転機は、高校三年生の頃だった。

 両親が別れ、麻雀の全国大会への夢を諦め、まこと幽霊部員で麻雀部を存続させていた。

 こんな状況で全国大会なんて行けると思っていなかったし、自分自身諦めていたわ。

 そんな中、麻雀部に入りたいという酔狂な新入生が来たの。


 『あの、麻雀部の部室ってここでいいんですか?』

 『ええ。あなた、新入生?』

 『はい! 麻雀に少し興味があって、見学に来ました!


 彼は金髪で高身長、肩幅や体つきを見ると、運動をしていたのかもしれない。

 自分がよく知る副会長と比べると、やはり体つきが違う。


 『須賀京太郎です! よろしくお願いします!』


 そして彼は入部して、麻雀部の一員となったの。

 その後、和や優希が仲間入りして、それでも部員が一人足りないという時、彼は幼馴染を連れてきてくれた。



 うん、冷静に考えてみて?

 どう考えても私に気があると思うわよね!?

 同好会以下の人数で、私とまこに興味がないとまずこない麻雀部!

 もともと麻雀をやっていない初心者!

 というかそもそも体育会系!

 女子にも気さくに話しかけてくるコミュ力!

 部員が一人足りないとなれば、知り合いを連れてきてくれる!

 私たちが大会で忙しいとなれば、雑用を買って出てくれる健気さ!

 高身長の金髪イケメン!

 わりとお金持ち!!

 国士無双13面待ちと思ってもいいじゃない!?


 『きた、きたわよまこ! 私にも春が来たのよ!

  どう考えても私に気があるとしか思えないわ!』

 『お、おう』

 『まぁ、私が須賀君に惚れるかどうかは彼次第ってところねー?

  ほら、私って悪女キャラだしー?』

 『そんなに気になるなら、それならこっちからもアプローチをかけたほうがいいんじゃないかのう』

 『ふふふ。甘いわよ!

  私の悪待ちの特性を忘れたのかしら!?

  ここはあえて厳しくして、全国大会が終わるまで待つのよ。

  そして終わった後、優しく須賀君を抱きしめて、『お疲れさま、私には体くらいしかあげられるものがないけど』なんて、なんて!

  きゃーっ!!』

 『そううまくいくかのう?』

 『辛いことばかりでも、生徒議会長を頑張っていた私に、神様が私にくれたご褒美よ!

  ごめんね、まこ。私は先に彼氏を作るわ!』

 『久は男に幻想を持ちすぎじゃないかの』

 『あらー、嫉妬しちゃってー。ごめんねー?』

 『うぜぇ』





 『部長。咲と付き合うことになりました』

 『!?』


 全国大会終了後、彼が放った一言はそれだった。


 『ほら、言うたろ?』

 『甘いわね、まこ!

  これは彼なりのツンデレよ!

  言ったでしょう? 私の特性は悪待ち。

  どんなに汚れていようと、最後にこの竹井久の元にあれば良い!

  あっ、その時は須賀久だったわね。きゃー!』

 『もうダメかもわからんね』

 『甘いですね部長』

 『和!?』

 『恋愛に 悪待ちなんて ありえません(笑)

  攻めない恋愛、待ち続ける幼馴染は敗北ヒロインと相場が決まっています。

  最近の男にウケるのはクレイジーサイコレズですよ』

 『和は必死ねー! 須賀君は私のことが好きだから最終的に私のところに帰ってくるのにー!』

 『須賀君は私のことが好きなんですよ? 公式設定に勝るものはありません。

  何より、常に胸の方ばかり見てましたからね』

 『あ、あのー、二人とも。あの二人はもう恋人同士なんだじぇ。諦めて祝福してあげようじぇ』

 『優希は偉いのう』





 そして十年後。清澄麻雀部同窓会


 「ふふふ。今日のためにいろいろと仕上げてきたわ」


 出来る女! 美人OLとして自分磨き。

 常にブランド物に気をつけて身だしなみ、悪女のように男を使い捨てるテクニックも磨いた!

 セックスレスだとか、結婚していて意外と合わなかっただとか、大人の女性として指導してあげないといけないわよねー!

 は、初めてだけどそこは須賀君に優しくしてもらいたいっていうかー! きゃーっ!


