだろうな)」

雅枝「…はい。コレでオッケーっと」

京太郎「うっす。有り難く頂きます」

雅枝「ん。味わって食べてな」ニコ

京太郎「そりゃ雅枝さんのお菓子なんて味わって食べるしかないじゃないですか」モグモグ

京太郎「ってうめえええっ」

京太郎「やっぱ雅枝さんのケーキは最高っすよ」モグモグ

雅枝「ふふ。そう言ってくれると嬉しいわぁ」

雅枝「あ、でも、急いで食べ過ぎて口の端にシロップついとるよ」

京太郎「あ、マジですか」スッ

雅枝「あ、待って。私が取ってあげる」スッ

京太郎「あぁ、ありがとうございます」

雅枝「ん。どういたしまして」ペロ

京太郎「(…おうふ)」

京太郎「(…俺の口についてたシロップを雅枝さんが自分の指から舐めとって…)」

京太郎「(こ、これ、所謂、間接キスって奴なんじゃ…?)」

京太郎「(い、いや、深く考えるのはやめよう)」

京太郎「(今はそれよりも…)」

京太郎「そ、それで、雅枝さんはどうしてここに?」

雅枝「あれ?まだ言っとらへんかったっけ?」

京太郎「はい」

雅枝「そっか。ごめんね」

雅枝「本来ならば一番に言うはずやったんやけど…久しぶりに京太郎君と会えて嬉しくって」ニコ

京太郎「俺も同じ気持ちでしたから大丈夫ですよ」

雅枝「…そうなん?」

京太郎「え、えぇ」

雅枝「私に会えて嬉しかった?」ジィ

京太郎「勿論ですよ」

雅枝「…そっか。そっかー」ニコー

雅枝「ふふー…んふふふふふー♪」デレェ

雅枝「って、嬉しがっとる場合やないね」

雅枝「私がここにおる理由やけど…まぁ、端的に言えば監督役ってところかな」

京太郎「監督役?」

雅枝「そ」

雅枝「京太郎君のお父さん達がまた当分、この国に帰ってこられへんみたいやし」

雅枝「その間、京太郎君が清く正しく美しく生活出来るか心配やって」

京太郎「いや、別に親父達が長期で家を開けるのは今回が初めてじゃないんですが…」

雅枝「でも、去年と違って、高校生になったやん?」

雅枝「それに色々と女の子の知り合いも増えたみたいやし…」

京太郎「あー…まぁ、それは…」

雅枝「ま、だから、ご両親も色々と心配なんやって」

雅枝「だから、インハイで私が東京におる間は目を光らせておいてくれへんかって」

雅枝「そう言われた訳なんや」

雅枝「ま、これでも私は教員免許もっとる現役教師やしね」

雅枝「ご両親としても私に任せておいたら安心やってそう思ったんやろう」

京太郎「なるほど…」

京太郎「すみません、なんだかご迷惑をお掛けしたみたいで」

雅枝「んーん。気にせんでええよ」

雅枝「私としてもご両親のお話は渡りに船みたいなもんやったしね」

京太郎「え?」

雅枝「幾らうちんところが名門や言うても、最近は不景気でなぁ」

雅枝「合宿費用なんかも出し渋られるようになったんや」

雅枝「でも、折角のインハイで、下手なところに泊まらせて疲労を貯めるのも可哀想やし…」

雅枝「やっぱ出来るだけええホテルで過ごさせてやりたいやん?」

京太郎「まぁ…そうですね」

雅枝「と言う訳で、これから数週間、お世話になりまーす」ニコ

京太郎「…え?」

雅枝「いやぁ…出来るだけええホテルとろうと思ったらな」

雅枝「丁度、遠征費がぶっ飛んでもうて私が泊まる分がなくなってやね」

雅枝「だから、監督役として須賀くんところでお泊りさせて貰おうかなーって」

京太郎「えぇぇぇぇぇえぇ…」

