「キョータローお帰りだにゃー!」

家の玄関の扉を開けるとそこには猫耳と尻尾がついた黒猫コスチューム姿の淡がいた。
……なんで?
呆然としてしまう。

「キョータロー寒いよ。早くドア閉めてよ」

「あ、ああ」

太ももや二の腕が露出したその恰好では、隙間から入る冬の風は寒いのだろう。
俺は後ろ手でドアを閉め鍵をかけた。
淡は何かを期待したキラキラした目で俺を見つめてくる。
…ああ、なるほど。

「ハロウィンか」

「そうだにゃー」

「でもさ、金髪に黒猫姿は合わないんじゃないの?」

「そんなことないにゃ!」

ふしゃーとネコの威嚇ポーズをキメてみせる淡。
しっぽがぴょこんと揺れる。
やっぱ俺の彼女超可愛い。

「はは冗談だよ、その恰好すごい可愛いな、びっくりしたぜ」

そう言いながら猫耳カチューシャを付けた淡の頭を撫で、喉をくすぐってやる。
用事があるとか言って先に学校から帰っていったが、まさかこんなことを用意しているとは思わなかった。
ふと玄関の靴入れに目をやると、どこで買ったのか、模様がついたかぼちゃが置いてあった。

「えへへー脅かさせようと思ったんだにゃ…って、あっそうだ」

何かを思い出したように淡はまた猫のポーズを取り、

「Trick or Treat ?」

「…それ家にやって来る方が言う言葉じゃないのか?」

「んもー細かいにゃキョータロー!」

ただ、困ったことにお菓子の手持ちはない。
お菓子が置いてあるのは家の中だ。
そこで俺は、

「今なんもお菓子は持ってないんだよ。リビングのお菓子箱の中から持ってくるから待ってくれ」

と言った。

その瞬間。
淡はにんまりと、まるで麻雀中に相手が当たり牌を捨てたときのように笑った。

「実は家にあったお菓子はぜーんぶ食べたりテルーにあげたりして処理しちゃったんだにゃー」

「…は?」

「お菓子が家にもない、手持ちもない、これじゃキョータローはお菓子を私にあげられないにゃ…」

じりじりとにじり寄ってくる淡。
しっぽがゆらゆらと揺れる。
一歩下がった俺の背中がドアにぶつかった。

「うふふ、じゃあTrick…イタズラするねキョータロー」