「これで……どうだっ!」

「残念ながら通りませんね」

「うぼぁ……」

「あっはっはっは」

願い虚しく場に出したリーチ棒含め、持っていた点棒を取られる。
今度こそはと力を籠めたものの和にあっさりと流され落ち込んでいると同席していた優希にさせ笑われた。
南場においては自分とどっこいどっこいだろうにと恨めしい視線を送るもこっちも流された。

「……よしっ、もう一回だ」

「京ちゃんも懲りないね」

「ぜってぃ、諦めないし懲りない」

「前向きなのは良いことなのだけど……それが力量として出るかはまた別よねー」

「ふぐっ」

リベンジとばかりに持ってきた牌を並べていると咲と寝ていた久にダメだしを喰らう。
実際に本当の事なので久の言葉に反論できない。

「……部長」

「あ~しまった」

空気を悪くしてしまった事を悟ったのだろう。咲のないわーという言葉に舌を出し頭を叩く。
そんな二人を横に京太郎は、胸を押さえよろよろと歩きバタリと倒れこむようなオーバーアクションをした。
そして反論とばかりに駄々を捏ねるように手足を動かし、くわっと言い放つ。

「……でも初心者ってこんなもんじゃないですか!」

「私は……それなりに出来ましたね」

空気を読まない和が少し考え込み、そんな事を言った。

「私も……かな?」

和が答えれば咲が申し訳なさそうに答える。

「私はボロボロだったじぇ!」

「優希っ!」

天才共めと二人に視線を送っていると援護者が現れる。
いつもはチンチクリンの癖に今だけは女神に見えた。

「でも勝つときはボロ勝ちだけどな!」

「ふっ……やっぱり、タコスはタコスか」

どうやら勘違いだったようだ。やっぱり『絶壁』は『範囲以外』である。
とっととタコス星に帰るがよい。

「……この際だから言っておくけど大会は出ない方がいいと思うわよ?」

「………出ます」

「京太郎の実力じゃ……悪いが無理じゃ。最初の一年は……」

「それでも出ます」

タコスとじゃれ合っていると先輩二人が忠告をしてくる。
別に虐めでも何でもなく二人が京太郎を気遣っているのだと伝わってくる。
それでも京太郎は意思を曲げない、曲げれない。
点数を数えられる程度になった自分が出てどうなるか位判っている。
それでも『須賀京太郎』は出なければいけないのだ。

「はぁ……頑固ね」

「すんません」

「謝るぐらいなら……って言ってもしょうがないか」

「あははは」

ほとほど困ったような表情の久に京太郎は渇いた笑いしか出せなかった。




――――――――――




「予選落ちか……っ」

大会も終わり誰も居ない廊下で壁を背に座り込み呟く。判っていたし、覚悟も出来ていた。
相手は麻雀が好きで昔からやっていた人達ばかりだ。たとえ女子より才能がなくとも時間(努力)の差が違う。
初心者な自分が勝てないことはよく判っていた。

「あーっ……やっぱり辛い、勝ちたかったなぁ」

それでも勝ちたいと真剣に思えて辛くて悲しくて涙が出てくる。

「……届いたかな。いや……さすがに予選落ちじゃ無理かな」

涙を流しつつも目的を達成出来たか気になるもすぐに自分で否定する。
今回の大会に無理してでも出たのには目的がある。
ある人に『あの人』に自分が麻雀を続けていると楽しんでいると伝えたくて伝わって欲しくて
少しの可能性を賭けて大会に出た。

どんなに無様でもいい、一瞬でもいい、情けない写真でもいい、あの人に届け……。
京太郎は疲れた思考の中ゆっくりと目を瞑り、それだけを願った。

「つまんなーい」

「私は楽しい」

白糸台専用の控え室で淡がTVに愚痴を零す。
淡の視線の先では、大会のダイジェストが放映されていた。
幾ら相手を見下している淡でも女子の戦いは真剣に見る、だが今現在流れているのは男子のものである。
自分達より才能が無い、能力もなければ運もない。地味、地味、地味である。