雅枝「あ、安心してええよ」

雅枝「うちんとこの子が泊まっとるのはこのすぐ近くのホテルやさかい」

雅枝「こっちで寝泊まりしても、ちゃんと監督としての仕事は出来るからね」

京太郎「い、いや、そういう問題じゃないでしょう」

京太郎「つ、つーか…それ良いんですか?」

京太郎「色々と問題になったりしないんですか!?」

雅枝「大丈夫やって、これでも私は教師やから」

雅枝「生徒を襲ったりせえへんよ」

京太郎「…いや、俺の方が襲っちゃいそうなんですが」

雅枝「え?」

京太郎「い、いや、その…」カァァ

雅枝「……襲ってくれんの?」

京太郎「い、いえ…あの…い、今のは言葉の綾というか…」

雅枝「……ふーん?」ジィィ

京太郎「あ…ぅ…そ、その…」

京太郎「ま、雅枝さん、今日の晩ごはんは何ですか?」

雅枝「とりあえずオーソドックスにカレーのつもりやけど」

京太郎「そ、そうですか!カレー超楽しみっす!」

雅枝「うん。私も京太郎君に襲われるの超楽しみやわ」ニコ

京太郎「…すみません、勘弁してください」マッカ

雅枝「ふふ。やーよ」

雅枝「当分はこのネタでいじり倒したるからね♪」

京太郎「うぅぅぅ…っ」プシュゥ

雅枝「…まぁ、本気で嫌やって言うんやったら…」

雅枝「私も考えがあるけどね」クス

京太郎「か、考えって…」

雅枝「…京太郎君、一緒にお風呂入ろ?」

京太郎「は、はい!?」

雅枝「えーやんか」

雅枝「絹と良くドロンコになって帰って来た君をお風呂に入れたげたやろ?」

京太郎「その時とはもう年齢も何もかも違うんですけど!?」

雅枝「大丈夫大丈夫」

雅枝「昔っから私の気持ちは変わっとらんし」

京太郎「何も大丈夫感がないんですが!!」

雅枝「…じゃあ、一生、私の玩具になる?」

京太郎「…そっちの方がまだマシっす」

雅枝「残念やわぁー…?」クスクス









京太郎「(…アレから結局、石版に関してはほとんど何も手をつける事が出来なかった)」

京太郎「(雅枝さんってば、ずっと俺に付きっきりでまったく放してくれなかったしな)」

京太郎「(流石にトイレの中は入ってこなかったけど…)」

京太郎「(でも、風呂の中まで入ってこようとしていたくらいだし)」

京太郎「(何とか断ったけど…でも、危なかった…)」

京太郎「(雅枝さんにとっては俺はまだ子どもなのかもしれないけれど…)」

京太郎「(でも、俺は昨日も言った通り、もう大人で…)」

京太郎「(ハッキリと言えば勃起だって出来る年頃なんだから)」

京太郎「(雅枝さんほど魅力的な人と一緒に風呂なんて我慢出来るはずがない)」

京太郎「(絶対に勃起するし、その身体だってガン見するわ)」

京太郎「(どれだけ失礼だって分かっててもスケベ顔しちゃうっての)」

京太郎「(…まぁ、正直、惜しかった気持ちはあるけどさ、うん)」

京太郎「(…仕方ないじゃん、俺だって男なんだし)」

京太郎「(女の人の裸とか興味あって当然だ)」

京太郎「(ましてやそれが二十代にしか見えない若々しい美人さんなら尚更)」

京太郎「(…しかし、これがインハイ終わるまでの数週間続くのかぁ…)」

京太郎「(…俺、我慢出来るかな)」

京太郎「(正直、役得だとは思うんだけど…ソレ以上に刺激が強い)」

京太郎「(雅枝さん、どうしてかすっげぇ俺に対してスキンシップしてくるし…)」

京太郎「(昔っから知ってるから、自分の子みたいに思ってるんだろうけれども)」

