「海だー!」

 「もー、年を考えて叫んでよねー」

 「咲ぃ。そんなこと言うなよー」

 「京ちゃんは年を取ってもカッコいいよ」

 「!? て、照さんありがとうございます」

 「あ、お姉ちゃん抜け駆け厳禁!」

 「? 咲はダメだと思ったんじゃないの?」

 「う……。わ、私としては、年をとった分大人の対応をした方がいいんじゃないかな、って言っただけであって……。

  そ、その……、京ちゃんはいつでも、格好いいよ!」

 「お、おう。その、咲も水着似合ってるよ」

 「ぅひ」

 「京ちゃん。私は?」

 「照さんは美人なんでスッゲー似合ってますよ!」

 「ム」

 「ふふーん」


 須賀咲ちゃんです。今日はこの三人で海に来ました。

 子供は親に預けて、三人だけのデートです。

 ……普通は二人だけでデートするものだと思うんだけどなぁ。

 チラッとお姉ちゃんを見てみると、キョトン?といった顔でこちらを見返してくる。

 もう、仕方ないなぁ……。


 「海に入る前にはちゃんと準備運動をするんだぞ。

  あと二人とも浮き輪は用意した?

  何より、俺から離れるなよ」


 うっ、ちょっとキュンっと来たよ。

 って、お姉ちゃんまで雌の顔をしないの!


 「もー、大げさだよ」

 「咲、泳げたっけ?」

 「……泳げません」

 「照さん。泳げますか?」

 「泳げない」

 「必ず俺の言う通りに動く事!」


 そういうと京ちゃんは、シートを貼ったり日傘を立てたりし始めました。

 私はとりあえずシートにお弁当を置いたり、ジュースの準備。

 お姉ちゃんは……、何をしたらいいかわからずオロオロしてます。


 「照さんは早めに準備運動を始めちゃってください。

  咲も終わったらやるんだぞ」

 「ほら、お姉ちゃんもまずは日焼け止め! 塗らないと大変なことになるよ!」

 「日焼け止め、京ちゃんに塗ってもらいたい」

 「ダメ! おとなしくしなさい!」

 「むー」

 「むー、じゃない!」


 ジタバタ暴れるお姉ちゃんを抑えて、背中の日焼け止めを塗る。

 前はもちろん自分でやらせるよ!


 「咲ばかりずるい。お姉ちゃんが塗ってあげる」

 「きゃっ。もー。……ってダメだって、そこは違うよ! く、くすぐったい!」


 そんなこんなで姉妹間でキャットファイトを繰り広げていると、京ちゃんが前かがみになっていた。

 ……こらー! どっちに発情したか言ってみなさーい!



 「咲……お前体固すぎ」

 「は、半分を保てないよぉ」

 「照さん。もうちょっと運動しないと体壊しますよ」

 「きょ、京ちゃん痛いっ。ダメ、あ、ゆるしてっ」


 長座体前屈で伸ばしてもらったけれども、二人とも直角を保つことすら出来ず、後ろに倒れていっちゃうよ。

 京ちゃんが二人とも支えて少しずつ前に倒すんだけれども、まったく進みません。


 「まぁ、こんなもんでいいか。

  二人分の浮き輪も膨らませましたし、足首も回しましたし、そろそろ行きますか」

 「おー」

 「お姉ちゃん、テンション高いのに棒読みなんだね……」


 しかし、いい年をした大人が子供も連れずに三人で、しかも男一人女二人だとどう思われてるんだろうね。

 両手に華だし、私と京ちゃんが夫婦に見えないだろうから、ちょっと悔しいなぁ。

 でも、何も考えていない顔をしているお姉ちゃんを見ると、まぁ許せるかな!

 今日は二人とも思いっきりリラックスして欲しいんだ。

 京ちゃんもお姉ちゃんも、いつも大変だからね。

 さて、海に入ろうかな……って。


 「ひゃぁ!」

 「おっと!」

 「わっ」

 「ほいさ!」


 ……砂浜で順番に転ぶ私とお姉ちゃんをしっかり支える京ちゃん。

 これ、結構すごいんじゃないかな!?


 「うぅ、京ちゃんありがとう」

 「いやまぁ、慣れたよ」

 「京ちゃん。お礼」

 「えっ!?」

 「腕に抱きつくの禁止!」


 もー、油断も隙もない。


 「転ぶと危ないから先に手をつなぐ」

 「はいはい」

 「もー! きょ、京ちゃん。私も」

 「どうぞ、お姫様」


 ぐぬぬ……。なんで嫁さんよりリードしてるのかな!?

 そして、二人の女の子と手をつないでいる京ちゃんはどんな風に見られているんだろう……。


 「疲れたー!」

 「おいおい、まだ全然泳いでないぞ」

 「京ちゃん。私も疲れた。

  咲と休んでるから泳いでくるといい」

 「そうですね。ちょっと体動かしたいし。

  咲ー、うろちょろして迷子になるなよー」

 「ならないよ!」

 「咲はおっちょこちょいだから」

 「照さんも動かないでくださいよ!」

 「(´・ω・`)」


 そう言うと京ちゃんは腕を回しながら海の方に向かって行きました。

 ……はっ! 京ちゃんナンパされたりしないかな!?

 ぐぬぬ、追いかけたいけれど、この砂浜で走ったら間違いなく転んじゃうし。


 「ねぇー、君たち、今暇?」

 「かわいいじゃん。俺たちと遊ぼうよー」


 ひぇぇぇ!? こっち!?

 生まれてこのかたナンパなんてされたことなかったけど、お姉ちゃん狙いなのかナンパされちゃいました!