 「須賀君、まだかしら』

 「一番最初は私ですよ、『竹井』さん」

 「あら、『原村』さん。彼はまだ来てないわ」

 「そうですか』

 「えっと、悪待ち(笑)でしたっけ?」

 「えぇ、私の人生はいつだって悪待ちで生きてきたわ。

  麻雀部もそう、全国大会もそう、私はいつだって最後の勝利者なのよ!」

 「宇宙の心は竹井さんだったんですね(笑)」

 「何笑っているのよ」

 「恋愛に 悪待ちなんて ありえません!」

 「ふふ、信じられないというならば、この後の結末を見ていればいいわ!」

 「あの二人と同じ席にいることがどれだけ大変か……」

 「? 何か言った?」

 「いいえ、なにも」



 今日は清澄麻雀部の同窓会

 ついに狙いの彼が来た!

 振り返って、彼に視線を向ける。

 そこにはーーーー



 「もー、京ちゃん。ちゃんと手を繋いでよー」

 「おねむの双子を担ぎながら手を繋ぐってのも中々難しいんだよ!」

 「でもちゃんと私の手も握ってくれるんだ?」

 「当たり前だろ。離したらすぐにどっかいっちゃうじゃん」

 「えへへー。離しちゃダメだからねー」


 人前でも関係なくイチャイチャしだすラブラブ夫婦(子持ち)がいた。

 え、なにこれ、砂糖吐くんだけど。


 「咲はいつも迷子になるんだからなァ」

 「ム。そういう京ちゃんだって出張行ったら寂しくてため息ついてるんでしょ」

 「い、いやそんなことねーし」

 「寂しくないの?」

 「うっ、……そ、そりゃ咲がいなくて寂しいってのは」

 「へっへー、引っかかったぁ」

 「あっ! そういう咲だって、俺が帰ってこないと落ち込んで夕飯のグレードが下がるって、界さんが言ってたぞ!」

 「そ、そんなことないもん!

  お父さんの食事の手を抜くのは昔からだし!」

 「それはそれで界さんがかわいそうなような」



 えっ。

 なにこれ。

 TPOを弁えて欲しいんだけど。

 独女だらけの集会でこれはないでしょ。


 「和ちゃん聞いてよ!

  京ちゃんったらね! 飲み会でノロけすぎて素面になった時からかわれてるんだよ!」

 「そうですか。死ねばいいと思いますよ」

 「和は直球だのう……」

 「毎度毎度女子会で惚気られればこうもなります!」

 「女子会の時ののどちゃんも大概だじょ……」

 「優希! 聞いてくれよ!

  咲の奴、この間海に行った時ナンパされて涙目になりながら『人妻ですっ!』って言ってたんだぜ!」

 「京太郎も私の気持ちをちょっと考えて欲しいじぇ。

  割り切ってるけど、割り切ってるつもりだけど」

 「?」


 えっ、なに、和も優希も聞き慣れてるの?

 どういうことなの?


 「あっ、竹井先輩!」

 「えっ、ああ、久しぶり、須賀君」

 「お久しぶりです!」

 「竹井さん、お久しぶりです」

 「咲も元気そうで良かったわ」


 気押されてる場合じゃないわね。

 年長者として、話の流れを掴まないと。


 「そういえば須賀く」

 「聞いてくださいよ!

  咲の奴、俺が寝てる間に勝手にキスしてきたんですよ!

  そんなことされたらこっちもビックリしてそのまま抱きしめちゃいますよ!」

 「あー! その話するんだ!

  聞いてくださいよ!

  この間、休みの日にちょっと横になっている間に京ちゃんが家事をやっちゃったんですよ!

  休みの日くらい休んでって言ってるのに聞かないですよこの旦那は!」

 「なんだと!

  咲が普段家事で疲れてるのに俺に手伝わせないからいけないんだろ!」

 「毎日仕事で疲れてるのは京ちゃんでしょ!

  私は帰ってきた京ちゃんが美味しそうにご飯を食べてるだけで幸せなの!」


 ちょ、やめて! 独り身にその攻撃は効く。やめて!

 そ、そうよ! まこや和や優希に助けを求めるのよ!


 「あっ、咲さん。せっかくなので子供の面倒は私たちがみますね」

 「やっぱり子供は可愛いじょー!」

 「元気でいいのう!」

 「わ、私も」

 「そう言えば竹井さんは二人と話したがっていましたよね。

  積もる話もあるでしょうし、子供は私たちが預かりますのでお構いなく」


 和ァ! 図ったわねぇ!!


 「そう言えば竹井さんに会うのは久しぶりでしたね」

 「俺たちも会いたかったんですよ! 今日はたくさん話しましょう!」

 「ファっ!?」


 こ、このバカップルがぁぁぁぁーーーっ!!

 あ、悪待ちはこんなので負けないわよ! カン!