京太郎「(年頃の男にはそれはキツイです、雅枝さん)」

京太郎「(ただでさえ、興奮しやすい年頃なのに、そんなにベタベタされたら…)」

京太郎「(血迷わないように堪えるのに必死になってしまう)」

京太郎「(…多分、これ毎日、自家発電して発散しないと耐えられないだろうなぁ)」

京太郎「(実際、昨日の夜だって、石版ほっといて部屋に戻ってオナニーしてた訳だし…)」

京太郎「(…ある意味、充実したオナニーライフが約束されてはいるんだけれども)」

京太郎「(ただ、相手が友達のお母さん…しかも、未だ旦那さんの事を強く思ってる雅枝さんとなれば)」

京太郎「(背徳感と申し訳無さがヤバイ)」

京太郎「(オナニーした後、軽く鬱になったくらいだし…)」

京太郎「(…ホント、これ俺耐えられるのかなぁ……)」

京太郎「(ま、それはさておき)」

京太郎「じゃ、そろそろ行って来ます」

雅枝「えー…もう…?」

京太郎「いやぁ…俺ももうちょっと雅枝さんと一緒にいたいんですけど」

京太郎「でも、そろそろ出ないと時間に間に合わないですし」

京太郎「…って言うか、雅枝さんの方は良いんですか?」

雅枝「私んとこは昨日、東京についたばっかりやから今日は休みやで」

雅枝「あんまり今詰めても本番で実力が発揮出来ひんだけやしな」

雅枝「部員の子らも今日は羽伸ばして遊んどるはずや」

京太郎「あぁ、なるほど」

雅枝「…ま、そうじゃなくてもギリギリまで京太郎君とおるつもりやけどね」

京太郎「それで焦って事故にあったりしないでくださいよ」

雅枝「心配してくれとるん?」

京太郎「当然じゃないですか」

雅枝「そっかぁ♪」デレー

京太郎「よいしょっと」コツンコツン

京太郎「(さて、靴もこうして履けた訳だし)」

京太郎「それじゃ、改めて行って来ます」ガチャ

雅枝「あ、京太郎君、ちょっと待って」トテトテ

京太郎「え?」

雅枝「…ちゅ?」

京太郎「…はぇ?」

雅枝「ふふ。行って来ますのチューや♪」

雅枝「今日も1日、頑張ってな」

京太郎「あ…ぅ…」カァァ

京太郎「い、行って来まぁす!」ダッ

雅枝「行ってらっしゃぁい♪」フリフリ

京太郎「(アイエエ!?ナンデ、ナンデ、行って来ますのチュー!?)」

京太郎「(いや、その、チューと言っても、頬にされただけなんだけどさ!!)」

京太郎「(だけなんだけど…その唇に感触が!!)」

京太郎「(雅枝さんのツヤツヤでプルプルの唇が俺の頬にいいいい!!)」

京太郎「(うぉおおお!うぉおお!うおおおおおおおお!!)」

ネリー「……お兄ちゃん?」

京太郎「ハッ」

京太郎「(って、おおおおおお落ち着け、京太郎)」

京太郎「(確かにさっきの出来事は色々と刺激が強かった)」

京太郎「(正直、走って色々と衝動を発散しなきゃ血迷いそうだったくらいだ)」

京太郎「(だが、それをネリーに勘付かれる訳にはいかない…!)」

京太郎「(どうしてかは知らないが…ネリーは俺の事を好いてくれているんだから)」

京太郎「(ここは何事もなかったかのように偶然出会ったネリーと…)」

京太郎「(いや、多分、俺と一緒に部活に行く為に待っててくれたであろうネリーと話さなければ…!)」

京太郎「や、やぁ、ネリー」

京太郎「今日もいい朝だな!」キラキラ

ネリー「…………『京太郎』は随分とご機嫌だね」

京太郎「…え?」

京太郎「(…京太郎?)」

