神代の巫女達によって京太郎を連れ去られてしまった清澄麻雀部。彼を取り戻すべく単身、鹿児島へと乗り込んだ宮永咲であったが、彼女を待っていたのは残酷な現実であった…。

霞「あらあら、一人でここまでやってくるなんて思ってもみなかったわ」

咲「今日こそ……今日こそは京ちゃんを返してもらいます!」

初美「それは無理な話ですよー。京太郎はもう私の大切な仲間なのですからー」

咲「私達にとっても京ちゃんは大切な仲間だよ!それを奪っておいて…」

春「嘘つき………。あなた達は京太郎の事なんて何も考えてない…。単なる雑用係としか彼を見ていない……だから私達が保護した……」

咲「そ、そんな事……!」

霞「ない、とでも言うのかしら?……京太郎は言ってたわよ。清澄に自分の居場所はないってね」

咲「え………?」

霞「仲間外れにされて雑用ばかり押し付けられて……幼馴染みのあなたにすら蔑ろにされて凄く悲しんでいたのよ」

春「京太郎は泣いていた……自虐的な事ばかり言って自分で自分を傷つけて……見ていられなかった」

咲「そんな……京ちゃんが…」

初美「これ以上、清澄にいたら京太郎はきっと壊れていたと思いますよー?信じていたあなた達に苦しめられてー」クスクス

春「京太郎の生きる未来にあなた達はいてはいけない……。あなた達の存在は京太郎を苦しめるだけ……!これからは私達が京太郎の側にいる…。絶対に悲しませたり苦しめたりしない…清澄の人間達と違って」

霞「そういう訳だから、ここまで来てもらったのに悪いのだけど京太郎は諦めて長野に帰ってもらえないかしら?あの子の面倒は私達が見てあげるから安心して?」ニコニコ

咲「……嫌です。京ちゃんは私にとって大切な人だから!そんな簡単に諦められません!」

霞「…………そう。またそうやってあの子の事を苦しめるつもりなのね」

咲「な………!?」

霞「分からないの?あなたの存在が一番、あの子の心を傷つけていた事を。長い間一緒にいた人に無視される事は本当に辛い事なのよ」

春「…京太郎もあなたの事を心配していた。『俺がいない間、迷子になっていないか』とか『アイツはドジな所があるから心配だ』……って」

初美「そんな京太郎の気持ちを当の本人は何も知らずに踏みにじっていたなんて酷い話ですよー」

咲「わ、私は………」

霞「…あなたという存在があの子を縛る鎖になっていたのよ。だから私達は京太郎をあなたから解放して『新しい幸せ』を得る為に全力を尽くしたわ」

咲「解…放…?」

良子「イエス。そして私達の【お祓い】によって京太郎の解放は成功したという訳です」

咲「あなたは…戒能プロ?」

霞「あら…良子さん。もう最後の【お祓い】は終わったみたいですね」

良子「はい。ようやく心待ちにしていた日が来ました。もう彼の心には清澄にいた頃のメモリーは綺麗にデリートされて残っていません。今の京太郎は彼女に汚されていない、イノセントな状態です」

巴「姫様も"新しい"京太郎君に大喜びしておりました。良子さんには本当に感謝しなくてはいけませんね」スッ

霞「そう…小蒔ちゃんは特に京太郎の事を気に入ってたものね。早く私もあの子の事をたっぷりと甘やかしてあけだいわ…」

春「私も早く京太郎の事を抱き締めてあげたい……」ニコッ

初美「私も京太郎に色々としてあげたいですよー」

咲「京ちゃんに……!一体何をしたんですか!?」

春「…今の話を聞いてなかったの?私達の【お祓い】で京太郎を【清澄から解放】したの。京太郎を苦しめる忌まわきし記憶から……」

良子「結構、時間がかかりましたけどね。それだけ京太郎のハートを縛っていたという事でしょう。全く罪深い話です」

咲「言っている事が全く分からない……!」

小蒔「分からなくても大丈夫です。あなたにはもう関係のない話なのですからね」ニコッ

初美「あっ、姫様が来たですよー」

金髪の少年「…………」

小蒔「怯えなくても大丈夫ですよ。私達が守ってあげますからね」ナデナデ

金髪の少年「う、うん……ありがとう小蒔ちゃん」ギュッ…

咲(この金髪の子……何処かで……。まさか…!)