「女子もやってるし、そっちみよーテルー」

「私はこっちがいい」

「ぶーっ」

淡の懇願はただ1人真剣にTVを見ている照によって却下された。
自分の憧れている照が真剣に男子の戦い(格下以下)を見ているのが嫌なのだろう。
淡は頬を膨らませ、拗ねるように寝そべるも相手にすらされない。

「………」

「うぼぁー……」

勝手に人の膝を枕にして寝る淡を撫でながらも照は見続ける。
TVの中では地味な戦いが次々に移されていく。
たまに大きな和了もあるが女子では普通に見られるような光景だ。
それでも照は真剣に見続ける、一コマ一コマ見逃さないように……。

「麻雀……始めたんだね」

そして目的の人を居つけたのかTVの中に写る金髪の少年を見て照は、微笑を見せる。
もしも、淡が起きていてその笑みを見ていたら病院に連れて行くほどの物であったろう。
それほどに……それほどに照の笑みは自然で優しげで嬉しそうで悲しげでもあったから。

『長野代表は清澄高校』

「………」

TVの中では男子戦も終わり、代表校を挙げていく。
それを聞きいていた照は先ほどの笑みから一片し能面の表情を見せた。
忘れていたわけではない、それでも忘れていたいと思っていた。

いい加減決着をつけるべきだろう。
京太郎(良い事)と咲(悪い事)が同時に来る大会を前に照はため息をついた。


――――――――――

「あっ……」

「……久しぶり」

二人は大会会場で出会った相手に驚きつつも挨拶を交わす。
1人は驚き口をパクパクと動かし、もう1人はなんと喋ればいいか迷う。

「………」

「………」

二人は困り困ってそのまま固まる。
お互いになんと喋ろうかと思い視線を彷徨わせる。
それでも何とか喋ろうと勇気を振り絞り声をかけた。

「……その、リベンジ……いいっすかね」

「リベンジ?」

頭を掻きながら京太郎が小さな声で呟くように言い切った。

「中学の時のを……」

「あっ」

京太郎の言葉に照も思い出し罰悪そうに視線を逸らした。
中学の時に、照は部活を見学しに来た京太郎を叩き潰していた。
咲の傍に居た彼を一方的に敵視し勝手に拒絶するように……。

「……ごめんなさい」

「あ~……少しばかり麻雀に苦手意識を持ちましたけど……今は楽しいですし!!」

本当に済まなそうに頭を下げる照に京太郎はフォローになっていないフォローをする。

「……でもそれだけでいいの?」

「え~……うーん」

リベンジを申し込む京太郎に対し照はそれだけでは気がすまないとそう聞いた。
あの時の自分は本当に酷い事をしたのだ。ここで京太郎が何を求めようと照は全てを投げ捨てる気でいる。
殴るもよし、体を求めるもよし、……清澄に負けろと言われてもチームメイトに頭を下げてでも成す気で居た。


「……なら俺が勝つまで」

「え?」

「俺が勝つまで……リベンジいいっすかね」

「………」

「ダメですかね?」

黙り込む照に京太郎は申し訳なさそうに俯く。

「いいよ。でも……なんだかプロポーズみたいだね。『一生』なんて」

「 な゛」

くすりと笑みを零す照に京太郎は慌て取り付くろうも照はくすくすと笑い続ける。

「って……チョット待った!」

「?」

「プロポーズみたいだねって事は俺は一生勝てないと!?」

照の言葉の意味に気付き京太郎は憤慨する。
流石にそれはないだろうと100回も戦えば1回ぐらいは勝てるだろうと嘆く。

「うん、勝たせてあげないよ。京ちゃん」

「実力で勝つからいいっすよ……って京ちゃん?」

「咲もそう呼んでるよね。だめ?」

「いや……別にいいっすけど」

「それじゃ行こうか」

「うん?何処に……」

「麻雀……リベンジするんでしょ?」

「っ……はい!」

照に手を引っ張られ京太郎は共に歩き出した。

カンッ!

  • オマケ-

「よっわ~い!」

「なんというか……すまん」

「……なんというか、本当に一生勝てないかも」

「何度でも受けるから、お爺ちゃん、お婆ちゃんになっても」

「てるー……それってプロポーズみたいだよ?」

「プロポーズだし」

『え?』

もう1個カンッ!