京太郎「(昨日は俺の事、ずっとお兄ちゃんってそう呼んでたはずなのに…)」

京太郎「(も、もしかして正気に戻ったのか…!?)」

京太郎「(自力で狂気から脱出を!?)」

ネリー「何か朝から良い事でもあった?」ジトー

京太郎「ぅ…」

京太郎「(…だけど、その分、すっげぇ不機嫌なんですが)」

京太郎「(なんか今にもハイライトさんがバイバイしそうな目でこっちを見上げてる)」

京太郎「(こ、これってもしかして…バレてる?)」

京太郎「(雅枝さんに行ってらっしゃいのチューされたのバレちゃってるのか…!?)」

京太郎「(い、いや、そんな事はないはずだ)」

京太郎「(ネリーが待っていたのは、昨日、俺と遭遇したのとほぼおなじ場所)」

京太郎「(俺の家からはそれなりに遠く出かけにされたチューに気づくはずがない)」

京太郎「(つまり…これはカマかけだ)」

京太郎「(すっとぼければ回避出来る…!)」

京太郎「その、今日は朝からいい夢を見てさ」

京太郎「調子も良いし、とってもさわやかな気分なんだよ」

ネリー「…………ふーん」

京太郎「…………」ダラダラ

ネリー「…ね、それってさ」

ネリー「…その可愛い頬にキスされた夢?」

京太郎「…えっ!?」ビックリ

ネリー「ふーん…やっぱりそうなんだ」

京太郎「あ、い、いや、違うぞ」

京太郎「年上未亡人に行って来ますのチューを頬にされる夢なんて見るはずないじゃないか」ハハハ

ネリー「…へー。相手は年上なんだ」

ネリー「しかも、未亡人…そんな女が…お兄ちゃんにまとわり付いてるんだね」ゴゴゴ

京太郎「(あ、ダメだ、これ完全に墓穴掘ってる…!?)」

京太郎「(い、いや、 まだだ)」

京太郎「(ある程度、気づいていても…確信までは行っていないはず…!)」

京太郎「(少なくとも、証拠はないんだから、適当にごまかす事はまだワンチャン…!)」

京太郎「だ、だから、それは夢だって」

京太郎「何もネリーがそこまで不機嫌になるような事は…」

ネリー「…口紅」

京太郎「え?」

ネリー「頬についてるよ」

京太郎「…あ゛っ」

京太郎「(しまったああああああ!)」

京太郎「(そうだよ…雅枝さん朝から化粧してたじゃん!)」

京太郎「(口紅だって塗ってたじゃん!)」

京太郎「(それでキスされたら…そりゃ口紅だって残るわな!)」

京太郎「(バッチリ証拠掴まれてるんじゃないか、チクショウがあああ!)」

ネリー「…………何かまだ言い訳がある?」

ネリー「あるなら、その全部、論破してってあげるけど」

京太郎「じ、実は…お、俺は女装趣味の変態で…」

ネリー「それでどうやって自分の頬にキスマークつけるの?」

京太郎「うぐ」

ネリー「…………そんな支離滅裂な言い訳まで口にするなんて」

ネリー「…お兄ちゃんはそんなにその未亡人の事が好きなの?」

京太郎「い、いや、それは…」

ネリー「…お兄ちゃんは分かってないよ」

ネリー「年上って事は、つまりそれだけ劣化が早いって事なんだからね」

ネリー「お兄ちゃんよりも先に年老いて見難くなっていく女の事を一生面倒見なきゃいけないんだよ?」

ネリー「しかも、未亡人って事は一度、貞操を他の男に売り渡してるって事じゃない」

ネリー「そんな女と一生、一緒にいるなんて耐えられないでしょ」

ネリー「何時か絶対に嫌になっちゃう時が来る」

ネリー「それよりもさ」

ネリー「それよりも年下で子どもっぽい子の方がずっとずっと良いと思うな」