霞「あらあら、小蒔ちゃん。その可愛らしい子が【新しくなった京太郎】かしら?」

良子「そうですよ。私の【お祓いの力】で【宮永咲】や【清澄高校麻雀部】と出会う前の京太郎に戻しました。勿論、私達と一緒にいた頃の記憶は残してあります」

巴「最初は多少、京太郎君も混乱した様子でしたけど姫様や私、そして良子さんで彼を落ち着かせました。今はだいぶ馴染んできていますね」

春「可愛い………今すぐに抱き締めたい」ウズウズ

良子「ハル。京太郎はまだ不安定な状態だから過度なお触りはNGですよ。スキンシップは神社に帰ってからにしましょう」

春「残念………」ガクッ

咲「こんな………こんな事って…」

京太郎(幼)「………そこにいるお姉ちゃんは誰?」

咲「────! 京ちゃん!私だよ京ちゃん!ずっと一緒だった咲だよ!思い出して!」クワッ

京太郎(幼)「ひいっ!?」ビクッ

咲「ど、どうして怯えた様な顔をするの京ちゃん!?私と一緒に早く清澄に帰ろうよ!みんな、京ちゃんの事を心配しているよ?」スッ

京太郎(幼)「い……いや……来ないで…」ブルブル…

咲「京ちゃん────!」

小蒔「止めてください!京太郎様が怖がっているではありませんか!」

霞「あらあら、こんなに震えちゃって可哀想に……」

初美「後で私達が慰めてあげるから大丈夫ですよ京太郎ー」

春「よしよし………良い子良い子」ナデナデ

京太郎(幼)「春ちゃん……小蒔ちゃん………あのお姉ちゃん怖い……嫌な感じがする」ブルブル

咲「…………京……ちゃん…?私…そんな……」

良子「もはやあなたは京太郎にとってバッドな存在でしかありません。彼の事を本当に大切に思っているのならば…もう二度とその姿を京太郎に見せないでくれますか」

霞「あなたにとって辛い事でしょうけど、これが現実なのよ。京太郎があなたを恐れているという現実……潔く受け入れてちょうだい」

京太郎(幼)「ううう……」グスン

小蒔「京太郎様…大丈夫ですよ。私がずっとあなたのそばにいますから」ギュッ

咲「京ちゃん……キョー……チャー……」ガクッ

春「今さら後悔しても遅い……あなたはここで絶望に包まれて泣き崩れているのがお似合い………あなたはそれだけの事を京太郎にしたのだから」

ポツ…ポツ……

初美「あっ、雨が降ってきましたよー」

巴「夕方から大雨になるようですので皆さん、そろそろ行きましょう。京太郎君も疲れている様ですし。…宮永さん、あなたも風邪をひく前に帰った方がよろしいかと」

小蒔「そうですね。では、京太郎様…帰りましょう。私達の…【居場所】へと」ニコッ

京太郎(幼)「うん!」コクン

良子「今日は皆でご飯を食べましょう。そしてその後は……」

霞「お楽しみの時間よ。たっぷりと可愛がってあげるから期待してちょうだいね、京太郎」クスッ

京太郎(幼)「………?」

春「…………」クルッ

咲「キョーチャー……キョーチャー………キョーチャー……キョーチャー……」ブツブツ

春「…………じゃあね、ばいばい」スッ…

そう言いながら立ち去る春の表情は何処か嬉しそうだった。神代の巫女達が立ち去ってからわずか数十分後、滝のような大雨がざあざあと地面を打ちつける。

咲「キョーチャー……キョーチャー…キョーチャー……キョー……チャー……」ブツブツ

その豪雨の中で、咲は光を失った虚ろな瞳でいつまでも京太郎の名前を呼び続けていたのであった。

カン