「咲さん。旦那さんを貸してください」

 「嫌だよ!? 和ちゃんどうしたの!?」

 「のどちゃん……人の旦那を奪おうとするのはさすがに引くじょ」

 「いいえ、ゆーき。女の子は人の旦那にこそ惹かれるのです。

  現に今の京太郎君はすごく魅力的じゃないですか!」

 「まぁそこは否定しないじょ。

  何かと頼りになるしなー」

 「優希ちゃん!?」

 「実際、ショタ好きじゃなければちょっと年を取っている風な男に惹かれると思うんです」

 「確かにそうかも。私の友達にもそういう人多いじょ」

 「大学で普通に遊んでいた友達が、年上のおじさまと不倫しているって話をよく聞きます」

 「あー、それ私も聞くなぁ。清楚系の友達が意外にそういうことしてるんだじょ」

 「本人たちは隠す気もなく、普通に話してくるんですよねー」

 「『私不倫してるんだー』とか、いやぁよくある話だじょ」

 「人妻の前でよくその話できるよね!?」


 須賀咲ちゃんです。今日も女子会です。

 和ちゃんが不穏な目つきでこちらを見ています。いや、もう本当にやめて……。


 「のどちゃん、またなんかあったのか?」

 「ふ、ふふふ。それを聞きますか。聞いちゃいますか」

 「あっ、やっぱりいいです」


 思わず優希ちゃんも標準語に。

 そういえば、大人になってからの優希ちゃんは素になると普通の喋り方をするけれど、まさか


 「おっと咲ちゃん、それ以上はいけないじぇ?」

 「ぅひ!?」


 ま、まさかこっちも!?

 京ちゃん。(元)清澄女子麻雀部が怖いです……。


 「頼りになる男性は魅力的ですよね

  京太郎君は背も高いですし、力もあるし、日曜大工なんかも出来そうですね」

 「あー。たまにやってくれるなぁ。

  私のお父さんと一緒に本棚作ったり」

 「私もタコスをまた食べたいじぇ」

 「それなら今度お願いしてみようか?」

 「咲ちゃん、本当か!?」

 「私も是非お願いします!!!!!」

 「うわぁ……」


 和ちゃん必死すぎ……。


 「もう! 聞いてくださいよ!

  この前、父に言われてお見合いをしたんです」

 「のどちゃんがお見合いかー。

  そのおっぱいを使えば一発だじぇ」

 「本当だよねー。清楚な格好をして、上目遣いでもすれば一発じゃないかな」

 「……19戦19敗」

 「じぇ!?」

 「ファっ!?」

 「ふ、ふふふ。まぁそんなに多くない数字ですが、負けが込んでいましてね」

 「いやいや、のどちゃん。19回もご破談になっているのに多くないって……」

 「日本のすべての男性人口と比べれば、統計的に見ても微々たる数です!」

 「えぇ……」

 「そのデジタルには無理があるじょ」


 い、いやさすがにそこまで行っちゃうといろいろとおかしいんじゃないかな!?

 どう控えめに見ても和ちゃんは美人さんだし、アラサー付近と言ってもむしろ結婚適齢期でしょ!?

 そのくらいの年齢と、見た目、公務員ってスペックでそれはおかしいよ!

 一体何をすればそんなに破談になるの!?


 「最初は本当に嫌だったんですよ。いや、今でも嫌なんですが。

  それでも、父の態度がですね?」




 1回目

 『和、こちらの方に挨拶だけでもしておきなさい。

  人柄も良いし、安定した企業に勤めている方だ。

  しかし、ちゃんと見極めるんだぞ』


 2回目

 『和。この方はこれから伸びる方だ。

  顔見知りになっておいて損はないだろう。

  お前をその辺の男にはやれん』


 5回目

 『……和。その、なんだ。

  無理にとは言わないが、今回もお見合いを用意したぞ』


 10回目

 『いや、その、な?

  お節介だったらお節介で構わないんだ。断ってくれても構わない』


 15回目のお見合い終了後

 『和。お前の友達に良い方はいないのか?

  恋愛結婚は良いぞ。うん。お前が良いと言う方ならばそれで良いだろう』


 16回目のお見合い終了後

 『そういえば十年ほど前か、お前が話題に出していた男の子がいたじゃないか。

  今でも交流は続いているのか?

  ……むしろその男の子以外に知り合いはいないのか?』


 17回目のお見合い修了後

 『和。よければ私がその男の子と掛け合おうか。

  何? すでに結婚している?

  そんなことを言っている場合か!』


 18回目のお見合い修了後

 『私の旧友に宮永界という男がいてな』


 19回目のお見合い修了後

 『何を迷うことがある奪い取れ!