ネリー「年下だからお兄ちゃんよりも老けるのはおそいし」

ネリー「スタイルだって中々、崩れないよ」

ネリー「それに何より、お兄ちゃんに一途で…」

ネリー「その心も身体もお兄ちゃんだけ想っていて…」

ネリー「一生、面倒を見てあげる…そんな覚悟を決めてる女の子が」

ネリー「お兄ちゃんには一番だって思うな」ジィィ

京太郎「い、いや、そういうんじゃないって」

ネリー「…ホント?」

京太郎「ほんとほんと」

京太郎「と言うか、その人、友達のお母さんだから」

京太郎「どう転んでもネリーが心配してるような事にはならないって」

ネリー「…………でも、本当に心配要らない人が行ってらっしゃいのチューするなんて思えない」

京太郎「そ、そういうスキンシップが気軽な人なんだよ」

京太郎「昔っから面倒見てて貰ってたからお互い気心も知れてるし」

京太郎「自分の子どもくらいにしか思われてないよ」

ネリー「…………」

京太郎「(…ダメだ)」

京太郎「(これまったく信じてくれてないや)」

京太郎「(多分、このまま話してても泥沼なだけ)」

京太郎「(下手すれば…ネリーの逆鱗に触れて、直接行動に訴えさせるかもしれない)」

京太郎「(それを防ぐ為にも、ここは…)」

京太郎「そ、それよりもさ」

京太郎「このまま口紅つけて学校行くと大変な事になりそうだし…」

京太郎「ネリーが綺麗にしてくれないか?」

ネリー「え?」

京太郎「確か口紅落とすのにクレンジングオイルとか必要なんだろ?」

京太郎「俺、そういうの持ってないけど、ネリーなら持ってるんじゃないか?」

ネリー「…まぁ、それくらいは女の子の嗜みとして持ってるけど」

京太郎「じゃあ、頼む」

京太郎「俺じゃちょっと場所も分からないし」

京太郎「落とし方もさっぱりだからさ」

ネリー「……うん。分かった」

ネリー「それじゃ、そこのベンチに座ってくれる?」

ネリー「立ったままだとちょっと大変だから」

京太郎「了解」ストン

ネリー「ちょっとまってね」ゴソゴソ

ネリー「……うん。あった」

ネリー「じゃあ、行くよ」

京太郎「や、優しくしてね…?」

ネリー「お兄ちゃんに酷い事なんてしないもん」トントン ヌリヌリ

京太郎「どうだ?」

ネリー「…うん。ちゃんと取れてきてるよ」

ネリー「あんまりキツくキスされてた訳じゃないんだ…」

京太郎「だから、お遊びだって言ってるじゃないか」

ネリー「…普通、こんなのお遊びじゃしないよ」

ネリー「もし、本当に遊びだったら神経を疑う」

ネリー「…お兄ちゃんは私のなのに」

ネリー「私の大事なお兄ちゃんに…こんなもの残して…」ゴシゴシ

京太郎「ちょ、ね、ネリー、痛いって…」

ネリー「…あ、ごめん」ハッ

ネリー「…とりあえず汚れちゃったからもう一個別のコットンで綺麗にするね」

京太郎「お、おう」

ネリー「……」ゴシゴシ ヌリヌリ

京太郎「終わったか?」

ネリー「…まだダメ」

ネリー「まだまだ…汚いままだから」

ネリー「もっともっと綺麗にしなきゃ…」

ネリー「その女の痕跡なんて欠片も残らないくらいに…」

ネリー「綺麗にしなきゃ…ダメなんだよ」ゴシゴシ

京太郎「そ、そうか…」

京太郎「(…うん。とりあえずだ)」

京太郎「(明らかにもう堕ちてるだろうとは思うんだけど)」

京太郎「(でも、ここで抵抗したら、間違いなくさっきの話題に火がついちゃうだろうし…)」