 ど、どどどどどどうしよう!?

 思えば京ちゃん以外の男の人とまともに会話したのは中学生が最後だよ!?


 「あ、ああああああの!? 人違いです!?」

 「人違いって……」


 違う、そうじゃない。

 なんか哀れみの目で見られるようになった気がする!?

 ち、ちゃんと言わないと!



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       { /::::::::::::::::::/|::::::|ノ|:八 ::::| _..斗-=ミ\| ::::::::::|::::|
      /::::::::::::::| :: /-匕-=ミ\|\|  〃⌒゙ヾⅥ :::::::: |::::|  }   「人妻ですっ!」
        ̄ ̄ |::::::|::イ /〃⌒ヾ     {{    }} }|/| ::::::|::::|  {
      {  |:: 八ハ{ {{   }}     ゞ==(⌒) | :: /:::::|
       } |/|::: {. ハ (⌒)==''         ///  |/}:::::|
            |:::: ヽ_| ///              __,ノ :::::|  }
.          { レヘ::八     _.. ‐~‐-、   イ ::::::::::::/  {
           }   ∨个 .._ (_,,.. ‐~~' イヘ:::/|/∨
                 \|  _≧=一ァ  〔/⌒T:iT7ス
                r=Ti:i:i:i:i:i:7____/i:i:i:i:i:i:i/ ∧  }
               {  ∧i:i:i:i:i:i:i:i:|   /i:i:i:i:i:i:i/   / ∧ {



 「あら、残念」

 「じゃあそっちのお姉さんは」


           -‐──‐-
       . ´          `ヽ、
      /
     /                 ,   「二号です」
   / /   /|    ト、        ′
 ∠._/   / i|    i \      〕
    〔  |/ 八〔\ .'   \   /
.     |∧ :| ┯:┯  V ┯:┯∧ /   j
    ' ∧|  乂ノ     乂ノ   ∨、   |
.     /:Ⅴ         ""  ノ   |
    /::::入_           _  < / /| /
  /\ /∧ノ  へ ̄ ̄/  \リイ/ / 〔′
   ̄\\  r‐'   \/  //\ /
     \ヽーヽ └─ー/─'  \
      丶ー|   〉 〈   |  〈
           |  .〈∧/    !__/
           |        | |


 「「「」」」


 「ちょ、お姉ちゃぁぁぁん!?」

 「どうしたの、咲?」

 「まるで私がおかしいみたいな言い方やめてよ!?」

 「おい、やべーぞこいつら……」

 「逃げようぜ……」


 お姉ちゃんの発言にドン引きしているナンパさん二人組。


 「咲! 照さん!」

 「京ちゃん! 遅いよ!」

 「京ちゃん、待ってた」


 そこに現れる京ちゃん。

 もうちょっと早く来てくれれば格好良かったのに! 濡れ濡れだったのに!

 なんか色々と台無しのタイミングだよ!


 「この子、さっきお姉ちゃんって言ってたぞ」

 「やべーぞ姉妹丼じゃねーか」

 「くそっ! 世の中は理不尽だ!」

 「そう言うなよ。お前には俺がいるじゃねーか」

 「そう言えばips細胞で男同志でも子供が出来るらしいな」


 この人たち、なんかムーディーな雰囲気を醸し出してるよ!?

 あまりの衝撃的発言に壊れた!?

 ちょ、とりあえず離れよう!?




 「今日は楽しかった」

 「そ、それは良かったです」

 「よくないよ……。すっごく疲れたよ……」


 脱力感たっぷり。もう何もする気が起きません……。

 あの後、お姉ちゃんが迷子になるわ、私も迷子になるわで大変でした。

 だって、お姉ちゃんはおトイレ探して帰ってこないし、私は屋台にフランクフルトを買いに行ったら場所がわからなくなっちゃったんだもん。

 まぁ、京ちゃんが買ってきてくれたんだけどね。


 「京ちゃんのフランクフルト。美味しかった」

 「そ、そうですか」

 「ちゃんと『買ってきてくれた』って入れてよ!?」


 その言い方は絶対に確信犯でしょ!?

 京ちゃんのフランクフルトを知らないくせに! 知らないくせに!


 「家族みんなでお風呂に入った時に見たよ」

 「むきー!!」


 落ち着け、私。そうじゃない。

 お姉ちゃんのペースにハマったら負けだ!


 「咲は」

 「ひゅい?」


 お姉ちゃんが私のほっぺを両手で押さえて、じっと見つめてくる。


 「咲は楽しかった?」


 ……ぅ。


 「楽しかったよ!」

 「よかった。京ちゃん、大成功」

 「やりましたね! 照さん!」


 ぇ?


 「最近、家事ばっかりで外出られてないだろ?

  みんなで話して、咲を気分転換させてやろうって」

 「咲に話したら図書館って言い出しそうだから、秘密だった」

 「たまには外でないとね。

  咲は出不精だからなァ」

 「咲。いつもお疲れ様」

 「子供の世話も大変だろ。ありがとうな」


 あ、あれ? 私が二人に楽しんでもらいたかったのに、実は仕組まれてたの?

 や、やばい。にやける。えへへ。


 「ど、どうせ海にした理由だって、京ちゃんは水着のお姉さんが見られるからでしょ」

 「ぅ。いや、そんなことは」

 「お姉ちゃんだって、京ちゃんに水着でアピールするためでしょ」

 「うん」


 そこは否定してよ。


 「もう、本当に二人とも……いい話にするつもりなんだから。

  えへへ。ありがと!」


 こちらこそ、いつもお仕事お疲れ様です! カン!