鹿児島、休日の昼下がりの事。

霞がテレビを見ている、なにやらドタバタラブコメ系ドラマのようだ。
霞さんの様な人でも女の子はそう言うドラマが好きなのかな、とそんな事を思いつつ京太郎は飲み物を取りにキッチンへと向かう。
そして京太郎が飲み物を片手に戻ると、目の前にはとても判りやすい光景が広がっていた。
まず、眼前のテレビが流す映像。
前述のラブコメの主役らしいカップルがラブラブな雰囲気を出しながら膝枕で耳掃除をしている。

霞「ふんふむ…」

京太郎「………あの、霞さん?」

霞「…ねえ、京太郎君」

そして、暫くそれに見入っていたかと思うと京太郎に気付いたのか、ニコニコと笑みを浮かべ霞は京太郎に声をかけてくる。
机の上、テレビのリモコンの隣には用意の良いと言うか、都合良くと言うべきかふわふわした毛玉つきの耳かきが置いてある。

ふふ、と思わず京太郎の笑みが漏れる。
彼女が何をやりたいかすぐに理解した。それは京太郎にとっても望む事である。
良いかしら?と視線で問う霞に勿論、と視線で返してこくりと頷く。
すると彼女はクスッ、と嬉しそうに笑うと片手で耳かきを持ち、もう片方の手でぽふぽふ、と巫女服の上からでも分かる張りのあるふとももを示す。

京太郎「あの、最近やってないから汚いかもしれませんけど…」

霞「大丈夫よ、私に任せて」

短いやりとりの後に身をソファーに横たえ、京太郎は頭を霞のふとももに預ける。
とても柔らかく、それでいて弾力に富んだソレはとても心地良い枕だった。
世界中のどんな高級な枕でも最愛の人の膝枕には敵わないだろう、と京太郎は思う。

かりかりかり

耳の奥を優しく、けれどしっかり丁寧に掃除してくれる。京太郎はとても気持ち良くて、何だか眠くなってきた。

京太郎「ふわぁ…」

小さな欠伸を一つ。霞はそんな京太郎を愛らしく思いながら耳かきを続ける。
京太郎の意識が闇に落ちるのに、そう時間はかからなかった。

―――暫く後。

やや傾き始めた陽射しが差し込む神社の大広間。
そこに居るのは二人、京太郎と霞。
京太郎は、まるで赤子の様に。
少し、顔を京太郎のお腹に埋める風にして穏やかに寝息を立てる。
一方の霞はそんな京太郎を眺めながら彼の綺麗な金髪を手櫛で梳いていた。
表情に浮かぶのは穏やかで優しげな、さながら母親の様な笑み。
それでいて嬉しくて、口元が緩むのが止められない。そんな上機嫌さを隠そうともせずに。

京太郎「んぁ………」

そんな折、少し間の抜けた声と共に京太郎が目を覚ました。

霞「お目覚めかしら?」

少し寝惚けている京太郎にふんわりと笑みを投げかける。
暫くその笑みをぼけ、と見つめていた京太郎は意識が覚醒したのかああ、と頷く。
時計を見やれば京太郎が寝入ってから、2時間程が経っていた。
余りに長く枕役をやらせていた事を申し訳ありません、と頭を下げて詫びる京太郎が見たのは。
全然構わないわよ、と怒る所か逆に微笑んでみせる霞であった。

京太郎「なんだか、機嫌良さそうですね?」

京太郎が思わずそう聞いてみると、返ってきたのは意外な答えと

霞「ふふ、確かに機嫌は良いわよ。………誰かさんが嬉しい寝言、私に聞かせてくれたから」

これはお礼よ、なんて前置きと共に重ね合わされた彼女の唇だった。
少し気恥ずかしかったのか頬を僅かに染めた霞は夕飯の支度があるから、と台所へと姿を消す。
自分は一体何を言ったのだろうか?
呆然とそれを見送った京太郎は起きあがり畳の上で胡座をかいて、うーんと思い返してみるが寝言を思い出せる筈も無く、結局そのまま夕飯の時間を迎える事となったのであった。

カンッ