無意識下の行動は当人の隠れた欲求が反映しているという。

塞「……馬鹿なのかな、私は」

臼沢塞が己の破廉恥っぷりを自覚したのは、
京太郎の留守を預かる日曜の午後のことだった。
京太郎が出払ったのを好機にと、掃除の徹底に加え溜まった洗濯物を片付けるべく塞は一生懸命に働いた。

京太郎は年末を控えて忙しいトシさんを始めとする近所の手伝いを頼まれている。
久しぶりの休みだから、ゆっくりしたほうがいいですよ、という京太郎の言葉は有難かったが時間に余裕が生じると家事に張り切ってしまうのが恋人(予定)というものである。

―――もっとも結婚もプロポーズもまだだし、塞自身も己の気持ちを未だ伝えていないのだが。
今はシロや豊音達と暮らす時間を大切にしたいし、麻雀部以外の時の京太郎を沢山知りたい。

好意を抱いている京太郎のことをもっともっと知りたい。

気付けば塞は京太郎は部屋で秘密の本(おもちコレクション)を熟読し、我に返れば彼女は着用していた。
―――何を?

塞(へえぇ、トランクスって履き心地が楽なんだね――って、これじゃ痴女じゃん!何してんの私!?)

それなりの値段はする京太郎のトランクス。洗濯前の物を回避するだけの理性は辛うじて残っていたらしい。

しかし姿見に映る塞は上半身がトレーナーで、下半身が男物のトランクス。
シンプルな黒のハイソックスが彼女らしいが、今この場においては変態性を加速させている。

どんな言葉を並べようと、この姿を京太郎に見られたら弁解などできまい。
思いを寄せた男の部屋で、男の下着を身につけて鏡の前に立っている女。

性別を逆転して想像すると、今すぐにでも警察に自首したくなる。

塞(わ、私は悪くない!私は悪くない!京太郎君が無防備に下着を収納しているから!)

では今すぐ脱げばいい。幸いにも自分の下着はベッドの上に脱ぎ捨てられ、くしゃくしゃに丸まっているのだから。
京太郎が普段頭を預けているあたりの、枕の上に覆いかぶさるように、未だ温もりのあるピンク色の塞のパ―――。

塞「いやああああああああっ!」

説明できないものに衝き動かされた塞は絶叫すると共に、ベッドの上の下着を掴むと京太郎の部屋から逃げ出した。
とりあえず京太郎が帰らぬうちに今すぐ着替えよう、そうして素知らぬ顔でクローゼットに戻せば良い。
京太郎の、トランクスを、そのまま戻せば。

カァァァァァ

あるいは、メラメラメラという擬音と共にみるみるうちにゆでダコの如く赤く変化する塞の顔。そして数時間後。

京太郎「……あれ、これ今週は履いてない筈なんだけどな……?」

塞「…………」

京太郎「うーん、でも干されているし…」

塞「京太郎君!ご飯作ったから一緒に食べよ!」

ベランダに干されたトランクスを不思議そうに眺める京太郎の背中をポンと叩き、塞はその場よりそそくさと立ち去った。

京太郎「あ、はい…」

食事中、何故かニコニコして早口で色々と話す塞が京太郎には不思議だったがまさか自分の留守中に塞が暴走した事など知る由もなかったのだった。

カンッ