京太郎「チーッス。今日はまだ和だけか」

インターハイも終わり、今日こそ最下位脱出をと意気込み部室のドアを開けると、そこにいたのは桃色の髪をした少女だけだった。

和「こんにちは、須賀くん。ゆーきはタコスを買ってから来るそうですよ」
京太郎「あいつも好きだなぁ。咲は借りた本返して来るってさ」

染谷部長も家の手伝いや部長の職務にと忙しそうだし、部活動が始まるまで少し時間がありそうだ。

京太郎「そういえば和に見せたいものが有ってさ……ほらコレ」

そう言って鞄から取り出されたのは一本のシャーペン。
そのノックボタンはエトペンの形をしており、軸も引き伸ばされたエトペンの柄をしている。

和「それってこの前発売されたエトペンになりたかったシャーペンですよね」
京太郎「和も知ってたのか。昨日シャー芯買いに行ったら見かけてさ、和に見せたら喜ぶんじゃないかと思って一緒に買ったんだ」
和「私も先日見かけて買ったんですよ。エトペングッズは見逃せませんからね」

そう言って和が鞄から出したものもエトペンのシャーペン。
和が振るに従って、先についたエトペンも嬉しそうに左右に動いている。

和「これで須賀くんとお揃いですね♪」
京太郎「ハハッそうだな」

エトペン仲間が増えたからか、機嫌が良さそうな和は、コツンコツンとお互いのエトペン同士を何度も触れさせ合っている。
……嘴と嘴がぶつかるように当てているのは、おそらく気のせいじゃないだろう。

京太郎「の、和?」
和「ふふっ♪ どうかしましたか? 須賀くん」
京太郎「いやどうしたっていうか…」

和は未だにコツンコツンとエトペン同士にキスをさせ続けている。
心なしか、のどっち状態のように顔も紅潮してきた気もする。

京太郎(これはもしかして誘われてるのか?)

いやしかし純粋にエトペン仲間を喜んでいるだけかも知れないしでもそれにしては行動が意味深すぎるしだからと言って手を出して本当はその気がなかったら間違いなく嫌われるし。
そんな京太郎の苦悩を余所に、エトペン同士が触れ合う音は続く。
気付けば和と京太郎の距離も近付いていた。

和「須賀くん…良いんですよ?」
京太郎「そ、そうか、いいのか」

いつの間にか触れ合う距離にまで近付いた和が、完全に紅潮した顔で目を閉じる。
何を迷う須賀京太郎、据え膳食わぬは男の恥、好きな少女にここまでさせたんだ! 俺はやるぞ! やってやるぞ!
そう決意し、エトペンではなく、京太郎と和の唇と唇を近付け


経年劣化で軋みがひどくなった旧校舎廊下の床が、何者かが歩いてくる音をギシギシと伝えてきた。

京太郎「! さ、咲達が来たみたいだな、卓の準備をしよう、そうしよう!」
和「そうみたいですね」

同意した和はスッと慌てる京太郎の顔との距離を0にして、さも当然のように京太郎の唇を奪っていった。

京太郎「!?」
和「次はちゃんと須賀くんからしてくださいね? 待ってますから」

そう言って予想通りバーン!と扉を開け放った優希と咲を出迎えた和は、平然としながら紅潮の言い訳をしている。
突然の出来事に思考が止まった京太郎に出来たことは、和の言う次に思いを馳せつつ、3人に飛ばされる事だけだった。