  今は悪魔が微笑む時代なんだ!』




 「と、いうことがありまして」

 「ちょっとぉぉぉー!?」

 「わーお、過激だじぇ」


 え、和ちゃんのお父さん何言ってるの!?

 冷静に考えても頭おかしいんじゃないかな!?


 「あの過保護な父がこう言う態度になってきたという事実が、何よりキますね」

 「いやいやいや、ここまで来ると和ちゃんに何か原因があるんじゃない?」

 「いやー、若い娘にこれだけお見合いを用意する方もなかなか狂ってるじょ」

 「私は普通にお見合いをしているつもりなんですが」

 「と、とりあえずどんな感じに?」

 「それでは、咲さんを頼らせていただきますね」


 い、一個一個直していけば大丈夫なはず。

 やだよ! 絶対に京ちゃんは渡さないよ! 和ちゃんに勝てる気がしないもん!


 「まず、いつもの服を着てお見合いに向かいます」

 「アウト!」


 この年齢、あの露出服でお見合いに行ってるの!?

 しかも和ちゃんのお父さんが紹介する人なんだから、かなりまともな人でしょ! そりゃダメだ!


 「次にお互いの自己紹介で、金髪で高身長じゃなかったらアウトですね」

 「なんでさ!」

 「せめて写真で断ってやるべきだじょ……」

 「ヤンキーに壁ドンされる女の子に憧れているんです!」

 「特定個人を指しすぎだよ!」

 「あとは白馬に乗った高身長金髪の王子様!」

 「えっ、京ちゃんが王子様……?」


 ないわー。私嫁さんだけどそれはないわー。

 あっ、優希ちゃんが笑い転げてる。


 「かなり高レベルでこじらせてるじょ……」

 「私のお姉ちゃんでもこのレベルはないよ」


 ちなみに、私のお姉ちゃんに聞くと、『京ちゃんがいい』としか返ってこないよ!


 「あとは挨拶代わりに職業、年収、運動歴、名前が須賀京太郎かを聞きますね」

 「いやもうお見合いでやっちゃいけないことの役満じゃん……。

  というか最後は何さ……」


 最後のはともかく、割とこじらせてるだけでダメだこれ!

 ネタで言っているのかと思ったらキョトンとしてるし!

 私服がマイノリティだと自覚していた和ちゃんはもういない!

 というか大学の和ちゃんの友達は、合コンの時とかに誰か教えてあげなかったの?


 「咲ちゃん咲ちゃん。

  多分、大学にいるのどちゃんの友達はライバルを減らしたり、相対的に自分をよく見せるために止めなかったんだと思うじょ。

  のどちゃん。プリクラで自分だけ前に出てたこととかないかー?」

 「? いつもそうですよ。

  何かと前に出てくれと言われます」

 「のどちゃんそれ罠だじぇ。

  プリクラを撮る瞬間に自分だけ下がって、小顔に見せて他の人の顔を大きく見せるのは女の子の必須スキルだじょ」

 「えっ」

 「あっ、親しい友達にでもやるから、悪意はないと思うじぇ。

  それでそのプリクラを使って男を釣るんだじょ。

  顔が大きいってそれだけで引かれちゃうし、後ろに小顔の自分がいればのどちゃんレベルでも踏み台にできちゃうじょ」


 えっ、そうなの!?

 女子会こわい! 女の子こわい!

 周りにお姉ちゃんしかいなくて、旦那さんもちの自分がいかに恵まれているかわかったよ!


 「う、うう。

  な、なんにせよ旦那さん借りていいですか?」

 「どうしてこの流れで借りていいって言われると思ったの!?」

 「のどちゃん諦めろー。

  もう試合終了だじぇ」

 「今思えば、運動ができる高身長金髪イケメンと優良株すぎました。ぐぬぬ。

  あんな王子様みたいな人いませんよ!」

 「いやぁ、うちの旦那が王子様はちょっと……」

 「あっはっは。逃した魚は大きいってか。

  ……私は咲ちゃんが別れたらもらうつもり」

 「優希ちゃん何か言った?」

 「なんでもないじぇー」


 ? どうしたんだろ。

 というか、京ちゃんは私とお姉ちゃんの相手で忙しいの! ダメなの!


 「では私はipsして京太郎君にぶっ込みますので、京太郎君が咲さんに挿れるのでいいですか?」

 「何がいいと思ったの!?」

 「ipsで……みんなを笑顔に……。

  こうなったら、京太郎君に私の子供を孕んでもらいます」

 「どうしてその結論になるのかな!?

  100歩譲って、和ちゃんが子供を産む側でしょ!?」

 「えっ、譲ってくれるんですか!?

  言質を取りました。これは父と法廷で使います」

 「それが狙い!?

  ダメ、絶対にダメー!!」


 全く、和ちゃんは本当に油断も隙もないだから!

 京ちゃんは私のなんだからね! カン!