京太郎「(おとなしくされるがままになっておこう)」

ネリー「…よし。もうそろそろ大丈夫だと思う」

京太郎「そ、そっか。良かった…」

京太郎「(結局、アレから十回は拭かれたからな)」

京太郎「(正直、拭かれすぎてその部分だけ違和感がハンパない)」

京太郎「(そこだけやけに敏感なような…カピカピしてるような微妙な感じだ)」

京太郎「(でも、まぁ、ネリーはネリーで俺の事を思って綺麗にしてくれてた訳だし)」

京太郎「(とりあえずお礼を言わないと…)」

京太郎「あぁ、それとありが…」

ネリー「…ちゅ?」

京太郎「…え?」

ネリー「ふふ。最後の消毒…だよ♪」

ネリー「これでお兄ちゃんは何時も通り綺麗なお兄ちゃんに戻ったから…」

ネリー「安心…してね」ニッコリ

京太郎「お、おう…」

京太郎「(…それでネリーが唇つけてたらまた元通りなんじゃないかと思うけれど)」

京太郎「(でも、ネリーは今時めずらしいくらい化粧ッ気の少ない奴で)」

京太郎「(唇にもクリーム程度しか塗ってないんだ)」

京太郎「(雅枝さんと同じところにキスされても、跡が残ったりはしないだろう)」

京太郎「と、とりあえずありがとうな」

ネリー「ううん。気にしないで」

ネリー「それより…またこんな事があったら、すぐ私に言ってね」

ネリー「何時でも何処でも…お兄ちゃんの事消毒してあげるから」

京太郎「だ、大丈夫だって」

京太郎「こんなの早々ないはずだしさ」

ネリー「じゃあ、約束出来る?」

京太郎「あぁ。約束するよ」

ネリー「…………うん、じゃあ、許してあげる」ニコ

京太郎「(…それでネリーが唇つけてたらまた元通りなんじゃないかと思うけれど)」

京太郎「(でも、ネリーは今時めずらしいくらい化粧ッ気の少ない奴で)」

京太郎「(唇にもクリーム程度しか塗ってないんだ)」

京太郎「(雅枝さんと同じところにキスされても、跡が残ったりはしないだろう)」

京太郎「と、とりあえずありがとうな」

ネリー「ううん。気にしないで」

ネリー「それより…またこんな事があったら、すぐ私に言ってね」

ネリー「何時でも何処でも…お兄ちゃんの事消毒してあげるから」

京太郎「だ、大丈夫だって」

京太郎「こんなの早々ないはずだしさ」

ネリー「じゃあ、約束出来る?」

ネリー「また誰かに変な事されたらすぐに私に言うって」

京太郎「あぁ。約束するよ」

ネリー「…………うん、じゃあ、許してあげる」ニコ

ネリー「(…………本当はその女の事を聞き出したいけど)」

ネリー「(でも、お兄ちゃんはその人の事が大分、大事みたいだから)」

ネリー「(きっと私が聞き出そうとしても教えてはくれないと思う)」

ネリー「(ただ、それならそれで調べる方法は幾らでもあるし)」

ネリー「(今は深く突っ込むのは許してあげよう)」

ネリー「(……でも、これは今だけだよ)」

ネリー「(また次に同じ事があったら、私ももう許してあげる事なんて出来ないし…)」

ネリー「(その上、もし…お兄ちゃんが約束を破ったりしたら…)」

ネリー「(…………私、絶対に我慢なんて出来ない)」

ネリー「(ううん、するつもりなんてまったくないから)」

ネリー「(例え、何をしてでも…お兄ちゃんの事を捕まえて見せる…)」

ネリー「(そんな覚悟はもう決まってるから…)」

ネリー「…それじゃ行こっか、お兄ちゃん」ニコ

京太郎「そうだな」