インターハイも終わって、夏真っ盛りのこの日
俺は田舎の墓参りにやって来ていた
既にお盆の時期は過ぎているから
他に人影は見当たらず、とても静かだった
「御無沙汰してます」
「あら、須賀さん。今年は遅かったですね」
「息子がインターハイで出掛けてまして」
曾爺さん曾婆さんそれ以前の御先祖様たちが
安らかに眠る墓から少し離れた場所に住む
爺さん婆さんの家に顔を出すと先客がいて
父さんの従姉妹の旦那さん、という人だった
人の良さそうな笑顔に汗を張り付けるその人は
「いやぁ、偶然とは恐ろしいですね」
「うちも娘がインターハイ絡みでして。こっちに来るのが遅くなったんですよ」
「そうだったんですか……例年ならもう、帰っていらっしゃる頃ですからね」
畳が敷き詰められた居間で話し込む父親二人を置いて
一昨年に117歳で天寿を全うした曾祖母の仏壇に向き合う
目を閉じ手を合わせていると、ガラリ、と襖が開く音がして
父さんが話を終えてこちらに来たのだろうかと、振り返り
淡「……誰?」
京太郎「え?」
自分と同じ髪の色の、女の子――
インターハイの舞台で咲と激闘を演じた
白糸台高校の大将
大星淡その人が、俺を睥睨していた
最終更新:2015年12月03日 20:03